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件を考慮し,防食に適する範囲に設定する必要がある。電力事業用排熱回収ボイラの場合,給水pH 9.0
10.3を管理値としており,FACの発生を防止するため,pHの下限値を高めに設けている。
各pH調整剤濃度とpHとの関係は,図A.23のとおりである。薬剤の注入濃度は,電気伝導率で制
御し,濃度相当のpH値を管理目標として設定する。
11.0
10.5
5℃における)
10.0 pKb : 塩基解離定数
9.5 アンモニア
(pKb : 4.75)
9.0 2-アミノエタノール
(pKb : 4.59)
H(2
8.5
シクロヘキシルアミン
8.0 (pKb : 3.47)
p
7.5 モルホリン
(pKb : 5.68)
7.0
0.1 1 10 100 1000
濃度(mg/L)
図A.23−各pH調整剤濃度とpHとの関係(25 ℃における)
b) 酸電気伝導率 常用使用圧力10 MPaを超える水管ボイラでは,蒸気純度の確保又はスケール生成防
止のため,ボイラ水の全蒸発残留物をできるだけ低く抑える必要があり,この大部分が給水の電解質
成分に由来することから,給水中のpH調整剤の影響を除いた酸電気伝導率で管理する。
AVT(R)及びAVT(LO)では,0.05 mS/m以下とするが,AVT(O)では,溶存酸素の影響を考慮して,0.02
mS/m以下と厳しく管理する。
なお,測定については,水素イオン形の強酸性陽イオン交換樹脂層を通過後の電気伝導率を測定し,
給水中に存在する微量の電解質を指標とする。
c) 溶存酸素 溶存酸素の管理値は,系統を構成する材料の防食を目的として定める。溶存酸素による腐
食は,局部的に進行する孔食の形態で発生することが多く,また,給水の溶存酸素は,定常運転時に
おいて,給水の鉄·銅の溶出を高める原因となることから,できるだけ低く抑えて管理する。
AVT(R)の場合,常用使用圧力2 MPa以下の産業用水管ボイラは,脱気器を設置しないものは酸素を
“低く保つ”こととなるが,脱気器を設置する場合は,O: 500 μg/L以下とする。また,常用使用圧力
5 MPaを超える産業用水管ボイラ及び電力事業用循環ボイラ並びに電力事業用排熱回収ボイラでは,
脱気器性能に基づいてO: 7 μg/L以下とする。
AVT(LO)及びAVT(O)の場合,対象は常用使用圧力10 MPaを超える産業用水管ボイラ,電力事業用
循環ボイラ,及び電力事業用排熱回収ボイラとなるが,O: 7 μg/L以下を低酸化形,O: 7 μg/Lを超え20
μg/L以下を酸化形として,O: 7 μg/Lを境界に区分する。
d) 鉄·銅 給水の鉄·銅は,ボイラの伝熱面にその大部分がスケールとして付着し,伝熱抵抗となり,
熱効率の低下とともに,管壁温度を高めて高温腐食及び膨出噴破の原因となる。また,銅の蒸気に対
する溶解度は,蒸気の比体積の減少,すなわち,圧力の上昇とともに大きくなることから,ボイラに
もち込まれる銅は,蒸気に溶解してタービン側に移行し,スケール化する問題がある。特に,高圧に
なるほど,スケールの堆積による水壁管過熱の影響が強くなる。
このことから,管理値は高圧になるほど低くなっており,常用使用圧力15 MPaを超え20 MPa以下
――――― [JIS B 8223 pdf 66] ―――――
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の電力事業用循環ボイラ及び電力事業用排熱回収ボイラでは,Fe: 20 μg/L以下とする。また,AVT(O)
の場合は,鉄の濃度は酸素処理法と同等のレベルでの管理が必要である。
給水の鉄·銅は,復水·給水系統の機器又は配管から腐食によって溶出したものであり,鉄の溶出
は主として低いpH及び溶存酸素濃度が高い場合に,一方,銅の溶出は高いpH及び溶存酸素濃度が高
