JIS A 1154:2020 硬化コンクリート中に含まれる塩化物イオンの試験方法 | ページ 2

                                                                                              3
A 1154 : 2020

6 試料のはかりとり量

  上皿天びん又は電子天びんを用いて試料をはかりとる場合は,最小目盛0.01 gまでの上皿天びん又は電
子天びんを用い,約10 gを0.01 gの桁まではかりとる。また,化学天びんを用いて試料をはかりとる場合
には,110 gの範囲で,0.1 mgの桁まではかりとる。同じ方法で2個の試料をはかりとる。
なお,試料中の塩化物イオン濃度が高い場合には試料のはかりとり量を少なくすることが望ましい。

7 全塩化物イオンの抽出方法

7.1 方法概要

  試料に硝酸(1+6)を加えて溶液のpHを3以下とした後,加熱煮沸して塩化物イオンを抽出する。チ
オシアン酸水銀(II)吸光光度法,硝酸銀滴定法による場合,あらかじめ炭酸カルシウム(試薬)を加え
てpHを約7に調整し,静かに煮沸する3)。その後,不溶分をろ過洗浄し,ろ液を作成する。
なお,塩化物イオン電極を用いた電位差滴定法で,ろ過の工程が不要な場合は,これを省略した抽出液
を用いてもよい。
注3) 炭酸カルシウム(試薬)には,不純物として塩化物が含まれていることがあるので,注意する
必要がある。

7.2 試薬

  試薬は,次による。
a) 硝酸(1+6) JIS K 8541に規定する硝酸(試薬)特級を用いて調製したものとする。
b) 硝酸(1+1) JIS K 8541に規定する硝酸(試薬)特級を用いて調製したものとする。
c) 炭酸カルシウム(試薬) JIS K 8617に規定するもの。
d) 過酸化水素(試薬) JIS K 8230に規定するもの。

7.3 装置及び器具

  装置及び器具は,次のものを用いる。
a) ビーカー(200 mL)
b) 時計皿
c) ガラス漏斗
d) ブフナー漏斗
e) 吸引装置
f) pH試験紙
g) 全量フラスコ(200 mL)

7.4 操作

  塩化物イオンの抽出操作は,次による。
a) 箇条6に従って試料を,2個の乾いたビーカー(200 mL)にそれぞれはかりとり,時計皿で覆う。こ
れらの試料をはかりとったビーカー(200 mL)の縁から,硝酸(1+6)70 mLを徐々に加える。
b) 激しい反応が終わったら,溶液をかき混ぜて,溶液のpHが3以下であることを確かめる。pHが3以
上の場合は,更に硝酸(1+6)を加えて3以下にする。石灰岩などの炭酸塩を含む骨材が使用されて
いる場合,硝酸(1+1)を使用する。このとき,小さく切り取ったpH試験紙を溶液に落として,pH
を確認するとよい。
c) 時計皿で覆ったまま,ビーカーを加熱し,5分間静かに煮沸した後,常温まで冷却する。高炉スラグ,
フライアッシュ,スラグ細骨材又は塩化物イオン分析に影響を及ぼす成分を含むおそれがある場合は,

――――― [JIS A 1154 pdf 6] ―――――

4
A 1154 : 2020
過酸化水素(試薬)1 mLを加えて黄緑から薄茶色に変化するまで静かに煮沸し4),妨害物質を酸化す
る。水中不分離性コンクリート用混和剤などの増粘性の有機物が使用されていると,ろ過が困難とな
ることがある。この場合は硝酸(1+1)を更に5 mL加えて30分間静かに煮沸し,有機物を分解する。
このとき,時計皿に付着している水滴はビーカーに戻す。ただし,チオシアン酸水銀(II)吸光光度
法,硝酸銀滴定法による場合は,常温まで冷却する前に炭酸カルシウム(試薬)15 gを加えてpHを
約7に調整し,再加熱する。
注4) 溶液が濁っているため,色の変化を確認しづらい場合がある。
d) ガラス漏斗及びろ紙(5種B)を用いてビーカー(200 mL)にろ過,又はブフナー漏斗及びろ紙(5
種B)を用いて,吸引ろ過し,水でよく洗浄する。
なお,このろ過を行う前に,ろ紙からの塩化物イオンが混入しないように水でよく洗浄し,洗液を
廃棄する。このとき,適切な大きさの漏斗とろ紙とを組み合わせるとよい。ろ液及び洗液を全量フラ
スコ(200 mL)に移し,水を加えて200 mLに定容して試験溶液とする。ろ液及び洗液を合わせた量
はほぼ120 mL程度となるので,電位差滴定装置によって,全量をそのまま測定する場合には,200 mL
に定容しなくてもよい。

