この規格ページの目次
28
C 5750-4-3 : 2021 (IEC 60812 : 2018)
ドに故障率又は発生確率を割り当てることができるときに有用なことがある。
− 定性的尺度は,故障を優先順位付けしなければならないが,詳しい情報が利用できない又は関連する
定量的データを適用できるほどアイテムが十分に定義されていないときに有用なことがある。
表A.2に,FMEAに対するトップダウン及びボトムアップアプローチの定性的及び定量的な致命度評価
の一般的な適用の特徴をまとめる。
附属書Bに,致命度解析法に関する詳細な手引を示す。
A.1の手引は一般的なものである。所定の適用において,より具体的な考察が必要とされることがある。
例えば,安全に関する致命的なシステムは,それらが故障の起こりやすさ及び厳しさを透明性のある形で
特定し,解析し,評価し,処置するやり方で設計又は選択されたことの実証可能な証拠を必要とすること
がある。FMEAは,例えば,トレーサビリティによる低減措置又は処置と,用いる方法が適用の状況に適
していることの証拠とを共に示すようにカスタマイズされることがある。附属書Eでは,一般的な種類の
適用に付随する問題の更なる考察をする。
表A.2−FMEAに対する共通アプローチの一般的適用
定性的解析 定量的解析
トップダウン ·一般的に,アーキテクチャーが既知で,処置
·通常,アプローチの費用対効果が高いアイテム
アプローチ が故障モード及びそれらの影響を優先順位
設計の初期段階で実施される。これは,アイテ
ムの設計をそれ以上分解することが可能でな 付けすることによる設計改善の機会の特定
を重視している場合には,新しいアイテムの
いとき,又は他の何らかの理由のために故障モ
ードに関する知識が得られないレベルまで達 設計と相性がよい。
したときに,解析の停止が可能なためである。
·この形態の解析はまた,故障モードと,その
影響及び低減措置による潜在的価値との間
·アプリケーションの一例は,完成度の高いアイ
テムに対する定義されたOEMのサポート体制 の監査証跡も提示するが,解析の実施はより
の信頼性チェックを低コストで行う場合であ 困難である可能性がある。
·一般に,規制への適合又は投じられた労力に
る。これは,定義された保全タスクと,低減又
は運用管理された故障モードとの間のトレー 対する望ましい見返りの実証など,検証でき
サビリティを示すトップダウン解析によって る成果が必要な場合に妥当となる。
達成が可能である。
初期設計でのトップダウンアプローチは,故障モ
ード及びそれらの影響だけを調べ理解すること
が目的である場合には,定性的評価さえ含まない
ことがある。
ボトムアップ ·一般に,アイテムの設計が完了したとき,設
·通常,実際の定量的性能データが直ちに入手で
アプローチ 計仕様に従っていることを実証し,安全又は
きない場合に,複雑で,しばしば経年変化する
既存のアイテムに対して適用される。 補給支援での解析のような他の解析で用い
·アイテムの重大な変更に伴い設計中の新しい る詳しい材料を提供するために有用である。
この形態の解析には時間がかかり,コストが高
機器の統合を必要とし,定量的解析のデータが
利用できない場合に用いることがある。 いので,一般的には,大量生産又は特定のアイ
テムの厳しい故障の影響によってFMEAプロ
解析の意図を満たす詳細のレベルで解析を始め
セスの適用で投じられた労力に対する見返り
ることを推奨する(例えば,取組が理解の助けに
が得られる可能性がある場合にだけ,実施が妥
ならず,設計を変更する選択肢があってもごく少
数である場合,COTSというアイテムへのFMEA 当となる。
の適用を防ぐ)。
――――― [JIS C 5750-4-3 pdf 31] ―――――
29
C 5750-4-3 : 2021 (IEC 60812 : 2018)
A.2 FMEAのテーラリングに影響する要因
A.2.1 類似のアイテムの解析からのデータ/情報の再利用
これまでの解析データの再利用には,労力及び時間を減らす利点がある。ただし,そのデータは新しい
解析に対して有効でなければならない。これまでの解析データとこれから実施するFMEAとの関係は,次
のような問いを検討することで評価が可能である。
− そのアイテム又はプロセスの設計は,その組織が以前用いていたものと類似している又は同一か。
− 類似したアイテム又はプロセスから利用できるデータは,解析の目的を満たすか。
− 使用又は運用環境の状況は,FMEAを実施すべきアイテムのそれを正確に反映しているか。
注記 多様な顧客に用いられ,多様な産業にまたがって用いられる可能性がある商用既製品(COTS)の
ような量産アイテムは,OEM(Original Equipment Manufacturer)から入手できるFMEAデータが
