JIS H 7203:2007 水素吸蔵合金の水素吸蔵・放出サイクル特性の測定方法 | ページ 2

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H 7203 : 2007

4.2 機器の精度

  使用する機器の精度は,次による。
− 恒温槽温度保持精度 : ±0.5 K
− 温度測定精度 : ±0.5 K
− 圧力測定精度 : 最高使用圧力で有効数字4けた以上あるものを使用する。

4.3 水素の純度

  測定に使用する水素の純度は,JIS K 0512に規定する3級又はそれと同等以上の品質とする。
注記 開放系測定法では,不純物ガスを含む水素を用いることによって,水素中の不純物ガスに起因
する水素吸蔵・放出サイクル特性を測定することもできる。不純物ガスを含む水素を使用する
場合,あらかじめ不純物ガスが混合されているボンベガスを用いるときには,そのガスの分析
値を採用し,また,ガス混合機によって混合ガスを供給するときには,分析器によって不純物
ガスの濃度を測定するのがよい。

4.4 装置の容積の算出

  装置の容積の算出は,次による。
a) 閉鎖系測定法の測定系及び試料系容積の算出 容積の基準となる容積が既知の容器[容積v (cm3)]1)
を,バルブ (V3) を挟んで測定系に接続し,JIS H 7201の4.4.2及び4.4.3と同様の手順によってそれ
ぞれ測定系[蓄圧容器 (B),配管,圧力計 (P) など]の容積 [vd (cm3) ] 及び空の状態の試料系容積 [vv
(cm3) ] を算出する。
b) 開放系測定法の吸蔵測定系及び試料系容積の算出 容積の基準となる容積が既知の容器[容積v
(cm3)]1) を,バルブ (V6) を挟んで吸蔵測定系に接続し,JIS H 7201の4.4.2及び4.4.3と同様の手順
によって,それぞれ吸蔵測定系(蓄圧容器,配管,圧力計など)の容積 [vd (cm3) ] 及び空の状態の試
料系(配管,圧力計など)の容積 [vv (cm3) ] を算出する。
注1) 容積の基準となる容器の容積vの測定法は,JIS H 7201の4.4.1を参照するのがよい。

5 測定準備

5.1 圧力-組成等温線図の作成

  5.2 a) で調整した試料を用い,JIS H 7201によって,任意の測定対象温度における吸蔵線及び放出線を
測定し,圧力−組成等温線を作成する。測定対象温度は,少なくとも3水準とし,圧力−組成等温線図(以
下,“PCT線図”という。)を作成する。PCT線図の作図例を図3に示す。
ただし,第三者(合金製造業者など)からPCT線図の提供を受けた場合は,この測定を省略することが
できる。

――――― [JIS H 7203 pdf 6] ―――――

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図3−PCT線図の作図例

5.2 試料の準備

  測定する水素吸蔵合金の試料の準備は,次による。
a) 試料の調整 粉砕可能な試料は,活性化処理を容易にし,かつ,表面からの劣化を最小限に抑えるた
め,試料容器への充てん直前に粉砕する。ただし,粉砕困難な試料については,数mm程度の大きさ
に機械的な方法で切断する。
b) 試料の量 測定に用いる試料の量 [X (g) ] は,体積充てん率が試料容器の容積の520 %になるよう
な量で,かつ,5.1で作成したPCT線図から第1回目の測定系における水素移動量を予測して,閉鎖
系測定では第1回目の測定時に測定系に導入する圧力P'd02)と吸蔵平衡圧力Paとの差がPaの5 %以下
になるような量,また,開放系測定では,水素化初圧pd0と水素化終圧pdaとの差がpdaの5 %以下にな
るような量とし,その質量を有効数字3けた以上ではかる。

――――― [JIS H 7203 pdf 7] ―――――

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注2) 'd0は,6.1 a) 2) で算出する。
c) 試料の試料容器への充てん 試料容器の加熱・冷却によって試料の水素吸蔵・放出反応を速やかに生
じさせるため,試料は試料容器内にできる限り一様に分布するようにする。このとき,水素吸蔵・放
出反応によって合金試料の体積が試料容器内で十分変化できるように,試料を詰め込みすぎないよう
に注意する。

5.3 測定装置の準備

  測定装置の準備は,次による。
a) 漏れ試験 試料を充てんした試料容器を測定装置に接続し,放出測定系内又は吸蔵測定系内及び試料
系内を真空脱気した後,測定時の水素の最高使用圧力まで不活性ガスを導入し,装置に漏れがないこ
とを確認する。
b) 試料充てん時の試料系容積の算出 試料充てん時の試料系の容積 [vr (cm3) ] をJIS H 7201の5.2 b) 1)
によって測定する。ただし,水素吸蔵合金の試料の密度が既知の場合は,試料充てん時の試料系の容
積vrをJIS H 7201の5.2 b) 2) によって計算で求めてもよい。