い場合に促進することから,鉄及び銅の管理値を維持するために,pH及び溶存酸素濃度を適正に管理
する。
e) ヒドラジン ヒドラジンは,AVT(R)の場合に,主として溶存酸素による腐食を抑制するために注入す
る。系統水中でのヒドラジンの挙動は,B.8に示すとおりで,ヒドラジンと溶存酸素との直接反応は
遅いが,復水·給水系統の酸化鉄及び酸化銅が触媒的な役割をするので,復水系統にヒドラジンを注
入すると,溶存酸素の除去の効果は十分に期待可能である。
管理値は,常用使用圧力5 MPa以下の産業用水管ボイラでは,溶存酸素の2倍となるように設定し,
常用使用圧力5 MPaを超えるボイラでは,溶存酸素がO: 7 μg/L以下と設定するため,N2H4: 10 μg/L以
上残留するように設定する。
f) 硬度 給水の硬度は,ボイラ伝熱面に硬度成分が起因するスケールを付着させ,また,スラッジ生成
の原因になる。硬度成分が給水に混入するのは,復水器などの冷却水の漏えい及び送気先の被加熱源
での回収復水への漏えい·汚染を除けば,イオン交換処理装置の不調などによる補給水の水質の低下
が主因である。
A.4.4.2 産業用水管ボイラ,電力事業用循環ボイラ及び電力事業用排熱回収ボイラのボイラ水
常用使用圧力5 MPaを超える産業用水管ボイラ,電力事業用循環ボイラ及び電力事業用排熱回収ボイラ
のボイラ水の場合,次のpH,酸電気伝導率,塩化物イオン及びシリカの4項目が管理項目である。
a) pH 産業用水管ボイラ及び電力事業用循環ボイラの場合,揮発性物質処理によるボイラ水のpHは,
給水経由でボイラに流入し,ボイラ水中に残留するアンモニウムイオンなどの揮発性塩基だけによっ
て保たれる。ボイラにもち込まれたアンモニアは,ボイラ水中の濃度と蒸気中の濃度とが同一でなく,
図A.24に示すように温度·圧力に基づく分配係数をもち,ボイラ水中の濃度が若干低い値となる[27]。
さらに,実機では,気液平衡に達する前にボイラ水が蒸気となるため,気液平衡時の分配係数よりも
低くなる傾向がある[28]。ただし,給水とボイラ水とのpHの差は,ボイラの運転条件などの影響を受
けて一定ではないので,ボイラ水のpHは,給水のpHとほぼ同じ値を目標にして管理することが望ま
しい。
――――― [JIS B 8223 pdf 67] ―――――
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図A.24−実機排熱回収ボイラにおけるアンモニアの気液分配[27][28]
電力事業用排熱回収ボイラの場合,各ドラムへ給水を行う個別給水方式に関しては,各ボイラ水及
び給水のpHは,低圧ボイラ(一般的に排熱回収ボイラの場合,常用使用圧力1 MPa以下)のpHが左
右する。A.3.4 a)で記載したように,低圧ボイラでの蒸気側へのアンモニア分配率が高く,ボイラ水の
pH維持が他の中圧ボイラ及び高圧ボイラよりも困難であるため,給水のpHは低圧ボイラのボイラ水
のpHが9.010.0となるように制御し,中圧ボイラ及び高圧ボイラのボイラ水のpHはそれに従って
変化する。一方,低圧ボイラから中圧ボイラ及び高圧ボイラに給水する低圧給水方式の場合,低圧ボ
イラよりも中圧ボイラのボイラ水のpH維持が困難である場合がある。給水のpHの管理値を設定す
る際は,実機でのアンモニアの物質移動速度を考慮する必要がある。排熱回収ボイラにおける気液分
配は,容量係数KLAを用いて,式(A.12)で表される[28]。実機排熱回収ボイラにおける容量係数KLA
の実績を,図A.25に示す。
CS
(A.12)
CL CS
1
KL A
ここで, CS : 蒸気アンモニア濃度[kg/m3(mg/L又はg/m3)]
CL : ドラム水アンモニア濃度[kg/m3(mg/L又はg/m3)]
VS : 蒸気流量[m3/s(m3/h)]
κ : 気液分配係数(−)
KLA : 容量係数[m3/s(m3/h)]
