JIS H 8711:2000 アルミニウム合金の応力腐食割れ試験方法 | ページ 18

                                                                                             85
H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992)
附属書7(参考)
金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験−
第7部 : 低ひずみ速度試験
この附属書(参考)は,本体及び附属書(規定)に関連する事柄を補足するもので,規定の一部ではな
い。この附属書(参考)は,この規格の利用者の便宜を図るため,この規格に引用されているISO 7539-7 :
1989を翻訳したものである。
1. 適用範囲
1.1 ISO 7539のこの部は,水素誘起割れを含む金属の応力腐食割れ感受性を評価するための低ひずみ速
度試験の試験方法を規定している。
ISO 7539のこの部で使用されている“金属”という用語には“合金”も含まれる。
1.2 低ひずみ速度試験は,厚板,棒,線,薄板,管を含む広範な製品形態に適用できる。また,これら
の複合体及び溶接部材にも適用できる。ノッチ又は予き裂入り試験片も平滑試験片と同様に使用できる。
1.3 この試験の基本的な利点は,特定の金属と環境との組合せにおける応力腐食割れに対する感受性を
迅速に評価できることである。
2. 引用規格 下記の規格はこの規格の参考となる条項を含んでおり,ISO 7539のこの部の規定を構成す
る。この規格の公布ときには各々表記されている版が有効である。すべての規格はいずれ改定されるもの
であり,ISO 7539のこの部に基づく協定を結ぶ当事者は,下記に示す規格の最新版を適用することの可能
性を検討することが望まれる。IEC及びISOの参加団体は,現在有効な国際規格の登録を常に行うことが
必要である。
ISO 7539-1 : 1987 Corrosion of metals and alloys−Stress corrosion testing−Part 1 : General guidance on
testing procedures(金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験−第1部 : 試験方法の一般的解説)
Corrosion of metals and alloys−Stress corrosion testing−Part 4 : Preparation and use of
ISO 7539-4 : 1989
uniaxially loaded tension specimens(金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験−第4部 : 単軸引張試
験片の作製と試験)
Corrosion of metals and alloys−Stress corrosion testing−Part 6 : Preparation and use of
ISO 7539-6 : 1989
precracked specimens(金属及び合金の腐食−応力腐食割れ試験−第6部 : 予き裂入り試験片の作
製と試験)
3. 定義 ISO 7539のこの部の目的のため,次の定義とISO 7539-1記載の定義が適用される。
3.1 クリープ 初期荷重を負荷した後の試験片の時間に依存した機械的変形。
3.2 破断伸び 試験中に生じたゲージ長さ増加分の,元のゲージ長さに対する比で,パーセント表示し
たもの。
3.3 最大荷重 全面破断までの試験中に到達した荷重の最大値で,複合材の場合にはそのうちの一つの
部材の破断に対応する荷重。

――――― [JIS H 8711 pdf 86] ―――――

86
H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992)
3.4 公称応力−伸び曲線 その時点での負荷荷重と試験片の元の断面積から計算される公称応力を,荷
重測定時のゲージ長さの伸びに対してプロットしたもの。
3.5 断面減少率 試験中に生じた最大断面積減少の,元の断面積に対する比で,パーセント表示。
3.6 歪速度 最初は平滑である引張試験片のゲージ長さの初期増加速度。
4. 原理
4.1 この試験は,第7項に列挙したパラメーターの一つ又はそれ以上を参照して応力腐食感受性を決定
するために,特定の環境に暴露されている間に,試験片に漸増するひずみに負荷するものである。
4.2 腐食雰囲気は,材料がゆっくりした動的ひずみを受けていないときの材料と環境の同じ組合せに比
べて,応力の負荷された材料のより大きな性質の劣化の原因となりうる。この促進された劣化は普通,割
れの発生と成長によっており,応力腐食感受性評価の目的に応じて種々の方法で評価される。
4.3 この試験は,最初は平滑である試験片,ノッチ入り又は予き裂入り試験片を用いて,引張り又は曲
げによって行われる。この試験の最も重要な特徴は,その材料中でき裂発生又は成長の起こるような領域
である比較的遅いひずみ速度を負荷することにある。それゆえ,低ひずみ速度試験と呼ばれる。
5. 試験片
5.1 種々の形状及び寸法の試験片が使用できるが,最も普通にはISO 7539-4とISO 7539-6記載のものが
使用される。
5.2 上記における試験片の形状,作製及び取付けに関する注意は,低ひずみ速度試験用試験片にも同様
に適用される。
6. 試験方法
6.1 低ひずみ速度試験に必要な装置は,変位速度の選択が可能であり,発生する荷重に耐えられる能力
をもつものである。初めは平滑である試験片の試験に最もしばしば用いられる変位速度は,1mm・s−1
1 攀 1 (10−3s-110−7s−1) の範囲である。
6.2 ノッチ入り又は予き裂入り試験片は,割れを特定の場所に限定したい場合に使用できる。例えば,
溶接材の熱影響部を試験する場合,又は材料の場所によって異なるひずみ速度が生じるかもしれないよう
な,ある範囲の機械的性質をもつ試験片のような場合である。ノッチ入り又は予き裂入り試験片は,引張
りより曲げがより重要であるような荷重条件を持ち込むためにも利用できる。
6.3 初めは平滑である試験片,特に,平行ゲージ部をもつ試験片では,試験開始時のひずみ速度は容易
に定義できる。しかし,いったん割れが発生しある程度成長すると,びすみはき裂先端近傍に集中するよ
うになり,ひずみ速度は最初と同じでなくなるかもしれない。き裂先端及びノッチ部におけるひずみ速度
の厳密な解として利用できるものはまだないが,有効ひずみ速度は平滑試験片に加えられる同じ変位速度
に対するものよりは高くなるであろう。
6.4 この試験では,試験片を全面破断するまで行い,それから応力腐食割れ感受性を調べるために破壊
モードが評価されるか,又はある中間の段階で試験を中断し,それからき裂発生及び成長の程度を調べる。

