JIS B 8833-1:2022 クレーン―荷重及び荷重の組合せに関する設計原則―第1部:一般 | ページ 3

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6.1.4 クレーンの各駆動(巻上駆動を含む)の加減速による荷重
駆動力による加速又は減速によってクレーンに生じる荷重は,クレーンの駆動装置の幾何学的配置,質
量分布及び該当する場合には,内部効率による損失を考慮した剛体の動力学モデルを用いて計算してもよ
い。この場合,つり荷の質量による荷重(垂直動荷重)は,ジブの先端又はクラブトロリのすぐ下に固定
されているとみなす。
剛体解析では,弾性の影響を直接反映していない。このため,加速又は減速の駆動力の変化(ΔF)に係
数5を乗じ,それを加速又は減速が行われる前の荷重に加算してもよい。係数を乗じた駆動力は,駆動力
が影響する部材に作用する。また,必要な場合には,クレーン構造物の質量による荷重(垂直静荷重)及
びつり荷の質量による荷重(垂直動荷重)に作用する(図3参照)。
記号説明
1 : モータ出力
2 : 制動力
X1 : 速度
X2 : 時間
Y1 : 駆動力
Y2 : 駆動力によって発生するクレーン上の荷重影響
図3−係数5
係数5の値の範囲は,1≦5≦2とする。適用する値は,駆動力又は制動力の変動率並びにクレーンの質
量分布及び弾性特性によって異なる。一般的に,低い値は力の変化が緩やかなクレーンに適用し,高い値
は力の変化が急激なクレーンに適用する。
遠心力については,係数5の値を1としてもよい。
摩擦又は駆動装置の特性によって伝えられる力が制限されている場合,制限値及びその装置に適した係
数5を用いなければならない。
係数の適用に関する一般的な説明を参考として附属書Bに示す。
非同期の走行装置を備え,非対称に荷重がかかる天井走行クレーンの荷重の計算例を参考として附属書
Dに示す。

――――― [JIS B 8833 pdf 11] ―――――

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6.1.5 変位による荷重
設計に含まれる変位によって生じる荷重,例えば,プレストレスに起因する荷重,スキュー(蛇行)を
必要な限度内に抑えるための荷重及びその他の変位を補正する制御装置による荷重を考慮しなければなら
ない。
考慮すべきその他の荷重には,軌条のスパンの変動,基礎の不等沈下など,許容限度内の変位によって
生じる可能性がある荷重を含む。

6.2 非定常荷重

6.2.1 気象条件
6.2.1.1 作業中の風
作業中の風による荷重の計算は,JIS B 8830による。ただし,つり荷への風荷重の考慮が必要な場合に
おいて,つり荷に関する詳細な情報がない場合は,受圧面積をつり荷の質量1 t当たり0.5 m2,風力係数を
2.4としてつり荷への風荷重を計算する。
6.2.1.2 雪及び氷による荷重
該当する場合には,雪及び氷による荷重を考慮する。雪及び氷による風の受圧面積の増加も考慮しなけ
ればならない。
6.2.1.3 温度変化による荷重
局部的な温度変化による部材の膨張,又は収縮による荷重を考慮しなければならない。
6.2.2 スキュー(蛇行)による荷重
この細分箇条では,ガイドされた,車輪に架装されたクレーンのガイド装置(例えば,ガイドローラ,
車輪のフランジ)に,定常状態の動作で,走行又は横行するときに生じるスキューによる荷重を取り扱う。
これらの荷重は,車輪が自由に回転せず,自然な方向に走行しないことによって生じるガイド装置の反力
によって生じる。同様に非対称的な質量分布に加速力が働く場合,スキューの原因になるが,この荷重に
ついては,6.1.4で考慮する。
ここに定義したスキューによる荷重は,通常,非定常荷重とみなすが,その発生頻度はクレーンの形式,
形状,車軸平行度の精度及び使用方法によって変わる。個々の場合については,発生頻度に基づいて非定
常荷重とするか,又は定常荷重とするかを決める必要がある。
注記 スキューによる荷重の大きさを決めるための指針及びクレーンの特定の形式のためのそれらの分
類は,クレーンの特定の形式について定めているJIS B 8833規格群の他の部において規定してい
る。
一定速度で走行するクレーンを剛体構造としてスキューによる力を解析する方法の一例を参考として附
属書Eに示す。作用するスキューによる力に対して剛体でない構造をもつクレーンの場合,又は特別な走
行ガイド制御装置を備えたクレーンの場合には,装置特性を考慮した適切なモデルを使用しなければなら
ない。

