JIS B 8223:2021 ボイラの給水,ボイラ水及び蒸気の質 | ページ 6

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8.2.2.2 水質に関する留意事項
ボイラ水の水質については,表10によるほか,次の事項について留意することが望ましい。
a) 共通事項
1) ボイラの運転圧力が高いほど伝熱面でのボイラ水の濃縮が著しくなることから,各圧力区分ごとに
pHの範囲を遵守する。
2) ボイラ水中のシリカの濃度と蒸気中のシリカの濃度との関係から,蒸気中のシリカの濃度がSiO2:
0.02 mg/L以下になるように,ボイラ水中のシリカの濃度を低く保つことが望ましい。
b) アルカリ処理及びりん酸塩処理
酸消費量はボイラ水のpHを間接的に管理するとともに,シリカによるスケール付着を防止する目
的で管理するが,次の点を考慮して上限を超えないように管理することが望ましい。
− 常用使用圧力3 MPa以下のボイラで補給水にイオン交換水を用いる場合は,ボイラ水の酸消費量は,
主として水質調整剤に由来するので,容易に低い値に維持される。
− 常用使用圧力3 MPaを超えるボイラでは,補給水がイオン交換水又はこれと同等以上の水質の水を
使用し,ボイラ水のシリカの濃度を低く調節するので,ボイラ水のpHを管理すれば酸消費量を直
接管理しなくてもよいため,管理項目から除外する。

9 電力事業用ボイラにおけるボイラ形式及び水処理方式

  電力事業用ボイラにおけるボイラ形式及び一般的な水処理方式は,表11による。
表11−電力事業用ボイラにおけるボイラ形式及び一般的な水処理方式
ボイラ形式 補給水 給水処理方式 ボイラ水処理方式
(汽力発電方式) イオン交換水 揮発性物質処理b) りん酸塩処理
電力事業用循環ボイラa) (酸素処理)c) 揮発性物質処理b)
(酸素処理,低濃度水酸化ナ
トリウム処理)c)
(コンバインド発電方式) 揮発性物質処理b) りん酸塩処理
電力事業用排熱回収ボイラ 揮発性物質処理b)
(低濃度水酸化ナトリウム処
理)c)
(汽力発電方式) 揮発性物質処理b)
電力事業用貫流ボイラ 酸素処理
注a) 常用使用圧力が15 MPa以下の場合は,給水及びボイラ水は,それぞれ表9及び表10の産業用
水管ボイラ(イオン交換水を使用する場合)の当該圧力区分の水質を適用する。
注b) 揮発性物質処理には,還元形[AVT(R): All-volatile Treatment (Reducing)],低酸化形[AVT(LO):
All-volatile Treatment (Low Oxidizing),酸化形[AVT(O): All-volatile Treatment (Oxidizing)]の3
種類がある。
注c) ( )内の水処理は,国内プラントにおいて使用実績がないため,十分な試運転を経た後適用
する必要がある。

