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附属書A
(参考)
不確かさ評価
A.1 概要
不確かさ評価は,計測値がもつ曖昧さを,国際的に共通の手法によって,数値化することである。不確
かさを算出し,計測値にふすことで初めて計測値の信頼性が確保される。ここでの記載が唯一の方法では
ないが,不確かさ評価における考え方の例を参考として示す。
不確かさ評価の手順としては,次のようになる。
a) 測定条件などを適切に決定し,測定の手順を明確にする。
b) 不確かさ要因を列挙する。
c) 列挙した要因について標準不確かさを求める。
d) 算出したそれぞれの標準不確かさから合成標準不確かさを求める。
e) 得られた合成標準不確かさに,包含係数を乗じて拡張不確かさを求める。
A.2 不確かさ評価の各手順における考え方
A.2.1 測定手順の明確化
不確かさ評価において,測定手順が明確化されていないと不確かさを適切に評価できない,また,場合
によっては,不確かさ評価自体が困難になることがある。さらに,測定手順が明確化されることで,不確
かさの要因自体を減らす,又は要因を列挙しやすくするという効果が期待できる。例えば,溶液を一定量
採取する際の不確かさ評価を例に挙げると,全量ピペットを用いるのか,メスシリンダーを用いるのか,
マイクロピペットを用いるのかなどによって,採取する正確さ及び精度が異なるため,不確かさ評価に用
いる値が異なり,最終的に得られる不確かさも異なってくる。したがって,何を何でどのように計測する
かを明確化することが,不確かさ評価には重要である。
A.2.2 不確かさ要因の列挙及び標準不確かさの算出
不確かさ評価は,最終的な測定結果に対し,その不確かさ要因が原因となるばらつきの大きさを数値化
している。そのため,最終的な測定結果を算出するために用いられる計測値に関するものが,全て不確か
さ要因と成り得るので,それらを要因として列挙する。列挙された要因については,一つひとつ標準不確
かさを算出する。標準不確かさは,標準偏差(不確かさ評価では,特に実験標準偏差という。)で表される
ため,ばらつきのデータが手元にある場合は,統計的な処理によって実験標準偏差を求めて,不確かさ評
価を行う。実験標準偏差[s(x)]は,次の式で求める。
n
xx
i
2 i 1
sx
n 1
ここに, xi : 実験標準偏差を求める対象となったデータの出力値
n : そのデータの個数
x : xiの平均値
さらに,不確かさ評価の対象が平均値である場合には,次の式によって,平均値の実験標準偏差[
sx ]
を求める。
――――― [JIS K 0115 pdf 26] ―――――
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sx
sx
n
ばらつきのデータがない場合は,ばらつきの程度を確率分布で仮定し,標準偏差を求めて不確かさ評価
を行う。例えば,製造業者仕様,JIS R 3505などによって,ばらつきの限界値だけが情報として得られて
いる場合には,一様(く形)分布又は三角分布を仮定して評価する(図A.1参照)。また,標準物質などの
認証書,証明書などに記載されている値を不確かさ評価に用いる際は,正規分布を仮定して評価する。一
様分布を仮定する場合,標準不確かさは,分布の限界値(a)を3で除して求める。また,三角分布につ
いては,限界値(a)を6で除して求める。さらに,証明書などの値を引用して正規分布を仮定する場合,
証明書に記載された拡張不確かさ(U)及び包含係数(k)を用いて,評価に用いる不確かさの値は,Uk
として算出される。
-a a -a a
a) 一様(く形)分布 b) 三角分布
図A.1−ばらつきを仮定する分布の例
A.2.3 検量線から求めた濃度の不確かさ
試料濃度の定量において,様々な検量線から試料濃度は算出されるが,検量線用標準物質の濃度及び機
器出力の関係を求め検量線を作成する際に,検量線用標準物質の機器出力値もばらつくために,それに基
づき作成された検量線から得られる試料濃度も,検量線のばらつきに起因する不確かさが存在することに
なる。検量線から求めた濃度の不確かさを評価する方法としては,幾つかあるが,ここでは最も単純な最
小二乗法によって作成した多点検量線(y=bx+a)を用いて求めた濃度の不確かさを,比較的容易に,か
つ,近似的に求める評価式を示す。
12
2
sy0 1 1 y0 y
sx0 2
bmnb2 xx
i
ここに, sx0 : 検量線から求めた濃度の不確かさ
m : 試料の測定の繰返し数
n : 検量線用標準物質の測定の繰返し数
b : 検量線の傾き
