JIS C 5750-3-3:2008 ディペンダビリティ管理―第3-3部:適用の指針―ライフサイクル コスティング | ページ 2

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C 5750-3-3 : 2008 (IEC 60300-3-3 : 2004)
e) 運用及び保全
f) 廃却
注記 製品のライフサイクルの六段階の詳細は,JIS C 5750-2を参照。
適切なライフサイクルの諸段階,又はこれらの段階の一部若しくは組合せは,個々の特定の分析におけ
る特別な要求に適合するように選定することが望ましい。一般に,上記の諸段階の期間中をとおして発生
した総コストは,取得コスト,所有者コスト及び廃却コストに分割することもできる。
ライフサイクル コスト(LCC)=取得コスト+所有者コスト+廃却コスト
取得コストは,一般に明白であり,取得決定の前に,容易に評価できる。また,据付けコストを含む場
合と含まない場合がある。 所有者コストは,しばしばLCCの主要な構成要素であり,多くの場合,取得
コストを超えたり,容易には明白にならなかったりする。それらは,予測が難しい。また,据付けに関連
したコストを含むこともある。廃却コストは,総LCCにおいて大きな割合をもつことがある。例えば,原
子力発電所のような大きなプロジェクトの場合,廃却段階において多額の支出を伴う諸活動が,法的規制
によって要求されることがある。
図1は,ライフサイクル コスティングの調査検討で,提起することが望ましい製品のライフサイクル諸
段階における幾つかの課題を示す。
構想及び定義 設計及び開発 製造 据付け 運用及び保全 廃却
・新製品投入の好機 ・設計におけるトレード ・システム統合及び ・使用停止コストの
・システム構想及び要素の オフ 適合妥当性確認 影響
分析 ・原材料,部品,供給 ・コストの回避又は ・取替え又は更新の
・システム構成製品の 資源などの選定 コストの低減の便益 方策要綱
選択・技術の選択 ・構成管理及び変更管理 ・運用コスト及び保全 ・廃却及び廃物回収
・製造又は購入の決定 ・試験方針 コストのモニタリン 価値
・コスト要因の明確化 ・修理又は使い捨ての グ
・構成の評価 決定 ・製品の技術変更及び
・製造可能性の評価 ・性能のテイラーリング 顧客保全サービスの
・保証及び報奨の施策 ・技術,保全などの支援 向上
のための戦略 ・保全支援の資源の
・新製品の市場導入 配分及び最適化
図1−ライフサイクル コスティングの適用例

4.3 LCC解析のタイミング

  取得コスト,所有者コスト及び廃却コストの早期の明確化は,意思決定者のLCCに対するディペンダビ
リティ要因の比較考慮を可能にする。製品のライフサイクルにおける早期段階での意思決定は,製品ライ
フサイクルにおいて,更に後の段階において行われる決定よりもLCCに対し,より大きな影響をもってい
る。過去の実績から構想及び定義段階の終わりには,製品LCCの半分以上が決定されている。トレード オ

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フ実施の機会は,そのライフサイクルにおいて製品開発が進むとともに更に制限されてくる。
ライフサイクル コスティングは,製品の全ライフサイクル又はその一部の段階だけを扱うことができる。
ライフサイクル コスティングは,解析努力に基づく最大の便益を得るために,特定の製品又はプロジェク
ト及びそれらの両方に適合するようにテイラーリング(修整)することが望ましい。
注記 テイラーリングは,JIS C 5750-2:2000の3.10に“要素の選択,及びパラメータの大小の調整に
よって,目的・対象の個性に合わせ適応させる行為”と定義してある。

4.4 ディペンダビリティとLCCとの関係

4.4.1  一般
製品のディペンダビリティは,製品のアベイラビリティ性能及びこれに影響を与える要因,すなわち,
信頼性性能,保全性性能及び保全支援能力を記述するために用いられる包括的な用語である。これらの領
域の特性性能は,LCCでの重要な影響因子となる。初期コストをいっそう高くすることによって,信頼性
及び保全性性能は向上する。その結果として,運用コスト及び保全コストは低下し,アベイラビリティ性
能が向上することになる。ディペンダビリティ要因の考慮は,設計プロセス及びLCC評価活動において欠
かすことのできないものである。これらの考慮すべき事項は,製品仕様作成の準備段階において詳細にレ
ビューすることが望ましく,更に製品設計及びLCCを最適化するために,全設計段階をとおして継続的に
評価検討することが望ましい。
4.4.2 ディペンダビリティ関連のコスト
ディペンダビリティ要素に関連したコストには,次を含むことがある。
− 事後保全コストを含むシステム修理コスト
− 予防保全コスト
− 間接損害コスト
図2は,運用及び保全コストに変換された幾つかのディペンダビリティ要素を示す。