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10 電力事業用循環ボイラの水質

10.1 給水の水質

10.1.1 水質の管理項目及び管理値
電力事業用循環ボイラの通常運転時における給水の水質は,常用使用圧力によって区分し,表12によ
る。
常用使用圧力が15 MPa以下の場合は,産業用水管ボイラの給水の水質(イオン交換水を使用する場合)
の当該圧力区分の水質を適当する。
表12−電力事業用循環ボイラの給水の水質の管理項目及び管理値
区 常用使用圧力 MPa 15を超え20以下
分 補給水の種類 イオン交換水
処理方式 揮発性物質処理 酸素処理
還元剤 あり なし なし
酸化還元性 還元形 低酸化形 酸化形 酸化形
[AVT(R)] [AVT(LO)] [AVT(O)] (OT)
給 pH(25 ℃における) 8.510.3 a) b) 8.510.3 a) b) 8.510.3 a) b) 8.010.3 b)
水 酸電気伝導率
(25 ℃における) mS/m 0.05以下 0.05以下 0.02以下 0.02以下
(μS/cm) (0.5以下) (0.5以下) (0.2以下) (0.2以下)
溶存酸素 O: μg/L 7以下c) 7以下c) 7を超え 20を超え
20以下 50以下
鉄 Fe: μg/L 20以下 20以下 10以下 5以下
銅 Cu: μg/L 5以下 5以下 5以下 5以下
ヒドラジン N2H4: μg/L 10以上d) − − −
注a) 全鉄系ユニットの場合はpHの下限を9.3以上に調節し管理することが望ましい。
注b) 低圧給水加熱器の管材が銅合金製の場合はpHの上限を9.5以下に,高圧給水加熱器が銅合金製
の場合にはpHの上限を9.0以下に,復水器が銅合金製の場合はpHの上限を9.6以下に調節し管
理することが望ましい
注c) 脱気器性能に基づき7 μg/L以下を定める。
注d) ヒドラジンは当量の溶存酸素と反応することから,給水中の溶存酸素が完全消費されるようにボ
イラ(節炭器)入口で残留ヒドラジン10 μg/L以上として管理する。脱気後の溶存酸素の濃度が
O: 7 μg/Lを超える場合には,更にゆう(尤)度を設け,給水のヒドラジン濃度はその2倍よりも
大きくなるようにその下限値を管理することが望ましい。
10.1.2 水質に関する留意事項
電力事業用循環ボイラの給水の水質については,次の事項について留意することが望ましい。
a) 揮発性物質処理(還元形)[AVT(R)]及び揮発性物質処理(低酸化形)[AVT(LO)]
1) 給水pHは,FAC対策上,高めに保持するのが望ましい。
2) ボイラにもち込む鉄は,極力低減することが望ましいことから,Fe: 10 μg/L以下に保つことが望ま
しい。
3) AVT(R)の場合,ヒドラジンの濃度は,ボイラ入口(エコノマイザがある場合は,エコノマイザ入口)
の給水に必要な下限値であり,ヒドラジンの注入量は,この下限値を維持するように調節するのが
望ましい。ただし,近年,復水器の性能向上によって,通常運転時のヒドラジンの注入を停止して
も,脱気器入口の溶存酸素の濃度を1 μg/L以下に保持できるプラントもあり,ヒドラジンの濃度の

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低減化が可能である。
4) AVT(R)の場合,ヒドラジンを注入することによって,確実に給水が還元性の環境になることから,
溶存酸素濃度の管理値は,脱気器性能の保証値であるO: 7 μg/L以下とする。
5) 還元剤(ヒドラジン)の注入を停止することによって,蒸気の過熱低減器スプレー水のノズルが頻
繁に閉塞する場合があるので,そのような場合は,AVT(R)に戻すことが望ましい。
6) AVT(LO)の処理方法を用いた循環ボイラでの導入実績は,国内ではないことから,導入に当たって
は,全系統の鉄濃度を監視することが望ましい。
b) 揮発性物質処理(酸化形)[AVT(O)]
1) 給水pHは,防食対策上,高めに保持するのが望ましい。
2) 還元剤(ヒドラジン)の注入を停止することによって,蒸気の過熱低減器スプレー水のノズルが頻
繁に閉塞する場合があるので,そのような場合は,AVT(R)に戻すことが望ましい。
3) AVT(O)の処理方法を用いた循環ボイラでの導入実績は,国内ではないことから,導入に当たっては,
全系統の鉄濃度を監視することが望ましい。
4) 銅材料を使用するプラントにおいてAVT(O)を採用する場合,銅の溶出に特に注意する。表12に規
定する銅の管理値が守れない場合,又は銅材料使用箇所の点検時などに腐食などの不具合が認めら
れた場合には,AVT(R)又はAVT(LO)に変更することが望ましい。
c) 酸素処理 常用使用圧力が10 MPaを超える電力事業用循環ボイラでは,復水脱塩装置の設置によっ
て高純度の水質を確保することで酸素処理の導入も可能であるが,国内の電力事業用循環ボイラには
導入実績はない。酸素処理を導入する場合には,以下の点に留意する。
1) 酸素が十分供給されないドレン系統で鉄の溶出が多いプラントでは,給水pH管理下限値を引き上
げることが望ましく,pHを9.4程度に上昇させるプラントもある。ただし,復水脱塩装置の再生頻
度が増加するとともに,系統に銅合金が使用されているプラントでは,高pH域におけるアンモニ
アによる腐食が発生するので注意する。その他に,抽気系へのアンモニア注入,ステンレス鋼の採
用などを考える。復水脱塩装置の再生頻度に関してはアンモニア形(NH4-OH形)運用を採用し,
収量を増加させることで低減させることができ,実際に一部のプラントでも運用されているが,ア
ンモニウムイオンよりも樹脂選択性の低いナトリウムイオンのリークに注意する必要がある。再生
剤である水酸化ナトリウム由来のナトリウムイオンリークについては,酸電気伝導率では陽イオン
交換樹脂によって,ナトリウムイオンが水素イオンに置換され,これが当量の水酸化物イオンと反
応し,水(H2O)を生成することで,これらのイオンによる電気伝導率は消滅するため監視ができな
いことから,ナトリウムの計測を実施し,リーク状況を確認することが望ましい。
2) 酸電気伝導率は,ボイラの鋼材表面に形成される酸化鉄の皮膜が,水中の塩化物イオンなどの陰イ
オンの増加によって破壊されるので,それらの総量に相当する電気伝導率よりも低い0.01 mS/m以
下であることが望ましい。
3) 保護皮膜を形成して定常運転が継続した場合は,溶存酸素が低めの値でも保護皮膜を保持可能であ
るので,管理値の範囲内で給水の鉄,銅などの濃度が最小になるのに適した溶存酸素の値を設定す
ることが望ましい。
4) 各系統の鉄の濃度は,酸化鉄の溶解度の減少に伴い低下するため,給水の鉄の濃度は,従来の水処
理に比べ抑制可能であることから,実際の管理としては鉄濃度をFe: 2 μg/L以下に保つことが望ま
しい。

