JIS C 5750-4-3:2021 ディペンダビリティマネジメント―第4-3部:システム信頼性のための解析技法―故障モード・影響解析(FMEA及びFMECA) | ページ 9

           38
C 5750-4-3 : 2021 (IEC 60812 : 2018)
帯域間の境界は,曲線(例A)又は単純な直線(例B)である必要はない。特定された故障モードの処
置の要求事項に応じて,階段状の境界(例C)が適切な場合も,線と曲線との組合せが適切な場合もある。
注記1 例Bでは,同じリスクレベルの境界は,線で表されている。起こりやすさ及び結果が線形−線
形尺度でプロットされる場合,線は曲線に,また,対数−対数尺度でプロットされる場合,直
線になる。ここでは,リスクを起こりやすさと結果との積と定義している。
注記2 起こりやすさを線形尺度上にプロットする場合は,ゼロという値を取り得る。これは,結果の
影響は大きいが起こりやすさが低い故障の致命度ランクに誤解を招く場合がある。
実際には,滑らかな帯域の境界は,起こりやすさを定量的に表すことが可能であり,故障の結果が連続
的で(例えば,財務的な結果),完全に特定できる場合だけ意味をもつことになる。
致命度プロットは,二つのパラメーターに限る必要はなく,必要であれば第三のものへと拡張すること
が可能である。ただし,有効で,扱い得る平面を形成するために必要とされる複雑さ及び労力は相当に大
きく,費用対効果が低くなる可能性がある。
結果/厳しさの尺度が,定量化は可能だが,明確に分かれた値又は複数の帯域の値をもつ場合には,致
命度プロットは,それでも適用可能であるが,致命度値の境界はほぼ確実に階段状となる。これは,致命
度マトリックスに似た表現になる。

B.4 リスク優先数を用いた致命度の割当て

B.4.1 一般
リスク優先数(RPN)は,結果,起こりやすさ及び検出度の値を使って,順序尺度上でなされる半定量
的評価の組合せによって得られる。この方法では,これらのパラメーターは,それぞれ,厳しさ(S),発
生度(O)及び検出度(D)と呼ばれ,このことから,ある種の用途では,これを“SOD”法とも呼ぶ。RPN
を評価する二つの方法を示す。
B.4.2 リスク優先数
リスク優先数(RPN)の共通形式は,厳しさ,発生度及び検出に関する三つの格付けの積である。
RPN=S×O×D
RPN値の範囲は,三つのパラメーターに対する測定尺度に依存し,これは通常,110の順序格付け尺
度を用い,11 000にわたる全体的なRPN値を生成する。
注記1 あるFMEAの適用は,検出度Dのパラメーターを省いているため,全体的なRPN尺度は1
100となっている。
注記2 用途の性質が,尺度上の点の数を10未満が適切であるように決定する。
S,O及びDの数値は格付け表を用いて決定され,その表では各パラメーターのレベルに,解析者の正
確で一貫性のある格付けを支援する説明的な文章が付随する。
検出度の数値Dは,重大な故障の影響が生じる前に,運用中に故障モードが検出されることが予想され
る際の,その起こりやすさを表すことが可能である。この数値は,通常,厳しさの数値又は発生度の数値
とは逆の順序で格付けされる。検出の数値が大きいほど,検出は生じない。検出の起こりやすさが低いほ
ど,結果としてRPNは大きくなり,故障モードの解決の優先順位は高くなる。