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アベイラビリティ
ディペンダビリティ
信頼性 保全性 保全支援
故障 修理 予防保全 交換ユニット,予 後方支援のため
備品及び備品 の投資コスト
数量×[(保全工数×時間当たりのコスト) 予防保全コスト
+(ユニット当たりの材料コスト)]
故障強度×(故障当たりの保全支援能力の平均コスト)+[保全工数(現 事後保全コスト
場)×時間当たりのコスト]+[保全工数(作業場)×時間当たりのコ
スト]+(故障当たりの予備品の平均コスト)
イメージ及び評判に対する損害,収入減,サービス提供,保証コスト, 間接損害コスト
並びに製品責任コスト
図2−運用及び保全段階におけるLCCとディペンダビリティとの典型的な関連例
4.4.3 間接損害のコスト
4.4.3.1 一般
製品又はサービスが利用できなくなったときに,一連の間接損害コストを発生することがある。これら
のコストには,次のものが含まれる。
− 保証コスト
− 法的責任コスト
− 収入減に伴うコスト
− 代替サービスの提供のコスト
さらに,次のような企業への不利益のコストを決定するために,リスク解析技術などを用いることによ
って,追加の間接損害コストを決定することが望ましい。
− 悪い印象
− 悪い評判
− 信用の失墜
これらの事象が発生した場合には,顧客を失うかもしれない。

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これらのリスク対策コスト及び軽減化のコストも間接損害コストに含めるのがよい。
ほとんどの場合,これらのコストを評価することは難しいが,ときには算出することが可能である。例
えば,これらのコストは,広告宣伝コストのように市場開拓又は顧客をつなぎ止めるための代償をベース
にして見積もることができるかもしれない。使えるならば,これらのコストを利用するとよい。
LCC計算の結果は,実際のコスト及び観察されたコストと一致しないことがあるということに注意しな
ければならない。これは,運用中の環境条件及びヒューマン エラーなどの多くのランダムな要素に影響さ
れるからである。これらの要素をLCCの計算において正確にモデル化することはできない。
コスト及び時間といった通常の要因ばかりではなく,環境問題もLCCの計算要素として考慮しなければ
ならない。したがって,諸活動の環境への影響度をランク付けする手法を用いなければならない。これら
の手法は,意志決定を伴う環境対策の計画及び環境問題の統合の基礎を提供する。
4.4.3.2 保証コスト
保証は,特に製品運用の初期における製品故障での修復コストを顧客の負担から切り離すことによって,
顧客を保護するものである。保証のコストは,一般に供給者が負担し,製品の信頼性,保全性及び保全支
援の特性によって影響される。供給者は,設計・開発段階及び製造段階において,これらの特性を十分に
管理して,保証コストを削減することができる。
保証は,通常限られた期間に対して適用され,一般に幾つかの条件を伴う。保証には,製品が障害など
で利用できないとき(アンアベイラビリティによって),顧客が被る間接損害コストに対する保護はほとん
ど含まれない。
保証は,顧客との一般的な取決めに加えて,供給者による一定期間の予防保全及び事後保全のサービス
契約によって補われたり,置き換えられることがある。通常,この契約は,製品の耐用寿命までの任意の
期間更新される。製品耐用寿命までの契約の場合,供給者は信頼性及び保全性をその製品の最適レベルに
盛り込もうとする。この場合,通常は取得コストがより高くなる。
4.4.3.3 製品責任コスト
製品責任は,例えば,供給者の会社としての法的な履行義務違反などが発生したときに生じる。違反の
代償コストは,ライフサイクル コスト(LCC)の一部とみなす必要がある。これは,人を傷つけたり,環境
を破壊する可能性の高い製品の場合には,特に重要なことである。また,製品責任コストは,内在するリ
スクが十分に明らかになっていないか,又はよく理解されていない新製品に対しても重要である。必要な
らば,これらのコストを推定するために,過去の経験及び専門家の判断を含めてリスク解析を使うことが
できる。リスク解析のガイダンスは,IEC 62198を参照。

