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5 材料
5.1 薄板ばねに用いる主な材料
薄板ばねに使用する主な材料は,鉄鋼材料と非鉄金属材料とに大別できる。これらは,更に薄板ばねと
して必要な強度を得る手段によって,次の三つに分類できる。
a) 焼入焼戻し,オーステンパなどの熱処理によって強度を得るもの。
b) 冷間圧延によって強度を得るもの。
c) 冷間圧延と熱処理との組合せによって強度を得るもの。
薄板ばね用材料として,JIS G 3311,JIS G 4313,JIS G 4802及びJIS H 3130の規格がある。薄板ばねに
用いる主な材料とその特徴を,表2に示す。
表2−薄板ばねに用いる主な材料
熱処理の有無 材料規格 代表鋼種 特徴
鉄 熱処理によっJIS G 3311 S60CM,S70CM及びSK85M ばね加工後熱処理(焼入焼戻し,オ
鋼 て強度を得るJIS G 4802のうち調質S60C-CSPA及びS60C-CSPR ーステンパなど)によって強度を得
材
料 材料 の記号A及びRのもの る。複雑な形状の加工が可能。
JIS G 4802のうち調質S60C-CSPH及びS60C-CSPB 材料の状態で熱処理を行い強度を得
記号H及びBのもの S70C-CSPH及びS70C-CSPB ているため,複雑な加工に適さない。
SK85-CSPH及びSK85-CSPB
JIS G 4313 SUS420J2-CSP(調質記号O) マルテンサイト系 : ばね加工後,焼
入焼戻しによって強度を得る。すべ
ての状態で磁性をもつ。
冷間圧延によ SUS301-CSP(調質記号1/2H, オーステナイト系 : 調質の記号を指
って強度を得 3/4H,H,EH及びSEH)及び 定することで硬さ指定可能。耐食性
る材料 SUS304-CSP(調質記号1/2H, がよい。硬さによっては複雑な形状
3/4H及びH) に加工可能。固溶化熱処理状態では
非磁性,強加工によって弱い磁性を
もつ。同一硬さではSUS304より
SUS301のほうが成形性がよい。
冷間圧延と熱 SUS631-CSP(調質記号O, 析出硬化系 : ばね加工後,析出硬化
処理とによっ 1/2H,3/4H及びH)及び 処理を施し強度を得る。調質の記号
て強度を得る SUS632J1-CSP(調質記号1/2H を指定することで硬さ指定可能。
材料 及び3/4H) SUS301及びSUS304よりも高価。析
出硬化後は強磁性をもつ。
非 冷間圧延と熱JIS H 3130 ばね用ベリリウム銅及びばね ばね加工後に時効硬化処理を施し強
鉄 処理とによっ 用低ベリリウム銅 度を得る。質別を指定することで硬
金
属 て強度を得る C1700P(板),C1700R(条),
さ指定可能。非鉄金属の中では強度
材 材料 C1720P(板),C1720R(条),
最大。耐食性がよい。複雑形状に成
料
形可能。非常に高価である。
C1751P(板),C1751R(条)(質
別 O,1/2H及びH)
ばね用りん青銅 非鉄金属材料では,最も代表的な材
C5210P(板)及びC5210R(条)
料。質別を指定することで硬さ指定
(質別1/2H,H,EH,SH及び 可能。耐食性がよい。硬さによって
ESH) は複雑な加工が可能。
ばね用洋白C7701P(板)及びりん青銅と比較すると導電率は劣る
が,耐食性はよい。
C7701R(条)(質別1/2H,H,
EH及びSH)
――――― [JIS B 2713 pdf 6] ―――――
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5.2 材料の特性
薄板ばねに用いる主な材料の特性値は,次による。
a) 縦弾性係数 曲げ,引張り及び圧縮にかかわる縦弾性係数は,表3を参照する。
表3−縦弾性係数
単位 MPa
材料 縦弾性係数E
鉄鋼材料a) 2.06×105
ばね用ステンレス鋼 SUS301-CSP
1.86×105
SUS304-CSP
SUS420J2-CSP
SUS631-CSP 1.96×105
SUS632J1-CSP
ばね用ベリリウム銅 1.27×105
ばね用りん青銅 0.98×105
ばね用洋白 1.08×105
注a) ステンレス鋼を除く。
b) 密度 薄板ばねの質量計算などに用いる主な材料の密度は,表4による。