式(A.12)を用いて,各ドラム水の目標pHを維持することが可能である蒸気アンモニア濃度を求め,
これを達成するように給水のアンモニア濃度の管理値を設定する。
――――― [JIS B 8223 pdf 68] ―――――
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図A.25−実機排熱回収ボイラにおける容量係数[28]
b) 酸電気伝導率 揮発性物質処理では,ボイラ水中に溶解性蒸発残留物をほとんど含まないので,直接
の電気伝導率の測定値では判定が不十分である。ボイラ水中の腐食性成分(アニオン)の濃度を高精
度で測定するために,酸電気伝導率を指標として管理する。
管理値は,常用使用圧力10 MPa以下では6 mS/m以下,10 MPaを超える場合は2 mS/mとする。
c) 塩化物イオン ボイラ水の塩化物イオンは,ボイラ水の濃縮の程度を知るとともに,腐食を抑制する
目的で管理する項目である。また,塩化物イオンは,復水器冷却水の漏えいの有無及び漏えいの程度
を表す指標となる。復水器の冷却水として,一般に使用する海水の系統水への混入は,塩化物イオン,
硫酸イオンなどの腐食性成分を急激にもち込むため,pH低下による腐食促進,塩類によるスケールの
生成·堆積など,プラント各部に多大の障害をもたらす。
揮発性物質処理では,塩化物イオン混入の影響が他の処理と比較して大きいことから,より低く設
定しており,また,圧力が高いほど,より低く設定する。
d) シリカ A.2.4.2 g)を参照。
A.4.4.3 貫流ボイラの給水
貫流ボイラの給水では,次のpH,酸電気伝導率,溶存酸素,鉄,銅,ヒドラジン及びシリカの7項目が
管理項目である。
a) pH A.4.4.1 a)を参照。
b) 酸電気伝導率 貫流ボイラでは,給水の水質が障害の発生及び蒸気純度に直接的な影響を及ぼすので,
給水の全蒸発残留物,すなわち,その大部分である給水の電解質成分を可能な限り低く規制する必要
がある。
AVT(R)及びAVT(LO)では,0.03 mS/m以下とするが,AVT(O)では,溶存酸素の影響を考慮して0.02
mS/m以下とする。
なお,測定については,水素イオン形の強酸性陽イオン交換樹脂層を通過後の電気伝導率を測定し,
給水中に存在する微量の電解質を指標とする。
c) 溶存酸素 溶存酸素は,A.4.4.1 c)で記載したように,できるだけ低く抑えて管理する必要がある。
AVT(R)の場合,脱気器性能に基づいてO: 7 μg/L以下とし,AVT(LO)及びAVT(O)の場合,O: 7 μg/L
以下を低酸化形,O: 7 μg/Lを超え20 μg/L以下を酸化形として,O: 7 μg/Lを境界に区分する。
――――― [JIS B 8223 pdf 69] ―――――
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d) 鉄·銅 給水の鉄·銅は,A.4.4.1 d)で記載したように,ボイラの伝熱面に,その大部分がスケールと
して付着することによる高温腐食及び膨出噴破の原因となる。
特に,高圧になるほどスケールの堆積による水壁管過熱の影響が強くなるので,超臨界圧力条件で
は,亜臨界圧力条件と比べて,鉄は約50 %低い値とし,銅は約30 %低い値とする。
給水の鉄·銅は,復水·給水系統の機器又は配管から腐食によって溶出したものであり,鉄の溶出
は主として低いpH及び溶存酸素濃度が高い場合,一方,銅の溶出は高いpH及び溶存酸素濃度が高い
場合に促進することから,鉄及び銅の管理値を維持するためには,溶存酸素及びpHを適正に管理す
る。
e) ヒドラジン ヒドラジンは,A.4.4.1 e)で記載したように,主として溶存酸素による腐食を抑制するた
めに注入する。その管理値は,エコノマイザ入口の給水に残留するように設定する必要があり,給水
