JIS C 5750-4-3:2021 ディペンダビリティマネジメント―第4-3部:システム信頼性のための解析技法―故障モード・影響解析(FMEA及びFMECA) | ページ 6

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C 5750-4-3 : 2021 (IEC 60812 : 2018)
いる要因の解釈に注意を払うことが望ましい。
対策を決定する際,正確さ及び精度のレベルは,FMECAで完全な定量化がなされていても,採用した
データ及び方法と整合しない形では定めないことが望ましい。
5.3.9.2 処置の選択肢
処置は,アイテム又はプロセスの設計の変更,ハードウェアの運転中又は保全中にとる行動の変更を含
むことがある。
一般に,設計段階での変更,特にハードウェアアイテムの変更を導入することは,費用対効果がより高
い。
例1 設計の変更は,次の事項を含む。
− 構成品をより信頼性のあるものに交換する。
− 冗長又はバックアップシステムを導入する。
− エラーを起きにくくするためのハードウェア又はプロセスの人間工学的設計
− アイテム,運用担当者,ユーザーその他が故障を発見するための,新しい又は改良された方
法,及び損傷を抑制する安全装置又は解放装置
運用中に,故障モード若しくは差し迫った故障を検出してそれを防止する,又はその影響を低減させる
ための行動をとることが可能である。
例2 ハードウェアの場合,考えられる処置には,隔離,負荷低減,ルート変更及び抑制機能の作動が
含まれる。プロセスの場合,考えられる処置には,手順の中で行われるチェック及び調整が含ま
れる。
保全プログラムも管理の手段として用いることが可能であり,これはFMEAの結果を基に体系的に開発
することが望ましい。
注記 こうしたプログラムを開発するプロセスは,信頼性中心保全である(IEC 60300-3-11)。
処置は,次の一つ以上の結果をもたらす。
− 故障モードの除去
− 故障モードの起こりやすさの低減
− 故障モードの影響の除去又は低減
どの故障モードが処置を必要とするかを特定するために,判断基準(5.2.4)を用いることが望ましい。
場合によっては,FMEAの際に処置が特定されても,行動は起こさないことがある。
有効でない,又は不必要な管理策の除去も考慮することが望ましい。
文書化には,少なくとも,行う推奨事項の簡単な記述を含めるのがよい。
推奨事項が受容され,新しい管理又は検出方法が導入された場合には,次の事項をチェックするために
解析の再検討が必要な場合がある。
− 何らかの新しい故障モード又は影響が加わっていないか。
− 特定の故障モードの致命度が,今では受容されるものになっていないか。

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次回のFMEAの更新で考慮すべき,アイテム又はプロセスの文書化における変更を特定することが望ま
しい。

5.4 FMEAの文書化

  解析は,FMEA計画で合意されたとおりの形式で,文書化及び報告することが望ましい(5.2.5)。

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附属書A
(参考)
FMEAのテーラリングのための一般的考察

A.1 一般

A.1.1 概要
テーラリングは,FMEAの目標を達成する費用対効果の高い方法を得るため,FMEAをカスタマイズす
るもので,次に関する選択を含んでいる。
− 解析するシステム,アイテム又はプロセスの境界
− 解析の階層における出発点
− 解析対象の要素への下位分割の粒度
− どの解析ステップを考慮するか
− 各解析ステップ内の粒度
− 故障モードを,それらの致命度及び用いる評価方法に基づいて優先順位付けするかどうか
一般に,これらの選択は,次のような要因の情報によって行う。
− 解析の目的[例えば,アイテム又はプロセスの改善又は修正,総合信頼性の事例取得(IEC 62741),
コンプライアンスの実証,保全,補給支援又は安全性の計画]
− プロセス又はアイテムの新規性又は革新性の程度(例えば,技術)
− 関連データの利用可能性(例えば,類似のアイテムの運用経験,試験データ)
− 処置を推奨することが求められているかどうか,又はこのことはFMEA外の他者によってなされるか
どうか
− 法的又は契約の要求事項
− アイテムの設計又はプロジェクトの完成度
− FMEAが実施されるライフサイクルの段階
一般に,あるアイテム又はプロセス,若しくはそれらの要素が,いかなる形態のFMEAも必要としない
ことがある可能性も考慮することが望ましい。これは特に,解析を実施することに明確な便益がない場合,
又は他の形態の総合信頼性解析が,より有用であるとみなされる場合である。FMEAは,例えば,設計,
運用に影響を与えること,及び費用対効果の高い予防及び是正保全プログラムの開発のための情報を与え
ることによって,その事業的価値を得る。解析結果がこれらの要因に影響を与えることができなければ,
解析は妥当性があるとみなされないかもしれない。
注記 多くの場合,専門の供給者からの商用既製品(COTS)アイテム又は要素は,インプット及びアウ
トプットなどのインタフェースに関してだけ良質の解析が行える“ブラックボックス”としてだ
け扱うことが可能である。
特定の産業用途におけるテーラリングの選択肢の例を,A.3に示す。FMEAの一般的な適用の考察を,
附属書Eに示す。