5.4 試料の前処理

  試料は,JIS H 7201の5.3によって活性化処理及び安定化処理を行い,水素吸蔵・放出特性を安定化さ
せる。

5.5 測定条件の設定

  測定条件の設定は,次による。
a) 閉鎖系測定法の場合 繰返し水素吸蔵・放出反応を生じさせるための反応温度可変器 (R) の放出温度
[TH (K) ] 及び最低温度 [TL (K) ],放出平衡圧力 [Pd (MPa) ] 及び吸蔵平衡圧力 [Pa (MPa) ] を,5.1で得
られた試料のPCT線から,試料の最大水素吸蔵量の80 %以上の水素を吸蔵・放出するように設定す
る。
b) 開放系測定法の場合 繰返し水素吸蔵・放出反応を生じさせるための試料温度 [Tr (K) ],水素化終圧
[pda (MPa) ],並びに放出平衡圧力 [pd (MPa) ] を,5.1で得られた試料のPCT線図から,試料の最大水
素吸蔵量の80 %以上の水素を吸蔵・放出するように設定する。

6 測定

6.1 閉鎖系測定法による測定

  閉鎖系測定法による測定は,次の手順によって行う。
a) 初期状態の設定
1) 真空脱気 5.4で前処理した試料を,放出温度 [TH (K) ] 又はそれ以上の温度に加熱し,図1のバル
ブ (V1) 及びバルブ (V2) を開き,バルブ (V2) に接続した真空ポンプによって真空脱気し,試料か
ら水素を放出させた後,すべてのバルブを閉じる。
2) 測定系への水素の導入 測定用の水素を,バルブ (V3) に接続する。バルブ (V3) を開け,測定系内
に式 (1) によって算出される水素吸蔵開始時の圧力 [P'd0 (MPa) ] で水素を導入した後,バルブ (V3)
を閉じ,測定系内の圧力を安定させる。
なお,式 (1) のW (0) は,5.1で得られたPCT線から設定した第1回目の測定時の温度及び圧力
から推定される水素移動量の値であり,各項にある圧縮率因子z1z3は,それぞれ測定系及び試料
系の各温度及び各圧力での水素の圧縮率因子で,JIS H 7201の式 (4) によって求める。また,算出
に当たっては,測定系の温度 [Td (K) ] をあらかじめ測定しておく。

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z1Td Pavd Pavr W(0) X 1.0vr
P'd0 (1)
vd z2Td z3TL 200AH TL
ここに, AH : 水素の原子量=1.007 94
R : 気体定数=8.314 472 (J・mol−1・K−1)
b) 第1回目の水素移動量の測定
1) 水素吸蔵 a) 2) の操作終了後,バルブ (V1) を開き,測定系の水素を試料系に供給し,試料容器 (D)
を,反応温度可変器 (R) によって5.5 a)で設定した吸蔵温度 [TL (K) ] まで冷却し,試料に水素を吸
蔵させる。水素吸蔵反応が進行し,温度計 (T2) 及び圧力計 (P) の指示値が安定して平衡状態にな
ったことを確認した後,圧力計 (P) で吸蔵平衡圧力 [Pa (MPa) ] を測定する。このとき,水素吸蔵反
応に要した時間を水素吸蔵時間の設定値(以下,“冷却時間”という。)[ta (s) ] とする。
なお,平衡状態の判定は,受渡当事者間の協定によって,取り決めてもよい。
2) 水素放出 試料容器 (D) を,反応温度可変器 (R) によって5.5 a) で設定した放出温度 [TH (K) ] ま
で昇温し,試料から水素を放出させる。水素放出が進行し,温度計 (T2) 及び圧力計 (P) の指示値
が安定して平衡状態になったことを確認した後,圧力計 (P) で放出平衡圧力 [Pd (MPa) ] を測定す
る。このとき,水素放出反応に要した時間を水素放出時間の設定値(以下,“加熱時間”という。) [td
(s) ] とする。
c) 繰返し水素吸蔵・放出の測定 b) の1) 及び2) で定めた冷却時間ta及び加熱時間tdで,b) の1) 及
び2) の操作を繰り返し,各測定サイクルごとの吸蔵平衡圧力 [Pa (MPa) ] 及び放出平衡圧力 [Pd
(MPa) ] を測定する。ただし,バルブ (V1),バルブ (V2) 及びバルブ (V3) の操作は,繰返し測定が終
了するまで行わない。また,繰返し吸蔵・放出回数が増え,平衡になるまでの時間が不十分と認めら
れる場合は,冷却時間ta及び加熱時間tdを延長してもよい。

