JIS B 6190-1:2016 工作機械試験方法通則―第1部:幾何精度試験 | ページ 22

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B 6190-1 : 2016 (ISO 230-1 : 2012)
機械座標系の位置及び向きを工作機械の直進軸をもとに定義することで,表A.2のうちの五つの位置誤
差及び角度誤差を0(又は任意の値)に設定することができる。
次の例を考える。
− Y軸を第一軸に選んだ場合は,Y軸の基準直線は,機械座標系のY軸と一致する。このとき,EA0Y及
びEC0Yを0にできる。
− X軸を第二軸に選んだ場合は,X軸の基準直線は,機械座標系のX軸の向きを決める。このとき,EB0X
をゼロにすることができる。
− 主軸(C)の位置(主軸の軸平均線とXY面との交点)を機械座標系の原点位置と定義した場合は,EX0C
及びEX0Cを0にすることができる。
したがって,図A.2に示す工作機械に対して測定する必要のある誤差は,次の五つの角度誤差になる(表
A.3参照)。
表A.3−3軸工作機械を特徴付けるために必要な最小限の幾何誤差
Y軸 X軸 Z軸 (C)主軸
− (0) − 0
(0) − − 0
− − (0) −
0 − EA0Z EA0(C)
− 0 EB0Z EB0(C)
0 EC0X − −
工具の機能点のZ位置を,機械座標系原点のZ基準とすることができる。
注記 この手順は,ワーク座標系の定義と同様である。すなわち,基準“A”が第一軸,基準“B”が
第二軸,基準“C”がワーク座標系の原点を定義する。
3軸工作機械において,測定する必要のある幾何誤差は,次の五つの角度誤差だけとなる。
− EC0X : Y軸に対するX軸の直角度誤差
− EA0Z : Y軸に対するZ軸の直角度誤差
− EB0Z : X軸に対するZ軸の直角度誤差
− EA0(C) : Y軸に対する(C)主軸の直角度誤差
− EB0(C) : X軸に対する(C)主軸の直角度誤差
機械座標系を定義した後に,その機械座標系に対して機能面の位置及び姿勢(テーブルの姿勢,基準溝
の姿勢,主軸端の位置及び姿勢など)を決める。
A.6 5軸工作機械の機械座標系
図A.3に示す5軸制御工作機械では,表A.4に示す23個の位置誤差及び角度誤差がある。

――――― [JIS B 6190-1 pdf 106] ―――――

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6 Z
Z
7 C
C Y
Y
A
A
8
X
X
1 回転テーブル(C'軸) 9 5
2 テーブルサドル(X'軸)
3 ベッド 1
4 コラムサドル(Y軸)
4
5 コラム 2
6 ヨークサドル(Z軸) 3
7 ヨーク
8 旋回形主軸頭(A軸)
9 主軸(C1軸)
図A.3−5軸工作機械の構成
表A.4−5軸制御工作機械の位置誤差及び角度誤差
C軸 X軸 Y軸 Z軸 A軸 (C1)主軸
EX0C EX0X − − − EX0(C1)
EY0C − EY0Y − EY0A EY0(C1)
− − − EZ0Z EZ0A −
EA0C − EA0Y EA0Z EA0A EA0(C1)
EB0C EB0X − EB0Z EB0A EB0(C1)
EC0C EC0X EC0Y − EC0A −
工作機械の幾何精度を試験するとき,直進軸及び旋回軸のゼロ点位置は,一般に全て0にできるため,
表A.4は,表A.5のように簡略化できる。
表A.5−簡略化した5軸工作機械の誤差
C軸 X軸 Y軸 Z軸 A軸 (C1)主軸
EX0C (0) − − − EX0(C1)
EY0C − (0) − EY0A EY0(C1)
− − − (0) EZ0A −
EA0C − EA0Y EA0Z (0) EA0(C1)
EB0C EB0X − EB0Z EB0A EB0(C1)
(0) EC0X EC0Y − EC0A −
機械座標系を次のように選択する場合を考える。
− X軸を第一軸として選ぶ。
− Y軸を第二軸として選ぶ。
− 原点は,全ての軸を0に指令したときの,A軸の軸平均線とYZ平面との交点と同じ高さ(Z座標)
で,C軸の軸平均線上に選ぶ。
このように選択すると,表A.6に示す12個の幾何誤差だけが残る。