――――― [JIS H 8711 pdf 87] ―――――

                                                                                             87
H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992)
6.5
経験によれば,最初に行う試験としては,平滑な試験片に1 攀 1 (10−6s−1) 付近のひずみ速度範囲
で引張応力を負荷することが適しているであろう。この試験で応力腐食割れが起こっていなくても,その
系で応力腐食割れ感受性がないとは必ずしもいえない。なぜならば,感受性は他のパラメーターとともに
ひずみ速度にも依存するからである(附属書A参照)。もし,最初の試験で応力腐食割れの兆候がなけれ
ば,その後の試験は10 攀 1 (10−5s−1) 又は0.1 (10−7s−1) のような他のひずみ速度で行われるべきである。
もし,非常に遅いひずみ速度での試験時間短縮のために予負荷を行うのであれば,7.4.3に記した注意が重
要となるであろう。
6.6 試験の開始ときには割れるべき条件がなくとも,所定の材料/環境系における割れ発生条件は時間依
存性をもっているかもしれない。こうした状況下では,応力腐食割れは,割れに対する必要な環境条件が
確立されるまでの必要時間が経過する前に,過負荷による破壊が起こらないと保証できる十分に低いひず
み速度の場合にだけ,観察されるであろう。この種の困難さは,場合によっては,動的ひずみの負荷前に
ある時間だけ試験片を試験環境に暴露することで回避できる。
6.7 試験環境条件の選択は試験目的に依存するが,理想的には,材料の予定用途に対応したもの,又は
予想使用条件と同等であるべきである。実際には,ランク付けの目的で多くの標準環境が使用されている
が,得られた結果から実用挙動を予測することは,その系についての理解の程度,又は経験との相関性の
程度に依存している。
6.8 可能ならば常に,試験片のつかみ部分は腐食環境に接しないようにすることを推奨する。もし,こ
れができない場合には,次のような問題が生じるであろう。
a) もし,つかみ部分が試験片と異なる材料でできているなら,接触腐食効果がほとんど常に結果に影響
を及ぼすであろうし,その場合には電気的な絶縁を要する。
b) つかみ部と試験片のすき間の境界内ですき間腐食が起こる可能性があり,応力の不連続性がそうした
領域における早すぎる応力腐食破壊を引き起こしうる。
c) すき間腐食の問題は試験片が試験セルから出る部分でも起こり得るが,これはセルの適切な設計,そ
うした部分の保護コーティング,又は平行部よりも試験片の断面積を大きくすることなどで避けられ
る。
6.9 この試験が単に応力腐食割れが起こるか否かを知るために使われる場合には,試験片へのひずみ負
荷は環境に接触させた後に行うことが推奨される。
6.10 試験片が低ひずみ速度試験で完全破断まで行われる場合には,その試験片は同じ温度と同じ速度で,
腐食環境下とともに不活性環境下でも試験することが推奨される。これは,不活性条件での基準データを
用いて,腐食環境の効果の相対的評価を可能にする。高力アルミニウム合金及び鋼を含むある種の材料で
は,大気中での試験を不活性環境下での試験と同じと仮定することは十分でないかもしれない。
6.11 ひずみを負荷しない試片を,ひずみ負荷試片と同じ環境に暴露することも推奨される。金属はひず
み負荷がない場合においてさえ腐食環境との接触で機械的性質の劣化を起こすことがある(例えば,孔食
及び粒界腐食など)。したがって,ひずみ負荷の効果は負荷しない試験片の挙動との比較によってだけ評価
できる。
6.12 試験中の温度の変動は,特に非常に低いひずみ速度及び高温の場合には,それ自身がひずみ速度を
変化させることがある。それが結果に大きく影響するのであれば,避けなければならない。

