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8.2.1.2 水質に関する留意事項
給水の水質については,表9によるほか,次の事項について留意することが望ましい。
a) ボイラの水処理方式がアルカリ処理,低濃度水酸化ナトリウム処理,りん酸塩処理及び揮発性物質処
理時の給水処理
産業用水管ボイラの給水処理方式とボイラ水処理方式との組合せは,箇条5の表1を参照。
1) 給水のpH調節には,アンモニア,アミン(モルホリン,シクロヘキシルアミン,2-アミノエタノー
ル,2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール,3-メトキシプロピルアミン,2-ジエチルアミノエタノール
など)などの揮発性の塩基,又は水酸化ナトリウムなどの非揮発性の塩基を用いる。発生蒸気の用
途上,安全性及び純度を重視し,揮発性の脱酸素剤,アンモニア,アミンなどの使用に制限がある
場合は,非揮発性の塩基である水酸化ナトリウムなどを使用する。
なお,発電用ボイラでは,蒸気の過熱低減器スプレー水を給水系統から分岐するので,水酸化ナ
トリウムなどの非揮発性の塩基を蒸気過熱器又は蒸気タービンにスプレーすることによる障害が発
生しないように,注入位置を決める必要がある。また,給水のpH調節剤としてアミンを使用する
場合は,使用する温度·圧力域で分解率の低いアミンを選択するなどアミンの熱分解量を低く維持
する必要がある。
2) 給水の試料採取点は,給水のpHを調節する塩基の注入点より下流側が望ましいが,ボイラ水用処
理剤として非揮発性のりん酸塩,水酸化ナトリウムなどの塩基を給水に注入する場合には,りん酸
塩及び塩基による影響を避けるために,その注入点よりも上流側を選ぶ。
3) 銅材料を使用していない場合の給水pHの上限値は,流れ加速型腐食(FAC)の対策上,高めが望ま
しい。
なお,復水器が銅合金の場合の給水pHの上限を,電力事業用では9.6としているが,産業用で
は,補給水量が多いことによる空気のもち込み量が多いこと又は復水器のシール性の劣化による空
気の漏えいが抑えきれない場合もあり,復水器管が腐食する可能性があることから,9.4とする。一
方,1)に記載するように,発生蒸気の用途上,安全性及び純度を重視し,揮発性の脱酸素剤,アン
モニア,アミンなどの使用に制限があり,pH調節を行わない場合又は管理値の下限を下回る場合
は,給水系統を耐食材にするなどの防食対策を行うことが望ましい。
4) 常用使用圧力が10 MPaを超えるボイラでは,給水の酸電気伝導率を測定する。実際には,正常な
水質の状態の酸電気伝導率の値[通常0.02 mS/m0.03 mS/m(0.2 S/cm0.3 S/cm)(25 ℃におい
て)以下]を把握し,管理値の範囲内における変動においても,その変動の要因となる復水器の冷
却水の微量の漏えい,補給水の水質悪化などの有無を確認して,薬品注入,ブローによる水質の改
善など的確な処置を行うことが望ましい。
5) 常用使用圧力2 MPaを超えるボイラに対しては,経験的に,また,現在の脱気器の性能保証値など
に基づいて,圧力区分ごとに給水中の溶存酸素の上限濃度を設定して管理することが望ましい。
6) ヒドラジンは,注入点以降の系統の腐食を抑制するために,給水が空気と接触しない系統のなるべ
く上流側に,脱気器があればその上流側に注入することが望ましい。脱気器で溶存酸素の大部分を
除去する常用使用圧力1 MPaを超える産業用水管ボイラの給水のヒドラジンの濃度は,脱気後の溶
存酸素の濃度の1.5倍よりも大きくなるようにするのが望ましい。また,常用使用圧力が5 MPa以
下の産業用水管ボイラの給水の脱気器での脱気後の溶存酸素の濃度がO: 7 g/Lを超える場合には,
給水のヒドラジン濃度はその2倍よりも大きくなるようにその下限値を管理することが望ましい。
一般に,給水中のヒドラジンの濃度は,ボイラ入口(エコノマイザがある場合は,エコノマイザ入