中の溶存酸素を,O: 7 μg/L以下と設定するためには,ヒドラジンをN2H4: 10 μg/L以上残留するように
設定する。
f) シリカ 水管ボイラでは,ボイラ水にシリカの濃度の上限を規定したが,貫流ボイラでは,セパレー
タがない場合に,給水の水質が蒸気純度に直接影響を与えるので,セパレータをもつボイラ及びもた
ないボイラについて,蒸気中のシリカがSiO2: 20 μg/L以下となる濃度を基に,それぞれ給水のシリカ
の濃度を規定する。
A.4.5 留意事項
一般的な留意事項は,次のとおりである。
a) 海水漏えい時の対応 水管ボイラ又は排熱回収ボイラのボイラ水が揮発性物質処理の場合,ボイラ水
pHは揮発性塩基だけによって維持するので,緩衝機能がなく,復水器における冷却水の漏れなどによ
ってボイラに硬度成分及びpHを低下させる成分が流入しても,ボイラ水中にはこれらの成分を無害
化できる薬剤が共存していないことになる。したがって,このような場合には,りん酸塩又は水酸化
ナトリウムを至急注入可能であるような態勢が必要であり,状況によっては運転停止が必要となる。
貫流ボイラにおいては,復水脱塩装置の活用,更には漏えい防止に対する措置,場合によってはボ
イラの運転停止による対処が必要となる。
b) pH調整剤としてのアミン類使用上の留意点 アミンは,復水器及びプレボイラ系統に銅系材を多く
使用する産業用ボイラで多用する。
アミンは,銅に対する腐食性が低く,また,臭気が弱く薬品補充作業などでも取扱いしやすいこと
から,復水器及びプレボイラ系統に銅系材を多く使用する産業用ボイラで多く用いられる。また,ア
ミンの分配比は1以下から10以上の種類があり,温度条件によって分配比が異なる。このため,給水
に添加することで給水のpHを制御可能であることに加えて,ボイラ水及び蒸気にその分配比に応じ
た濃度で分配されてボイラ水及び蒸気(復水)のpHを制御可能である。
一方,アミンはアンモニアに比較して解離度が大きいもの及び小さいものがあるが,分子量は大き
い。このため,水のpHを同じに調整するためには,図A.23に示すように添加濃度をアンモニア濃度
の数倍程度を必要とするものが多い。また,アンモニアは熱的に安定であるが,アミンは運転中のボ
イラ水又は過熱蒸気の温度条件下でその一部が熱分解するので,その温度条件での分解率,分解生成
物(アンモニア,二酸化炭素,有機酸などの有機物など)の種類·濃度及び水質への影響(pH·酸電
気伝導率)も考慮して使用する必要がある。
したがって,アミンを使用するに当たっては,目的の給水·蒸気復水のpHに対する添加濃度,分
配比,ボイラの常用使用圧力,飽和水温度,飽和蒸気温度,及び過熱蒸気温度による熱安定性を考慮
して使い分ける。また,アミンの種類による毒物及び劇物取締法,消防法(危険物),PRTR法などの
適用法規制,蒸気を噴霧する環境,加熱対象による蒸気中の濃度の制限などによっても使い分けする
――――― [JIS B 8223 pdf 70] ―――――
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JIS B 8223:2021の国際規格 ICS 分類一覧
- 27 : エネルギー及び熱伝達工学 > 27.060 : バーナ.ボイラ > 27.060.30 : ボイラ及び熱交換器
JIS B 8223:2021の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISB0126:2018
- 火力発電用語―ボイラ及び附属装置
- JISB0127:2012
- 火力発電用語―蒸気タービン及び附属装置並びに地熱発電設備
- JISB8224:2016
- ボイラの給水及びボイラ水―試験方法
- JISK0410-3-7:2000
- 水質―サンプリング―第7部:ボイラ施設の水及び蒸気のサンプリングの指針
- JISK0556:1995
- 超純水中の陰イオン試験方法