JIS B 8833-1:2008 クレーン―荷重及び荷重の組合せに関する設計原則―第1部:一般 | ページ 2

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6 荷重及び適用係数

  この規格群は,荷重の影響を決定する場合の性能照査の計算に用いる荷重,及び適用係数の値の範囲を
示す。クレーンの特定の形式に対する個別の値は,この規格群における第2部第5部の規定による。つ
り上げ装置に作用する荷重は,定常,非定常,特殊及びその他の種類に分類され,次による。
a) 通常操作中に発生する定常荷重は,降伏,座屈などの弾性不安定及び必要に応じて疲労に対する性能
照査の計算を行わなければならない。これらの荷重は重力及びつり上げ装置,並びにつり荷の質量に
作用する駆動又は制動による加減速,装置の変位に起因する。
b) 非定常荷重及びその影響は,その頻度が小さいことから,通常は疲労評価を無視することができる。
これらの荷重には,稼動中の風,雪及び氷,温度並びにスキュー(蛇行)による荷重が含まれる。
c) 特殊荷重及びその影響は,その頻度が同様に小さいことから疲労の検討から除外される。これらの荷
重には,緊急停止,駆動部品の損傷及びクレーンの基礎からの外部振動とともに,試験,停止中の風,
緩衝器との衝突荷重及びティルティング(傾動)による荷重が含まれる。
d) その他の荷重には,通路及び作業床上の荷重とともに,組立及び分解に伴うものが含まれる。
荷重の分類は,その荷重の重要性又は決定性を示唆するものではない。例えば,組立分解による荷重は,
d) に分類されるが,事故のかなりの割合がこの作業中に発生することから,特別な注意を払わなければな
らない。

6.1 定常荷重

6.1.1  つり上げ装置(クレーン)の質量に作用する巻上げ及び重力の影響
装置の質量には,操作中に常設当該装置の構成部分が含まれるが,取扱い荷重にかかわる質量は除外さ
れる(6.1.2参照)。ある種の装置,又は適用にあたっては装置にたい積物,例えば,石炭などの粉じん(塵)
を質量として加えることが必要な場合もある。
装置の質量に重力が作用したときの荷重には,φ1を乗じる(φ1=1±α,0≦α≦0.1)。この過程では,
総荷重を地切りするときの,つり上げ装置の構造にかかる振動的影響を考慮する。φ1には,振動パルスの
上限及び下限に対応する二つの値がある。φ1は,装置の構造及び支持部分の設計に使用しなければならな
いが,ある場合には,構造部分における応力的に最も大きく,又は不利な負荷条件を決めるために,上限
及び下限の両方の値を用いなければならない。
φに関する一般的な説明を,附属書Cに示す。
6.1.2 総荷重によって垂直に作用する慣性及び重力の影響
総荷重には,取扱い荷重にかかわる質量並びにつり具及び巻上ロープの質量を含む。
6.1.2.1 巻上等級
つり上げ装置の負荷率及び使用頻度に基づき,当該装置に割り当てるHC1HC4までの巻上等級を示す。
装置の巻上等級については,表2から経験に基づき選択する。 戀 びφ2のそれぞれの値は,表2及び図1
に示す。
注記 巻上等級は,つり上げ装置の種類によって選定されることから,具体的にはこの規格群の他の
部において取り扱われる。同様に,φ2の値は,巻上等級とは関係なく,実験又は解析によって
決めることができる。

