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B 7725 : 2020
附属書A
(参考)
試験機の校正結果の不確かさ
A.1 一般
測定の不確かさの分析は,誤差の原因の特定及び試験結果の違いを理解するのに有用な手段である。こ
の附属書は,不確かさの見積りの例を示すものであり,特に顧客の指示がない限り導き出された値は,参
考である。試験機が適合すべき許容差を決める際に,用いる測定装置及び/又は基準片がもつ不確かさが,
この許容差に組み込まれてきた。このため,この不確かさによって更なる調整を行うことは,不適切であ
る。例えば,測定の不確かさだけ許容差を小さくすることである。これは,試験機の直接検証又は間接検
証を行うときの全ての測定に当てはまる。それぞれの場合について,規定の測定装置及び/又は基準片を
用いて得た測定値は,この規格への適合を評価するために用いられる。しかしながら,測定の不確かさに
よって許容範囲を小さくすることが適切であるような場合には,受渡当事者間による協定が必要である。
硬さスケールの定義に必要な校正の連鎖は,JIS Z 2244-1を参照。
A.2 試験機の直接検証
A.2.1 試験力の校正
試験力の校正の相対合成標準不確かさは,式(A.1)によって求める。
2 2
uF u FRS u FHTM (A.1)
ここに, uFRS : 力計による測定の相対不確かさ(力計の校正証明書による。)
uFHTM : 試験機によって発生する試験力の相対標準不確かさ
参照標準器である力計の不確かさは,その校正証明書に記載されている。より厳しい条件が求められる
場合には,次の要因も考慮する。
− 温度依存性
− 長期安定性
− 内挿式の偏差
力計の構造によっては,力計の試験機の圧子軸に対する回転位置を考慮することが望ましい。
例 表A.1に示す校正結果及び次の条件であるとして,
力計の測定不確かさ(力計の校正証明書による。) UFRS=0.12 %(包含係数k=2)
試験力の呼び値(力計の校正値) FRS=294.2 N
相対偏差は,式(A.2)によって求める。
Fij
, FRS
Frel,,ij (A.2)
FRS
ここに, Fi,j : i番目の高さの位置におけるj回目の試験力表示値
相対標準不確かさは,式(A.3)によって求める。
sFi t
uFHTM,i , (n=3,t=1.32) (A.3)
Fi n
iFs : i番目の高さの位置における試験力表示値の標準偏差
ここに,
――――― [JIS B 7725 pdf 11] ―――――
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表A.1−試験力校正の結果
試験力校正の 1回目 2回目 3回目 平均値 標準 相対標準
iF
高さ位置 測定値 相対偏差 測定値 相対偏差 測定値 相対偏差 偏差 不確かさ
s
Fi,1 攀 i,1Fi,2 攀 i,2Fi,3 攀 i,3 Fi uFHTM,i
N % N % N % N
1 294.7 0.170 294.9 0.238 294.5 0.102 294.7 0.200 0.52×10−3
2 293.9 −0.102 294.5 0.102 294.6 0.136 294.3 0.379 0.98×10−3
3 293.1 −0.374 294.0 −0.068 293.7 −0.170 293.6 0.458 1.19×10−3
表A.2に示す相対不確かさは,表A.1に示す相対標準不確かさuFHTM,iの最大値を用いている(この場合
は,uFHTM,3)。
表A.2−試験力測定の不確かさ計算
量 試験力 最大差 確率分布 記号 相対不確かさ 感度係数 校正の
相対不確かさ
Xp xp ap u(xp) cp up(F)
力計の表示 294.2 N ±0.12 % 正規分布 uFRS 0.6×10−3 1 0.6×10−3 N
実試験力の精度 0N ±1 % 正規分布 uFHTM 1.19×10−3 1 1.19×10−3 N
相対合成標準不確かさ,uF,% 0.133
相対拡張不確かさ,UF(包含係数k=2),% 0.266
表A.3に示す試験力の最大相対偏差は,表A.1に示す 攀 i,jの最大絶対値を用いて式(A.4)によって求め
る(この場合は,ΔFrel,3,1)。
ΔFmax=· 攀 i,j·+UF (A.4)
表A.3−試験力の最大相対偏差の計算
試験力の最大相対偏差 試験力の相対拡張不確かさ 試験力の最大相対偏差
ΔFrel,3,1 UF 愀
−0.374 % 0.266 % 0.640 %
ここで,ΔFmaxは,式(A.5)によって求める。
ΔFmax=·ΔFrel·+UF (A.5)
この例の結果は,試験力の偏差が,参照標準器の測定の不確かさを含めて,6.2に規定する許容差±1.0 %
に適合していることを意味している。
A.2.2 くぼみ測定装置の校正
くぼみ測定装置の校正の相対合成標準不確かさは,式(A.6)によって求める。
2 2 2
uL u LRS 2 u ms u LHTM (A.6)
ここに, uLRS : 校正証明書に基づく対物ミクロメータ(参照標準器)の相対