a : 検量線の切片
y0 : 試料の測定値(機器出力)
xi : 検量線用標準物質の各濃度
yi : 検量線用標準物質の各機器出力
x : xiの平均値
y : yiの平均値
さらに,sy0は,y方向の偶然誤差を推定する統計量であり,次の式で求めることができる。
2
yi bxi a
sy0
n 2
――――― [JIS K 0115 pdf 27] ―――――
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上記の式を用いた検量線から求めた濃度の不確かさの算出例として,ダミーデータを用いて具体例を示
す。標準物質として測定対象成分を含むJCSS標章付標準物質を,表A.1に示す各濃度に希釈し発色させ,
それぞれの検量線用標準物質について,波長540 nm付近の吸光度を繰り返し測定したと仮定して算出す
る。さらに,検量線用標準物質と同様に発色させ,吸光度を繰り返し測定し,先に作成した検量線から濃
度を求めた値に対する不確かさを求める。
表A.1−不確かさ算出のためのダミーデータ
濃度(mg/L) 吸光度(Abs) 平均(Abs)
0.000 0 0.001 0.000 −0.001 0.001 0.000 0.000 2
0.050 1 0.041 0.042 0.043 0.041 0.040 0.041 4
0.100 2 0.080 0.083 0.082 0.082 0.084 0.082 2
0.151 8 0.123 0.124 0.126 0.124 0.127 0.124 8
0.200 4 0.163 0.166 0.164 0.162 0.163 0.163 6
0.250 5 0.205 0.203 0.203 0.206 0.207 0.204 8
試料 0.103 0.100 0.102 0.101 7
表A.2−各統計量
検量線の傾き b 0.816 086
検量線の切片 a 0.000 415
試料の測定の繰返し数 m 3
検量線用標準物質の測定の繰返し数 n 30
試料の測定値(機器出力) y0 0.101 7
y 0.102 8
各検量線用標準物質の機器出力の平均値
各検量線用標準物質の濃度の平均値 x 0.125 5
y方向の偶然誤差の推定量 sy0 0.001 360
図A.2−ダミーデータを用いて作成した検量線
表A.1から検量線は,y=0.816 086 x+0.000 415 となり(不確かさ算出のため,桁数を多く求めている。),
検量線によって得られる試料濃度は,0.124 mg/Lとなる(図A.2参照)。また,各統計量を,表A.2にまと
めた。さらに,y方向の偶然誤差の推定値は,次のようになる。
2 2
0.205 0.8160860.25050.000415 0.203 0.8160860.25050.000415
2
0.000 0.8160860.0000.000415
sy0
302
≒ 0.001 360
よって,検量線から求めた濃度の不確かさは,次のようになる。
1 1
2 2 2
2
sy0 1 1 y0 y 0.001360 1 1 0.10170.1028
sx0 2 2
bmn b
2
xi x 0.816086 3 30 0.816086
2
xi 0.1255
≒0.001 009 mg/L
――――― [JIS K 0115 pdf 28] ―――――
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A.2.4 合成標準不確かさの算出
一つひとつ算出した標準不確かさの変化に応じて,最終的な測定結果が,どの程度のばらつきの影響を
受けるかによって重み付けした分散等の和の平方根を求めて,次の式によって,合成した合成標準不確か
さを算出する。ただし,xiは,各標準不確かさを表し,i=1·N である。
N 2
2 f 2
uc ux i
i 1 xi
JCSS標章付標準物質(100 mg/L)
全量ピペット(10 mL)
全量フラスコ(100 mL)
10 mg/Lの標準物質
全量ピペット
(10 mL)
全量フラスコ
(100 mL)
1 mg/Lの標準物質
各濃度の検量線用標準物質
図A.3−検量線用標準物質の調製の概要
先に示した検量線用データを基に,合成についての例を示す。検量線から求めた濃度の不確かさを
0.001 009 mg/Lと算出したが,これは,最小二乗法の性質から機器出力値のばらつきに伴う不確かさを算
出したものである。しかし,検量線を作成するために用いた標準物質の濃度の不確かさ,すなわち,検量
線の横軸の偏りについては,別途算出して合成する必要がある。図A.3に示したように,各検量線用標準