7.5 分取量又は希釈率

  試料溶液からの分取量又は希釈率は,箇条9箇条12の各試験方法に示す。

8 試験方法

  塩化物イオンの定量は,次のいずれかの方法とする。電位差滴定法,チオシアン酸水銀(II)吸光光度
法及び硝酸銀滴定法による場合,亜硝酸イオン,臭化物イオン,よう化物イオン,シアン化物イオンなど
の妨害イオンについて考慮する必要がある。また,チオ硫酸イオン,硫化物イオン及び亜硫酸イオンも妨
害するので,試料ろ液をあらかじめ酸化しておく必要がある。
a) 塩化物イオン電極を用いた電位差滴定法は,箇条9による。
b) チオシアン酸水銀(II)吸光光度法は,箇条10による。
c) 硝酸銀滴定法は,箇条11による。
d) サプレッサ方式のイオンクロマトグラフ法は,箇条12による。

9 塩化物イオン電極を用いた電位差滴定法

9.1 概要

  箇条7の操作で得られた試験溶液,ろ液及び洗液を合わせた全量,又はろ過工程を省略した抽出液の全
量を塩化物イオン電極を用いた電位差滴定装置にセットし,0.005 mol/L,0.01 mol/L又は0.1 mol/L硝酸銀
溶液で滴定する。

9.2 試薬

  試薬は,次による。
a) ウラニン溶液(2 g/L) JIS K 8830に規定するウラニン(試薬)5) 0.2 gを水に溶かして100 mLとす
る。
注5) ウラニンは,化学名でフルオレセインナトリウムのことである。
b) デキストリン溶液 JIS K 8646に規定するデキストリン水和物(試薬)2 gを水に溶かして100 mLと
する。
なお,保存の間に溶液が変質することがあるので,使用時に調製する。

――――― [JIS A 1154 pdf 7] ―――――

                                                                                              5
A 1154 : 2020
c) 0.1 mol/L塩化物イオン標準液 JIS K 8005に規定する容量分析用標準物質の塩化ナトリウムを磁器
るつぼに入れ,認証書に定める方法で乾燥し,デシケーター中で放冷する。この塩化ナトリウム1.169
gを,少量の水に溶かして全量フラスコ200 mLに移し入れ,水を標線まで加える。
d) 0.01 mol/L塩化物イオン標準液 0.1 mol/L塩化物イオン標準液20 mLを全量フラスコ200 mLにとり,
水を標線まで加える。
e) 0.005 mol/L塩化物イオン標準液 0.1 mol/L塩化物イオン標準液10 mLを全量フラスコ200 mLにとり,
水を標線まで加える。
f) 0.1 mol/L硝酸銀溶液 JIS K 8550に規定する硝酸銀17 gを水に溶かして1 Lとする。暗色又は褐色ガ
ラス瓶に保存する。
g) 0.01 mol/L硝酸銀溶液 JIS K 8550に規定する硝酸銀1.7 gを水に溶かして1 Lとする。又はf) の操作
によって得た0.1 mol/L硝酸銀溶液20 mLを全量フラスコ200 mLにとり,水を標線まで加える。暗色
又は褐色ガラス瓶に保存する。
h) 0.005 mol/L硝酸銀溶液 JIS K 8550に規定する硝酸銀0.85 gを水に溶かして1 Lとする。又はf) の操
作によって得た0.1 mol/L硝酸銀溶液10 mLを全量フラスコ200 mLにとり,水を標線まで加える。暗
色又は褐色ガラス瓶に保存する。