表4−主な材料の密度
単位 kg/mm3
材料 密度
鉄鋼材料a) 7.85×10−6
ばね用ステンレス鋼 7.90×10−6
ばね用ベリリウム銅 8.20×10−6
ばね用りん青銅 8.80×10−6
ばね用洋白 8.70×10−6
注a) ステンレス鋼を除く。
c) 硬さ 薄板ばねの設計では,材料の硬さから引張強さを換算して寿命を予測する場合がある。主な材
料の硬さは,表5表9による。
表5−ばね用冷間圧延鋼帯の調質の記号H及びBの硬さ(中心値)の指定してよい範囲
種類の記号 H(ビッカース硬さHV) B(ビッカース硬さHV)
S60C-CSP 350500 360440
S70C-CSP 350550 −
SK85-CSP 350600 −
硬さの許容差は,±25HVとする。ただし,鋼帯1条内のばらつきは,30HV以内とする。
――――― [JIS B 2713 pdf 7] ―――――
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表6−ばね用ステンレス鋼帯の硬さ
種類の記号 調質の 冷間圧延又は固溶化熱処理 析出硬化熱処理状態
記号 若しくは焼きなまし状態
ビッカース硬さ HV 熱処理記号 ビッカース硬さ HV
SUS301-CSP 1/2H 310以上 − −
3/4H 370以上 − −
H 430以上 − −
EH 490以上 − −
SEH a) 530以上 − −
SUS304-CSP 1/2H 250以上 − −
3/4H 310以上 − −
H 370以上 − −
SUS420J2-CSP O 247以下 − −
SUS631-CSP TH1050 345以上
O 200以下
RH950 392以上
1/2H 350以上 CH 380以上
3/4H 400以上 CH 450以上
H 450以上 CH 530以上
SUS632J1-CSP 1/2H 350以下 CH 400以上
3/4H 420以下 CH 480以上
注a) 調質の記号SEHは,調質の記号EH区分の範囲で,特に注文者の指定がある場合に適用する。
表7−合金番号C1700・C1720・C5210・C7701の板及び条の硬さ
合金番号 質別 記号 硬さ
厚さ mm ビッカース硬さ HV
C1700 O C1700 P-O 0.10以上
90160
C1700 R-O 1.6 以下
1/4H C1700 P-1/4H 0.10以上
145220
C1700 R-1/4H 1.6 以下
1/2H C1700 P-1/2H 0.10以上
180240
C1700 R-1/2H 1.6 以下
H C1700 P-H 0.10以上
210270
C1700 R-H 1.6 以下
C1720 O C1720 P-O 0.10以上
90160
C1720 R-O 1.6 以下
1/4H C1720 P-1/4H 0.10以上
145220
C1720 R-1/4H 1.6 以下
1/2H C1720 P-1/2H 0.10以上
180240
C1720 R-1/2H 1.6 以下
H C1720 P-H 0.10以上
210270
C1720 R-H 1.6 以下
――――― [JIS B 2713 pdf 8] ―――――
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表7−合金番号C1700・C1720・C5210・C7701の板及び条の硬さ(続き)
合金番号 質別 記号 硬さ
厚さ mm ビッカース硬さ HV
C5210 1/2H C5210 P-1/2H
0.10以上 140205
C5210 R-1/2H
H C5210 P-H
0.10以上 185235
C5210 R-H
EH C5210 P-EH
0.10以上 210260
C5210 R-EH
SH C5210 P-SH
0.10以上 230270
C5210 R-SH
ESH C5210 P-ESH
0.10以上 245285
C5210 R-ESH
C7701 1/2H C7701 P-1/2H
0.10以上 150210
C7701 R-1/2H
H C7701 P-H
0.10以上 180240
C7701 R-H
EH C7701 P-EH
0.10以上 210260
C7701 R-EH
SH C7701 P-SH
