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附属書JA
(参考)
電気エネルギー貯蔵システムの危険源に関する考慮事項
この附属書は,この規格の対応国際規格の中で参照しているIEC TS 62933-5-1:2017の箇条5を翻訳し
て作成したものである。
JA.1 電気的危険源
電気は,通常は導体を通して閉回路内を流れる。しかし,時には人体,並びに近接時には水及び空気さ
えも電気の導体となり,不注意で電気回路の一部になることがある。
電気的要因による痛み又は傷害(感電)は,その要因となる可能性がある電気エネルギーが人体へ伝達
したときに発生する。
電気エネルギーの伝達は,人体への二か所以上の電気的接触があるときに発生する。
· 人体と機器の導電部との間
· 人体の別の部分及び接地と水又は機器の導電部分との間
人が感電すると,電気は体の各部の間,又は体を介して地面又は大地に流れる。
電流の大きさ,持続時間,波形,及び周波数に応じて,人体への影響は,検出できないものから検出可
能なもの,痛みを伴うものから有害なものまで様々である。やけどは,感電に関連する最も一般的な傷害
であるが,心室細動も引き起こす可能性がある。
感電及びやけどの危険に加えて,電気は他の危険ももたらす。例えば,“アークフラッシュ”と呼ばれる,
通電したシステム上での作業中に短絡した結果生じるアークは,怪我又は火災を引き起こす可能性がある。
電気アークが発生したときのように,衣服に火がついたときにもやけどが発生する可能性がある。アー
クフラッシュが発生する境界は,通電された設備の保守及びその他の活動に従事する作業者に対して,適
切なレベルの個人用防護具(PPE)を設けるために決定することが望ましい。
非常に高エネルギーのアークは機器に損傷を与え,金属片があらゆる方向に飛び散る原因となる。低エ
ネルギーのアークでさえ,可燃性ガス,蒸気,又は可燃性の粉じん(塵)を含む大気中で激しい爆発を引
き起こす可能性がある。
静電気は,また,摩擦によって物体の特定の場所に高レベルの静電気が蓄積される場合のように,感電
を引き起こしたり,深刻な結果をもたらす物体に放電したりする場合がある。これは,多くの作業現場で
見られるプラスチック製のパイプ及び材料の取り扱い中,又はゴム製の駆動装置若しくは機械ベルトの通
常の操作中に容易に発生する可能性がある。このような場合,引火性物質又は可燃性物質が近くにあると
静電気が放電して爆発を引き起こすことがある。
電気的危険源は,電気的火災の消火手順が不適切な場合にも生じる可能性がある。
――――― [JIS C 4441 pdf 71] ―――――
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JA.2 機械的危険源
機械的要因による傷害は,人体と機器の一部との間に衝突があった場合の,人体への運動エネルギーの
伝達によるものである。運動エネルギーは,機器から排出されて人体に衝突するものを含む,機器のアク
セス可能部分と人体との間の,相対的な動きによる作用である。
運動エネルギー源の例には,次のものがある。
· 鋭い縁及び角に相対する人体の動き
· 挟込みを含む,回転又は他の運動している部分の動き
· ち(弛)緩,破裂,又は爆縮による部分の動き
· 不安定さによる機器の動き
· 壁,天井,又は棚への取付不良による機器の動き
· 操作ミスによる機器の動き
· 電池の爆発による部品の動き
· カート若しくはスタンドの不安定又は故障による機器の動き
· 機械的振動による移動
· 自然リスク(洪水,地震)との相互作用による機器の動き
機械による外傷には,摩擦による損傷,圧迫,擦過傷,裂傷及び打撲傷が含まれ,大体は重傷を負う。
JA.3 その他の危険源
JA.3.1 爆発危険源
爆発とは,気体が急速に膨張して圧力又は衝撃波が急速に移動する現象である。爆発はシステムの“変
換”の性質に従って分類され,通常,物理的起源の爆発と化学的起源の爆発とは区別される。