9.3 硝酸銀溶液の標定

  標定は滴定に用いるモル濃度の硝酸銀溶液について実施し,ファクター(fi)を算出する。0.1 mol/L硝
酸銀溶液を用いる場合には,0.1 mol/L塩化物イオン標準液20 mLを,0.01 mol/L硝酸銀溶液を用いる場合
には,0.01 mol/L塩化物イオン標準液20 mLを,さらに,0.005 mol/L硝酸銀溶液を用いる場合には,0.005
mol/L塩化物イオン標準液20 mLをビーカーにとり,水を加えて液量を約50 mLとし,これにデキストリ
ン溶液を5 mL及び指示薬としてウラニン溶液(2 g/L)34滴を加え,静かにかき混ぜながら,所定モル
濃度の硝酸銀溶液で標定する。黄緑の蛍光が消失して,僅かに赤くなったときを終点とする。次の式(1)
(3)によって各濃度の硝酸銀溶液のファクター(fi)を算出する。
なお,炭酸ナトリウム粉末を極少量加えると,終点が判定しやすい。
b 20 1
f1.0a1.0 (1)
100 200 X .0005 844
ここに, a0.1 : 0.1 mol/L塩化物イオン標準液200 mL中の塩化ナトリウ
ムの質量(g)
b : 塩化ナトリウムの純度(質量分率 %)
X : 標定に要した0.1 mol/L硝酸銀溶液の体積(mL)
0.005 844 : 0.1 mol/L硝酸銀溶液1 mLの塩化ナトリウム相当量(g)
b 20 1
f.001a.001 (2)
100 200 X .0000 584 4
ここに, a0.01 : 0.01 mol/L塩化物イオン標準液200 mL中の塩化ナトリ
ウムの質量(g)
b : 塩化ナトリウムの純度(質量分率 %)
X : 標定に要した0.01 mol/L硝酸銀溶液の体積(mL)
0.000 584 4 : 0.01 mol/L硝酸銀溶液1 mLの塩化ナトリウム相当量
(g)
b 20 1
f.0005a.0005 (3)
100 200 X .0000 292 2

――――― [JIS A 1154 pdf 8] ―――――

6
A 1154 : 2020
ここに, a0.005 : 0.005 mol/L塩化物イオン標準液200 mL中の塩化ナト
リウムの質量(g)
b : 塩化ナトリウムの純度(質量分率 %)
X : 標定に要した0.005 mol/L硝酸銀溶液の体積(mL)
0.000 292 2 : 0.005 mol/L硝酸銀溶液1 mLの塩化ナトリウム相当量
(g)

9.4 装置及び器具

  装置及び器具は,次のものを用いる。
a) 塩化物イオン電極を用いた電位差滴定装置
b) ビーカー
c) 全量ピペット
d) マグネチックスターラー

9.5 操作

  電位差滴定法の操作は,次による。
a) 滴定に用いる硝酸銀溶液のモル濃度は,0.1 mol/L,0.01 mol/L又は0.005 mol/Lの中から,想定される
塩化物イオン含有量によって,表1を参考に適切なものを選定する。
表1−想定される塩化物イオン含有量及び使用する硝酸銀溶液の濃度の目安
想定される塩化物イオン含有量 硝酸銀溶液モル濃度
(質量分率 %) (mol/L)
0.2以上 0.1
0.02以上 1.0未満 0.01
0.5未満 0.005
b) 箇条7の操作で得た試験溶液を表2によって,全量ピペットを用いてビーカー(200 mL)に分取し,
水で約50 mLに薄める。
なお,7.4 d) の操作においてろ液及び洗液を200 mLに定容しないでそのまま全量を測定する場合,
又はろ過工程を省略した抽出液の全量をそのまま測定する場合は,この操作を省く。
表2−試験溶液の分取量
0.1 mol/L硝酸銀溶液 0.01 mol/L硝酸銀溶液 0.005 mol/L硝酸銀溶液
塩化物イオン含有量 分取量 塩化物イオン含有量 分取量 塩化物イオン含有量 分取量
(質量分率 %) (mL) (質量分率 %) (mL) (質量分率 %) (mL)
0.2以上 2.0未満 50 0.02以上 0.2未満 50 0.1未満 50
0.5以上 5.0未満 20 0.05以上 0.5未満 20 0.025以上 0.25未満 20
1.0以上 10 0.1以上 1.0未満 10 0.05以上 0.5未満 10
c) マグネチックスターラーでかき混ぜながら,硝酸銀溶液で電位差滴定する。試料溶液の塩化物イオン
濃度が薄い場合は,滴定溶液を更に希釈して使用してもよい。ただし,その場合には,塩化物イオン
濃度の計算時に希釈倍率を考慮する。
d) 空試験として,b) の操作で分取した試験溶液,ろ液及び洗液の全量,又は抽出液の全量の代わりに,
等しい容積の水を用いてc) の操作を行って電位差滴定量を求める。空試験の結果によって,試験溶液,

