JIS C 5750-4-3:2021 ディペンダビリティマネジメント―第4-3部:システム信頼性のための解析技法―故障モード・影響解析(FMEA及びFMECA) | ページ 14

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C 5750-4-3 : 2021 (IEC 60812 : 2018)
れは故障モード及びリスク(致命度)の軽減の選択肢を導き出すための,関与する人,装置及び環境の間
に生じ得る相互作用の解析を含んでいる。さらに,リスクのより明確な取扱いを可能とするために,人へ
のリスクと装置へのリスクを区分けしている。
ここで,<装置>とは,製品の種々のレベル(例えば,デバイス,ユニット,装置,機器)の総称であ
り,また,<人>とは,装置の使用者及び使用の際にその近辺にいる関係者(例えば同僚,家族)の総称
である。<人−装置系>は,人と装置とが形成する使用空間において任務を遂行するシステムのことであ
る。人−装置系に顕在又は潜在する危険の要因は,装置の動作空間,人の行動空間,及び両者の境界面·
共有空間で生じ,その危険の度合いはこの系を取り巻く使用空間における環境条件(周囲環境条件,動作
環境条件など)に影響される。
ヒューマンファクターは,(故障を防止する,又は厳しさを低減させることによる)望ましい要因,又は
(故障を引き起こす,又は間違った対応をすることによる)望ましくない要因に分けることが可能である。
人もまた,装置の故障及び/又は人のエラーの影響を受ける場合があり,装置及び環境への損害と人への
危害とを区別することが論理的である。表F.13の例は,故障源としての人を含んでいる。
注記 表F.13は,対応国際規格に間違いがあるので修正し,分かりやすいように補足した。
人·環境·装置の三要素FMEAの構造及び機能を,図F.2Aに示す。三要素FMEAは三つの機能部分に
分けられる。左側のインプット部は原因系を記述し,右側のアウトプット部は結果系を記述する。また,
中央のT形マトリックスではヒューマンエラーの解析を行う。
図F.2A−人·環境·装置の三要素FMEAの構造及び機能
インプット部では,潜在的な危険要因を抽出し,それらの関係を分析する。すなわち,人−装置系の正
規の運用プロセスにおける要素作業を特定し,想定される環境条件の下で生じる可能性のある望ましくな
い状況(装置の故障モード,人のエラーモード及びそれらのモード間の論理的相互関係)を洗い出す。
アウトプット部では,原因系の望ましくない状況が人−装置系に及ぼす可能性のある影響を解析する。
すなわち,人,装置及び系への危害を摘出し,評点を用いてそのリスク(致命度)の優先度を決め,リス
クの緩和処置などの対策案を検討する。

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C 5750-4-3 : 2021 (IEC 60812 : 2018)
ヒューマンエラーの解析部は,意識フェーズ[37]に基づく“ヒューマンエラーモードの原因分析”を行う
左翼部,事故データベースからの“ヒューマンエラーに起因する事故例の抽出”を行う右翼部,及びS-O-
Rモデルに基づいて導き出した“エラー見出し語”を用いて人−装置系において生じ得るエラーモードの
抽出を行う胴体部からなるT形マトリックスになっている。
左翼部の“意識フェーズ(注意カテゴリー)”欄では,人が間違った挙動をする局面を意識フェーズを用
いて区分している。事故例の“エラー原因の心理的解析”欄は,意識フェーズ及びエラー原因となる見出
し語を組み合わせたマトリックス構造になっている。“エラー見出し語”は,基本的なエラーカテゴリーの
リストである。マトリックスを用いて,どの意識フェーズで生じるエラーカテゴリーなのかを解析し同定
することが可能である。こうしたエラーカテゴリーに達した時間,又は達し続けている時間は,それらが
生じ得る局面の種類(意識フェーズ)に依存する。これは,この種のエラーに対して仮定される発生度に
影響を与え得る。
右翼部の“事故データベース”欄では,利用できる事故データベースから対象製品の使用においてヒュ
ーマンエラーに起因する事故例を抽出するとよい。事故例は,その事故が生じたときの意識フェーズを推
定して,該当する欄に記入する。
左側のインプット部において,ヒューマンエラーが生じるのに必要とされる状況が評価される。すなわ
ち,要素作業とエラー見出し語を結び付けて,[人]のエラーモードを類推することが可能である。人をグル
ープ分けして,このエラーが限定され得るグループの種類に応じて,発生確率を低減又は増加させること
が有益かもしれない。“[人]のエラーモード”欄では,対象者として大人(A),子供(C),女性又は男性
(F/M),障がい者(D),高齢者(O),病人(I)又は限定されない全ての人々(G)などを区別できるよう
にしている。
右側のアウトプット部において,故障及びエラーの,人,装置,系への影響が解析され,評点法によっ
て影響のリスク(致命度)が評価され,優先順位に沿って対策案が提言される。
装置への損害リスク及び人への危害リスクの格付け及び評点化は,在来のFMEAと同様である。評点は
広く用いられている基底1,公差1(1,2,3,4,·)の方法のほかに,安全性解析の場合などに基底1,
公比2(1,2,4,8,·)の方法も用いられる。系への危害リスクの評価では,系への危害の発生頻度評点
と影響の厳しさ評点の積で評点を求めることは在来の方法と同様である。ただし,この事例では,系のリ
スク評点を生成するために,装置及び人のそれぞれのリスク評点を論理的に合成するように決定した。す
なわち,系の発生頻度評点の算定は表F.5Aに基づいて行う。また,系の厳しさ評点は,人と装置のそれぞ
れの厳しさ評点の和である。なお,装置又は人の一方だけの場合は,ダミーとして相手方に基底1を入れ,
論理和(∪)の演算を行う。