物理的爆発にはBLEVE(沸騰液体膨張蒸気爆発)が含まれ,これは大気圧における通常の沸点を著しく
超える温度の液体を内蔵するタンクが破裂する激しい爆発的な気化である。この場合,“変換”は内部エネ
ルギーの変化である。
化学爆発は,発熱化学反応の暴走又は不安定な物質の分解によって起こる。これには,燃料·空気混合
物の可燃性蒸気の燃焼(ガス爆発)及び懸濁液の空気·燃料粒子の燃焼[粉じん(塵)爆発]も含まれ,
変換は爆発性雰囲気の燃焼反応である。爆発性雰囲気に関連する潜在的な危険源は,有効的な発火源によ
って点火すると放出される。
一般に,固体,液体又は気体の爆発は,爆燃(デフラグレーション)及び爆ごう(轟)(デトネーション)
の二つの形に分けらる。いずれの形においても,反応域は反応物を通して伝搬する。密度差のため,単位
体積当たりのエネルギー放出は気体よりも液体及び固体の方がはるかに高い。
爆発は,炎及び圧力の制御不能な影響,有害な反応生成物の存在,発射体の放出,及び周囲空気中の酸
素の消費の結果として,暴露された人々の生命及び健康を危険にさらす。
JA.3.2 EMCによる危険源
JA.1に記載した従来の電気的危険源に加えて,高周波放射(RFR)によって生成される高レベルの電磁
――――― [JIS C 4441 pdf 72] ―――――
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エネルギーは,他の機器の妨害源となる可能性のある電流又は電圧を誘発し,可燃性物質を発火させる可
能性のあるアークを引き起こし,又は爆発性雰囲気の危険区域で発火源として機能する可能性がある。放
射線による傷害は,この附属書の適用範囲である。
JA.3.3 火災危険源
可燃物,酸化剤及び発火エネルギーが同じ場所で同時に十分な量存在する場合,火災危険源が生じる。
火災危険源は,これら三つの要素の相互作用に依存する。
特定の物質は,本質的に不安定であるか,極端な酸化特性をもつか,又は自己発熱が可能である。これ
は,火災危険源に影響する。
酸素濃度の変動(例えば,酸素濃縮)も火災危険源に大きく影響する可能性がある。
火災危険源は,EESSによって使用又は放出される物質,EESS付近の物質,又はEESSの構築に使用さ
れる物質から生じる可能性がある。
可燃性物質は,有機若しくは無機の固体,液体,又は気体として存在する可能性がある。可燃物が存在
するかどうか,又はどのような量と分布で存在するかを測定することが望ましい。
物質の燃焼のしやすさは,物質の大きさ,形状及び体積によって影響を受ける。例えば,物質の断片が
散在していると,その物質の大きな断片によっても容易に発火する。物質の組合せも発火性及び燃焼挙動
に影響を及ぼす。物質の特性が経時的に,又は使用によって変化するかどうかについて考慮することが望
ましい。そのような変化には,可燃性ガス及び蒸気を放出する物質の分解可能性が含まれる。これによっ
て,火災危険源が増大する可能性がある。
火災危険源を評価する際には,例えば,酸素生成物質などの火災を助長する物質の存在及び量,並びに
発生する確率を決定することが望ましい。最も一般的な酸化剤は空気であるが,燃焼を補助する他の酸化
剤には,例えば,硝酸カリウム(KNO3),過マンガン酸カリウム(KMnO4),過塩素酸(HClO4),過酸化水
素(H2O2),及び亜酸化窒素(N2O)がある。
どのような発火源が存在するか,又は発生する可能性があるかを測定しておくことが望ましい。発火源
は,次の影響によって発生する可能性がある。
a) 熱エネルギー
b) 電気エネルギー
c) 機械エネルギー
d) 化学エネルギー
電気的に引き起こされる火災は,電気エネルギーの熱エネルギーへの変換によるもので,熱エネルギー
が燃料材料を加熱した後,発火及び燃焼が起こる。電気エネルギーは,抵抗又はアークで熱エネルギーに
変換され,燃料材料に伝達される。
十分なエネルギー放出によって,伝導,対流又は熱放射による燃料要素が,燃焼反応が開始するまで過