――――― [JIS B 6190-1 pdf 107] ―――――

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表A.6−5軸工作機械を特徴付けるために必要な最小限の誤差
C軸 X軸 Y軸 Z軸 A軸 (C1)主軸
0 (0) − − − EX0(C1)
0 − (0) − EY0A EY0(C1)
− − − (0) 0 −
EA0C − 0 EA0Z (0) EA0(C1)
EB0C 0 − EB0Z EB0A EB0(C1)
(0) 0 EC0Y − EC0A −
したがって,5軸工作機械に対して測定する必要のある幾何誤差は,次の位置誤差及び角度誤差だけと
なる。
− EA0C : Y軸に対するC軸の直角度誤差
− EB0C : X軸に対するC軸の直角度誤差
− EC0Y : X軸に対するY軸の直角度誤差
− EA0Z : Y軸に対するZ軸の直角度誤差
− EB0Z : X軸に対するZ軸の直角度誤差
− EY0A : C軸に対するA軸のオフセット誤差
− EB0A : 基準ZX平面内におけるX軸に対するA軸の平行度誤差
− EC0A : 基準XY平面内におけるX軸に対するA軸の平行度誤差
− EX0(C1) : 基準XY平面内におけるC軸に対する(C1)主軸のX方向オフセット誤差
− EY0(C1) : 基準XY平面内におけるC軸に対する(C1)主軸のY方向オフセット誤差
− EA0(C1) : Y軸に対する(C1)主軸の直角度誤差
− EB0(C1) : X軸に対する(C1)主軸の直角度誤差
機械の性能を完全に評価するためには,A軸から工具の機能点までの(C1)軸(主軸)に平行な方向の距
離を測定することが望ましいことに注意する。例えば,旋回形主軸頭をもつ工作機械を,基準球と変位計
とからなる測定器又はボールバーを用いて,同時3軸運動試験のような運動試験を行うときには,この距
離を考慮することが望ましい。ただし,この誤差は,工作機械の位置誤差ではなく,工具の位置誤差であ
るとみなす。したがって,この附属書では考慮しない。
異なる機械座標系の原点,第一軸及び第二軸を選んだ場合には,幾何誤差の測定値も異なる。どのよう
に機械座標系を選ぶかにかかわらず,測定する必要のある誤差の数は,三つの位置誤差及び九つの角度誤
差の合計12個と変わらない。測定する誤差の数がこれより少ない場合には,機械の位置誤差及び角度誤差
を完全に記述していないことになる。測定する誤差の数がこれより多い場合は,冗長な誤差測定になる。
すなわち,残りの測定値の組合せで一つ以上の測定値を推定することができる。例えば,この例では,C
軸と(C1)軸(主軸)との平行度誤差は,測定する必要がない。それは,EA0C,EA0(C1),EB0C及びEB0(C1)から
計算できるからである。
注記 ある一つの軸に対して,その上に構成されているもう一つの軸の誤差運動として記載したほう
が便利な場合がある。3.6.7に示した二つの軸の直角度誤差は,相対的に表記することもできる。
例えば,図A.3に示す構造形態では,Z軸に対するA軸の軸平均線の直角度は,この“相対的”
な表記方法を使って,EB(0Z) Aと表すことができる。一方,上記の“絶対的”表記方法では,EB0A
−EB0Zとなる。この“相対的”表記方法を用いたときの最小限の誤差の導出方法については,
例えば,稲崎らの研究(参考文献[14])を参照。