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C 5750-4-3 : 2021 (IEC 60812 : 2018)
表F.5A−系の発生頻度評点の算出式
モード間の関係 説明
(故障モード/エラー
モード)
論理和 下位モードの発生頻度評点の総和。
(少なくとも一つの下位モ n (数式は,下位モードが全て最低ラ
ードが発生すると,潜在危険 −+1
xn
i ンクの評点1の場合に,潜在危険要
i=1
要因になる) 因の評点が1になるように調整し
たもの。)
論理積 下位モードの評点の最小値。
(全ての下位モードが同時 min xx
1,2, , xn
に発生すると,潜在危険要因
になる)
順序化論理積 最初に生起する下位モードの評点。
(全ての下位モードが定め (ただし,下位モードが1→2→·→
1x
られた順序で発生するとき nの順に発生したときに潜在危険要
に限り,潜在危険要因にな 因となるものとする。)
る)
排他的論理和 論理和と同じにする(安全側にな
n
(いずれか一つだけのモー −+1
xn
る。)。
i
ドが発生すると,潜在危険要 i=1
因になる)
凡例 :
下位モードの発生頻度評点をx1,x2,·,xnとする。
なお,下位モードの個数をnとする。
また,可能な対策手段を,次のように区分している。すなわち,エラーの発生を防止できる(O),要員
に指示することによって発生が回避できる(I),発生を修復するマネジメントシステム(M),又は公衆に
警告を出すことができる(E)。
三要素FMEAのT形マトリックス構造の中央部は,ヒューマンエラーの解析に慣れてきたら省略しても
よい。その場合,インプット部とアウトプット部を直結すると在来のFMEA表に類似した様式になるが,
人と装置のモード間の関係が解析できる点に特長がある。これを“簡易型三要素FMEA”という。表F.5B
は,人−装置系の簡易型三要素FMEA表の見出し部を示す。

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C 5750-4-3 : 2021 (IEC 60812 : 2018)
表F.5B−簡易型人·環境·装置の三要素FMEA表の見出しの例
システム名称 :
システム任務 :
人の モード
番 作業 作業 作業 作業 装置の
対象者 エラー 間の
号 プロセス ユニット 任務 環境 故障モード
モード 関係
(続き1)
発生度評点 影響の厳しさ予測 厳しさ評点
推定
原因 人 装置 システムへ
人 装置 システム 人 装置 システム
への影響 への影響 の影響
(続き2)
是正区分 是正効果
是正手段
リスク評点 備考
O I W E M 防止対策 Q C D S E
凡例
·対象者(A : 大人,C : 子供,F/M : 女性又は男性,D : 障がい者,O : 高齢者,I : 病人,
G : 限定されない全ての人々)
·モード間の関係(∪又はOR : 論理和,∩又はAND : 論理積,→又は←又は↑又は↓ : 順序化論理積,
又はEOR : 排他的論理和)
·是正区分(O : 本質的信頼性·安全性設計,I : 波及防止設計,W : 警告表示/取扱説明書,
E : 安全教育/啓発広告,M : 管理システムレビュー)
·是正効果(Q : 品質,C : コスト,D : 納期/工期,S : 安全性,E : 環境適合性)
三要素FMEAは,ここで示した人·環境·装置の三要素FMEAを含めて,3種類が存在する。表F.5C
は,それぞれに用いられるFMEA表と主な用途を示す。特に,サービスへの用途が拡張している[38]。
このようなヒューマンエラーを解析できるようにした三要素FMEAの使い方は,用途に大きく依存す
る。三要素FMEAについての手順などの詳細は参考文献[39]を参照するとよい。三要素FMEAの用途など
をふかん(俯瞰)するには,参考文献[33]及び[34]を参照するとよい。

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C 5750-4-3 : 2021 (IEC 60812 : 2018)
表F.5C−三要素FMEAの種類,利用できるFMEA表及び主な用途
三要素FMEAの種類 標準型FMEA表 簡易型FMEA表 主な用途
人−環境−装置の三要素 〇 〇 ·携帯電話,パソコン,乗用車,工具な
FMEA(プロセス) どの市場型製品とその使用者とのイン
タフェースで生じるトラブルの未然防

·工場でのはんだ付け,組立など,薬局
での調剤,飲食店の調理,配膳などの作

·製造業,医療,教育などの分野での製
品又は設備を取り扱う作業及びサービ
スへの適用
人−環境−人の三要素FMEA 〇 〇 ·人から人へ行われる作業及びサービ
(プロセス) スについてのトラブルの未然防止
·病院での患者の取り違い防止,ファミ
レス又は結婚式場の接客マニュアルの
見直し
·接客業,医療,教育などのサービス分
野への適用
装置−環境−装置の三要素 × 〇 ·システム内の機器又は部品の連係動
FMEA(プロセス) 作のトラブルの解析
·特に,移動体又は可搬型製品の使用ト
ラブルの解析
装置−環境−装置の三要素 × 〇 ·複数の装置間,又は一つの装置内の複
FMEA(機能) 数の構成要素間で互いに影響し合って
故障を起こす複合故障モードの解析
·スマートフォンのような多数の部品
から構成されるポータブル機器の単一
故障及び/又は複合故障の未然防止

F.11 電子部品のマーキング及び容器封入プロセス

  表F.14に,電子部品の容器封入及びマーキング,いわゆる最終工程に対して実施された工程FMEAか
らの抜粋を示す。

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JIS C 5750-4-3:2021の引用国際規格 ISO 一覧

  • IEC 60812:2018(IDT)

JIS C 5750-4-3:2021の国際規格 ICS 分類一覧

JIS C 5750-4-3:2021の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISZ8115:2019
ディペンダビリティ(総合信頼性)用語