JIS B 8829:2018 クレーン―鋼構造部分の性能照査 | ページ 3

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4.3 代替方法

  性能照査は,計算を補うために追加した実験又は計算と同等の実験によって行ってもよい。実験中の荷
重の大きさ及び分布は,適切な限界状態に対する設計荷重及び荷重の組合せと一致する限り,使用しても
よい。
この規格の原則に従うならば,高度で認知されている理論的又は実験的方法を代わりに用いてもよい。

4.4 構造部材の材料

  次の規格に従う鋼材を使用することが望ましい。
− JIS G 3106
− JIS G 3128
− ISO 4951-1
− ISO 4951-2
− ISO 4951-3
− ISO 6930-1
これらの規格以外の鋼材を使用する場合は,構造部材の引張強さ(fu)及び降伏点(fy)が判明していな
ければならない。その機械的性質及び化学成分はJIS G 0404に基づき明示しなければならない。
さらに,次の条件を満たさなければならない。
− 構造部材の降伏点(fy)の値は,fu / fy<1.05の材料では,fu /1.05を限度とする。ここに,fuは構造部材
の引張強さである。
− 破断伸びは,7 %以上である。ただし,ゲージ長さ(L0)は,L0=5.65×3S0(S0は初期断面積)と
する。
− 材料の溶接性又は非溶接性(溶接のしにくさ)が特定されていなければならない。溶接を行う場合は,
溶接性を立証しなければならない。
− 材料を冷間成形する場合は,その影響を示す適切なパラメータが明示されていなければならない。
照査の計算において,板厚の公称値を使用するためには,JISに示す鋼材などの寸法許容差のマイナス
許容値を適用する。異なる場合は,実際の板厚の最小値を使用する。
引張部材に使用する鋼材の等級を確認する際は,衝撃じん性パラメータ(qi)の合計値を考慮する。表2
に様々な影響に対する衝撃じん性パラメータ(qi)を示す。求められたΣqiに対応して要求される衝撃エネ
ルギー及び要求試験温度は表3による。これらの結果は,JIS Z 2242に基づき試験を実施した鋼材製造者
によって明示されなければならない。

――――― [JIS B 8829 pdf 11] ―――――

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表2−衝撃じん性パラメータ(qi)
i 影響因子 qi
1 作業環境の温度T(℃) 0≦T 0
−10≦T<0 1
−20≦T<−10 2
−30≦T<−20 3
−40≦T<−30 4
−50≦T<−40 6
2 構造部材の降伏点fy(MPa) fy≦300 0
300 460 700 1 000 3 材料の厚さ,又は中実棒材の等価厚さt(mm) t<10 0
10 20 40 60 80 d b<1.8の場合 : b 100 t t
8.1 h 8.1 125 4 特性疲労強度Δσc(MPa) Δσc>125 0
(附属書D参照) 80<Δσc≦125 1
56<Δσc≦80 2
40<Δσc≦56 3
30<Δσc≦40 4
Δσc≦30 5
5 静的強度の利用 σSd>0.75 fRdσ 0
(5.3.1参照) 0.5 fRdσ<σSd −1
及び
σSd≦0.75・fRdσ
0.25 fRdσ<σSd −2
及び
σSd≦0.5・fRdσ
σSd≦0.25・fRdσ −3
注記 1 MPa=1 N/mm2
表3−Σqiに対する衝撃じん性の要求値
項目 Σqi≦5 6≦Σqi≦8 9≦Σqi≦11 12≦Σqi≦14
衝撃エネルギー/ 27J /+20 ℃ 27J / 0 ℃ 27J /−20 ℃ 27J /−40 ℃
要求試験温度

4.5 ボルト接合部

4.5.1 ボルト材料

  ボルト接合部については,JIS B 1051で規定する強度区分(ボルト等級)4.6,5.6,8.8,10.9又は12.9
のボルトを使用する。強度の公称値は表4による。