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6.3 特殊荷重

6.3.1 休止時の風
休止時の風の条件を考慮する場合には,クレーンにつり下げられているつり具などの質量ηmHに重力が
作用したときの荷重も考慮に入れて,式(4)によって求める。
ηmH=mH−ΔmH (4)
ここで, mH−ΔmH : クレーンにつり下げられているつり具などの質量(ク
レーンにつり下げられたままであるつり荷の質量の一
部)
mH : つり荷の質量(クレーンから直接つり下げられた質量
で,取扱い荷重,着脱式つり具,固定式つり具及びつ
り上げ機構に関わる質量の合計)
風荷重の計算は,JIS B 8830による。ただし,つり荷への風荷重の考慮が必要な場合において,つり荷
に関する詳細な情報がない場合は,受圧面積をつり荷の質量1 t当たり0.5 m2,風力係数を2.4としてつり
荷への風荷重を計算する。
6.3.2 試験荷重
荷重試験の荷重は,定格荷重又は定格総荷重の1.25倍とする。この場合の係数6の値は1とする。
定格荷重又は定格総荷重の1.25倍の荷重より大きな静的又は動的試験荷重が要求される場合には,これ
らの試験条件に対する能力計算の照査が必要となる場合がある。このような場合は,動的試験荷重に式(5)
から求まる係数6を乗じなければならない。
6 0.51 2 (5)
式(5)の2は,6.1.2によって計算する。
係数の適用に関する一般的な説明を参考として附属書Bに示す。
試験荷重条件における性能照査では,最小風速5.42 m/sを考慮しなければならない。
注記 最小風速5.42 m/sは,10分間平均風速の値である。
6.3.3 緩衝器への衝突荷重
複数の緩衝器が用いられる場合,クレーンが緩衝器に衝突するときにクレーン構造物に生じる力は,全
ての関連部材が定格速度の0.7倍1.0倍の速度で動くときの運動エネルギーによって計算する。ただし,
作動の減速について,特別に配慮された信頼性のある自動制御システムがある場合,又は緩衝器があって
も影響を制限する方策がとられている場合には,定格速度の0.7倍より小さな値を採用してもよい。
この計算は,剛体モデルによって行ってもよい。クレーンと緩衝器との実際の挙動を考慮しなければな
らない。
クレーン又はその一部の回転が拘束されている場合,例えば,軌条によってガイドされる場合は,複数
の緩衝器の変形は等しいと仮定してもよい。この場合は,緩衝器の特性が同じであれば,緩衝器への衝突
荷重も等しくなる。この例を,図4のa)に示す。この例は,式(6)のとおりとなる。
Fx2 Fx4 Fx/2 (6)

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クレーン又はその一部の回転が拘束されていない場合は,関連する質量の分布と緩衝器の特性とを考慮
に入れて,緩衝器への衝突荷重を計算しなければならない。この例を,図4のb)に示す。
a) 軌条によって水平方向にガイドされているクレーン b) 回転に対し拘束されていないクレーン
(μ2=μ4) (Fy3=Fy4=0)
図4−緩衝器との衝突荷重及び緩衝器の変形例(4輪の天井走行クレーン又は橋形クレーンの場合)
剛体解析では計算できない弾性の影響を反映するために,緩衝器への衝突荷重には水平方向の慣性力を
含めて,係数7を乗じる。線形特性をもつ緩衝器,例えば,ばねの場合には係数7を1.25とし,く(矩)
形特性をもつ緩衝器,例えば,油圧式一定力の緩衝器の場合には,係数7を1.6とする。これ以外の特性
をもつ緩衝器の場合は,計算又は試験によって立証されたその他の値を用いる(注記及び図5を参照)。
注記 係数7の中間値は,次のように計算することが可能である。
7
曰 1.25 0≦≦0.5 の場合
7 1.250.7 0.5 0.5 1湘
緩衝器への衝突荷重を計算する場合,水平方向に拘束されていない自由に振れるつり下げ荷重は,計算
に含めない方がよい。

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図5−係数7
1 uFdu
x (7)
x
Fu 0
ここで, ξ : 相対緩衝エネルギー
線形特性をもつ緩衝器 : ξ=0.5
く(矩)形特性をもつ緩衝器 : ξ=1
u : 緩衝器のストローク
x
Fu, : 最大値
6.3.4 ティルティング(傾動)による荷重
水平方向に拘束された荷をつるクレーンが,クレーン本体,つり荷又はつり具が障害物に衝突し,傾動
する可能性があるときは,その結果として生じる静的な荷重を計算しなければならない。
傾動したクレーンが,制御されなくても正常位置に戻ることができる場合,その結果生じる支持部分へ
の衝撃を考慮に入れなければならない。
6.3.5 意図しない取扱い荷重の喪失による荷重
取扱い荷重の意図しない喪失の影響,特に,その後の剛体安定性の問題及び強度の問題を考慮しなけれ
ばならない。その後の剛体安定性の問題及び強度の問題とは,ジブ又はクレーン構造全体が跳ね返ること,
ジブが後方に跳ね返ってクレーン構造物と衝突すること,ジブが正常位置に戻ること,又は一方向(油圧
シリンダ,引張方向支持物など)として設計された装置における荷重の反転である。ただし,ロープで構
造物を支持している場合など,設計者が構造上取扱い荷重の意図しない喪失によって発生する荷重が作用
しないと判断した場合は,その影響を考慮しなくてもよい。
動解析が実施されない場合,取扱い荷重の意図しない喪失の影響は,動的影響係数9=−0.3を適用す
ることによって計算してもよい。
6.3.6 非常停止による荷重
非常停止による荷重は,非常停止したときの最も条件の悪い運転状態,すなわち,加減速と負荷とが最
も不利となる組合せを6.1.4によって決定する。係数5の値の範囲は,1.5≦5≦2とする。
6.3.7 装置の故障又は部材の損傷による荷重
常用ブレーキの他に非常ブレーキが備わっている場合,故障又は損傷と非常ブレーキとの動作が最も不
利な条件の下で発生すると仮定しなければならない。安全のために装置が二重化されている場合も,一方

――――― [JIS B 8833 pdf 15] ―――――

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  • ISO 8686-1:2012(MOD)

JIS B 8833-1:2022の国際規格 ICS 分類一覧

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