JIS K 0115:2020 吸光光度分析通則 | ページ 3

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なお,測光正確さには,測光再現性も含む。
注記1 光学フィルターの標準物質として,一般財団法人日本品質保証機構(JQA)のJCRMシリ
ーズ,米国国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology,NIST)のSRM3
種などがある。
b) 測光再現性 測光再現性には,測光繰返し性と測光時間安定性とがある。測光繰返し性は,経時変化
のない試料[a)の標準物質など]を試料部に装着し,透過パーセント又は吸光度を測定する。次に,
試料を取り出し,再び装着して測定を行う。この操作を複数回繰り返したときの測定値のばらつきで
表す。測光時間安定性は,同試料を一定時間間隔で測定し,単位時間当たりの変動幅で表す。
c) ノイズレベル 試料部に試料を入れないで,一定の測定条件(感度レベル,設定波長,スペクトル幅
など)に固定し,吸光度ゼロ(透過パーセント100 %又は反射パーセント100 %)付近での短時間内
の測定値の変動幅(山から谷まで)で表す。
d) ベースライン時間安定性 ノイズレベルと同一条件で,一定時間間隔で測定したときの単位時間当た
りの変動幅で表す。
e) 波長正確さ 重水素放電管,キセノンランプなどから放射される輝線,又は波長校正用光学フィルタ
ーの吸収曲線を測定する。輝線については,強度が極大を示す波長,光学フィルターを用いる場合に
は,吸収の極大値となる波長などを求め,それらに与えられた波長と波長表示値との差で表す。
なお,波長正確さには,波長設定再現性も含む。
注記2 波長校正用光学フィルターとして,ネオジムフィルター,ホルミウムフィルターなどのガ
ラス製光学フィルター,ホルミウム溶液フィルターなどが用いられる。
f) 波長設定再現性 波長設定再現性には,波長設定繰返し性と波長時間安定性とがある。波長設定繰返
し性は,重水素放電管,キセノンランプなどから放射される同一輝線スペクトル又は光学フィルター
の吸収曲線を複数回繰返し測定したときの波長の読取り値のばらつきで表す。
なお,複数の光分散素子を搭載する装置では,光分散素子の切替えに対しても試験する。
波長時間安定性は,波長校正から次の波長校正までの使用時間で,単位時間当たりの波長変動で表
す。
g) 分解 輝線スペクトルの半値全幅(full width at half maximum,FWHM)を波長で表す。重水素放電管,
キセノンランプなどから放射される輝線スペクトルを測定し,最大強度の1/2となる強度を示す波長
を長波長側と短波長側とで求め,それらの波長差で表す。
h) スペクトルベースライン平たん度 試料部に試料を入れず,一定の測定条件(感度レベル,波長幅な
ど)で,指定波長領域を走査したときの透過パーセント,反射パーセント又は吸光度の測定値の変動
幅で表す。
i) 迷光 迷光測定用フィルターを用い,波長選択部から出射する光強度に対する設定波長以外の波長の
光強度の総和との比率で表す。
注記3 迷光測定用フィルターには,NISTのよう化カリウム溶液(SRM2032),ASTM E387-84に
規定する迷光測定用溶液などがある。
4.3.2 光電光度計の性能表示
光電光度計の性能表示は,4.3.1のa) d)による。装置の性能試験は,装置を取扱説明書などに示された
時間通電した後,十分に安定した状態で行う。

4.4 附属装置

  附属装置には,次のものがあり,必要に応じて用いる。次のような附属装置には,試料の温度を維持す

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る機能を併せもつものもある。
a) 自動試料導入装置(シッパー) 液体試料を吸引し,試料部に導入する装置。図3に自動試料導入装
置の例を示す。試料を吸引して測定用フローセルに導入し,そのタイミングに同期して自動的に透過
パーセント,吸光度などを測定し,測定後は排出する機能をもつものなどがある。陰圧で吸引するも
のとペリスタルティックポンプなどで送液するものとがある。主に,多数の試料を測定する場合に用
いる。
図3−自動試料導入装置の例
b) 吸収セル交換装置 複数の吸収セルを交換して測定するための装置。図4に自動吸収セル交換装置の
例を示す。手動で切り替えるものと自動的に切り替えるものとがある。主に,複数の溶液試料を並行
して測定するための装置で,温度調節機構を備えたものもある。試料セルを一定時間間隔で順次測定
部へ移動させながら測定することによって,試料の時間的変化を測定してもよい。
図4−自動吸収セル交換装置の例
c) 積分球附属装置 積分球の内面に,波長に対して非選択性の拡散反射材料を備えた装置。図5に積分
球附属装置の例を示す。試料からの透過光及び反射光を積分球内で多重反射させ,内部に均一に分布
させた光の一部を検出する。透明·半透明の固体,液体などの反射パーセント,透過パーセント,吸
光度,濁りなどの測定に用いる。反射測定は,通常,硫酸バリウムなどの白色物質(標準白板と呼ば
れることもある。)を基準として相対反射率を測定する。透過測定は,拡散透過光を含む全透過光の測

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定及び拡散透過光の測定に用いる。
なお,透過測定(セル)と反射測定とは,同時には行わない。
図5−積分球附属装置の例
d) 試料温度可変装置 試料の温度を上昇,下降及び/又は一定にする機能をもつ装置。温度調節の方式
には,恒温水循環方式,電子冷熱方式などがある。主に,溶液試料の測定に用いる。試料温度の変動
が測定値に大きく影響する場合などに用いられる。
e) 正反射測定装置 試料の正反射を測定するための装置。次の1)及び2)がある。
1) 相対反射測定装置 正反射パーセントを,標準反射板に対する相対反射率として測定する装置。
2) 絶対反射測定装置 正反射パーセントを,絶対反射率として測定する装置。V-N法などを用いた固
定の角度で測定する装置又は入射角が変えられる装置がある。それらの例を図6及び図7にそれぞ
れ示す。
注記 入射角を小さく(10°以下)すると,入射光の偏光状態が測定値に与える影響を少なくす
ることができる。
図6−正反射測定装置の例(V-N法)

