JIS B 8833-1:2008 クレーン―荷重及び荷重の組合せに関する設計原則―第1部:一般 | ページ 3

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係数φ6は,次の式で求める。
φ6=0.5 (1+φ2)
この式のφ2は,6.1.2によって計算する。
附属書Cに,係数φの適用に関する一般的な説明を示す。
6.3.3 緩衝器への衝突荷重
複数の緩衝器が用いられる場合,クレーンが緩衝器に衝突するときにクレーン構造物に生じる力は,す
べての関連部材が定格速度の0.71.0倍の速度で動くときの運動エネルギーによって計算する。ただし,
作動の減速について,特別に配慮された信頼性のある自動制御システムがある場合,又は緩衝器があって
も影響を制限する方策がとられている場合には,定格速度の0.7倍より小さな値を採用することができる。
この計算は,剛体モデルによって行うことができる。クレーンと緩衝器との実際の挙動を考慮しなけれ
ばならない。
クレーン又はその一部の回転が拘束されている場合,例えば,軌条によってガイドされる場合は複数の
緩衝器の変形は等しいと仮定してよい。この場合は,緩衝器の特性が同じであれば,緩衝器への衝突荷重
も等しくなる。この例を,図4 a) に示す。
クレーン又はその一部の回転が拘束されていない場合は,関連する質量の分布と緩衝器の特性とを考慮
に入れて,緩衝器への衝突荷重を計算しなければならない。この例を,図4 b) に示す。
剛体の解析では計算できない弾性体の影響を反映するために,緩衝器への衝突荷重には水平方向の慣性
力を含めて,係数φ7を乗じる。線形特性をもつ緩衝器,例えば,ばねの場合には係数φ7を1.25とし,長
方形の特性をもつ緩衝器,例えば,油圧式一定力の緩衝器の場合には,係数φ7を1.6とする。これ以外の
特性をもつ緩衝器の場合は,計算するか又は試験によって立証されたその他の値を用いる(注記2及び図
5を参照)。
注記1 緩衝器への衝突荷重を計算する場合,水平方向に拘束されていない自由に振れるつり下げ荷
重は計算に含めなくてよい。
注記2 係数φ7の中間値は,次のように計算することができる。
φ7=1.25 0≦ξ≦0.5の場合
0.5<ξ≦1の場合
φ7=1.25+0.7 (ξ−0.5)
ここに, ξ : 相対緩衝エネルギー(図5参照)
6.3.4 ティルティング(傾動)による荷重
水平方向に拘束された荷をつるクレーンが,クレーン本体,つり荷又はつり具が障害物に衝突し傾動す
る可能性があるときは,その結果として生じる静的な荷重を計算しなければならない。
傾動したクレーンが,制御されなくても正常位置に戻ることができる場合,その結果生じる支持構造物
への衝撃を考慮に入れなければならない。
6.3.5 非常停止による荷重
非常停止による荷重は,非常停止したときの最も条件の悪い運転状態,すなわち,加速と負荷とが最も
不利となる組合せを6.1.4に従って決定する。
係数φ5の値は,1.5≦φ5≦2とする。
6.3.6 装置又は部材の故障による荷重
常用ブレーキの他に非常ブレーキが備わっている場合,故障と非常ブレーキとの動作が最も不利な条件
のもとで発生すると仮定しなければならない。

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a) 軌条によって水平方向にガイドされている装置 b) 回転に対し拘束されていない装置
図4−緩衝器との衝突荷重及び緩衝器の変形例(4輪の天井走行クレーン又は橋形クレーン)
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Fu
0
u
Fxu
d 相対緩衝エネルギー
線形特性をもつ緩衝器 : ξ=0.5
く(矩)形特性をもつ緩衝器 : ξ=1
図5−係数φ7
安全のために二重系の構造をとる場合は,いずれか一方の系のいずれかの部分に故障が発生すると仮定
しなければならない。
どちらの場合も,力の伝達の変化による衝撃を6.1.4に基づき,発生する荷重を評価しなければならない。
6.3.7 クレーンの基礎からの外部振動
クレーンの基礎からの外部振動の例には,地震及び波浪によって生じる振動がある。
このような振動による荷重は,その振動が重大なリスクを伴う場合に限り考慮する。
注記 法令,又は仕様書の特記条件が適用されることがある。