0.10以上 230270
C7701 R-SH
表8−合金番号C1700・C1720の板及び条の時効処理後の硬さ
合金番号 質別 記号 硬さ
厚さ mm ビッカース硬さ HV
C1700 O C1700 P-O 0.10以上
310370
C1700 R-O 1.6 以下
1/4H C1700 P-1/4H 0.10以上
330410
C1700 R-1/4H 1.6 以下
1/2H C1700 P-1/2H 0.10以上
345420
C1700 R-1/2H 1.6 以下
H C1700 P-H 0.10以上
360430
C1700 R-H 1.6 以下
C1720 O C1720 P-O 0.10以上
325400
C1720 R-O 1.6 以下
1/4H C1720 P-1/4H 0.10以上
350430
C1720 R-1/4H 1.6 以下
1/2H C1720 P-1/2H 0.10以上
360440
C1720 R-1/2H 1.6 以下
H C1720 P-H 0.10以上
380450
C1720 R-H 1.6 以下
――――― [JIS B 2713 pdf 9] ―――――
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表9−合金番号C1720・C1751の板及び条の硬さ(ミルハードン材)
合金番号 質別 記号 硬さ
厚さ mm ビッカース硬さ HV
C1720 OM C1720 P-OM 0.10以上
200以上
C1720 R-OM 1.6 以下
1/4HM C1720 P-1/4HM 0.10以上
210以上
C1720 R-1/4HM 1.6 以下
1/2HM C1720 P-1/2HM 0.10以上
240以上
C1720 R-1/2HM 1.6 以下
HM C1720 P-HM 0.10以上
270以上
C1720 R-HM 1.6 以下
C1751 OM C1751 P-OM 0.10以上
210260
C1751 R-OM 1.6 以下
HM C1751 P-HM 0.10以上
230280
C1751 R-HM 1.6 以下
注記 ミルハードン材とは,製造業者が適切な冷間加工及び時効硬化処理を施し,規定
された機械的性質を付与したものをいう。
6 薄板ばねの特徴及び材料の選択
6.1 薄板ばねの特性,種類及び特徴
薄板ばねは,その形状及び使い方によって,荷重P又はトルクMとばねたわみδとが比例する線形特性
のほかに,各種の非線形特性が得られる。また,ぜんまいばねには,限られた空間で大きなたわみ(変位)
のもとに比較的大きなエネルギーを蓄積でき,ばねの成形がその他のばねに比べ簡単であるという特徴が
ある。基本的なばねの特性,種類及び特徴を,薄板ばねとぜんまいばねとについて表10及び表11に示す。
表10−薄板ばねの基本的な特性,種類及び特徴
番号 ばね特性 ばねの種類 特徴
1 線形特性 形状の設計自由度が高い。
バインダクリップ,キャップス
波形ばねは,軸方向の空間
プリング,ロッドロッククラン
プ,波形ばねなどの片持ちは に対し大きな荷重が得ら
れ,支持方法によって支点
り,両端支持はり及び曲がりは
りのばね が移動し,ばね定数が高く
2 非線形特性 なり非線形特性となる場
平たん(坦)薄板ばね及び波形
ばね 合もある。
――――― [JIS B 2713 pdf 10] ―――――
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JIS B 2713:2009の国際規格 ICS 分類一覧
- 21 : 一般的に使用される機械的システム及び構成要素 > 21.160 : ばね
JIS B 2713:2009の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISB0103:2015
- ばね用語
- JISB2709:2000
- ねじりコイルばね ― 設計・性能試験方法
- JISG3311:2016
- みがき特殊帯鋼
- JISG3311:2021
- みがき特殊帯鋼
- JISG4313:2011
- ばね用ステンレス鋼帯
- JISG4802:2019
- ばね用冷間圧延鋼帯
- JISH3130:2018
- ばね用のベリリウム銅,チタン銅,りん青銅,ニッケル―すず銅及び洋白の板及び条