口)の給水に必要な下限値であり,ヒドラジンの注入量は,この下限値を維持するように調節する
必要がある。給水のヒドラジン濃度は上限値を設定していないが,ヒドラジンの注入量が過剰にな
――――― [JIS B 8223 pdf 21] ―――――
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B 8223 : 2021
ると,ボイラ内でヒドラジンが熱分解して生じるアンモニアの量が増加し,蒸気へのアンモニアの
溶解量が増加し,復水器の復水のpHが上昇する原因になる。そのため,銅合金を使用している復
水器の場合には,給水のpHと銅濃度とを監視しながら,ヒドラジンの注入量を調節しなければな
らない。
7) ヒドラジンに代わる脱酸素剤を使用する場合,脱気器出口での溶存酸素濃度及び/又は脱酸素剤の
残留濃度によって管理する。ただし,脱酸素剤の種類によって,残留濃度の管理値は異なることに
注意する。詳細は,B.8を参照。
8) 鉄については,常用使用圧力が7.5 MPaを超え15 MPa以下の揮発性物質処理(還元形)[AVT(R)]
及び揮発性物質処理(低酸化形)[AVT(LO)]の場合には,Fe: 20 g/L以下に保つことが望ましい。
9) 常用使用圧力が3 MPa以下のボイラでは,給水中の銅の濃度を規定しないが,低く維持することが
望ましい。目安としては,常用使用圧力が3 MPaを超え5 MPa以下のボイラに準じて,Cu: 50 g/L
以下とすることが望ましい。
10) 常用使用圧力が10 MPaを超えるボイラでは,Cu: 5 g/L以下とすることが望ましい。
b) 酸素処理
1) 産業用水管ボイラでは,酸素が十分に供給されないドレン系統の鉄抑制対策として,必要に応じて
pHを9.4以上とすることが望ましい。
2) 溶存酸素による腐食抑制効果を保持するため,酸電気伝導率は,管理値0.02 mS/m以下に対し,0.01
mS/m以下とすることが望ましい。
3) 保護皮膜を形成して定常運転が継続した場合は,溶存酸素の濃度が低めの値でも保護皮膜を保持可
能であることから,管理値の範囲内で給水の鉄,銅などの濃度が最小になるのに適した溶存酸素の
値を設定することが望ましい。
4) 各系統の鉄の濃度は酸化鉄の溶解度の減少に伴い低下するため,給水の鉄の濃度は従来の水処理に
比べ抑制可能であると考え,実際の管理としては,鉄の濃度をFe: 2 g/L以下に保つことが望まし
い。
5) 酸素処理を適用する設備では,酸素及びアンモニアによる腐食·破孔事故の発生を避けるために,
復水器細管及び給水加熱器加熱管に銅合金を使用しないことが望ましい。
8.2.2 ボイラ水の水質
8.2.2.1 水質の管理項目及び管理値
イオン交換水を使用する産業用水管ボイラの通常運転時におけるボイラ水の水質は,アルカリ処理,低
濃度水酸化ナトリウム処理,りん酸塩処理,揮発性物質処理及び酸素処理の処理方式,並びに常用使用圧
力によって区分し,表10によるほか,次による。
a) 常用使用圧力が15 MPaを超える場合は,電力事業用循環ボイラの当該圧力区分の水質を適用する。
b) 船用主ボイラに用いる場合には,表10の該当する圧力区分の同一水処理方式を用いた場合の水質を
適用する。
c) 船用主ボイラの補給水として,造水器で生成した蒸留水を使用する場合は,表10の水質を適用する。
なお,常用使用圧力が10 MPaを超えるボイラ用の補給水としては,蒸留水をポリシャー(純水装置)で
処理することが望ましい。
――――― [JIS B 8223 pdf 22] ―――――
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B8
5
表10−産業用水管ボイラのボイラ水の水質(イオン交換水を使用する場合)の管理項目及び管理値
22
区 常用使用圧力 MPa 2以下 2を超え3以下 3を超え5以下
3 : 2