6.4 その他の荷重

6.4.1  組立,分解及び輸送時の荷重
組立工程及び分解工程の各段階で作用する荷重は,8.3 m/s以上の風速による荷重を含め考慮しなければ
ならない。この規格群の他の部において,これより高い値を定めることもある。これらの荷重の組合せは
7.2による。また,輸送時に生じる荷重を考慮に入れる必要がある場合もある。
6.4.2 作業床,通路などの上の荷重
設備そのもの及び直接の支持構造に作用する荷重は,局部荷重と見なす。この場合,次に示す荷重を考
慮しなければならない。
3 000 N : 材料などを置く床として使用する場合。
1 500 N : 通路などだけに使用する場合。
手すりの場合は,場所及び使用条件に応じて300 N以上とする。

7 荷重の組合せ選択

7.1 基本的考え方

  通常運転中のクレーンに作用する応力を決定するために,静弾性計算で算出できるように,荷重の組合
せをしなければならない。このためには,次の荷重の組合せとする。
a) クレーンへの荷重が工学的評価において,応力的に最も大きく又は不利となる大きさ,位置及び方向
に作用すると考え,最も不利な姿勢又は形態にあるものと想定する。
b) この規格に規定する値を乗じて荷重を組み合わせ,また,可能な場合には実際の荷重条件をより正確
に反映した係数を乗じて荷重を組み合わせる。
個々のクレーンの形式に適切な荷重の組合せは,7.1.1,7.2及び表3によらなければならない。

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7.1.1 基本的な荷重の組合せ
基本的な荷重の組合せを,表3に示す。一般的に,荷重の組合せAは定常荷重を,荷重の組合せBは定
常荷重及び非定常荷重の組合せを,荷重の組合せCは定常荷重,非定常荷重及び特殊荷重の組合せを対象
としている。

7.2 組立,分解及び輸送時の荷重の組合せ

  組立工程,分解工程の各段階における荷重,及びその組合せを考慮しなければならない。それらの荷重
及びその組合せは,この規格群の第2部以降においてクレーンの形式ごとに定める。性能照査の計算につ
いては,部材又は部品に大きな荷重がかかる段階ごとに行わなければならない。
輸送時に生じる荷重についても,場合によって考慮に入れる必要がある。

7.3 表3の適用方法

7.3.1  一般
表3において,第2欄の行番号1行番号3の質量には重力加速度gを乗じ,第2欄の行番号4及び行
番号5の質量には駆動による適切な加速度を乗じなければならない。この表に示された荷重,又は求めら
れた荷重には,該当する係数又は1を乗じる。
各荷重は,7.1に基づき組み合わせなければならない。
7.3.2 限界状態設計法
各荷重に対しては,計算をモデルに適用する前に,荷重並びにその組合せA,B及びCに応じ部分荷重
係数γpを乗じなければならない。
部分荷重係数γpは,第3欄,第4欄及び第5欄から選択する。
部分荷重係数γpの値の範囲を,表B.1に規定する。
7.3.3 弾性変位
弾性変位によって,クレーンの所定の作業に不利益をもたらし,安定度に影響を及ぼし,又は機械系の
動作が機能しなくなることもある。このような場合は,変位を性能照査の計算の一部にとり入れ,また,
必要に応じ所定の弾性限界値と比較しなければならない。
7.3.4 疲労強度の照査
疲労の影響を考慮しなければならない。疲労強度の照査が必要だと判明した場合には,7.1の規定に基づ
き,その確認を行う。一般的には,A1,A2,A3及びA4の定常荷重の組合せを検討する。
運転中の風,スキューなどの非定常荷重及び試験荷重又はクレーンの基礎への振動,例えば,波の影響
などの特殊荷重も場合によっては考慮する必要がある。
7.3.5 危険度の高い用途でのリスク係数の適用
損傷による人的又は経済的影響が極めて大きくなる特別な事例,例えば,レードルクレーン,原子力関
連のクレーンでは,それぞれの用途に対する必要度に応じたリスク係数γn (>1) を用いることによって,
信頼性を高めるものとし,荷重には,リスク係数γnを乗じなければならない(附属書A参照)。

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表3−荷重及び荷重の組合せ
1 2 3 4 5 6
荷重の種類 荷重 荷重の組合せ A 荷重の組合せ B 荷重の組合せ C 行番号
部分荷 A1 A2 A3 A4 部分荷 B1 B2 B3 B4 B5 部分荷 C1 C2 C3 C4 C5 C6 C7 C8
重係数 重係数 重係数
γp γp γp
定常荷重 重力,加速つり上げ装置(クレーン)の質量に γpA1 φ1 φ1 1 − γpB1 φ1 φ1 1 − − γpC1 φ1 1 φ1 1 1 1 1 1 1
(6.1参照) 力及び衝撃よる荷重
力 総荷重 γpA2 φ2 φ3 − − γpB2 φ2 φ3 − − − γpC2 φ2 η − 1 1 1 1 1 2
平たんでない場所を走行する場合の γpA3 − − − φ4 γpB3 − − − φ4 φ4 γpC3 − − − − − − − − 3
クレーンの質量による荷重及び総荷

