JIS B 8833-1:2022 クレーン―荷重及び荷重の組合せに関する設計原則―第1部:一般 | ページ 2

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5.3 荷重の評価

  負荷される荷重から応力を計算するには,クレーンの適切なモデルを用いなければならない。この規格
において,時間的変動の影響を受ける荷重は,経験,実験又は計算によって同等な静的荷重として評価す
る。剛体の動力学解析においては,弾性系の応答の模擬化に要する力を見積もるために動的影響係数を用
いることが可能である。代替方法として,弾性動力学解析又は実計測方法を用いることが可能である。た
だし,実際の操作を反映するためには,操作者の動作の現実的なモデルが必要となることがある。
限界状態設計法並びに安定性及び変位の検証に関しての荷重,荷重の組合せ及び荷重係数は,経験,他
の国際規格,又は可能ならば実験若しくは統計的データに基づき決めるのがよい。
特定の負荷条件が発生しない場合(例えば,屋内使用の場合の風荷重など)は,性能照査の計算で,そ
の負荷条件を無視することが可能である。同様に,負荷条件を変更して計算可能な要件は,次による。
a) クレーンの取扱説明書によって禁止している事項
b) 設計において想定していない状態
c) クレーンの設計によって,防止又は抑制している事項
性能照査の計算に確率的照査方法を用いる場合には,関連する要件,特に受入れ可能な損傷要件を明確
にしなければならない。

5.4 荷重の分類

  箇条6は,荷重影響を決定する場合の性能照査の計算に用いる荷重及び適用係数の値の範囲を示す。
注記 クレーンの特定の形式に対する個別の値は,JIS B 8833-2,JIS B 8833-3,JIS B 8833-4及びJIS B
8833-5を参照。
クレーンに作用する荷重は,定常,非定常,特殊及びその他の種類に分類する。個々の荷重は,次のと
おり,検討対象のクレーン又はその使用に関連する場合にだけ考慮する。
a) 通常操作中に発生する定常荷重は,降伏,座屈などの弾性不安定及び必要に応じて疲労に対する性能
照査の計算を行わなければならない。これらの荷重は,重力,クレーン構造物及びつり荷の質量に作
用する駆動又は制動による加減速及び変位に起因する。
b) 非定常荷重及びその影響は,その頻度が小さいことから,通常は疲労評価を無視してもよい。これら
には,作業中の風,雪及び氷,温度並びにスキュー(蛇行)による荷重が含まれる。
c) 特殊荷重及びその影響は,その頻度が同様に小さいことから疲労の検討から除外してもよい。これら
には,非常停止,駆動部品の故障及びクレーンの支持部の外部振動とともに,試験荷重,休止時の風
荷重,緩衝器への衝突荷重及びティルティング(傾動)による荷重が含まれる。
d) その他の荷重には,作業床及び通路上の荷重とともに,組立及び分解に伴う荷重が含まれる。
荷重の分類とその荷重の重要度との関係性はない。例えば,組立及び分解による荷重は,d)に分類する
が,事故のかなりの割合がこの操作中に発生することから,特別な注意を払わなければならない。

――――― [JIS B 8833 pdf 6] ―――――

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6 荷重及び適用係数

6.1 定常荷重

6.1.1 クレーン構造物の質量に作用する巻上げ及び重力の影響
クレーン構造物の質量には,操作中のクレーンの構成部分を含むが,取扱い荷重に関わる質量を除外す
る(6.1.2参照)。ある種のクレーン又は用途によっては,クレーン又はその部品に堆積物,例えば,石炭
などの粉じん(塵)を質量として加えることが必要な場合がある。
クレーン構造物の質量に重力が作用したときの荷重には,式(1)による1を乗じる。
1
曰1 a 0.1
a, 0 ≦≦ (1)
ここで, a : 1の値の決定に使用する定数
この過程では,取扱い荷重を地切りするときの,クレーンの構造にかかる振動的影響を考慮する。1に
は,振動パルスの上限及び下限に対応する二つの値がある。
係数1は,クレーンの構造及びその支持部の設計に使用しなければならないが,ある場合には,構成部
分における応力的に最も大きく,又は不利な負荷を決めるために,上限及び下限の両方の値を用いなけれ
ばならない。
係数の適用についての一般的な説明を参考として附属書Bに示す。
6.1.2 つり荷の質量によって垂直に作用する慣性及び重力の影響
6.1.2.1 地上に置かれた荷の巻上げ
6.1.2.1.1 一般
地上に置かれた荷を巻き上げるとき,クレーンは,荷重が地面からクレーンに移ることによる動的影響
を受ける。つり荷の質量mHに重力が作用したときの荷重に係数2を乗じることによって,これらの動的
影響を考慮しなければならない(図1参照)。
つり荷の質量による荷重(垂直動荷重)には,取扱い荷重,つり具及び巻上げロープの質量による荷重
を含む。
記号説明
F : 巻上げ力
t : 時間
図1−地上に置かれた荷を巻き上げるときの動的影響

――――― [JIS B 8833 pdf 7] ―――――

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係数2は,式(2)によって求める。
2
曰2,min 2
hv

