JIS B 8223:2021 ボイラの給水,ボイラ水及び蒸気の質 | ページ 9

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13 蒸気の質

13.1 蒸気の質の管理項目及び管理値

  蒸気の質は,通気する蒸気タービンの方式,及びボイラ水の処理方式によって区分し,表17による。
なお,ここで規定する対象の蒸気は,イオン交換水を給水とするボイラで発生し,タービンに通気され
る蒸気とする。
表17−ボイラから発生する蒸気の質の管理項目及び管理値
区 蒸気タービンの方式 復水式 背圧式
分 ボイラ水の処理方式 アルカリ処理 りん酸塩処理 揮発性物質処理 揮発性物質処理 −
低濃度水酸化 還元形 酸化形
ナトリウム処理 [AVT(R)] [AVT(O)]
低酸化形 酸素処理
[AVT(LO)] (OT]
蒸 酸電気伝導率 −
気 (25 ℃における) mS/m 0.02以下 0.03以下 0.03以下 0.02以下
(μS/cm) (0.2以下) (0.3以下) (0.3以下) (0.2以下)
シリカ SiO2: μg/L 20以下 20以下 20以下 20以下 20以下
ナトリウム Na: μg/L 5以下 − − − −

13.2 蒸気の質に関する留意事項

  蒸気の質については,次の事項に留意する。
a) 蒸気の質に影響を及ぼす因子 蒸気中の不純物で蒸気の質に影響を及ぼすのは,溶解性塩類,シリカ,
鉄,銅などである。蒸気へのこれらの不純物の混入原因は,ボイラで発生するキャリオーバ,又は,
不純物を含む給水がスプレー水として過熱低減器へ供給される場合である。その結果,タービンへの
不純物蓄積(スケーリング)による効率低下及び乾湿交番域の腐食が発生する可能性がある。タービ
ンへの影響度合いは,蒸気中に移行した不純物の蒸気への溶解度などの物性の相違によって異なる。
不純物蓄積は,開放点検までの運転時間,起動停止頻度などプラント運用に影響を受ける。ボイラで
の不純物の移行は,運転条件の急激な変動などによって促進される場合が多い。給水の不純物として
は,純水装置又は復水脱塩装置のイオン交換樹脂再生剤によるイオン交換樹脂の逆再生によって,イ
オン交換樹脂からナトリウムイオン,硫酸イオン,及び塩化物イオンのリークが発生し,蒸気中にも
ち込まれる場合がある。
b) 評価方法 蒸気の質の評価は,蒸気サンプルを冷却して生成した凝縮水を分析することで行う。蒸気
のサンプリング方法は,JIS B 8224及びJIS K 0410-3-7による。
c) 管理項目
1) 酸電気伝導率 国内外の運転実績から,補給水率が低く,かつ,諸外国に比べて酸電気伝導率及び
電気伝導率が低い電力事業用プラントにおいては,蒸気の酸電気伝導率は0.02 mS/m以下で運用可
能であることが知られていることから,不純物の混入を最小限に抑制する観点からはボイラ水の水
処理によらず,0.02 mS/m以下に保つことが望ましい。
酸電気伝導率が管理値を超えて上昇した場合は,二酸化炭素の影響,塩化物イオン,硫酸イオン
などの腐食性イオンの混入の可能性がある。酸電気伝導率に及ぼす二酸化炭素の影響,及び脱ガス
酸電気伝導率については,B.4を参照。塩化物イオン,硫酸イオンなどの腐食性イオンについては,
イオンクロマトグラフ法などによって定量し,腐食性イオンが混入している場合には,速やかに原
因を調査する。