駆動装置にクレーンの質量によ 巻上動作除く γpA4 φ5 φ5 − − γpB4 φ5 φ5 − − − γpC4 − − φ5 − − − − − 4
よる加速 る荷重及び総荷重 巻上動作含む − − φ5 φ5 − − φ5 φ5 − − − − − − − − − 5
変位 6.1.5参照 γpA5 1 1 1 1 γpB5 1 1 1 1 1 γpC5 1 1 1 1 1 1 1 1 6
非定常荷重 気象の影響 作業中の風荷重 γpB6 1 1 1 1 1 γpC6 − − − − − − − − 7
(6.2参照) 雪及び氷による荷重 γpB7 1 1 1 1 1 γpC7 − 1 − − − − − − 8
温度変化による荷重 γpB8 1 1 1 1 1 γpC8 − 1 − − − − − − 9
スキュー 6.2.2参照 γpB9 − − − − 1 γpC9 − − − − − − − − 10
(蛇行)
特殊荷重 地上に置かれた荷のつり上げによる荷重 γpC10 φ2 − − − − − − − 11
(6.3参照) 休止時の風荷重 γpC11 − 1 − − − − − − 12
試験荷重 γpC12 − − φ6 − − − − − 13
緩衝器への衝突荷重 γpC13 − − − φ7 − − − − 14
ティルティングによる荷重 γpC14 − − − − 1 − − − 15
非常停止による荷重 γpC15 − − − − − φ5 − − 16
機械の故障による荷重 γpC16 − − − − − − φ5 − 17
クレーンの基礎の振動による荷重 γpC17 − − − − − − − 1 18
荷重の組合せに対する補足説明
A1及びB1 A1 : 通常の運転状態で,荷重巻上げ及び巻下げ(着地)を行う場合で,作業時風荷重及び他の気象条件による荷重を含まない。
B1 : 通常の運転状態で,荷重巻上げ及び巻下げ(着地)を行う場合で,作業時風荷重及び他の気象条件による荷重を含む。
通常,巻上げ,走行,旋回,起伏の各動作は,同時に行うことができる。これらの動作による各種の荷重は,運転条件によって組み合わせる。
A2及びB2 A2 : 通常の運転状態で,突然荷重の一部が落下した場合で,作業時風荷重及び他の気象条件による荷重を含まない。
B2 : 通常の運転状態で,突然荷重の一部が落下した場合で,作業時風荷重及び他の気象条件による荷重を含む。
駆動力は,A1及びB1の場合と同じように組み合わせる。
A3及びB3 A3 : 通常の運転状態で,巻上中の荷重を加速する場合で,作業時風荷重及び他の気象条件による荷重を含まない。
B3 : 通常の運転状態で,巻上中の荷重を加速する場合で,作業時風荷重及び他の気象条件による荷重を含む。
その他の駆動力は,A1及びB1の場合と同じように組み合わせる。
A4及びB4 A4 : 通常の運転状態で,平たんでない面又は軌条上を走行する場合で,作業時風荷重及び他の気象条件による荷重を含まない。
B4 : 通常の運転状態で,平たんでない面又は軌条上を走行する場合で,作業時風荷重及び他の気象条件による荷重を含む。
駆動力は,A1及びB1の場合と同じように組み合わせる。
B5 通常の運転状態で,平たんでない面上を一定速度で走行する場合で,作業時風荷重及び他の気象条件による荷重を含む。
C1 クレーンが運転中に,6.1.2.2.2のφ2に該当する異常状態で地上の荷をつり上げる場合。
C2 休止状態にあるクレーンの場合。この場合,休止時風荷重及びその他の気象条件による荷重を含む。
C3 クレーンの試験時。駆動力は,A1及びB1の場合と同じように組み合わせる。
C4C8 荷をつったクレーンに,緩衝の力 (C4),非常停止 (C5),機械の故障 (C7),クレーン基礎の振動 (C8) などの荷重が作用した場合。

――――― [JIS B 8833-1 pdf 15] ―――――

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JIS B 8833-1:2008の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 8686-1:1989(MOD)

JIS B 8833-1:2008の国際規格 ICS 分類一覧

JIS B 8833-1:2008の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISB0146-1:2017
クレーン―用語―第1部:一般
JISB8830:2001
クレーン―風荷重の評価