物質の調製に先立ち,100 mg/LのJCSS標章付標準物質を用いて10 mg/Lの標準物質を調製し,さらに,
この10 mg/Lの標準物質を用いて1 mg/Lの標準物質を調製し,これを各検量線用標準物質の濃度となるよ
――――― [JIS K 0115 pdf 29] ―――――
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うに希釈したとして,不確かさの算出を試みる。検量線から求めた濃度の不確かさと合成すべき不確かさ,
すなわち,検量線の横軸の偏り成分は,各検量線用標準物質に共通する不確かさ要因であることから,1
mg/Lの標準物質の濃度の不確かさだけであると考えてよい。1 mg/Lの標準物質の濃度の不確かさにおけ
る不確かさ要因は,調製に用いた原料となる10 mg/Lの標準物質の濃度の不確かさ,調製に用いたガラス
製体積計(1 mL全量ピペット及び100 mL全量フラスコ)のそれぞれの許容誤差,計量のばらつき及び温
度の影響である。さらに,10 mg/Lの標準物質の濃度の不確かさには,調製に用いた原料となる100 mg/L
のJCSS標章付標準物質の濃度の不確かさ及び調製に用いたガラス製体積計に関する不確かさ要因が含ま
れることになる。ただし,ガラス製体積計の温度の影響は,互いに打ち消しあう関係であることから,十
分に小さいといえる。よって,温度の影響以外の要因について,標準不確かさの相対値を求めて合成する。
1 mg/Lの標準物質の濃度の不確かさを算出するために,先に示したとおり,まず10 mg/L標準物質の濃度
の不確かさを算出する。100 mg/LのJCSS標章付標準物質の証明書の記載内容が,99.8 mg/L±0.3 mg/L(k
=2)である場合,標準不確かさの相対値は,次のように得られる。
0.32
99.8≒ 0.001503(単位は無次元)
さらに,ガラス製体積計がJIS R 3505に適合した製品であれば,JIS R 3505から許容誤差(10 mL全量
ピペットは±0.02 mL,100 mL全量フラスコは±0.1 mL)を引用し,一様分布を仮定して評価する。また,
計量のばらつきについては,純水などを計量し,その質量のばらつきを体積のばらつきに換算して得られ
た実験標準偏差が10 mL全量ピペットで±0.012 mL,100 mL全量フラスコで±0.06 mLであったとすると,
次のように評価できる。
0.023
≒ 0.001154[10 mL全量ピペットの標線の不確かさ(相対値)]
10
0.13
100≒ 0.0005773 [100 mL全量フラスコの標線の不確かさ(相対値)]
0.012
0.0012 [10 mL全量ピペットの繰返しの不確かさ(相対値)]
10
0.06
100 0.0006 [100 mL全量フラスコの繰返しの不確かさ(相対値)]
よって,10 mg/Lの標準物質の濃度の標準不確かさ(相対値)は,次のように合成し求める。
0.0011542 0.00057732 0.00122 0.00062 0.0015032 ≒ 0.002392
次に,1 mg/L標準物質の濃度の不確かさを算出する。今,算出した10 mg/Lの標準物質の濃度の標準不
確かさと先ほどと同様に二つのガラス製体積計に関する不確かさとを合成する。仮に10 mg/L標準物質の
調製と1 mg/L標準物質の調製とで同じ10 mL全量ピペットを使用しているならば,10 mL全量ピペットの
標線の不確かさには強い相関があり,0.001 154×2=0.002 308と評価するのがよいが,それぞれの調製に
は別個の10 mL全量ピペットを用いたとして評価すると,次のようになる。
0.0011542 0.00057732 0.00122 0.00062 0.0023922 ≒ 0.0030309
また,A.2.3において算出した検量線から得られた濃度の標準不確かさ(検量線縦軸のばらつき)は,ダ
――――― [JIS K 0115 pdf 30] ―――――
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JIS K 0115:2020の国際規格 ICS 分類一覧
JIS K 0115:2020の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISK0050:2019
- 化学分析方法通則
- JISK0211:2013
- 分析化学用語(基礎部門)
- JISK0212:2016
- 分析化学用語(光学部門)
- JISK0215:2016
- 分析化学用語(分析機器部門)
- JISR3505:1994
- ガラス製体積計