熱されると火災が発生する。燃焼反応は,酸素と気体燃料との間で常に生じ得ることに留意することが望
ましい。
燃料の性質(ガス,液体又は固体)に応じて,発火プロセスは異なる。
――――― [JIS C 4441 pdf 73] ―――――
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ガスの場合,発火は燃焼限界の下限値(LFL)と上限値(UFL)との間の比率にある燃料酸化剤混合物中
で開始する。燃焼混合物の発火を開始させるためのエネルギー入力は,非常に低い場合が多い。このエネ
ルギーは,一般に燃焼反応の化学量論的比率で測定される。したがって,これは低エネルギー可燃性(LEF)
と呼ばれる。このエネルギーは,しばしば数ミリジュールのオーダーである。混合物に点火するには火花
で十分である。
液体の場合,蒸気放出速度が周囲空気との可燃性混合物を生成するのに十分であれば,放出された蒸気
から燃焼が起こる。さらに,混合物の発火は,液体の温度が引火点よりも高いときに十分なエネルギー(LEF
以上)が与えられた場合にだけ起こる。
固体燃料の場合,開始現象は,材料内の熱伝達によって支配されるため,より複雑である。燃料が受け
取るエネルギーは,昇華又は分解温度に達するまで固体の温度を上昇させる。この過程を熱分解現象と呼
ぶ。発火開始までの時間は熱流の強さ,熱特性,着火温度及び含水率に依存する。
類焼段階は,可燃物の燃焼経路に関連して,火災の増大に相当する。この段階の間,燃料要素の位置は,
火災の進展の可能又は妨害の基準として重要な役割を果たす。
火災危険源は,例えば,火災自体,熱放射,火災流出物,又は物質の漏れから生じる。火災危険源に加
えて,爆発危険源が存在する場合がある。
熱及び化学物質による火災は,人々及び環境を脅かす。これらの火災は,燃焼している物質(性質,形
状,量)及び燃焼条件によって,性質及び強度が大きく異なる場合がある。
JA.3.4 熱的危険源
熱エネルギーの伝達は,身体が高温の機器部位又は高温の液体に触れると発生する。損傷の程度は,温
度差,物体の熱質量,皮膚への熱エネルギーの移動速度,及び接触時間に依存する。人体の知覚は暖かさ
から熱さまで様々であり,結果として痛み又は怪我(又はやけど)を引き起こす場合がある。
高温の煙を吸い込むとやけどの原因になる。実際,やけどによる死亡の60 %80 %は大規模な煙の吸入
によるものである。直接的な影響として,失神,気道の閉塞,顔及び/又は鼻毛の焦げ,顔及び首周辺の
やけどなどがある。煙の吸入は,肺の損傷も引き起こすことがある。
熱放射にさらされると,皮膚にやけどを引き起こす可能性がある。最も懸念される放射形は,裸火及び
爆発から発生する熱放射である。
極端な低温にさらされると,皮膚及び身体の一部に何らかの損傷を引き起こす可能性がある。
誤用状態だけでなく通常の操作においても,熱の放散及び潜在的な熱的危険源の両方を発生させる可能
性がある。
JA.3.5 化学的危険源
有害物質による損傷は,身体部位との化学反応によるものである。物質による損傷の程度は,暴露の程
度及び期間,並びにその物質に対する身体部位の影響の受けやすさに依存する。
作業者の皮膚及び眼は,汚染された表面との直接接触,エアロゾルの沈着,浸水又は飛まつ(沫)によ
って,有害な化学物質に暴露される可能性がある。
化学物質は,一次刺激原及び感作性物質の2種類に分けられる。一次刺激物質又は直接刺激物質は,化
――――― [JIS C 4441 pdf 74] ―――――
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学反応を介して皮膚に直接作用する。感作物質は即時の皮膚反応を引き起こさないが,反復暴露はアレル
ギー反応を引き起こすことがある。
強酸,アルカロイド,他の腐食剤,又は腐食性物質との接触によって,皮膚及び深部組織は侵食された
りやけどを負ったりする。これらは職場で使用される様々な化学物質によって引き起こされる。
