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られる。
a) 全ての値の合計
b) ルート平均(二乗和平方根法)(SRSS)
c) QC(Complete Quadratic Combination)法
3方向それぞれの応答は,クレーン構造物の地震応答のほかに,クレーンのつり荷の質量によって生じ
る荷重(垂直動荷重)による影響も考慮する。
応答スペクトル法による地震応答解析の主要なステップを,表C.1に示す(X方向の地震動だけを例と
して示す。)。
この方法は,クレーン構造部材が弾性範囲及びクレーン構造物の地震応答が線形であると仮定している
ため,解析に用いる振動モードの数が増えれば精度は向上する。また,この方法によって耐震計算を行う
場合も,修正震度法に基づく一次評価を行い,両者の結果を比較して差異が生じた場合,その要因を分析
して,両者から得られた結果の妥当性を評価する。
6.2 地震応答の総和(TSR)の計算方法
6.1に規定する応答の重ね合せについて,この規格ではSRSSを振動モードの重ね合せ及び地震設計荷重
の方向の重ね合せの標準方法とすることとし,修正震度法を準用して必要なパラメータを求める。
FEMなどを使用して,クレーン構造物のモデル化を行う場合の応答スペクトル法は,次の手順で行う。
− 剛体限界の振動数を30 Hz(周期0.033秒)以上として,それ以下のクレーンの全ての固有振動数又は
固有周期を計算する。
*
− クレーン設置場所の地盤種別から,図2によって適切な設計カーブを選択し,適切な 3βを求める。
− 何次までの固有振動モードを使用するか定める。各有効振動モード質量の合計が,全質量の90 %を超
えることを目標とする。ただし,堅いサドルのある天井クレーン,バラスト上のクレーン,及び大き
なつり荷があるクレーンの場合は,その目標は達成できない。
*
− 解析モデルのうち,使用されなかった全ての有効振動モード質量には,30 Hz(周期0.033秒)の 3βを
用いる。
*
3βに,次の値を乗じて各固有振動モードの最終設計スペクトル加速度を計算する。
−
− 変換係数fcon=0.16[式(1)]
− クレーン設置場所による基本水平震度Abg(5.2.2参照)
− 地盤種別補正係数β2(5.2.3参照)
− 減衰比の違いを考慮した加速度応答倍率の補正係数η(5.2.4.3参照)
− 3方向(水平X,垂直Y及び水平Z方向)の地震動それぞれに対して,最終設計スペクトル加速度及
び刺激係数を各固有振動モードの要素部材の内力,応力,節点変位などを計算するための入力として
使用する。3方向の振動それぞれに対して,全ての固有振動モードの要素部材の計算結果をSRSSに
よって重ね合わせて合計値[respt(X),respt(Y) 及びrespt(Z)]を計算する。
− 3方向の計算結果respt(X),respt(Y) 及びrespt(Z) をSRSSによって重ね合わせて要素部材の地震応答の
総和(TSR)を式(17)によって計算する。
2 2 2
TSRSRSS respX
t respY
t respZ
t (17)
SRSSに代わる方法としては,3方向の応答計算結果を次の式(18)又は式(19)によって重ね合わせる。
− 100-40-40法
――――― [JIS B 8842 pdf 16] ―――――
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TSR1004040 1.0 respX
t 0.4 respY
t 0.4 respZ
t ,
TSR1004040 0.4 respX
t 1.0 respY
t 0.4 respZ
t 又は
TSR1004040 0.4 respX
t 0.4 respY
t 1.0 respZ
t (18)
− 全ての組合せの絶対和
TSRabs 1.0 respX
t 1.0 respY
t 又は
TSRabs 1.0 respZ
t 1.0 respY
t (19)
7 地震と地震以外の荷重との組合せ
7.1 一般
静的強度に関する地震と地震以外との荷重の組合せについては,7.2及び7.3で二つの方法を示すが,こ
の規格では7.2を用いるのがよい。
クレーンの全体安定度に関しては,7.4に示す。
7.2 静的強度の照査(JIS B 8833-1による荷重の組合せ)
箇条5で計算する耐震設計荷重は,JIS B 8833-1の特殊荷重相当の扱いとなる。荷重の組合せCJで示さ
れるものは定常荷重,非定常荷重及び特殊荷重の組合せを対象としており,耐震設計荷重は表6による組