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10.2 ボイラ水の水質

10.2.1 水質の管理項目及び管理値
電力事業用循環ボイラの通常運転時におけるボイラ水の水質は,常用使用圧力によって区分し,表13に
よる。
常用使用圧力が15 MPa以下の場合は,産業用水管ボイラのボイラ水の水質(イオン交換水を使用する
場合)の当該圧力区分の水質を適用する。
表13−電力事業用循環ボイラのボイラ水の水質の管理項目及び管理値
区 常用使用圧力 MPa 15を超え20以下
分 補給水の種類 イオン交換水
処理方式 りん酸塩 揮発性物質処理 酸素処理 低濃度水酸化
還元剤 処理 あり なし ナトリウム
酸化還元性 還元形 低酸化形 酸化形 酸化形 処理a)
[AVT(R)][AVT(LO)] [AVT(O)] (OT)
ボ pH(25 ℃における) 8.59.8 8.510.0 8.510.0 8.510.0 8.010.0 b) 9.19.5
イ 電気伝導率

水 (25 ℃における) mS/m 6以下 − − − − 1以下
(60以下)
(μS/cm) (−) (−) (−) (−) (10以下)
酸電気伝導率
(25 ℃における) mS/m − 2以下 2以下 0.3以下 0.3以下 2以下
(μS/cm) (−) (20以下) (20以下) (3以下) (3以下) (20以下)
ナトリウム Na: mg/L − − − − − 0.9以下
塩化物イオン Cl: mg/L 2以下 1以下 1以下 0.1以下 0.05以下c) 1以下
d) d)
りん酸イオン PO4: mg/L 3以下 − − −
シリカ SiO2: mg/L 0.2以下 0.2以下 0.2以下 0.2以下 0.2以下 0.2以下
注a) 低濃度水酸化ナトリウム処理を適用するボイラの常用使用圧力区分は,16.5 MPa以下とする。
注b) pHを調節する場合には,揮発性物質(アンモニア又は揮発性のアミン)を用いる。
注c) JIS K 0556の5.(塩化物イオン)及びその注(6)によって試験する。
注d) 復水器からの海水の漏れなどによってカルシウム,マグネシウム及びpHを低下させる成分が混入した場
合には,カルシウム,マグネシウム及びpHを低下させる成分の混入量に対応する応急処理に必要なりん酸
塩又は水酸化ナトリウムを添加する。
10.2.2 水質に関する留意事項
電力事業用循環ボイラのボイラ水の水質については,次の事項について留意することが望ましい。
a) 共通事項 ボイラ水中のシリカの濃度と蒸気中のシリカの濃度との関係から,蒸気中のシリカの濃度
がSiO2: 0.02 mg/L以下になるように,ボイラ水中のシリカの濃度を低く保つことが望ましい。
b) 揮発性物質処理(還元形)[AVT(R)]及び揮発性物質処理(低酸化形)[AVT(LO)] ボイラ水のpHは,
防食対策上高めに保持することが望ましい。また,揮発性物質処理によるボイラ水のpHは,ボイラ
水中に残留するアンモニウムイオンなどの揮発性塩基だけで保たれる。このため,アンモニアが蒸気
側に揮発するとボイラのpHは低下するが,給水とボイラ水とのpHの差は,ボイラの運転条件その他
の影響を受けて一定ではないので,ボイラ水のpHは,給水のpHと同じ範囲を目標にして管理するこ
とが望ましい。
c) 揮発性物質処理(酸化形)[AVT(O)] ボイラ水のpHは,防食対策上,高めに保持することが望まし
い。