――――― [JIS H 8711 pdf 88] ―――――

88
H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992)
7. 結果の評価
7.1 試験片が全破断した場合,応力腐食割れの証拠は一般に,低倍率の顕微鏡による二次割れの観察,
又は破面のフラクトグラフィーによる破壊モードの変化の観察によって明らかとなる。
7.2 応力腐食き裂の平均速度は,完全に破断した試験片の破面,又は完全破断に至らなかった試験片中
の,測定された最長き裂長さに試験時間の逆数を乗じることで求めることができる。このパラメーターは
割れが試験開始時に発生したと仮定しているが,実際には必ずしもそうではない。それにもかかわらず,
この種の測定は,より正確に測定したものとかなりよい一致をしばしば示す。予き裂入り試験片では,き
裂成長のモニターには別の方法があり(ISO 7539-6参照),それによってき裂速度が測定できる。
7.3 試験環境と不活性環境に暴露された同じ試験片の比較は,応力腐食割れに対する感受性の評価に利
用できる。割れに対する感受性の増大は,次の式の比の1との差の増大によって示される。
(試験環境での試験片の結果)/(不活性環境での試験片の結果)
これは,同じ初期ひずみ速度に対する次のパラメーターの一つかそれ以上に対して適用される。
a) 破壊時間。
b) 断面減少率及び破断伸びで評価される延性。
c) 到達最大荷重。
d) 公称応力/伸び曲線で囲まれた面積。
e) 破面での応力腐食割れの百分率。
7.4 低ひずみ速度試験は,あるひずみ速度において,それ以上では検知できる割れの起きる下限界応力
を決めるためにも利用できる。ある系においては,下限界応力はひずみ速度の関数であろう。したがって,
試験は内輪の値の得られることが保証できるように考慮して,その系に対する適正なひずみ速度範囲で行
われるべきである。採用すべき試験方法は,7.4.17.4.4に記載したスケジュールにしたがって,それぞれ
のひずみ速度で,異なる応力範囲について,多数の試験片を使って試験することである。
7.4.1 最初の試片は完全破断に到らせ,7.2の手順で平均応力腐食割れ速度を求める。
7.4.2 次いで,他の表面欠陥とは容易に区別でき,約500倍の金属組織学的検査で正確に測定できる最小
き裂長さに,平均応力腐食き裂速度で除することによって,下限界応力を超えてき裂発生を検知できる最
少時間を評価する。この時間は,それぞれの試験における応力変化を最小にするための,その後の試験に
おける試験時間として採用する。応力範囲は低速のひずみ負荷中に生じる応力範囲として定義する。
7.4.3 第2の試験片は,応力腐食割れが起こらないような比較的速い速度条件で,適当な応力レベル,例
えば,最初の試験で観測された引張強さの50%,に到達するまで荷重を負荷する。その後,次に負荷する
ひずみ速度以下と考えられる速度にまで時間依存性変形が減少してくるまで,変位を一定に保持する。こ
の期間は,ある種の系では数日のオーダーになるほど,かなり長いかもしれない。割れに対する環境条件
がこれで確立されるので,低速のひずみ負荷がその後に開始される。試験は7.4.2のような適切な期間の経
過後に終了する。試験片はき裂の状態を,望ましくは軸断面の顕微鏡観察で調べ,平均き裂速度を求める。
7.4.4 その後の試験は,例えば,ISO 7539-1に記した2等分探索法にしたがって選定した初期応力を用い
て,それ以下では割れの兆候が全くなく,それ以上では平均き裂速度が認められる値として定義される下
限界値が決まるまで行う。各試験の応力範囲を平均き裂速度に対してプロットすることは,下限界値の決
定に役立つ。
8. 試験報告 試験報告には次の情報を含むことが必要である。
a) 組成,調質,製品形態,断面厚さを含む,試験片を採取した材料の全情報。

――――― [JIS H 8711 pdf 89] ―――――

                                                                                             89
H 8711 : 2000 (ISO 9591 : 1992)
b) 試験片の方向,形状,寸法と表面仕上げ状態。
c) 平滑試験片についての初期ひずみ速度,予き裂入り及びノッチ入り試験片についての変位又はCOD
速度を含む,ひずみ負荷方法。
d) 負荷された負荷電位及び電流密度,温度,圧力などを含む,試験環境。
e) 試験結果を定義するのに用いた方法(完全破断までの時間,き裂の数と位置,平均き裂速度,残存強
度と延性,破面における応力腐食割れの百分率)。

――――― [JIS H 8711 pdf 90] ―――――

次のページ PDF 91

JIS H 8711:2000の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 9591:1992(MOD)

JIS H 8711:2000の国際規格 ICS 分類一覧