――――― [JIS B 8829 pdf 12] ―――――

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表4−強度区分(ボルト等級)
項目 強度区分(ボルト等級)
4.6 5.6 8.8 10.9 12.9
ボルト材料の降伏点(fyb)(MPa) 240 300 640 900 1 080
ボルト材料の引張強さ(fub)(MPa)400 500 800 1 000 1 200
注記 1 MPa=1 N/mm2
必要に応じて,設計者はボルト提供者に,強度区分(ボルト等級)10.9及び12.9において水素ぜい性の
防止に関する要求事項を遵守していることを明示するのがよい。技術的要求事項は,JIS B 1044,JIS B 1045
及びISO 9587による。

4.5.2 一般

  ボルト接合部は,ボルトを用いて部材と部材,又は部材と構成部品とを接合した部分では,次の事項を
適用する。
− ボルトは,滑り,振動,反転荷重又は変動によって形状に有害な変形を引き起こす可能性のある部分,
並びに摩擦接合のための接触面に,有効な圧縮力が作用するように十分締め付ける。
− 一般的には,ボルト接合部はレンチで締め付けてもよい。
− 接合表面部は,面がお互いに回転しないようにしなければならない(例えば,複数ボルトを使用する
など)。

4.5.3 支圧接合部

  支圧接合部とは,荷重がボルト軸に垂直に作用し,ボルトにはせん断応力及び支圧応力が,接合される
部品には支圧応力が発生する接合方式であり,次の事項を適用する。
− ボルトが,反転荷重又は滑りによって形状に有害な変化を引き起こす部分では,ボルトと穴との隙間
は,JIS B 0401-2の公差h13若しくはH11,又はより狭くする。
− その他による場合には,JIS B 1001によってより広い隙間を用いてもよい。
− 支圧計算においてはボルト軸部のねじのない部分だけを考慮する。
− 接合面に特別な表面処理は必要ない。

4.5.4 摩擦接合部

  摩擦接合部は,荷重が継手面間の摩擦で伝達される接合部であり,次の事項を適用する。
− 表4の8.8,10.9又は12.9の高力ボルトを使用する。
− ボルトは,締付け力を制御できる方法によって締め付けなければならない。
− 接触面の表面状態を特定し,これを考慮する。
− 摩擦接合部に使用するボルト径に対し,穴径の精度はあまり考慮しなくてもよい。

4.5.5 引張接合部(ボルト軸方向に引張り荷重を受ける接合部)

  引張接合部は,荷重がボルト軸方向に作用し,ボルトに軸応力が発生する接合部であり,次の事項を適
用する。
− 引張接合継手には表4の8.8,10.9又は12.9の高力ボルトを用い,目標とする締付け力を制御できる
方法で締め付ける。
− 継手形状によっては,てこ作用によってボルト張力が増加することを考慮する。
− ボルトの疲労評価では,継手の構造的特徴,例えば,接合部分の剛性及びてこの作用の影響によるボ
ルト張力の変化を考慮する。

――――― [JIS B 8829 pdf 13] ―――――

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注記 締付けによる軸力をあらかじめかけない引張ボルトは,構造部材として扱われる。

4.6 ピン接合部

  ピン接合部は,丸ピンによって接合し,部品間の回転を許容する接合部である。
この規格は,荷重を伝達するように設計されたピン接合部にだけ適用する。単に部材の連結だけを目的
とする接合部には適用しない。
ピンと穴との隙間は,JIS B 0401-2の公差h13若しくはH11,又はより狭くする。荷重方向が変化する
場合は,より狭い公差を用いる。
全てのピンは,抜け防止のための手段を備えなければならない。
荷重が掛かった状態で回転を許容する場合,抜け防止手段はピンの軸方向変位を制限するものに限る。
接合部の剛性を考慮し,局所的な面外変形を防止する。

4.7 溶接接合部

  溶接接合部は,溶融溶接施工によって,接合部分の厚さが3 mm以上の部材,又は部品を接合した継手
である。
溶接接合部に関する用語は,ISO 17659による。
溶接接合部は,ISO 5817に規定する品質水準による。適切な非破壊試験によって,品質水準が要求を満
足することを確認する。
一般に,静的性能照査が必要な接合部には,ISO 5817の品質水準Cによる。
ISO 5817の品質水準Dは,溶接の局所的損傷が構造部分の破損又はつり荷の落下を生じない継手にだけ
適用できる。
溶接線に沿った応力分布は一様ではないが,多くの場合,有効溶接長が溶接のど厚の150倍を超えない
ため一様とみなしてよい。ただし,他の応力分布を仮定した場合に,その応力分布が力のつり合い及び連
続性を満足し,実際の継手の変形特性と矛盾しない場合は,その応力分布を使用してもよい。
静的荷重を受ける溶接の設計では,残留応力及び力の伝達に関係しない応力は,考慮する必要がない。
これは,溶接線に平行な垂直応力が該当する。
突合せ溶接の引張試験を実施する場合は,溶接補強(余盛,裏当金など)を除去しなくてもよい。