分 補給水の種類 イオン交換水
02
処理方式 アルカリ処理 りん酸塩処理 アルカリ処理 りん酸塩処理 アルカリ処理 低濃度水酸化 りん酸塩処理
1
ナトリウム処理
還元剤 −
酸化還元性 −
ボ pH(25 ℃における) 10.511.5 9.810.8 10.011.0 9.410.5 9.610.8 9.410.0 9.410.5
イ 酸消費量(pH 8.3)CaCO3: mg/L 200以下 100以下 120以下 80以下 − − −
ラ
水 電気伝導率(25 ℃における)
mS/m 150以下 120以下 100以下 80以下 80以下 3以下 60以下
(μS/cm) (1 500以下) (1 200以下) (1 000以下) (800以下) (800以下) (30以下) (600以下)
酸電気伝導率(25 ℃における)
mS/m − − − − − 6以下 −
(μS/cm) (−) (−) (−) (−) (−) (60以下) (−)
塩化物イオン Cl: mg/L 150以下 150以下 100以下 100以下 80以下 2以下 80以下
りん酸イオンa) PO4: mg/L 1030 1030 515 515 515 −g) 515
ナトリウム Na: mg/L − − − − − 2.8以下 −
亜硫酸イオンb) SO3: mg/L 10以上 10以上 5以上 5以上 5以上 −e) 5以上
ヒドラジンc) N2H4: mg/L 0.1以上k) 0.1以上k) − − − − −
シリカd) SiO2: mg/L 50以下 50以下 50以下 50以下 20以下 20以下 20以下
――――― [JIS B 8223 pdf 23] ―――――
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表10−産業用水管ボイラのボイラ水の水質(イオン交換水を使用する場合)の管理項目及び管理値(続き)
区 常用使用圧力 MPa 5を超え7.5以下 7.5を超え10以下
分 補給水の種類 イオン交換水
処理方式 アルカリ処理 低濃度水酸化 りん酸塩処理 揮発性物質処理 低濃度水酸化 りん酸塩処理 揮発性物質処理
ナトリウム処理 ナトリウム処理
還元剤 − あり − あり
酸化還元性 − 還元形 − 還元形
[AVT(R)] [AVT(R)]
ボ pH(25 ℃における) 9.610.5 9.410.0 9.210.2 8.510.0 9.410.0 9.010.0 8.510.0
イ 酸消費量(pH 8.3) CaCO3: − − − − − − −
ラ
水 mg/L
電気伝導率(25 ℃における)
mS/m 50以下 3以下 40以下 − 3以下 15以下 −
(μS/cm) (500以下) (30以下) (400以下) (−) (30以下) (150以下) (−)
酸電気伝導率(25 ℃における)
mS/m − 6以下 − 6以下 6以下 − 6以下
(μS/cm) (−) (60以下) (−) (60以下) (60以下) (−) (60以下)
塩化物イオン Cl: mg/L 50以下 2以下f) 50以下 2以下 2以下f) 10以下 2以下
りん酸イオンa) PO4: mg/L 310 −g) 10以下h) −h) −g) 6以下 −h)
ナトリウム Na: mg/L − 2.8以下 − − 2.8以下 − −
亜硫酸イオンb) SO3: mg/L − − − − − − −
ヒドラジンc) N2H4: mg/L − − − − − − −
シリカd) SiO2: mg/L 3以下 3以下 3以下 3以下 1以下 1以下 1以下
B8 223 : 2021
5
――――― [JIS B 8223 pdf 24] ―――――
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B8
5
表10−産業用水管ボイラのボイラ水の水質(イオン交換水を使用する場合)の管理項目及び管理値(続き)