ないことがある。そうした場合,FMEAは,OEMが提供する保全プログラムにおいて,ある信頼
を得る手段としての価値を除いて,ほとんど価値を付加しないことがある。また,COTSは“ブ
ラックボックス”とみなされ,アイテムの階層の最下位レベルで扱うことが可能である。
FMEAは,総合信頼性プログラムの一部として適用することが可能であり,その場合,他の適用する解
析方法とデータを共有することが可能である。附属書D参照。
A.2.2 アイテム設計及びプロジェクトの完成度
完成度は,プロジェクトの完成度(すなわち,アイテムのライフサイクルにわたるプロジェクトの進捗),
及び設計の完成度の両方に関係している。設計及びプロジェクトの完成度は,関連性があるため一緒に考
察する。
概念設計段階において,アイテムのアーキテクチャー全体の完成度が高くなっている場合には,機能的
なトップダウンFMEAが,高いレベルの故障モードを特定し,アーキテクチャーの選択を助ける機会を提
供する。設計が概念段階を超えて詳細設計まで完成度が高まると,アイテム要素の中で,既に設計済みの
選択範囲は,重点をボトムアップアプローチへ移すことができるようになる。解析に対するボトムアップ
アプローチの開始点は,通常,トップダウン機能解析又はアーキテクチャー分解によるアイテム階層の最
下層に何を選択するかで決まる。
商業的なアイテム設計は,しばしば,変更及び進化の革新的な波を通じて長時間にわたって発展し,総
合信頼性を改善する。完成度の高い進化した設計は,形式に従ったFMEA文書をもっていないことがある。
例えば,FMEAの価値が一般に認められる前に,又は改善プロセスに基づくFMEAを用いることなく,ア
イテムの設計が進化した場合である。ただし,完成度の高い設計は,既知の信頼性性能及び性能の持続を
保証する関連保全プログラムをもつことがある。そうしたアイテムに対して詳細なFMEAを実施しても,
設計又は保全プログラムに対してごく僅かな影響しか与えないことがある。
完成度の低い設計は,しばしば,能力改善及び/又は高い費用対効果を達成するための,最近のアーキ
テクチャーの導入又は新しい材料及び部品の適用という特徴がある。OEMは,アイテムの解析全体に利用
できる形式に従ったFMEAをもっていることがある。そうした設計のためのFMEAがないことは,必要
とされる性能を確実にするための環境試験のような追加処置の理由になるかもしれない。完成度の低い設
計は,完成度の高い構成品又は完成度の低い構成品の使用に起因することがあり,そのいずれも,解析の
労力の程度に影響し得る。
――――― [JIS C 5750-4-3 pdf 32] ―――――
30
C 5750-4-3 : 2021 (IEC 60812 : 2018)
A.2.3 技術革新の度合い
技術革新に関係する故障モードの評価及び処置は,プロジェクトが概念設計から本格的な開発アイテム
に移行するにつれて用いられる,異なる形態をもつFMEAの四つの組合せ(トップダウン又はボトムアッ
プアプローチと,形式に従ったFMEA又は形式に従わないFMEAとの組合せ)の形態の全てによって支
援され得る。
例 技術革新は,新しい技術,新しいプロセス,又は既存の技術の新しい適用,若しくは新規のプロセ
スの場合がある。
完成度の高い技術は,完成度の高い設計に性質が似ている。完成度の高い技術の長期的な進化は,アイ
テム及び要素の機能的記述と連動して,開発の流れを不明瞭にすることがある。したがって,FMEAの効
果を上げるのに有用な方法は,設計に影響を与える可能性について評価し,見込みのある信頼性及び保全
性の能力を変更又は定義し,保全及びそれに関連する統合的な支援ニーズを検証することである。
A.3 アイテム及びプロセスに関するFMEAテーラリングの例
A.3.1 一般
FMEAの深さ及び広さを実際に定義するFMEAのテーラリングがどのようにアプローチされてきたか
を示すため,幾つかの例を次項に記載する。各例について,特定のやり方でFMEAをテーラリングする理
由を説明する前に,解析の対象及び適用の状況について記述する。致命度解析を含む例の場合には,方法
を選択した理由だけを解説している。附属書Bに,致命度解析法の詳細を示す。
A.3.2 オフィス機器の場合のFMEAのテーラリングの例
対象となるアイテムは,初期及び詳細設計段階で評価される統合されたハードウェア及びソフトウェア
を含んだ,新設計のオフィス機器である。アイテムの設計は,既存の製品群からの大きなモデルチェンジ
の際に行った。新設計の要素は新規なもので,新技術を用いることになっていた。会社は,全ての既存部
品について,例えば,ストレス,故障モード,メカニズム,アイテム構造及びその他関連情報のデータを
含む信頼性データベースを維持していた。アイテムの要素は,トップレベル製品に必要とされる機能を果
たすために,全てが直列に結合されていた。