標準不確かさ(包含係数k=1)
ums : くぼみ測定装置の分解能による測定の相対標準不確かさ。く
ぼみ測定装置の表示分解能と光学分解能とを考慮する。多く
の場合,uLの計算には,くぼみ測定装置全ての分解能を二度
入れるのがよい。これは,くぼみの両端部をそれぞれ測定す
るためである。
uLHTM : 試験機の測定の相対標準不確かさ
――――― [JIS B 7725 pdf 12] ―――――
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くぼみ測定装置用の参照標準器である対物ミクロメータの測定不確かさは,校正証明書に記載されてい
る。例えば,誤差要因には,次のようなものがある。
− 温度依存性
− 長期安定性
− 内挿式の偏差
これらの誤差要因は,対物ミクロメータの測定不確かさに,決定的な影響を及ぼすことはない。
例 くぼみ測定装置の校正の不確かさ算出の条件の例を,次に示す。
対物ミクロメータの5区間の測定値(0.05 mm,0.10 mm,0.20 mm,0.30 mm及び0.40 mm)で,
対物ミクロメータの測定不確かさ ULRS=0.000 1 mm(包含係数k=2)
顕微鏡の光学分解能 δOR=0.000 34 mm
注記 次の光学分解能の式は,落射照明の場合に有効である。
δOR=λ/(2×NA)
ここに, λ : 光の波長(μm)(緑色光の場合,約0.55 μm)
NA : 対物レンズの開口数
例 NA=0.8の100倍の対物レンズで緑色光を使用する場合,
0.55μm 0.34μm
OR
(20.8)
なお,くぼみ測定装置の表示器の分解能(δIR)は,0.000 1 mmである。
くぼみ対角線長さ測定の分解能は,式(A.7)によって求める。
2 2
ms OR IR 0.00035 mm (A.7)
表A.4のΔLrel,i,jは,対物ミクロメータのi番目の測定のj回目の値であり,式(A.8)によって求める。
Lij
, LRS,i
Lrel,,ij 100 (A.8)
LRS,i
ここに, LRS,i : 対物ミクロメータのi番目の目盛間隔の校正値
Li,j : 対物ミクロメータのi番目の目盛間隔のj回目の測定値
表A.4−くぼみ測定装置の校正結果
目盛 対物ミクロメータ 1回目 2回目 3回目 平均値 標準偏差
番号 のi番目の目盛 測定値 相対偏差 測定値 相対偏差 測定値 相対偏差 Li SLi
i LRS,i Li,1 攀 i,1Li,2 攀 i,2Li,3 攀 i,3
mm mm % mm % mm % mm mm
1 0.05 0.050 0 0.000 0.050 0 0.000 0.050 1 0.200 0.050 0 0.000 058
2 0.10 0.100 2 0.200 0.100 0 0.000 0.100 1 0.100 0.100 1 0.000 100
3 0.20 0.200 1 0.050 0.199 9 −0.050 0.200 1 0.050 0.200 0 0.000 115
4 0.30 0.299 7 −0.100 0.300 1 0.033 0.300 1 0.033 0.300 0 0.000 231
5 0.40 0.400 2 0.050 0.400 1 0.025 0.400 3 0.075 0.400 2 0.000 100
不確かさの寄与を要因ごとに計算し,その結果を表A.5に示す。計算式を,次に示す。
i番目の目盛における対物ミクロメータの相対標準不確かさは,式(A.9)によって求める。
ULRS
uLRS,i 2 (A.9)
LRS,i
――――― [JIS B 7725 pdf 13] ―――――
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i番目の目盛におけるくぼみ測定装置の分解能による測定の相対標準不確かさは,式(A.10)によって求め
る。
ms
23
ums,i (A.10)
LRS,i
i番目の目盛における試験機の測定の相対標準不確かさは,式(A.11)によって求める。
SLi t
uLHTM,i (n=3,t=1.32) (A.11)
Li n
ここに, SLi : 対物ミクロメータのi番目の目盛間隔の校正値の標準偏差
iL : 対物ミクロメータのi番目の目盛間隔の測定平均値
表A.5−くぼみ測定装置の不確かさの計算
量 確率 評価値 記号 式 : 感度 不確かさの寄与up(L)
Xp 分布 xp 相対標準不確かさ 係数 LRS,1 LRS,2 LRS,3 LRS,4 LRS,5
u(xp) cp (0.05 mm)(0.10 mm)(0.20 mm)(0.30 mm)(0.40 mm)
対物ミ 正規 LRS,i uLRS ULRS 1 1.00× 0.50× 0.25× 0.17× 0.13×
uLRS,i 2
クロメ 分布 10−3 10−3 10−3 10−3 10−3
LRS,i
ータ
装置の く形 0.000 35 ums ms 1 2.28× 1.14× 0.57× 0.38× 0.28×
分解能 分布 mm 23 10−3 10−3 10−3 10−3 10−3
ums,i
(2回分) LRS,i