――――― [JIS C 5750-4-3 pdf 41] ―――――

                                                                                            39
C 5750-4-3 : 2021 (IEC 60812 : 2018)
例1 この例は,発電用風力タービンに関するものである。厳しさの格付けの典型的な測定尺度は,こ
のようなものである(一部省略している)。
厳しさの 説明
格付け(S)
1 発電への影響なし。14日後に視察の必要あり。警報によってタービンが停止することはなかった。
原因は恐らく構成品の故障。
2 発電の短時間の喪失。14日後に視察の必要あり。タービンは停止したが,遠隔的にリセットが可
能。原因は恐らく構成品の故障。
: :
8 より長い期間にわたる発電の喪失(24週間)。補修容器を必要とする重要構成品の交換。
9 長期にわたる発電の喪失(4週間を超える期間)。大きな補修容器を必要とする重要構成品の交換。
10 安全に関わるインシデント。構造物全体の機能喪失。全体で数箇月にわたる発電喪失。
例2 この例は,発電用風力タービンに関するものである。発生度の格付けの典型的な測定尺度は,こ
のようなものである(一部省略している)。
発生度の 説明
格付け(O)
1 10 000機械·年に1回,故障モードが発生する。
2 2 000機械·年に1回,故障モードが発生する。
: :
8 機械当たり,年に1回,故障モードが発生する。
9 機械当たり,4か月に1回,故障モードが発生する。
10 機械当たり,1か月に1回,故障モードが発生する。
例3 この例は,発電用風力タービンに関するものである。検出度の格付けの典型的な測定尺度は,こ
のようなものである(一部省略している)。
検出度の 説明
格付け(D)
1 結果が実際に生じる前に,常にその故障モードが発見される。
2 故障モードは明白なもので,通常は,結果が実際に生じる前に,故障モードが発見される。
: :
8 故障モードは点検によって,例えば,サンプル検査によってだけ発見される。
9 故障モードは発見が困難であり,そのため,ほぼ避けがたい結果が生じる。
10 例えば,そこへ近づけないなど,機能の点検が行えず,故障モードは発見不可能である。
故障モードは,次にそれらのRPNに関して順序付けされ,通常,RPNの高い順に優先順位が割り当て
られる。RPNの大きさに加え,処置の決定は故障モードの厳しさの影響を受けることがあり,これは,類
似の又は同一のRPNをもつ故障モードが存在する場合に,第一に対処すべき故障モードは,厳しさの格付
けが高いものであることを意味する。
注記3 ある用途では,定義されたしきい値を超えるRPNをもつ影響は受容できない一方,他の用途で
は,RPNの値にかかわらず,高い厳しさの数値に高い重要度が与えられる。
RPNの格付け順序は,尺度が定義される方法の影響を受ける。RPNの値から結論を引き出す又は値を比
べるときは,この方法の次の特徴を考慮に入れることが望ましい。これは,そうしないと不適切な決定に
至る可能性があるためである。
a) RPN尺度は連続的ではない。
例4 110の三つの尺度で,1 000の利用できる数値のうち,120だけが生成される。
b) 値の間の数の比率は特定の意味をもたない。