FMEAは,アイテムの設計,及びその製造プロセスのレビューを支援する信頼性プログラムの一環とし
て実施された。設計局面での故障モードの予測及び影響軽減は,競争力のある製品開発を実現するために
非常に重要と考えられていた。組織は,製品群の性能及び故障に関して相当の運用経験をもっていた。し
たがって,FMEAでは,製品及びプロセスの設計局面で特定された技術的弱点を改善することを目標に,
そうしたデータを用いることが可能であった。
アイテムの単純化のために,また,顧客が規定する使用条件下での下位レベルの要素性能の完全な理解
に基づいてシステムレベルの機能性及び信頼性を確実にするというプログラムの目標のために,ボトムア
ップFMEAを選択した。さらに,製品の設計方法では,既存の技術と新しい技術とを混合した。既存の技
術を用いてさえ,運用条件の変化は異なる故障モードをもたらすことがあり,そのためにボトムアップ
FMEAを適用した。
FMEAは致命度解析を含んでいたが,これは故障の厳しさ及び起こりやすさを測定することによって,
再設計の優先順位が設定できるためであった。設計サイクルが短かったため,全ての組合せを試験及び解
析することは不可能であり,FMEAは,要素と設計パラメーターとの間のインタフェースの検証のために,
――――― [JIS C 5750-4-3 pdf 33] ―――――
31
C 5750-4-3 : 2021 (IEC 60812 : 2018)
どこにリソースを配分するかの情報を与える目的で用いた。この種のFMEAを支援し,妥当性を確かめる
ための,類似製品の運用経験がかなり存在していた。
致命度はRPN定性的手法(附属書B)を用いて決定したが,これは,この方法が簡単に適用可能で,包
括的であると考えられたためであった。厳しさ及び起こりやすさのカテゴリーの適用及び評価において,
測定基準の一貫性を保つために,社内で開発した致命度パラメーターの評価基準表を用いた。これによっ
て,様々な種類の製品のFMEAを簡単に比較することが可能となった。
A.3.3 分散電力システムの場合のFMEAのテーラリングの例
設計の弱点を特定し,分散電力システムの頑健性及びフォールトトレランスを得るためにFMEAを必要
とした。解析は,完全なシステムアベイラビリティの研究に向けた第一段階でもあった。分散電力システ
ムは製品群内の新設計である。使用技術は十分に理解されていたが,この新設計は,以前の設計の大きな
モデルチェンジと考えられていた。システム構造は異なるが,同じ機能をもつためである。FMEAは,設
計及びその性能面に関する新しいデータが他の総合信頼性及び工学解析から得られる詳細設計中に行われ
ることになっていた。
FMEAは,トップダウンアプローチを選択し,システムの機能詳細を定義することから開始した。これ
によって,より低いレベルに依存する故障解析を支援する機能から逸脱することが可能になった。システ
ムの機能は,故障モード,それらの原因及び影響を特定できるようにするために,システム機能を分解す
るトップダウンFMEAの開発によって特徴付けられた。
FMEAには,引き続きアベイラビリティ解析法もサポートする,故障モードの発生度及びその影響とい
う定量化可能な情報による致命度解析も含まれていた。FMEAの最初のサイクルでは,定性的なRPN法を
用い,設計のより多くの詳細が利用できるようになると,実際の故障率を用いて発生度の定量的可能性を
評価した。
A.3.4 医療プロセスの場合のFMEAのテーラリングの例
複数の国にまたがる多くの医療組織は,自己認定の一環として,どこで,どのように失敗することがあ
るかを明確にするために,定期的に自らの手順を評価する必要がある。その目的は,最も変更の必要があ
るプロセスの部分を特定すること,及び医療的に好ましくない事象を減少させることである。FMEAは,
この要求事項を達成するための承認された方法である。FMEAは,あらゆる医療的手順に適用可能である。
例えば,必要とされる服用量を調合すること,薬を投与すること,手術を行うこと,及び患者に麻酔をか
けることである。
手順の設計は単純かもしれないが人々が誤りを犯す可能性のある,又は機器若しくは環境要因のために
意図した方法で人々がステップを実施できない可能性のある医療手順のためのFMEAを,この例では考察
している。
解析する手順の開始及び終了は明確に定義し,実施するタスクは,各故障モードが特定されるような複
数のステップに分割することが望ましい。
医療現場にFMEAを適用するとき,推奨される処置は,手順全体の設計変更よりも,チェックアンドバ
ランス(抑制均衡)の追加が最も多くなる。
機器が故障するとプロセスのステップが正しく実施されなくなる可能性がある場合,又は手順書では1
ステップであるものが,実際には複数のステップである場合では,状況に応じて補助的なFMEAを実施す
る必要がある。