――――― [JIS B 8833-1 pdf 6] ―――――

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表2− 2
打 びφ2の値
装置の巻上等級 戀 φ2
φ2 min φ2 max
HC1 0.2 1 1.3
HC2 0.4 1.05 1.6
HC3 0.6 1.1 1.9
HC4 0.8 1.15 2.2
F : 荷を地切りする場合の総荷重によって作用する垂直力
m : 総荷重にかかわる質量
g : 重力加速度
図1−係数φ2
6.1.2.2 地面に拘束されていない荷の地切り
地面に拘束されていない荷を地切りする場合,総荷重に係数φ2を乗じることによって,荷重が地面から
装置に移ることによる動的影響を考慮しなければならない(図1参照)。
注記 動的影響は,つり具が荷を拘束する前に駆動機構が所定の速度に達したときに発生する。それ
は運動エネルギーと駆動トルクとに起因する結果である。
係数φ2は,定常巻上速度vhに依存し,次の式によって求める。
φ2=φ2 min+戀 vh−0.2) (vh>0.2 m/s)
ここに, vh : 定常巻上速度 (m/s)
戀 φ2 min : 巻上等級に応じて割り当てられる係数(表2参照)
注記 vhは,固定つり具だけの場合のモータ又はエンジンの無負荷における一様な回転速度である。
定常低速巻上げが可能な制御方式がある場合には,この速度をφ2の値を決定する対象とする。
定常低速巻上げが可能な制御方式がない場合には,次の二つの条件を考慮しなければならない。すなわ
ち,通常運転にかかわるφ2の値 (6.1.2.2.1) 及び例外的な場合のφ2 max (6.1.2.2.2) である。
6.1.2.2.1 通常運転の場合
通常運転の場合のφ2の値は,次による。
a) クレーン運転者が定常低速を選定することができる場合には,この速度をφ2の値を決定するのに用い
なければならない。
b) 無段階可変速機能をもち,運転者が無段階可変速運転を行うことができる場合には,図1から適切な
巻上等級に対するφ2 minを選択しなければならない。

――――― [JIS B 8833-1 pdf 7] ―――――

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6.1.2.2.2 例外的な場合
6.1.2.2.1 a) の制御方式がある場合には,無負荷のモータ又はエンジンの最大公称速度から導かれるvh
の値に基づいてφ2 maxを求めなければならない。
6.1.2.2.1 b) の制御方式がある場合には,無負荷のモータ又はエンジンの最大公称速度の0.5倍以上の速
度から導かれるvhの値に基づいてφ2 maxを求めなければならない。
附属書Cに,係数φの適用に関する一般的な説明を示す。
6.1.2.3 取扱い荷重の急激な解放の影響
グラブバケット又はリフティングマグネット作業のように取扱い荷重を解放し,若しくは落下させる場
合においては,動的影響の最大値は,取扱い荷重にφ3を乗じることによって算出することができる(図2
参照)。
係数φ3は,次の式によって求める。
φ3=1−(1+戀 一
ここに, Δm : 取扱い荷重にかかわる質量のうち,解放又は落下部分
m : 取扱い荷重にかかわる質量
戀 グラブバケット又は類似の緩解放装置の場合=0.5
リフティングマグネット又は類似の急激解放装置の場合=1
附属書Cに,係数φの適用に関する一般的な説明を示す。
図2−係数φ3
6.1.3 平たんでない場所の走行による荷重
6.1.3.1 道路上などの走行
つり荷をつった状態又は無負荷での走行による影響は,装置の姿勢(質量分布),装置の弾性又はサスペ
ンション,走行速度及び走行面の性状と状態とに依存する。動的影響は,経験,実験又は適切なモデルの
計算によって求める。
6.1.3.2 軌条などの走行
つり荷をつった状態又は無負荷での軌条上の走行による影響は,装置の姿勢(質量分布),装置の弾性又
はサスペンション,走行速度及び車輪径に依存する。動的影響は,経験,実験又は適切なモデルの計算に
よって求める。

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発生する加速度の影響は,装置の質量による荷重及び荷重にφ4を乗じることによって求めることができ
る。
附属書Cに,係数φの適用に関する一般的な説明を示す。
附属書Dに,軌条の継手部での鉛直方向の車輪に対する加速度を考慮して,係数φ4を見積もるための
モデルの例を示す。
6.1.4 クレーンの各駆動(巻上駆動を含む)の加速による荷重
クレーンの駆動装置による加速力又は減速力によって生じる荷重は,クレーンの駆動装置の幾何学的配
置,質量分布及び該当する場合には,内部効率による損失を反映した剛体の力学モデルを用いて計算する
ことができる。この場合,つり荷はジブの先端又はクラブトロリのすぐ下に固定されていると見なす。
剛体力学解析では,弾性体の影響を直接反映していない。このため,加速及び減速の駆動力の変化(ΔF)
に係数φ5を乗じ,それを加速又は減速が行われる前の荷重に加算する。
係数を乗じた駆動力は,駆動力が影響する部材に作用する。また,必要によっては,装置及び総荷重に
作用する。(図3を参照)。
係数φ5の値は1≦φ5≦2である。使用される値は,駆動力又は制動力の変動及びクレーンの質量分布と
弾性的特性によって異なる。一般的に,低い値は力の変化が緩やかなクレーンに該当し,高い値は急激な
変化の発生するクレーンに該当する。
遠心力については,係数φ5の値を1とすることができる。
伝達力が,摩擦機構又は駆動装置にリミッターなどによって限界がある場合,限界値及びその機構に適
した係数φ5を用いる。
附属書Cに,係数φの適用に関する一般的な説明を示す。
附属書Eに,非同期の走行装置を備え,非対称に荷重がかかる天井走行クレーン及び橋形クレーンの荷
重の計算例を示す。
図3−係数φ5
6.1.5 変位によって生じる荷重
プレストレスを負荷した場合は,スキュー(蛇行)を必要な限度内に抑えるための荷重,その他の変位
を補正する制御システムなどの変位によって発生する荷重を考慮しなければならない。