合せを適用する。
表6−JIS B 8833-1による耐震設計荷重の組合せ
荷重 荷重の組合せ
CJ1 CJ2
クレーン構造物の質量による荷重(垂直静荷重) 1 1
つり荷の質量による荷重(垂直動荷重) 1 1
垂直方向のクレーン基礎振動によるFVr,FRVr 1 0.4
水平方向のクレーン基礎振動によるa) Hr,FRHr 0.4 1
注a) 水平荷重FHr,FRHrはどの水平方向へもかけることができ,検討中のクレーン要素の方向は最
も不利な方向となるように選択する。
7.3 静的強度の照査(SRSS法による荷重の組合せ)
6.2のSRSSによる計算結果に対する荷重は,表7によって他の荷重と組み合わせる。
――――― [JIS B 8842 pdf 17] ―――――
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表7−SRSS法による耐震設計荷重の組合せ
荷重 荷重の組合せ
CJ3 CJ4 CJ5 CJ6
クレーン構造物の質量による荷重(垂直静荷重) 1 1 1 1
つり荷の質量による荷重(垂直動荷重) 1 0 1 0
地震応答の総和(SRSS)−つり荷をつったクレーン 1 0 −1 0
地震応答の総和(SRSS)−つり荷をつっていないクレーン 0 1 0 −1
つり荷又は可動部分(トロリ,ジブ,カウンタウエイトなど)の位置の変化による荷重の大きさは,最
大の影響を考慮しなければならない。
7.4 全体安定度の照査
地震設計荷重を含む全体安定度は,表8を用いてJIS B 8833-1に基づく他の荷重と組み合わせる。
表8−地震設計荷重を含む全体安定度設計に対する荷重の組合せ
荷重 荷重の組合せCJ7
クレーン構造物の質量による荷重(垂直静荷重),不利方向a) 1.05
クレーン構造物の質量による荷重(垂直静荷重),有利方向a) 1
つり荷の質量による荷重(垂直動荷重) 1
地震設計荷重合計 1
注a) 荷重の組合せ及びクレーンの姿勢についての安定度を計算する場合,クレーンの各部の質量
による荷重によって検討中の支点からの転倒又は浮き上がりに対する荷重影響が増加(不利)
する,又は減少(有利)する方向とする。
1.02.0のリスク係数γnは表8の地震設計荷重にだけ乗じるが,クレーンの不利な方向に作用する質量
による荷重も考慮する必要がある場合も考えられる。
水平地震設計荷重FH及びFRHは,どの水平方向へも働くが,方向はクレーンの安定度に関して最も不利
な影響となる方向を選択しなければならない。
検討している安定度の条件が明確である荷重の組合せを除いては,地震時の安定度を確認する場合は全
てのつり荷の質量及びクレーンの姿勢を考えなければならない。
7.5 性能照査
限界状態設計法による性能照査は,JIS B 8829による。一般抵抗係数γmは1.0とし,座屈の評価は微小
変形理論ではなく,構造のたわみ,初期不整などの変形が及ぼす影響を考慮した“2次オーダーの弾性理
論”(EN 1993-1-1[9]参照)に基づいた計算を必要に応じて考慮する。
限界状態設計法の適用については,JIS B 8833-1の附属書A(限界状態設計法の適用)に規定されてい
る。
8 時刻歴応答法による地震設計荷重の算定
8.1 レベル1地震動による地震設計荷重の算定
時刻歴応答法による解析を行う場合は,クレーン設置場所の地盤特性を考慮して作成された適切なレベ
ル1地震動を用いる。垂直方向の地震動が示されない場合には,修正震度法によって求めた垂直地震設計
荷重を用いる。クレーンに対する地震の影響の評価は,修正震度法による場合と同様にして行うが,機能
を損なわない範囲でクレーン構造物が局所的に降伏応力を超え,若干の塑性化が発生することは差し支え
――――― [JIS B 8842 pdf 18] ―――――
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ない。この場合,設定する要求性能を受渡当事者間で協議してあらかじめ設定して差し支えない。ただし,
塑性化を許容した部材以外は弾性域にあり,クレーンの使用性及び安全性が維持されることを確認する。
この方法によって耐震計算を行う場合も,修正震度法に基づく一次評価を行い,両者の結果を比較して
差異が生じた場合,その要因を分析して,両者から得られた結果の妥当性を評価する。
8.2 レベル2地震動による地震設計荷重の算定
8.2.1 地震動の設定
クレーン設置場所の震源及び地盤特性を考慮したサイトごとのレベル2地震動を作成できることが前提