――――― [JIS C 5750-4-3 pdf 42] ―――――

           40
C 5750-4-3 : 2021 (IEC 60812 : 2018)
注記4 これは,尺度が順序付けられ,厳しさ,発生度及び検出の測定が等しく重み付けされてい
ることの結果である。したがって,RPN数の間の差は小さい場合があるが,実際は,意味
的に大きな差をもっている。例えば,値 : S=6,O=4及びD=2はRPN=48を生成する
が,S=6,O=5及びD=2はRPN=60を生成する。後者のRPNは僅かに大きいだけであ
るが,例えばO=5は,O=4の発生度の数倍に対応することがある。
c) RPNは,一つのパラメーターの値の小さな変化に敏感である可能性がある。
注記5 一つのパラメーターの小さな変化は,他のパラメーターが小さい場合より大きいとき,明
らかにはるかに大きな影響をもつ(例 : 9×9×3=243及び9×9×4=324対3×4×3=36
及び3×4×4=48)。
RPNの使用に関する優良慣行は,致命度評価に関する意見をまとめて処置を決定する前に,厳しさ,発
生度,及び検出の値の徹底的なレビューを実施することである。
B.4.3 代替リスク優先数法
いわゆる代替RPN法(ARPN)は,B.4.2に記述する,一般的に用いられているRPNの変更バージョン
であり,パラメーターを対数尺度上で定量化できる場合に,より一貫性のある致命度評価を与えるという
目的で開発された(Braband,2003年)[27]。
ARPNの場合,パラメーターの測定尺度上の点は,定量的な測定尺度の意味が保持されるように定義さ
れ,校正される。レベルに付随する各値が,一つ前のものに対し,固定された倍数(10,10の平方根など)
である場合は,対数尺度を用いる。厳しさ,発生度及び検出度の各尺度について,同じ倍数を用いなけれ
ばならない。結果として,パラメーター尺度の格付けレベルの数は,関心のある特定の範囲によって決定
され,B.4.2に記述するRPNで通常用いる10のレベルより,多い場合も少ない場合もある。
厳しさ,発生度及び検出度の格付けを定義する表は,説明的な文章に加え,通常は,それぞれの格付け
レベルに付随する値を記載することが望ましい。
例1 この例は,鉄道分野に関するものである。発生度の尺度は,10の倍数,又は約3である10の平
方根の倍数に基づいて校正されることがある。後者の場合,尺度の二つの近接するレベルの値が,
1桁の差を構成する。アイテムの所定の故障モードに対する,発生度の尺度の対応するレベルは,
次のとおりである。
発生度の格付け(O) 説明
1 故障率1回/100 000年以下。
2 故障率1回/100 000年以上,1回/30 000年以下。
3 故障率1回/30 000年以上,1回/10 000年以下。
4 故障率1回/10 000年以上,1回/3 000年以下。
例2 この例は,鉄道分野に関するものである。鉄道産業からのハザード(すなわち,厳しさ)に関す
る次の尺度は,約3である10の平方根にほぼ基づいている。
厳しさの格付け(S) 説明
1 軽微なハザードであり,負傷は予想されない。
2 一人が軽傷。
: :
6 致命的で,死者が一人又は多くの人が重傷。
7 破局的で,数人の死者を伴う。
8 破局的で,多くの死者を伴う。
例3 この例は,鉄道分野に関するものである。鉄道産業からの結果回避(すなわち,検出)に関する

――――― [JIS C 5750-4-3 pdf 43] ―――――

                                                                                            41
C 5750-4-3 : 2021 (IEC 60812 : 2018)
次の尺度は,約3である10の平方根にほぼ基づいている。
検出度の格付け(D) 説明
1 例えば,独立した技術的システムの手段によって,常に,結果回避がほとんど可能。
2 条件が良好であるため,多くの場合,結果回避が可能。
3 条件が好ましくないため,時々しか,結果回避は可能でない。
4 結果回避は実質的に不可能。
時に,厳しさ,発生度又は検出度は,尺度上の各ポイント(点)(説明的な文章に加えての)に,直ちに
は結び付かない。この場合,それでも解析者は,近接する各レベルが,互いの関係において固定的な倍数
にほぼなっていることを確認することが望ましい。これは,次のことを考慮した判断によってなされ得る。
すなわち,レベルを一つ増加又は減少させることは,例えば,厳しさの度合い又は検出の起こりやすさの,
選択した倍数に応じた10又は10の平方根の倍率での増加又は減少を意味することが望ましい。
故障モードに対するパラメーターを確立した後は,校正されたパラメーターの尺度が実際には対数であ
るため,ある故障モードに対してパラメーターS,O及びDのレベルを加算する方が,それらを乗算する
よりも適切である。したがって :
ARPN=S+O+D
B.4.2と同様に,故障モードを,ARPNを用いて順序付けることが可能で,通常はARPNの高い順に優先
順位が割り当てられる。ARPNの大きさに加え,処置の決定は故障モードの厳しさに影響されることがあ
り,これは,類似の又は同一のARPNをもつ故障モードが存在する場合に,第一に対処すべき故障モード
は,厳しさが高いと評価されたものであることを意味する。
注記1 ある用途では,定義されたしきい値を超えるARPNをもつ影響は受容できない一方,他の用途
では,ARPNの値にかかわらず,高い厳しさの値に高い重要性が与えられる。
ARPNアプローチは,致命度の連続的な尺度に関する要求事項,及び各故障モードに付随するリスクの,
そのRPN数に対しての単調マッピングに関する要求事項を満たす。さらに,致命度パラメーターのレベル
の小さな変化は,結果として得られるRPNの小さな変化しかもたらさず,これは,ARPNがRPN(B.4.2)
よりも敏感でないことを意味する。ARPN値は,通常,致命度パラメーターの同じ入力値に対して,RPN
法による値よりも低いことに注意することが望ましい。
例4 特定された故障モードであって,それでも受容可能と考えられるものが,対応するレベルS=5,
O=5及びD=5をもち,一般的に用いられるRPN法によってRPN=125を生成する。代替RPN
法を用いると,これはARPN=15になる。
注記2 三つのパラメーターの全てについて定量的データが得られる場合には,半定量的な帯域を設定
するよりも,値を掛け合わせることでリスクを直接,単純に計算する方がより適切なことがあ
る。