――――― [JIS B 8223 pdf 41] ―――――

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2) シリカ 欧米での運転実績·研究の成果から,蒸気タービンへのシリカスケールの付着をほぼ完全
に抑制するには,SiO2: 10 μg/L以下で運用するのがよいとの知見がある。また,国内外の運転実績
として諸外国に比べて補給水率が低く,かつ,シリカ濃度が低い電力事業用プラントにおいては,
SiO2: 10 μg/L以下での運用を達成しており,シリカスケールの付着を最小限に抑制する観点からは,
SiO2: 10 μg/L以下に保つことが望ましい。
3) ナトリウム ボイラ水の処理にりん酸塩処理,揮発性物質処理,及び酸素処理を適用しているユニ
ットについては,経験的に強塩基性のナトリウム塩の濃縮に起因する不適合の事例は少なく,蒸気
中のナトリウム濃度とタービンの腐食との因果関係が明確でないことから管理値は設けていない。
なお,経済的運転を達成しているユニットの実績を踏まえると,ナトリウム塩のタービンへの付着
を極力低減する観点で,ボイラ水の水処理方法によらず,蒸気中のナトリウム濃度はできるだけ低
い値に保つことが望ましい。

14 試験

  ボイラの給水及びボイラ水の水質試験方法は,JIS B 8224及びJIS K 0556による。ボイラの給水及びボ
イラ水の水質を連続的に監視する場合には,自動計測器を用いるのがよい。
注記 自動計測器には,pH自動計測器,電気伝導率自動計測器,溶存酸素自動計測器,シリカ自動計測
器,ヒドラジン自動計測器などがある。

――――― [JIS B 8223 pdf 42] ―――――

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附属書A
(参考)
ボイラ水の水処理方式
A.1 一般
ボイラ水の処理は,ボイラ内での腐食,スケールの生成,キャリオーバなどの障害を防止するために行
う。ボイラには,それぞれの使用目的に応じて,丸ボイラ,特殊循環ボイラ,産業用水管ボイラ,排熱回
収ボイラ及び貫流ボイラがあり,構造,温度及び圧力条件が大きく異なっている。このため,それぞれの
ボイラの使用目的,構造,温度及び圧力条件に応じた水処理方式を採用する。この附属書では,アルカリ
処理,りん酸塩処理,揮発性物質処理,酸素処理及び低濃度水酸化ナトリウム処理について記載する。
A.2 アルカリ処理
A.2.1 適用ボイラ
次のボイラ及び常用使用圧力のボイラ水に適用する。
a) 丸ボイラ 常用使用圧力 : 3 MPa以下
b) 特殊循環ボイラ 常用使用圧力 : 3 MPa以下
c) 産業用水管ボイラ 常用使用圧力 : 7.5 MPa以下
A.2.2 処理方法
アルカリ処理は,水酸化ナトリウムなどのアルカリ成分によってボイラ水のpHを調整し,各種のりん
酸塩及びヒドラジン又は非ヒドラジン系脱酸素剤,及びこれらの複合添加によってボイラ水の水質を調整
する水処理方式である。
この方式は,アルカリ腐食の発生の懸念が少ない温度であること,圧力の低い条件(常用使用圧力7.5
MPa以下)であること,補給水水質及び水質調整剤の種類に制約が少ないことなどのため,低圧ボイラに
広く適用実績がある。
A.2.3 処理の原理
A.2.3.1 軟化水を使用する場合の原理
常用使用圧力2 MPa以下のボイラには,補給水に軟化水を用いるものが多い。
補給水に軟化水を用いる場合は,水質調整剤として水酸化ナトリウム又は熱分解して水酸化ナトリウム
を生じる薬剤を注入しないときでも,軟化水のアルカリ成分(炭酸水素塩及び炭酸塩)が次の反応式のよ
うに熱分解して水酸化ナトリウムを生じるので,結果的にアルカリ処理になる。
2NaHCO3 → Na2CO3+CO2+H2O (A.1)
Na2CO3+H2O → 2NaOH+CO2 (A.2)
ただし,軟化水のアルカリ成分が熱分解して生じた水酸化ナトリウムの量が,ボイラ水のpH及び酸消
費量を規定の量にまで増加させるのに足りない場合には,更に水質調整剤として水酸化ナトリウム,水酸