6.2 開放系測定法による測定

  開放系測定法による測定は,次の手順によって行う。
なお,測定中は測定系内に空気などが混入しないように十分な注意を払う。
a) 初期状態の設定
1) 真空脱気 5.4で前処理した試料を,測定対象温度又はそれ以上の適切な温度に加熱し,図2のバル
ブ (V2) 及びバルブ (V5) を開き,バルブ (V5) から真空脱気して水素を放出させた後,測定対象温
度においてすべてのバルブを閉じる。
2) 放出圧力の設定 バルブ (V1) 及びバルブ (V2) を開き,吸蔵測定系及び試料系に水素化初圧pd0の
1.5倍程度の圧力の水素を供給した後,バルブ (V1) 及び (V2) を閉じる。試料系の圧力が安定した
後,バルブ (V3) を開き,圧力計 (P2) で試料系の水素圧力を計測しながら一次圧調整バルブ (VL)
を調整して5.5 b) で定めた放出平衡圧力 [pd (MPa) ] の値になるように設定し,水素流量計 (Q) の
指示値がゼロを示したとき,バルブ (V3) を閉じ,試料温度 [Tr (K) ],放出平衡圧力 [pd (MPa) ] 及び
吸蔵測定系の温度 [Td (K) ] を測定する。
b) 第1回目の水素吸蔵・放出の測定
1) 吸蔵測定系の圧力の設定 a) 2) の操作終了後,バルブ (V1) を開き,吸蔵測定系の圧力を,式 (2) に
よって算出される水素吸蔵開始時の圧力(水素化初圧)p'd0になるように調節した後,バルブ (V1) を
閉じる。圧力が安定した後,水素化初圧 [pd0 (MPa) ] を測定する。また,算出に当たっては,吸蔵
測定系の温度 [Td (K) ] をあらかじめ測定しておく。

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z1Td pdavd pdavr W(n) X pdvr
p'd0 (2)
vd z2Td z3Tr 200AH z4Tr
なお,式 (2) の各項の分母にある圧縮率因子z1z4はそれぞれ吸蔵測定系及び試料系の各温度,
及び各圧力での水素の圧縮率因子で,JIS H 7201の式 (4) によって求める。算出値は,有効数字4
けたまで求め,JIS Z 8401に規定する規則Aによって有効数字3けたに丸める。
注記 式 (2) のW (n) は,5.1で得られたPCT線から設定した第1回目の測定時の温度及び圧
力から推定される水素移動量の値である。
2) 水素吸蔵 バルブ (V2) を開き,試料に水素を吸蔵させる。6.1 b) 1) で定めた冷却時間ta経過後,
バルブ (V2) を閉じる。吸蔵測定系及び試料系の圧力が安定した後,圧力計 (P1) で水素化終圧pda
を測定する。
なお,バルブ (V2) を閉じた後,試料系の圧力計 (P2) の読みに低下が認められるときは,まだ水
素吸蔵反応が終了していないので,再びバルブ (V2) を開き,冷却時間taを延長して試料に水素を
吸蔵させた後,バルブ (V2) を閉じる。以後の繰返し測定では延長した冷却時間taを用いる。
3) 水素放出 バルブ (V3) を開き,試料から水素を放出させる。6.1 b) 2) で定めた加熱時間td 経過後,
バルブ (V3) を閉じる。試料系の圧力が安定した後,圧力計 (P2) で,第1回目の放出平衡圧力pd
を測定する。
なお,加熱時間td経過後も圧力計 (P2) の指示値の上昇が認められるときには,まだ水素放出が
終了していないため,再びバルブ (V3) を開き,加熱時間tdを延長して試料から水素を放出させた
後,バルブ (V3) を閉じる。以後の繰返し測定では延長した加熱時間tdを用いる。
c) 繰返し水素吸蔵・放出の測定 b) の1)3) の操作を繰り返し,第n回目における,吸蔵測定系の水
素化初圧pd0及び水素化終圧pda並びに放出平衡圧力pdを測定する。

7 水素吸蔵・放出サイクル特性図の作成

7.1 水素移動量の算出

  水素移動量の算出は,次のいずれかによる。
a) 閉鎖系測定法の場合 6.1によって得られた測定データを式 (3) に代入して,繰返し第n回目での対
合金質量分率で表した水素移動量W (n) を算出する。
2AH Pdvd Pdvr Pavd Pavr
W(n) 100 % (3)
RX z1Td z2TH z3Td z4TL
各項の分母にある圧縮率因子z1z4は,それぞれ測定系及び試料系の各温度及び各圧力での水素の
圧縮率因子で,JIS H 7201の式 (4) によって求める。
また,試料の組成式が既知の場合には,合金の平均原子量AMを算出し,繰返し第n回目での水素
対金属の原子数比 (H/M) (n) を,式 (4) によって算出する。
W(n) AM
H M ( n) (4)
100 % AH
ここに, AM : 試料の平均原子量
AH : 水素の原子量=1.007 94
算出値は,有効数字4けたまで求め,JIS Z 8401の規定する規則Aによって有効数字3けたに丸め
る。

――――― [JIS H 7203 pdf 10] ―――――

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