22
区 常用使用圧力 MPa 10を超え15以下
3 : 2
分 補給水の種類 イオン交換水
0
酸素処理i)
2
処理方式 低濃度水酸化 りん酸塩処理 揮発性物質処理
1
ナトリウム処理
還元剤 − あり なし なし
酸化還元性 − 還元形 低酸化形 酸化形 酸化形(OT)
[AVT(R)] [AVT(LO)] [AVT(O)]
ボ pH(25 ℃における) 9.19.5 8.59.8 8.510.0 8.510.0 8.510.0 8.010.0 i)
イ 酸消費量(pH 8.3) CaCO3: mg/L − − − − − −
ラ
水 電気伝導率(25 ℃における) mS/m 1以下 6以下 − − − −
(μS/cm) (10以下) (60以下) (−) (−) (−) (−)
酸電気伝導率(25 ℃における) mS/m 2以下 − 2以下 2以下 0.3以下 0.3以下
(μS/cm) (20以下) (−) (20以下) (20以下) (3以下) (3以下)
塩化物イオン Cl: mg/L 1以下f) 2以下 1以下 1以下 0.1以下 0.05以下j)
りん酸イオンa) PO4: mg/L −g) 3以下 −h) −h) −h) −
ナトリウム Na: mg/L 0.9以下 − − − − −
亜硫酸イオンb) SO3: mg/L − − − − − −
ヒドラジンc) N2H4: mg/L − − − − − −
シリカd) SiO2: mg/L 0.3以下 0.3以下 0.3以下 0.3以下 0.3以下 0.3以下
注a) りん酸塩を添加する場合に適用する。
注b) 亜硫酸塩を添加する場合に適用する。
注c) ヒドラジンを添加する場合に適用する。
注d) ボイラ水中のシリカの濃度と蒸気中のシリカの濃度との関係から,蒸気中のシリカの濃度がSiO2: 0.02 mg/L以下になるように,ボイラ水中のシ
リカの濃度を低く保つ。
注e) 低濃度水酸化ナトリウム処理では,ボイラ水中の腐食性陰イオンの管理が重要であるため,硫酸イオンの発生源の一つとなる亜硫酸塩は脱酸素
剤として使用しない。
注f) 塩化物イオンは,揮発性物質処理(還元形)[AVT(R)]と同一の値に設定した。
注g) 低濃度水酸化ナトリウム処理では,りん酸塩を使用しないので,りん酸イオンの濃度は規定しない。
注h) 復水器からの海水の漏れなどによってカルシウム,マグネシウム及びpHを低下させる成分の混入量に対応する応急処理に必要なりん酸塩又は
水酸化ナトリウムを添加する。
注i) ボイラ水の溶存酸素は低い濃度になる。pHを調節する場合には,揮発性物質(アンモニア又は揮発性のアミン)を用いる。
注j) JIS K 0556の5.(塩化物イオン)及びその注(6)によって試験する。
注k) 過剰の添加はアンモニア生成による給水及び復水のpH上昇につながるため,銅管又は銅合金管が使用される場合0.5 mg/L以下とする。
――――― [JIS B 8223 pdf 25] ―――――
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JIS B 8223:2021の国際規格 ICS 分類一覧
- 27 : エネルギー及び熱伝達工学 > 27.060 : バーナ.ボイラ > 27.060.30 : ボイラ及び熱交換器
JIS B 8223:2021の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISB0126:2018
- 火力発電用語―ボイラ及び附属装置
- JISB0127:2012
- 火力発電用語―蒸気タービン及び附属装置並びに地熱発電設備
- JISB8224:2016
- ボイラの給水及びボイラ水―試験方法
- JISK0410-3-7:2000
- 水質―サンプリング―第7部:ボイラ施設の水及び蒸気のサンプリングの指針
- JISK0556:1995
- 超純水中の陰イオン試験方法