――――― [JIS B 8223 pdf 43] ―――――

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化カリウム,炭酸ナトリウムなどを加えて調節する。
なお,カルシウムを主体とするスケール付着を防止するための水質調整剤として,従来,りん酸塩を使
用してきたが,排水が富栄養化など水質汚濁の要因の一つとなるため,最近はその使用が避けられ,常用
使用圧力が2 MPa以下のボイラでは,その代替として水溶性の合成高分子ポリマーなどを多く使用してい
る。
A.2.3.2 イオン交換水を使用する場合の原理
補給水にイオン交換水を用いる場合は,pH調整剤として水酸化ナトリウム,各種のりん酸塩,及びヒド
ラジン又は非ヒドラジン系脱酸素剤,並びにこれらの複合添加によってボイラ水の水質を調節する。
りん酸塩を使用する場合は,Na/PO4モル比は3.0を上回るように,水酸化ナトリウムをりん酸イオンに
対して過剰となるように添加する。
なお,従来は,りん酸塩はカルシウムを主体とするスケール付着を防止するための水質調整剤として,
軟化水を使用する場合と同様に使用してきたが,排水が富栄養化など水質汚濁の要因の一つとなるので,
最近はその使用を避け,常用使用圧力が5 MPa以下のボイラでは,りん酸の代替として水溶性の合成高分
子ポリマーなどを多く使用している。
A.2.4 管理項目
A.2.4.1 軟化水を使用する場合
軟化水を使用する場合のボイラ水の水質の管理項目は,次のとおりである。
a) pH ボイラ水のpHは,腐食の抑制及びスケールの付着防止を目的として管理する項目である。
pHは,ボイラ水のアルカリ成分(NaOH,Na2CO3,NaHCO3,Na3PO4及びNa2HPO4)の濃度を表す
指標となる。
ボイラ水のアルカリ成分は,給水がもち込むカルシウム,マグネシウム及びシリカと反応して,カ
ルシウム及びマグネシウムは懸濁状のりん酸塩[水酸化トリス(りん酸)五カルシウム,Ca5(OH)(PO4)3]
及び水酸化物[水酸化マグネシウム,Mg(OH)2]を生成させ,シリカはメタけい酸イオン(SiO32−)と
して溶存されるので,スケール化を防止することが可能である。また,ボイラ水のマグネシウム(Mg2+)
は,pH 11以上では硬質のスケールであるけい酸マグネシウム(MgSiO3)を生成するよりも,主とし
て水酸化物イオン(OH−)と反応して懸濁状(又は浮遊状)の水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]とな
り,ボイラの底部に堆積するか,又はブローでボイラ外に排出することによって伝熱面上でのスケー
ル化を防止することが可能である。
なお,常用使用圧力1 MPaを超え2 MPa以下のボイラ水のpHの範囲は,図A.1に示すボイラ水の
pHと酸消費量(pH 8.3)との関係(実態調査結果)を基に規定した[1]。

――――― [JIS B 8223 pdf 44] ―――――

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図A.1−ボイラ水のpHと酸消費量(pH 8.3)との関係[1]
b) 酸消費量 ボイラ水の酸消費量は,ボイラ水のpHを間接的に管理するとともに,シリカ(SiO2)によ
るスケール付着を防止する目的で管理する項目である。
原水又は軟化水を給水とするボイラでは,硬度成分及びシリカによるスケール化を防止するために
は,ボイラ水のりん酸イオンの濃度を十分高めに保持し,かつ,pHを11以上で管理する必要がある。
原水又は軟化水を給水とするボイラ水に含まれる溶解性蒸発残留物のうち,酸消費量の成分は,通
常,水酸化ナトリウム,炭酸ナトリウム,りん酸ナトリウム,けい酸ナトリウムなどの物質である。
これらは,原水の塩類が軟化によってナトリウム塩となったものと,清缶剤の添加に起因するものと
がある。ボイラ水の酸消費量(pH 8.3)及び酸消費量(pH 4.8)の範囲及び上限を,図A.2に示す[1]。
ボイラ水のシリカ濃度に対応するpHと酸消費量(pH 8.3)との関係を,図A.3に示す[1]。
軟化水を給水とするボイラでは,イオン交換水を給水とするボイラに比べて,ボイラ水のシリカの
濃度が高くなり,そのためシリカスケールが問題となる場合が多い。しかし,管理値では,シリカの
濃度を規定しないが,シリカのスケールを防止するには,カルシウムを共存させないようにするとと
もに,シリカ濃度をボイラ水の酸消費量(pH 8.3)に1/1.7を乗じた値以下になるように,ブロー量を
調節して管理するとよい。

――――― [JIS B 8223 pdf 45] ―――――

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