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図7−正反射測定装置の例(入射角可変)
f) フィルム保持装置 フィルム状又は板状試料の測定のために用いる試料保持装置。
g) 偏光装置 入射光に偏光特性をもたせる装置。偏光による光の透過特性及び反射特性の測定に用いる。

4.5 付加機能

  主な付加機能を,次に示す。必要に応じて用いる。
a) 測定に対する付加機能 測定に対する主な付加機能には,次の1)及び2)があり,必要に応じて用いる。
1) 繰返し測定 同じ条件で指定した回数,又は中止するまで繰返し測定する機能。測定結果の平均を
求める方法でノイズの低減を図る場合などに用いる。
2) 経時変化測定 一定時間間隔で測定し,時間に対する測定値の変化を測定する機能。試料の時間変
化を求め,酵素活性の測定及び反応の追跡に用いる。一定時間間隔のスペクトルを測定する機能を
もつ装置もある。
b) スペクトルに関する付加機能 スペクトルに関する主な付加機能を,次に示す。必要に応じて用いる。
1) スペクトルの拡大又は縮小 見やすい表示とするため,全部又は任意のスペクトルの一部を,拡大
又は縮小する機能。
2) スムージング 主にノイズを軽減し,スペクトルの大まかなパターンを示す機能。
3) ピーク検出 吸収ピークの位置(X軸,Y軸)を検出する機能。
4) 透過パーセント−吸光度変換 透過率及び吸光度を数値計算によって相互に求める機能。
5) クラマース−クロニッヒ変換 反射法によって鏡面の試料を測定した際に得られる吸収係数と試料
の複素屈折率との両方が寄与したスペクトルから,クラマース−クロニッヒの関係式によって,そ
れぞれ又は両方のスペクトルを求める機能。
6) クベルカ−ムンク変換 拡散反射法によるスペクトルを基に,定量的な扱いをする場合又は透過法
によるパターンとの比較をする場合に,相対強度を透過法に近いものにするために行われる変換機
能。
注記 拡散反射法によるスペクトルでは,試料中を光が透過,屈折,散乱などの影響を受け,最
終的に外部に出射される光を測定しているため,透過法でのスペクトルと比較すると,吸
収の強いピークは相対的に小さく,逆に,吸収の弱いピークは相対的に大きく現れる。こ

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のため,クベルカ−ムンク変換が必要とされる。
7) 軸単位の変換(波長,波数,エネルギーなど) 軸単位を,必要とする単位系に変換する機能。
8) 吸収ピークなどの高さ又は面積計算 ピークの強度は,ピーク高さ又は面積で示されるため,これ
らを計算する機能。
9) 微分計算 微分変換する機能。一次微分スペクトルでは,大きなピークの肩(ショルダー)に重な
ったピーク及び鋭いピークの裾に隠れたピークを,明瞭にできることがある。また,二次以上の微
分も行う。
10) ベースライン補正 測定条件又は試料条件によってスペクトルのベースラインが傾いたり,湾曲し
たりしている場合に,平たんにすることによって,見えにくい情報を取り出しやすくする機能。
c) スペクトル間演算の付加機能 スペクトル間演算の主な付加機能には,スペクトル間の四則演算及び
差スペクトルがある。スペクトル間の演算によって微小なパターンの違い,及び主成分の差し引きに
よって微量混合物のパターンを,明瞭にできる。また,スペクトルの合成による混合試料のスペクト
ル予想にも用いることができる。
d) スペクトルからの情報抽出に関する付加機能 スペクトルからの情報抽出に関する主な付加機能に
は,定性情報,スペクトルデータ検索,データベース作成,定量情報,濃度変換又は統計処理がある。
これらの機能によって,スペクトルのもつ情報を,ピークの位置(X軸,Y軸)も含め,スペクトル
パターン全体から利用できる形で取り出すことができる。
e) データの保存 測定したスペクトル,データ処理後のスペクトル,測定の条件,測定者の情報,コメ
ント,スペクトル処理の履歴などを,装置独自の形式又は互換性をもつ形式によって保存する機能。
データの保存の主な形式は,次による。
1) 装置に内蔵された形式による保存 特定の装置,ソフトウェアで読込みができる形式。
2) CAMP-DXなど互換性をもつ形式による保存 装置によらない互換性をもつ形式。
3) テキストファイル形式による保存 表計算ソフトウェアなどで読込みを行うために使用される形
式。

5 操作方法

5.1 装置の設置条件

  装置の設置条件は,次による。ただし,製造業者などによって,装置の設置条件が定められている場合
には,それに従う。
a) 電磁誘導の影響を与える装置が近くにはない。
b) 強い振動又は継続的な振動がない。
c) ほこりが少ない。
d) 腐食性ガスがない。
e) 直射日光が当たらない。
f) 装置に定められた仕様範囲の温度及び湿度内であり,急激な変化を生じない。

5.2 波長目盛及び吸光度目盛の校正

5.2.1 波長目盛の校正
波長目盛の校正は,次のいずれかによる。
a) 輝線を用いる方法 重水素放電管,キセノンランプ,キセノンフラッシュランプなどの光強度の測定
を行い,その極大強度を示す波長を求め,表1に規定する輝線の波長と比較して校正を行う。キセノ

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