――――― [JIS C 5750-4-3 pdf 34] ―――――
32
C 5750-4-3 : 2021 (IEC 60812 : 2018)
FMEAを医療手順に適用するときは,一般に,患者に深刻な結果をもたらす全ての故障モードを扱う。
致命度解析を実施する場合は,通常,RPN法が用いられる。これは,悪い結果が生じる前に容易に検出さ
れる潜在的故障は,惨事が起きるまで潜んでいる故障モードよりも重要性が低いためである。
ヒューマンエラー率の定量的解析は,通常,複雑であり,信頼できない可能性がある。RPN又は致命度
マトリックスのような単純な方法が,多くの場合,致命度の有用な評価を与えるために,また,プロセス
の改善をガイドするための優先順位付けを与えるために,必要な全てである。
A.3.5 電子制御システムの場合のFMEAのテーラリングの例
列車のブレーキシステム及び衝突防止システムなどの安全電子制御システムの概念及び詳細設計におい
て,解析を支援するためにFMEAが必要とされた。システムは,以前のシステム設計の改良型であった。
新しいシステムと既存のシステムの間の変化は主に設計アーキテクチャーにおいてであり,用いられてい
る技術は十分に理解されていた。
FMEAの目的は,システムの安全特性を実証することであった。そのため,ボトムアップFMEAが選択
されたが,これは,どの最下位レベルの要素が故障するかによらず,定義された対策がシステムの全ての
特定されたエラーシナリオを適切に軽減できることを,このアプローチによって解析者が体系的に証明で
きるためである。
FMEAは,システムの故障のリスクを軽減させる能力の解析に重点を置いて書かれている。この能力は,
安全性が要求されるシステムに関して実施する解析の不可欠な一部である。本質的に,故障の影響は,そ
れらが安全か安全でないかで分類する。正しい判断のために,影響の記述の範囲は意味のあるものである
ことが望ましい。例えば,レベルを局所的な影響に余りに集中しすぎると,解析者はシステム全体に対す
る影響の致命度を推定できないことがあり,システムのレベルが広範すぎると,解析は最終的な影響まで
故障を追跡できないことがある。
FMEAに対するアプローチは,多くの問題に関わる議論を生じさせる。例えば,一般には,単にシステ
ムの診断能力に影響を与えるだけで主要な機能を妨げない故障モードのこととなると議論が生じる。もう
一つの考慮事項は,軽減対策の応答時間である[すなわち,故障事象の発生前に故障の発端を検出するこ
とがまれ(稀)な場合,どの程度,軽減対策を考慮に入れるか]。
FMEAの支援に用いられるツールは,カスタムメイドのスプレッドシートから,故障モードをアイテム
の性能モデルへ構築するためにRBDを適用する,特別なリレーショナルデータベースツールまでにわた
る。例えば,異なる故障モードが,ある分類領域に緊密に関係している同一の故障の影響につながること
がある場合,サブシステムは,構成品の例を,それらの固有の故障モードの定義とともに参照することが
ある。
A.3.6 ポンプのハイドロブロックの場合のFMEAのテーラリングの例
基本的なFMEAが,ガスボイラのポンプのハイドロブロックの初期設計に情報を与えるために実施され
た。ハイドロブロックの機能は,ポンプ機能(流量,圧力),誘導弁機能(セントラルヒーティングモード
とポータブル温水モードとの間でボイラ運転を切り替える),セントラルヒーティング回路の換気(液体か
ら空気を分離して排出する),システムの圧力条件下での水密性,外部水力接続継手に接続可能であること
などを含んでいる。会社は類似のアイテムに関してかなりの運用経験をもっており,これは,アイテムの
設計を変更する既存の製品の小規模変更であった。
FMEAは,設計チームを主体に実施された。初期設計段階及び設計チームの経験に基づいて,FMEAの
――――― [JIS C 5750-4-3 pdf 35] ―――――
次のページ PDF 36
JIS C 5750-4-3:2021の引用国際規格 ISO 一覧
- IEC 60812:2018(IDT)
JIS C 5750-4-3:2021の国際規格 ICS 分類一覧
- 21 : 一般的に使用される機械的システム及び構成要素 > 21.020 : 機械,装置、設備の特性及び設計
- 03 : サービス.経営組織,管理及び品質.行政.運輸.社会学. > 03.120 : 品質 > 03.120.30 : 統計的方法の応用
- 03 : サービス.経営組織,管理及び品質.行政.運輸.社会学. > 03.120 : 品質 > 03.120.01 : 品質一般
JIS C 5750-4-3:2021の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISZ8115:2019
- ディペンダビリティ(総合信頼性)用語