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A.1.2 階層におけるFMEAの開始点
FMEAのテーラリングのための開始点の選択は,解析の目的及び段階及び,どのように最良の価値を達
成するかに依存している(5.2.3.2)。
解析の開始点が階層の最上位又は中位レベルで,故障モードの原因が次に低いレベルの要素の故障に限
定されている場合,この規格では,これを“トップダウンアプローチ”と呼ぶ。
解析の開始点が,目標に関係する階層の最下位レベルの要素に対するものである場合,この規格では,
これを“ボトムアップアプローチ”と呼ぶ。
記述する“トップダウンアプローチ”は,通常,設計の初期段階で用いられ,そのため,適用範囲の意
図的な制限又は利用できる情報の欠落の結果として,深さ及び/又は広さの点で不完全な結果を生むこと
がある。しかし,(必要な場合は推定を用いて)解析を早期に開始することは,将来のアイテムの総合信頼
性及びコストに対して望ましい影響をもつ可能性がある。プロジェクトが本格的な開発を続ける場合,
FMEAは,その目的を完遂できるように,詳しい“ボトムアップアプローチ”を用いてFMEAを完了する
ことが望ましい。
注記1 この規格では,用語“トップダウン”は,FMEAの開発に対するアプローチを記述するために
用いており,故障の木解析に関係する形で解釈されることは意図していない。
注記2 解析の適用範囲が,アイテム固有の性能よりも広範である場合(例えば,火災,洪水又は運用
担当者の影響のような外部事象を含む),又は開発が継続される可能性が低い場合は(例えば,
制約された実現可能性調査),故障の木解析がFMEAより有用な手法であるかもしれない。
表A.1に,トップダウン及びボトムアップアプローチの特徴をまとめている。これらの特徴によって,
所定のアプローチの価値を考察することが可能となる。

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C 5750-4-3 : 2021 (IEC 60812 : 2018)
表A.1−FMEAに対するトップダウン及びボトムアップアプローチの特徴
特徴
トップダウン ·ほとんどの場合,アイテム又はプロセスの最も重要な要求事項又は機能に対する取組を重視する
アプローチ ことを意図した機能解析として実施される。
·開発初期段階では,上位レベルに関する機能要求事項だけが分かっている。
·後期のFMEAは,特に複雑なシステムのより詳細な構成を決定するのに役立つ(ボトムアップに
なることもある)。
·特定の影響に関心があり,故障モードだけが調査を必要とする場合に適用が可能である。
·関心のある特定の要素又は機能を解析が重視する必要がある場合は,費用対効果が高くなる可能
性がある。
アイテムレベルで機能の喪失が評価可能であるが,生じ得る全ての故障を特定しようと試みるより
も,あらかじめ定めた故障事象がどのように生じるかの評価に結果を限定している。
階層のより低いレベルまで続けても,解析の目標を支援する有用な情報がほとんど得られないか,
又は全く得られないような解析の点を評価する際に判断が必要となる。より低いレベルにおける要
求事項の特定が支援可能である。
ボトムアップ ·最も頻繁に適用されるのは,アイテム又はプロセスの個々の要素を関係する最も詳細なレベルで
アプローチ 調べ,故障の影響を規定された階層のより高いレベルで解析する場合である。
·COTSというブラックボックス又は複雑な使い捨てモジュール中の集合的要素についてはほとん
ど仮定されていないため,全ての潜在的な故障モードが考慮されていることによって大きな保証
を与える。
·構成品の全く新しい配置又は既存のアイテムが新しい環境又は用途に採用されるとき,全ての考
えられる影響を特定することに極めて適している。
·最上位又はより高いレベルの影響範囲が分かっていない新しい設計にしばしば用いる。
·アイテムの最上位レベルでの機能喪失は,アイテムの階層構造を通じて構成品の故障の影響を上
に伝ぱ(播)させることによって推察されるので,アイテムの最上位レベルの機能要求事項の知
識は必要でない。
FMEAの規模をかなり増大させる可能性があり,したがって解析に必要な労力がかなり増大するこ
とになる。
A.1.3 解析の詳細の度合い
FMEAは追加情報を得るために,例えば,考えられる処置の選択肢を解析するため又は補給プログラム
の運用,保全又は支援において関連する解析を支援するために,様々な詳細の度合いで開発することが可
能である。FMEAの深さ及び広さは,解析の対象であるシステム,アイテム又はプロセスの複雑さに必然
的に依存する。
A.1.4 故障モードの優先順位付け
FMEAを拡張して致命度解析を含めることは,特定の故障モードの相対的な重要性の尺度が必要なとき
に有用なことがある。相対的な重要性に関するこうした情報は,処置の評価及び行動の優先順位を計画す
るときに使用可能である。全ての故障モードを何らかの形で処置すべき場合には(例えば,規制適合のた
めに必要とされる場合),致命度解析の実施は有用でないことがある。
厳しさ又は致命度だけが,処置の優先順位を決定するときに考慮を必要とすることではない。例えば,
利用できる処置の費用対効果,それらを実施できる容易さ,システムの他の部分へのそれらの影響の仕方
も考慮することが可能である。
厳しさ及び起こりやすさのようなパラメーターの評価は,定量的又は定性的測定尺度を基にすることが
ある。
− 定量的尺度は,関連する運用経験,試験データ又は予測が利用可能で,それによって特定の故障モー

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JIS C 5750-4-3:2021の引用国際規格 ISO 一覧

  • IEC 60812:2018(IDT)

JIS C 5750-4-3:2021の国際規格 ICS 分類一覧

JIS C 5750-4-3:2021の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISZ8115:2019
ディペンダビリティ(総合信頼性)用語