――――― [JIS B 6190-1 pdf 108] ―――――

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A.7 複合ターニングセンタの機械座標系
図A.4に示す複合ターニングセンタでは,表A.7に示す23個の位置誤差及び角度誤差がある。
1 X
X
7 BB
6 Y
Y
8 Z
Z
2 C
C
1 工作主軸(C'軸) 5
2 工作主軸台
4
3 ベッド
4 コラムサドル(Z軸)
5 コラム(Y軸) 3
6 クロススライド(X軸)
7 旋回形主軸頭(B軸)
8 工具主軸(A軸)
図A.4−複合ターニングセンタの構造形態
表A.7−複合ターニングセンタの位置誤差及び角度誤差
C軸 Z軸 Y軸 X軸 B軸 (A)主軸
EX0C − − EX0X EX0B −
EY0C − EY0Y − − EY0(A)
− EZ0Z − − EZ0B EZ0(A)
EA0C EA0Z EA0Y − EA0B −
EB0C EB0Z − EB0X EB0B EB0(A)
EC0C − EC0Y EC0X EC0B EC0(A)
工作機械の幾何精度を試験するとき,直進軸及び旋回軸のゼロ点位置は,一般に全て0にできるため,
表A.7は,表A.8のように簡略化できる。
表A.8−簡略化した複合ターニングセンタの幾何誤差
C軸 Z軸 Y軸 X軸 B軸 (A)主軸
EX0C − − (0) EX0B −
EY0C − (0) − − EY0(A)
− (0) − − EZ0B EZ0(A)
EA0C EA0Z EA0Y − EA0B −
EB0C EB0Z − EB0X (0) EB0(A)
(0) − EC0Y EC0X EC0B EC0(A)
機械座標系を次のように選択する場合を考える。
− Z軸を第一軸として選ぶ。
− X軸を第二軸として選ぶ。
− 原点は,全ての軸を0に指令したときの,(A)主軸の軸平均線とYZ平面との交点と同じY座標で,B
軸の軸平均線上に選ぶ。

――――― [JIS B 6190-1 pdf 109] ―――――

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B 6190-1 : 2016 (ISO 230-1 : 2012)
このように選択すると,表A.9に示す12個の幾何誤差だけが残る。
表A.9−複合ターニングセンタを特徴付けるために必要な最小限の幾何誤差
C軸 Z軸 Y軸 X軸 B軸 (A)主軸
EX0C − − (0) 0 −
EY0C − (0) − − 0
− (0) − − 0 EZ0(A)
EA0C 0 EA0Y − EA0B −
EB0C 0 − EB0X (0) EB0(A)
(0) − EC0Y 0 EC0B EC0(A)
したがって,複合ターニングセンタに対して測定する必要のある幾何誤差は,次の位置誤差及び角度誤
差だけとなる。
− EX0C : B軸に対する基準XY平面上のC軸のX方向オフセット誤差
− EY0C : 基準XY平面における(A)軸に対するC軸のX方向オフセット誤差
− EA0C : YZ平面内におけるZ軸に対するC軸の平行度誤差
− EB0C : ZX平面内におけるZ軸に対するC軸の平行度誤差
− EB0X : Z軸に対するX軸の直角度誤差
− EA0Y : Z軸に対するY軸の直角度誤差
− EC0Y : X軸に対するY軸の直角度誤差
− EA0B : Z軸に対するB軸の直角度誤差
− EC0B : X軸に対するB軸の直角度誤差
− EZ0(A) : 基準YZ平面内におけるB軸に対する(A)主軸のZ方向オフセット誤差
− EB0(A) : Z軸に対する(A)主軸の直角度誤差
− EC0(A) : 基準XY平面内におけるX軸に対する(A)主軸の平行度誤差
機械の性能を完全に評価するためには,B軸から工具の先端点までの(A)軸(主軸)に平行な方向に距離
も測定することが望ましいことに注意する。例えば,旋回形主軸頭をもつ工作機械を,基準球と変位計と
からなる測定器又はボールバーを用いて,同時3軸運動試験のような運動試験を行うときには,この距離
を考慮することが望ましい。ただし,この誤差は,工作機械の位置誤差ではなく,工具の位置誤差である
とみなす。したがって,この附属書では考慮しない。
異なる機械座標系の原点,第一軸及び第二軸を選んだ場合には,幾何誤差の測定値も異なる。機械座標
系の選び方にかかわらず,測定する必要のある誤差の数は,三つの位置誤差及び九つの角度誤差の合計12
個であることは変わらない。これを示すため,異なる機械座標系の原点を選んだ例を,次に示す。
機械座標系を次のように選ぶ場合考える。
− Z軸を第一軸として選ぶ。
− X軸を第二軸として選ぶ。
− 原点は,全ての軸を0に指令したときの,B軸の軸平均線とZX平面との交点と同じZ座標で,C軸
の軸平均線上に選ぶ。
このように選択すると,表A.8に示した誤差のうち,表A.10に示す12個の誤差だけが残る。

――――― [JIS B 6190-1 pdf 110] ―――――

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