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                       ここで,    β2 :  表2aによるクレーンの巻上等級に依存する係数
vh : 表2bから選択する駆動装置の固有巻上速度(m/s)
2,min : 表2cによる2の最小値
6.1.2.1.2 巻上等級
クレーン及びその支持部の弾性特性に従って,クレーンを巻上等級HC1HC4に割り当てる。巻上等級
を表2aに示す。固有の垂直荷重変位δに基づいて巻上等級を選択しなければならない。
表2a−巻上等級
巻上等級 固有の垂直荷重変位 β2
δ s/m
HC1 0.8 m≦δ 0.17
HC2 0.3 m≦δ<0.8 m 0.34
HC3 0.15 m≦δ<0.3 m 0.51
HC4 δ<0.15 m 0.68
クレーン,その支持部分及びロープの弾性から,適切な最大のつり荷の質量による荷重値を用いて,係
数を増幅させることなく静的に荷重変位δを求めなければならない。
荷重変位は,ジブクレーンなどではクレーンの姿勢が異なると変化するため,δの最大値を巻上等級の
選択に使用してもよい。
6.1.2.1.3 巻上駆動等級
この規格では,荷重が地面からクレーンに移るまでの制御特性に応じて,巻上駆動を等級HD1HD5に
割り当てる。巻上駆動等級は,次のとおりとする。
a) HD1 : 低速が使用できない,又は低速にすることなく駆動開始が可能な巻上駆動制御
b) HD2 : あらかじめ設定された時間に限り,低速での駆動開始が可能な巻上駆動制御
c) HD3 : 荷が地切りするまで,低速を維持することが可能な巻上駆動制御
d) HD4 : 連続的に速度が増加する無段階巻上駆動制御
e) HD5 : 自動的に動的影響係数2が2,minを超えないことを保証する無段階巻上駆動制御
巻上駆動等級に関する詳細情報並びに等級ごとの典型的な巻上制御及びそれらの特性の例を参考として
附属書Fに示す。
荷重の組合せA1,B1及びC1(箇条7参照)に適用する固有巻上速度vhは,表2bによる。

――――― [JIS B 8833 pdf 8] ―――――

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表2b−2を算出するための固有巻上速度vh
荷重の組合せ 巻上駆動等級
HD1 HD2 HD3 HD4 HD5
A1,B1 vh,max vh,CS vh,CS 0.5vh,max 0
C1 vh,max vh,max 0.5vh,max vh,max 0.5vh,max
荷重の組合せA1及びB1におけるvh,maxは,最高定常巻上速度とする。
荷重の組合せC1におけるvh,maxは,巻上速度に寄与する全ての駆動(例えば,起伏,巻上動作)
から生じる最高巻上速度とする。
vh,CSは,最低巻上速度とする。
荷重の組合せA1及びB1に対して,意図されたものよりも高速で巻上げが開始されるときの例外的な状
況を反映するために荷重の組合せC1を使用する。
6.1.2.1.4 係数2の最小値
2の最小値は,等級HC及び等級HDから設定し,表2cによる。
表2c−2,minの値
巻上等級 巻上駆動等級
HD1 HD2 HD3 HD4 HD5
HC1 1.05 1.05 1.05 1.05 1.05
HC2 1.1 1.1 1.05 1.1 1.05
HC3 1.15 1.15 1.05 1.15 1.05
HC4 1.2 1.2 1.05 1.2 1.05
6.1.2.1.5 代替方法
代替方法として,2の値は,実験又は動解析によって決定してもよい。この方法を適用する場合,駆動
装置の真の特性及び荷重支持装置全体の弾性特性を算出しなければならない。これらの結果に基づいて,
クレーンを,等価な2,min及びβ2をもつ巻上等級に割り当ててもよい。
6.1.2.2 取扱い荷重の急激な解放の影響
グラブバケット又はリフティングマグネット作業のように,取扱い荷重を解放し,又は落下させる場合
においては,動的影響の最大値は,取扱い荷重に係数3を乗じることによって算出することが可能である
(図2参照)。

――――― [JIS B 8833 pdf 9] ―――――

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記号説明
F : ロープ張力
t : 時間
図2−係数3
係数3は,式(3)による。
m
3 1 1 3 (3)
m
ここで, Δm : 取扱い荷重に関わる質量のうち,解放又は落下部分
m : 取扱い荷重に関わる質量
β3 : グラブバケット又は類似の緩解放装置の場合β3=0.5
リフティングマグネット又は類似の急激解放装置の場合β3
=1.0
係数の適用に関する一般的な説明を参考として附属書Bに示す。
6.1.3 平たんでない場所の走行による荷重
6.1.3.1 道路上又は作業地盤上を走行するクレーン
つり荷をつった状態又は無負荷での走行による影響は,クレーンの姿勢(質量分布),クレーンの弾性及
び/又はそのサスペンション,走行速度並びに走行面の特徴及び状態に依存する。動的影響は,経験,実
験,又はクレーン及び走行面の適切なモデルを使った計算によって求める。
6.1.3.2 軌条上を走行するクレーン
つり荷をつった状態又は無負荷での軌条上の走行による影響は,クレーンの姿勢(質量分布),クレーン
の弾性及び/又はそのサスペンション,走行速度及び車輪径に依存する。動的影響は,経験,実験,又は
クレーン及び軌条の適切なモデルを使った計算によって求める。
発生する加速度の影響は,クレーン構造物の質量による荷重(垂直静荷重)及びつり荷の質量による荷
重(垂直動荷重)に4を乗じることによって求めてもよい。特定のクレーンにおける国際規格では,軌条
の許容値及び要件を定めており,これらに従う場合には4を1としてもよい。
係数の適用についての一般的な説明を参考として附属書Bに示す。
溶接されていない段差又は隙間のある軌条上を走行するクレーンの車輪に発生する垂直方向の加速度を
考慮して,係数4を見積もるためのモデルの例を参考として附属書Cに示す。

――――― [JIS B 8833 pdf 10] ―――――

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JIS B 8833-1:2022の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 8686-1:2012(MOD)

JIS B 8833-1:2022の国際規格 ICS 分類一覧

JIS B 8833-1:2022の関連規格と引用規格一覧