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d) 酸素処理 酸電気伝導率は,ボイラの鋼材表面に形成される酸化鉄の皮膜が,水中の塩化物イオンな
どの陰イオンの増加によって破壊されるので,それらの総量に相当する電気伝導率もより低い0.01
mS/m以下であることが望ましい。

11 電力事業用排熱回収ボイラの水質

11.1 一般

  複数圧のドラムから構成されている一般的な電力事業用排熱回収ボイラの水質について規定する。高圧
系にドラムを設置しないなど,貫流ボイラの要素を含んだ電力事業用排熱回収ボイラの場合は,当該要素
の部位にだけ表16の貫流ボイラの水質を適用する。

11.2 給水の水質

11.2.1 水質の管理項目及び管理値
電力事業用排熱回収ボイラは,補給水にイオン交換水を用い,同一の給水を複数圧のドラムに供給する。
電力事業用排熱回収ボイラの通常運転時における給水の水質は,表14によるものとし,構成される複数圧
のドラムのうち,最も高い常用使用圧力の区分を用いて管理する。
11.2.2 水質に関する留意事項
電力事業用排熱回収ボイラの給水の水質については,次の事項について留意することが望ましい。
a) 揮発性物質処理(還元形)[AVT(R)]
1) ボイラ水に揮発性物質処理を適用する場合,給水pHは,ボイラ水のpHを保持可能である値とし,
かつ,銅材料を使用していない場合の給水pHは,FAC対策上高めに保持することが望ましい。
2) ヒドラジンの濃度は,ボイラ入口(エコノマイザがある場合は,エコノマイザ入口)の給水に必要
な下限値であり,ヒドラジンの注入量は,この下限値を維持するように調節することが望ましい。
ただし,近年,復水器の性能向上によって,通常運転時のヒドラジンの注入を停止しても,脱気器
入口の溶存酸素の濃度をO: 1 μg/L以下に保持できるプラントもあり,ヒドラジンの濃度の低減化
が可能である。
3) ヒドラジンを注入することによって,確実に給水が還元性の環境になることから,溶存酸素濃度の
管理値は,脱気器性能の保証値であるO: 7 μg/L以下とする。
4) 常用使用圧力15 MPa以下の場合の鉄濃度は,Fe: 20 μg/L以下,15 MPaを超える場合の鉄濃度は,
Fe: 10 μg/L以下に管理することが望ましい。
b) 揮発性物質処理(低酸化形)[AVT(LO)]
1) 銅材料を使用していない場合の給水pHは,FAC対策上高めに保持することが望ましい。
2) 常用使用圧力15 MPa以下の場合の鉄濃度は,Fe: 20 μg/L以下,15 MPaを超える場合の鉄濃度は,
Fe: 10 μg/L以下に管理することが望ましい。
3) 還元剤(ヒドラジン)の注入を停止することによって,蒸気の過熱低減器スプレー水のノズルが頻
繁に閉塞する場合があるので,そのような場合はAVT(R)に戻すことが望ましい。
c) 揮発性物質処理(酸化形)[AVT(O)]
1) 給水pHは,防食対策上高めに保持することが望ましい。
2) 還元剤(ヒドラジン)の注入を停止することによって,蒸気の過熱低減器スプレー水のノズルが頻

――――― [JIS B 8223 pdf 30] ―――――

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