装置の 正規 LRS,i uLHTM SLi t 1 0.88× 0.76× 0.44× 0.59× 0.19×
uLHTM,i
精度 分布 Li n 10−3 10−3 10−3 10−3 10−3
(n=3,t=1.32)
相対合成標準不確かさ,uL,i×100,% 0.349 0.185 0.095 0.081 0.046
相対拡張不確かさ,UL,i(包含係数k=2),% 0.697 0.370 0.190 0.163 0.093
表A.6に示す対物ミクロメータのi番目の目盛における,くぼみ測定装置の相対偏差ΔLmax,iは,式(A.12)
によって求める。
Lmax,imax Lrel,i
UL,i (A.12)
ここに, max·ΔLrel,i· : 表A.4から,対物ミクロメータのi番目の目盛における,
相対偏差 攀 i,jの最大絶対値
表A.6−くぼみ測定装置の相対偏差の計算
目盛 対物ミクロメータ くぼみ測定装置の 測定の相対拡張 くぼみ測定装置の 6.4に規定する
番号 のi番目の目盛 相対偏差の 不確かさ 相対偏差 くぼみ測定装置の
i LRS,i 最大絶対値 UL,i 愀 i 測定結果の許容差
max Lrel,i
mm % % % %
1 0.05 0.20 0.70 0.90 1.6
2 0.10 0.20 0.37 0.57 1.0
3 0.20 0.05 0.19 0.24 1.0
4 0.30 0.10 0.16 0.26 1.0
5 0.40 0.07 0.09 0.17 1.0
この例の結果は,対物ミクロメータの各目盛区間においてくぼみ測定装置の偏差が,長さの参照標準の
――――― [JIS B 7725 pdf 14] ―――――
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測定の不確かさを含めて,6.4に規定する許容差に適合していることを意味している。
A.2.3 圧子の検証
圧子先端ダイヤモンド部とその固定部とからなる圧子は,現地で検証したり,個々に校正することはで
きない(6.3参照)。
A.2.4 試験動作の検証
試験力の負荷所要時間及び保持時間を測定する,測定器として通常の時計(ストップウォッチ)は,測
定の不確かさを±0.1秒とすることができる。したがって,測定の不確かさを評価する必要はない。
A.3 試験機の間接検証
硬さ基準片を用いた間接検証によって,硬さ試験機の総合的な性能を検査することができるだけでなく,
実際の硬さ値から試験機の偏差及び繰返し性が求められる。
注記 この附属書において“CRM (Certified Reference Material)”の表示は,硬さ試験規格の“硬さ基
準片”を意味する。
硬さ試験機の間接検証の測定不確かさは,式(A.13)によって求める。
2 2 2 2
uHTM uCRM uCRM-D uHCRM 2 ums (A.13)
ここに, uCRM : 校正証明書に基づく硬さ基準片の校正の標準不確かさ
uCRM-D : 経時変化による最終校正以降の硬さ基準片の硬さ変化(こ
の規格に適合した硬さ基準片を用いる場合は無視できる。)
uHCRM : CRMを測定するときの硬さ試験機の標準不確かさ
ums : 硬さ試験機の分解能による不確かさ
くぼみ測定装置の表示分解能と光学分解能とを考慮する。
多くの場合,uHTMの計算には,くぼみ測定装置全ての分解
能を二度入れるのがよい。これは,くぼみの両端部をそれ
ぞれ測定するためである。
0.00035
ums 0.000102 mm
23
例 表A.7に示す検証結果及び次の条件であるとして,
硬さ基準片の硬さ HCRM=400.0 HV 30
硬さ基準片の測定の不確かさ UCRM=5.0 HV 30(包含係数k=2)
硬さ試験機のくぼみ測定装置の分解能 δms=0.000 35 mm,式(A.14)によって求める。
2 2
ms OR IR (A.14)
ここに, δOR : くぼみ測定装置の光学分解能(δOR=0.000 34 mm)
δIR : くぼみ測定装置の表示分解能(δIR=0.000 1 mm)
硬さ試験機の間接検証の測定不確かさuHTMは,式(A.13)によって求め,表A.8に示す。
――――― [JIS B 7725 pdf 15] ―――――
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JIS B 7725:2020の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 6507-2:2018(MOD)
JIS B 7725:2020の国際規格 ICS 分類一覧
JIS B 7725:2020の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISB7728:2013
- 一軸試験機の検証に使用する力計の校正方法
- JISB7735:2010
- ビッカース硬さ試験―基準片の校正
- JISB7735:2020
- ビッカース硬さ試験―基準片の校正
- JISZ2244-1:2020
- ビッカース硬さ試験―第1部:試験方法
- JISZ8103:2019
- 計測用語