4.5 LCCの概念

4.5.1  一般
他のモデルと同様に,LCCモデルは,実世界を単純化した表現である。それは,製品の顕著な特徴及び
状況を抽出して,それらをコストの見積りと関連付けるものである。これを具体化するためには,次の項
目を考慮することが望ましい。
a) 制約又は制限事項だけではなく,意図した使用環境,保全の考え方,運用及び保全支援のシナリオを
含めて,解析する製品の特性を表す。
b) CCに関連するすべての要因を含み,かつ,重要点を明示するために総括的である。
c) 理解しやすいよう十分に簡素化されており,また意思決定において適時使用することができ,将来の
更新又は修正ができる。
d) CCの特定の要素を他の要素とは独立して評価できるように,LCCモデルを設計している。

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簡単なLCCモデルは,基本的に計算構造であり,LCCを構成するそれぞれのコスト要素に関連するコ
スト見積りの数学的表現である。この例を,附属書Dに示す。
幾つかの場合では,検討中の問題に対してモデルを特別に開発する必要があり,他の場合には商品化さ
れているモデルを使うことができる。それぞれのLCCモデルは,それ自体で柔軟性及び適応性を備えてい
る。適用する内容及び条件についての知識をもっていることは,適用の妥当性を保証するために重要であ
る。モデルを選定する前に,モデルを使って期待される結果とともに,必要な各種の情報を特定しておく
のがよい。モデルの詳細を熟知している人が,すべてのコスト関連要因,経験に基づくそれらの関係,コ
スト要素,その他の定数及び変数がモデルに適用できるかどうかをレビューする必要がある。 したがって,
いかなる既存のLCCモデルであっても,それを使用する前に,モデルが考慮中のLCC検討に対して適合
していることを確認する必要がある。そのためには,既知の例から,コスト要因及びその他のパラメータ
を運用シナリオに沿って用い,そのモデルが現実的な結果を提供するかどうか評価することが望ましい。
建築物又は発電所のように,多くの製品は非常に長寿命に設計されている。このような製品は,例えば,
機能の変更又は性能向上のために,製品耐用寿命までに何回もの追加コストが発生しており,これらを取
り扱う技法をモデルに取り込むことが望ましい。
LCCのモデル化には,次を含む。
− コスト細分化構造(CBS: Cost Breakdown Structure)
− 製品・作業細分化構造(PBS/WBS: Product Breakdown Structure and Work Breakdown Structure)
− コスト区分の選定
− コスト要素の選定
− コストの見積り
− 結果の提示
適用可能ならば,次も含む。
− 環境及び安全の側面
− 不確実性及びリスク
− コスト変動要因を特定するための感度分析
コスト細分化構造は,製品ライフサイクルの主要な段階(又は対象とする段階)で発生したコストの内
訳を表したものである。附属書Cにコスト細分化構造に対応したコスト表現の例を示す。製品及び作業の
細分化構造は,ハードウェア,サービス及びデータの詳細な細分化結果から構成され,すべての主要なタ
スク及び支援作業の一式を明確にする。附属書Eに鉄道車両の製品細分化構造及びLCCの概要を例示す
る。
異なった段階のコスト詳細表現は,個別に開発することができる。コストの要素及び要因などは,一義
的に識別しなければならない。 解析が幾つかの段階にまたがる場合は,コストの要素,要因などの識別は,
LCC全体モデルの中で一義的であることが望ましい。通常は,一つの検討活動をとおして製品及び業務の
細分化構造を変えずにおく方が望ましい。
4.5.2 LCCのコスト要素への細分化
総ライフサイクル コストを見積もるために,総LCCは,それを構成するコスト要素に細分化する必要
がある。明確に定義して見積もるために,これらのコスト要素は,個別に識別できることが望ましい。諸
要素の識別及びその範囲は,LCC調査の目的及び範囲に基づくことが望ましい。
コスト要素は,コスト区分と製品(又は作業)細分化構造との間を連結するものである。選択されたコ
スト要素は,要求されたコスト細分化構造に対応する重要なコスト区分に関係していることが必要である

――――― [JIS C 5750-3-3 pdf 10] ―――――

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JIS C 5750-3-3:2008の引用国際規格 ISO 一覧

  • IEC 60300-3-3:2004(IDT)

JIS C 5750-3-3:2008の国際規格 ICS 分類一覧

JIS C 5750-3-3:2008の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称