――――― [JIS C 5750-4-3 pdf 44] ―――――

           42
C 5750-4-3 : 2021 (IEC 60812 : 2018)
附属書C
(参考)
FMEA報告書の内容の例

C.1 一般

  附属書Cは,電源ユニットに関する一つの解析例が,データベース情報システムからワークシート及び
図表を作成することによって,どのように様々な形式で報告されるかを示す。
一般に,詳細報告書には解析の目標,及び目標との整合性がある解析の成果を記述することが望ましい。
附属書Cの例は,データベースから作成したFMEAワークシート及び図表であるので,それらはFMEA
報告書(5.2.5.2)のほんの一部分を形成するにすぎない。詳細なFMEA報告書は,解析に直接関わらない
人々が報告書を理解できるように,5.2.5.2に記述した情報を含めることが求められる。また,追加情報は,
FMEA報告書とは別のシートで報告することが可能である。
FMEAの様々な適用のためのワークシートの形式の追加例を,附属書Fに示す。FMEA報告書は解析の
目標及び状況に左右されるため,単一の報告形式は存在しない。
注記1 実際に用いる報告形式は,例示した形式とは異なり得る。
FMEAの報告書を作成するための,商用ソフトウェアパッケージが存在する。
注記2 参加者が少ない単純な解析では,スプレッドシートが有用であり得る。複数の情報源及び複雑
な報告の要求事項がある,より複雑な解析には,故障モード,機能,アイテム,構成品及び故
障原因の間の幾つかの関係を扱うリレーショナルデータベースが有用であり得る。

C.2 電源ユニットのFMEAに関するデータベース情報システムに基づいた報告書の作成例

  図C.1に,どのようにデータベース情報システムが構成されることがあるかを示す。データベース情報
システムを利用できる場合,FMEAは,次のデータベースを結び付けた一つのファイルとなり得る。
− 仕様のリスト
− 部品リスト(部品表)
− 会社の構成品及び製品に関係する故障モードのリスト
− 考えられる処置のリスト(処置のデータベース)
データベースを用いる利点は,情報を何度も入力する必要がないこと,及びプロジェクトが進行して変
化が生じたときにFMEAを更新し続けることが容易であることである。
このデータベース情報システムから入力することができるFMEA報告の全ての欄を,図C.2に示す電源
の例について,表C.1に示す。欄の様々な組合せを選択することによって,様々なFMEAワークシート
(表C.2表C.5)及び図(図C.3)が作成可能である。
電源の例の場合,FMEAは装置内の故障の,ユーザーに対して発生する影響だけを評価する。結果は,
データシートに示す全ての周囲条件下で有効である。このFMEAは,使用中に生じる危険だけを反映して
おり,製品のライフサイクル内の他のフェーズのものは反映しない。

――――― [JIS C 5750-4-3 pdf 45] ―――――

次のページ PDF 46

JIS C 5750-4-3:2021の引用国際規格 ISO 一覧

  • IEC 60812:2018(IDT)

JIS C 5750-4-3:2021の国際規格 ICS 分類一覧

JIS C 5750-4-3:2021の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISZ8115:2019
ディペンダビリティ(総合信頼性)用語