4.8 構造部材及び接合部の性能照査

  性能照査の目的は,設計応力又は設計力(Sd)が設計限界強度(Rd)を超えないことを示すためである。
S≦
d Rd (1)
設計応力又は設計力(Sd)は設計応力(σSd),接合の種類に応じた要素の設計力(FSd)であり,JIS B 8833-1
JIS B 8833-5の該当する規定に従って,適切な荷重,荷重の組合せ及び部分荷重係数を適用して決定す
る。
設計限界強度(Rd)は,箇条5の設計限界応力(fRd)又は設計限界力(FRd)によって表す。
構造部材及び接合部に対して,次の照査を行う。
− 箇条5に従う静的強度の照査
− 箇条6に従う疲労強度の照査
− 箇条7に従う弾性安定性の照査

5 静的強度の照査

5.1 一般

  計算による静的強度の照査は,材料の降伏に起因する過度の変形,摩擦接合部の滑り,弾性不安定(箇

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条7参照)並びに構造部材及び接合部の破壊を防止することを目的とする。JIS B 8833-1JIS B 8833-5の
該当する規定から求められる動的影響係数(φi)は,静的荷重に動的効果を考慮した,静的等価荷重を求
めるために使用する。
この規格は,極限耐荷重の計算に塑性理論は使用しない。
照査は,構造部材及び接合部に対して,JIS B 8833-1JIS B 8833-5の該当する荷重組合せA,B又はC
において最も不利な影響を考慮した設計応力(σSd)及び接合の種類に応じた要素の設計力(FSd)と,それ
らを,5.2で求められる設計限界応力(fRd)又は設計限界力(FRd)とを比較して行う。
この規格は,古典的な材料力学などで計算される公称応力だけを考慮し,局部応力集中の効果などは考
慮していない。このため,有限要素解析のような応力計算法によって得られた応力を,この規格の照査に
直接使用すると,過度に安全側の評価となることがある。

5.2 設計限界応力及び設計限界力

5.2.1 一般

  設計限界応力(fRd)は,式(2)で計算する。
fRd f fk ,R (2)
設計限界力(FRd)は,式(3)で計算する。
FRd f Fk R (3)
ここに, fk : 材料の特性値(又は公称値),[応力の次元(単位)で表記
した材料の強さを表す特性値]
Fk : 材料の特性値(又は公称値),[力の次元(単位)で表記し
た材料の強さを表す特性値]
γR : 合成抵抗係数 γR=γm・γs
γm : 一般抵抗係数 γm=1.1
γs : 特定抵抗係数
Rと等価である。
設計限界応力(fRd)及び設計限界力(FRd)は,JIS B 8833-1の図A.1の
m
γsm : 部材の特定抵抗係数(5.2.2参照)
γsb : ボルト接合部の特定抵抗係数(5.2.3.1.2及び5.2.3.1.3参照)
γst : ボルト接合部(引張)の特定抵抗係数(5.2.3.1.4参照)
γss : ボルト接合部(摩擦抵抗)の特定抵抗係数(5.2.3.2参照)
注記 これらの係数は,JIS B 8833-1JIS B 8833-5の該当部分からの置換え値である。

5.2.2 構造部材における設計限界応力

  構造部材の設計に使用される設計限界応力(fRd)は,式(4)及び式(5)で計算する。
垂直応力について,
fyk
fRd (4)
Rm
せん断応力について,
fyk
fRd (5)
Rm 3
Rm m sm
ここに, fRd : 設計限界応力(MPa)
fyk : 材料降伏点の最小値(MPa)
γRm : 材料に対する合成抵抗係数(γRm=γm×γsm)

――――― [JIS B 8829 pdf 15] ―――――

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JIS B 8829:2018の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 20332:2016(MOD)

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