皮膚を通して有害な化学物質を吸い込んだり,飲み込んだり,吸収したりすることによる,直接的かつ
長期的な危険性もある。
化学的影響は,火災によって誘発される場合(例えば,火災ガスの毒性)もあれば,誘発されない場合
(通常操作時の排水の放出)もあり,通常又は誤用条件下で分解温度を超えて化学物質を加熱することに
よって誘発される場合もある。
化学的効果には,可燃性ガス(水素など)の生成による爆発性雰囲気の生成も含まれる。
あらかじめ蓄積された有毒ガスの排出は,その地域の人への大量の暴露という点で重大な危険源を生じ
る可能性がある。加えて,深刻な腐食問題が引き起こされる可能性がある。
JA.3.6 不適切な作業状態
屋内に設置されているか,又は囲いの中の屋外に設置されている全てのEESSは,人が閉じ込められる
ことを防止するために,システムが設置された又は囲いのある区域への出入りを容易にするように配置さ
れることが望ましい。作業位置及び姿勢,作業の実施頻度,要求される努力のレベル,並びに作業の持続
時間に依存する筋骨格障害(MSD)損傷のリスクに合わせて,作業空間及び作業条件を調整する必要があ
る。MSDの進展につながる危険因子には,次のものがある。
· 重い物を持ち上げたり,重い物を押したり引いたり,手動で材料を注いだり,又は装置若しくは道具
の制御を維持したりすることによって過度の力を加える。
· 同じ又は類似した仕事を繰り返し行う。同一又は一連の運動を継続的又は頻繁に長期間実行する。
· ぎこちない姿勢で働く,又は長期間同じ姿勢でいる。
· 身体若しくは身体の一部(手など)を硬い若しくは鋭い縁に押し付ける,又は手をハンマーとして使
用する。
低温は,上記のリスク因子のいずれか一つと組み合わされることによって,次に示す事項を通してMSD
が進展する可能性を増加させることがある。
− 近くにいる聴覚保護具を使用していない人に対する,時間の経過とともに聴力を損なう連続した過度
の雑音
− 人に悪影響を与える可能性のある3 kHz300 GHzの周波数で,十分な強度のある高周波エネルギー
への暴露
――――― [JIS C 4441 pdf 75] ―――――
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JIS C 4441:2021の引用国際規格 ISO 一覧
- IEC 62933-5-2:2020(MOD)
JIS C 4441:2021の国際規格 ICS 分類一覧
- 27 : エネルギー及び熱伝達工学 > 27.010 : エネルギー及び熱伝達工学一般
- 13 : 環境.健康予防.安全 > 13.020 : 環境保護 > 13.020.30 : 環境インパクトアセスメント
JIS C 4441:2021の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISC0366:1997
- 建築電気設備の電圧バンド
- JISC0920:2003
- 電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード)
- JISC5750-4-3:2011
- ディペンダビリティ マネジメント―第4-3部:システム信頼性のための解析技法―故障モード・影響解析(FMEA)の手順
- JISC5750-4-4:2011
- ディペンダビリティ マネジメント―第4-4部:システム信頼性のための解析技法―故障の木解析(FTA)
- JISC60068-2-52:2020
- 環境試験方法―電気・電子―第2-52部:塩水噴霧サイクル試験方法(塩化ナトリウム水溶液)(試験記号:Kb)
- JISC60364-4-44:2011
- 低圧電気設備―第4-44部:安全保護―妨害電圧及び電磁妨害に対する保護
- JISC61000-6-7:2020
- 電磁両立性―第6-7部:共通規格―工業環境における安全関連機能(機能安全)の遂行を意図した装置に対するイミュニティ要求事項