――――― [JIS A 1154 pdf 9] ―――――

                                                                                              7
A 1154 : 2020
ろ液及び洗液又は抽出液について得た電位差滴定量を補正する。
e) 電位差滴定装置を用いて,少ない量の塩化物イオンを測定すると終点を検出しない場合があり,d) の
操作で空試験の電位差滴定量がばらつく場合もある。こうした場合は,試験溶液と空試験液の両方へ
同量の塩化物イオン標準液を添加して測定するとよい。このとき,試験条件を考慮して,塩化物イオ
ン標準液の濃度と添加量を定める。

9.6 計算

a) 7.4 d) によって,ろ液及び洗液を水で200 mLに定容して試験溶液とし,9.5 b) に従って試験溶液を分
取した場合には,次の式(4)によって,箇条6に従ってはかりとった試料中の塩化物イオン含有量(質
量分率 %)を算出する。
Vi fi 200 .0003 545
C 100 (4)
W X
ここに, C : 箇条6に従ってはかりとった試料中の塩化物イオン含有
量(質量分率 %)
Vi : 滴定に要したi mol/L硝酸銀溶液量(mL)
fi : i mol/L硝酸銀溶液のファクター
X : 9.5 b) の操作による試験溶液の分取量(mL)
W : 箇条6に従ってはかりとった試料の質量(g)
0.003 545 : 0.1 mol/L硝酸銀溶液1 mLの塩化物イオン相当量(g)
α : 硝酸銀溶液のモル濃度に関する係数
0.1 mol/L硝酸銀溶液のとき,α=1
0.01 mol/L硝酸銀溶液のとき,α=10
0.005 mol/L硝酸銀溶液のとき,α=20
b) 7.4 d) の操作によって,ろ液及び洗液を200 mLに定容しないでそのまま全量を測定した場合,又はろ
過工程を省略した抽出液の全量をそのまま測定した場合は,次の式(5)によって,箇条6に従ってはか
りとった試料中の塩化物イオン含有量(質量分率 %)を算出する。
Vi 圀 .0003 545
C i
100 (5)
ここに, C : 箇条6に従ってはかりとった試料中の塩化物イオン含有
量(質量分率 %)
Vi : 滴定に要したi mol/L硝酸銀溶液量(mL)
fi : i mol/L硝酸銀溶液のファクター
W : 箇条6に従ってはかりとった試料の質量(g)
0.003 545 : 0.1 mol/L硝酸銀溶液1 mLの塩化物イオン相当量(g)
α : 硝酸銀溶液のモル濃度に関する係数
0.1 mol/L硝酸銀溶液のとき,α=1
0.01 mol/L硝酸銀溶液のとき,α=10
0.005 mol/L硝酸銀溶液のとき,α=20

10 チオシアン酸水銀(II)吸光光度法

10.1 概要

  箇条7の操作で得られた試験溶液の一部を分取し,チオシアン酸水銀(II)及び硫酸アンモニウム鉄(III)
を加えたとき,塩化物イオンによって置換されたチオシアン酸イオンと鉄(III)とが反応して生じるだい
だい赤の錯体の吸光度を測定して,塩化物イオンを定量する。
なお,この方法では,水銀化合物を使用するため,試験後の廃液の処分に注意する。

――――― [JIS A 1154 pdf 10] ―――――

次のページ PDF 11

JIS A 1154:2020の国際規格 ICS 分類一覧

JIS A 1154:2020の関連規格と引用規格一覧