となる。ただし,地震動を一波で代表させるときは十分な調査をする。
8.2.2 地震時の安全性の照査
レベル2地震動による地震設計荷重に対して受渡当事者間で協議してあらかじめ設定する要求性能とし
て,クレーン構造物の崩壊,倒壊などの構造的不安定,脱輪,つり荷又はクレーン部品の落下がないこと,
運転者又は作業者,公共物などの安全が保たれることなどがある。
さらに,地震後につり荷を地上へ降ろせること,すぐにクレーンが稼働できることは要求されないが修
復によって機能を回復できることなどがある。これらは,信頼性がある合理的な方法によって照査を行う。
レベル2地震動に対する耐震設計を行う場合も,レベル1地震動に対する修正震度法に基づく一次評価
を行い,その結果とこのような方法で得られた結果を比較しながら,両者の結果に差異が生じた要因を分
析して,両者から得られた結果の妥当性を評価する。
さらに,何らかの機能維持が必要なクレーンにあっては,機能が維持できることも適切な方法によって
確認しなければならない。
このように,レベル2地震動に対する耐震設計時においては,構造部分に降伏応力を超え,塑性変形が
生じてもよい。塑性変形又はクレーン脚の一部が浮き上がることなどを許容するため,あらかじめ規定し
たこれら以外の構造部材は弾性域にとどまることを確認する必要がある。また,塑性変形が過度に大きく
ならないこと,及び余震時にも不安定にならないことに配慮する。
9 免震・制振クレーン
レベル2地震動は大きいため,構造部材が塑性域に入る可能性があるが,クレーンは構造的不安定に対
する余裕が少ないため,安全性及び経済性を両立させるために免震·制振装置などが採用される場合があ
る。
このような装置は,レベル2地震動対応として採用されることが多いが,レベル1地震動に対しても機
能を損なわず継続して使用でき,車輪の浮上りがなく,脱輪しないことが要求される。免震·制振クレー
ンの耐震設計に当たっては,クレーンと免震·制振装置との連成モデルを構築し,複数の適切な地震動に
対して時刻歴応答法による解析を行うなどによって,免震·制振装置が働き出す地震設計荷重(トリガー
荷重)を算定し,クレーンの主要構造部材が弾性範囲内に収まる応力設計を行うことを原則とする。また,
免震·制振装置の性能限界内に十分収まるよう配慮しなければならない。
採用する免震装置又は制振装置の特性に非線形性が存在する場合には,これを適切な方法によって解析
モデルに組み込むものとする。
なお,免震·制振クレーンであっても,修正震度法に基づく一次評価を行い,両者の結果を比較して差
異が生じた場合には,その要因を分析して,両者から得られた結果の妥当性を評価する。ただし,この場
合の設計水平震度KHの値は0.1以上を確保する。
――――― [JIS B 8842 pdf 19] ―――――
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附属書A
(参考)
修正震度法による耐震設計
修正震度法によるクレーンの耐震設計のフローチャートを図A.1に示す。
この規格の
範囲 スタート
クレーンの初期設定
Abg及びβ2の決定
固有周期Tc又は固有振動数fcの計算
加速度応答倍率β3の計算
水平及び垂直方向設計震度 構造設計
KH,KVの計算 の変更
水平及び垂直地震設計荷重
KH,KV,FRH,FRVの計算
リスク係数を考慮した水平及び垂直地震設計荷重
KHr,KVr,FRHr,FRVrの計算
地震設計荷重と他の荷重との組合せ
部材力及び応力 クレーン構造
Sdの計算 の局所的変更
限界値Rd SdとRdとの比較
No
Rd>Sd
Yes
エンド
図A.1−修正震度法によるクレーンの耐震設計のフローチャート
――――― [JIS B 8842 pdf 20] ―――――
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JIS B 8842:2020の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 11031:2016(MOD)
JIS B 8842:2020の国際規格 ICS 分類一覧
JIS B 8842:2020の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISB8822-1:2001
- クレーン及び巻上装置―分類及び等級 第1部:一般
- JISB8829:2018
- クレーン―鋼構造部分の性能照査
- JISB8833-1:2008
- クレーン―荷重及び荷重の組合せに関する設計原則―第1部:一般