――――― [JIS B 8833-1 pdf 9] ―――――

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軌条のスパンの変動及び基礎の不等沈下などに関しては,許容限度内の変位に対する荷重を考慮しなけ
ればならない。

6.2 非定常荷重

6.2.1  気象条件
6.2.1.1 稼動中の風
稼動中の風による荷重の計算は,JIS B 8830による。
6.2.1.2 雪及び氷による荷重
該当する場合には,雪及び氷による荷重を考慮する。また,雪及び氷による風の受圧面積の増加も考慮
しなければならない。
6.2.1.3 温度変化による荷重
局部的な温度変化による部材の膨張,又は収縮による荷重を考慮しなければならない。
6.2.2 スキュー(蛇行)による荷重
この細分箇条では,案内装置(例えば,ガイドローラ又は車輪のフランジを備えたクレーン)が定常状
態の動作で,走行又は横行するときに生じるスキューによる荷重を取り扱う。これらの荷重は,車輪が自
由に回転せず,自然な方向に走行しないことによって生じる案内装置の反力によって生じる。同様に非対
称的な質量分布に加速力が働く場合,スキューの原因になるが,この荷重については,6.1.4で考慮する。
前記に定義したスキューによる荷重は,通常,非定常荷重と見なすが,その発生頻度はクレーンの形式,
形状及び使用方法によって変わる。個々の場合については,発生頻度に基づいて非定常荷重とするか定常
荷重とするかを決める必要がある。スキューによる荷重の大きさを決めるための指針及びそれらの分類は,
この規格群の他の部において規定する。
附属書Fには,一定速度で走行するクレーンを剛体構造としてスキューによる力を解析する方法の一例
を示す。作用するスキューによる力に対して剛体でない構造をもつクレーンの場合,又は特別な走行ガイ
ド制御装置を備えたクレーンの場合には,システム特性を考慮した適切なモデルを使用しなければならな
い。

6.3 特殊荷重

6.3.1  休止中の風
休止時の風の条件を検討する場合には,クレーンにつり下げられているつり具などの質量ηmに重力が
作用したときの荷重も考慮に入れなければならない。
ηm=m−Δm
ここに, m−Δm : クレーンにつり下げられているつり具などの質量(クレー
ンにつり下げられた状態で残されている総荷重にかかわ
る質量の一部)
m : 総荷重にかかわる質量(クレーンから直接つり下げられた
質量で,取扱い荷重,着脱式つり具,固定式つり具及びつ
り上げ機構にかかわる質量の合計)
風荷重の計算は,JIS B 8830による。
6.3.2 試験荷重
荷重試験の荷重は,定格荷重の1.25倍とする。
前記の値より大きな静的又は動的な試験荷重が要求される場合には,これらの試験条件に対する能力計
算が必要となる。このような場合は,動的試験荷重に係数φ6を乗じなければならない。

――――― [JIS B 8833-1 pdf 10] ―――――

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JIS B 8833-1:2008の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 8686-1:1989(MOD)

JIS B 8833-1:2008の国際規格 ICS 分類一覧

JIS B 8833-1:2008の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISB0146-1:2017
クレーン―用語―第1部:一般
JISB8830:2001
クレーン―風荷重の評価