JIS R 1757:2020 ファインセラミックス―アセトアルデヒドを用いた可視光応答形光触媒の完全分解性能試験方法 | ページ 2

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度計とする。
光照射容器には,外部の光が入射してはならない。光源及び光照射容器の周辺の部材は,360 nm以上の
波長の光に対して反射率が低いもの又は一様なもの,すなわち黒色,白色又は金属光沢のものとする。安
定な点灯に時間を要する光源は,試験体に光を照射せずに安定するまで予備点灯を行うためのシャッタの
付いたものとする。
5.4 紫外線シャープカットフィルタ 紫外線シャープカットフィルタは,屋内照明器具に取り付けられ
たカバーによって,JIS R 1750の箇条6(性能試験のための屋内照明環境条件及びシャープカットフィル
タの選択方法)に規定する条件A又は条件Bのいずれかから選択したものとする。
a) 条件Aの場合 屋内照明器具に,波長400 nmよりも長波長側の光放射を透過するカバーが取り付け
られている場合である。この場合は,Type Aの紫外線シャープカットフィルタを用いる。
b) 条件Bの場合 屋内照明器具に,波長380 nmよりも長波長側の光放射を透過するカバーが取り付け
られている場合である。この場合は,Type Bの紫外線シャープカットフィルタを用いる。
注記 JIS R 1750の箇条6に規定する条件Cは,照射光に僅かな紫外放射を含み,可視光応答形光
触媒材料の完全分解性能を正しく測定できないため,採用しない。
5.5 アセトアルデヒド濃度測定装置 アセトアルデヒド濃度測定装置は,ガスクロマトグラフ分析法に
よる測定装置とする。検出器には,水素炎イオン化検出器(FID)を備えたJIS K 0114に規定する装置,
又は検出器に高感度熱伝導度検出器(TCD)を備えたマイクロガスクロマトグラフを用いる。カラムは,
充カラム及びキャピラリーカラムのいずれのタイプでもよいが,炭化水素を分離できるものでなければ
ならない。ガスのサンプリング時には,再現よく採取できるガスタイトシリンジなどを用いる。
5.6 二酸化炭素濃度測定装置 二酸化炭素濃度測定装置は,JIS K 0151に規定する非分散形赤外線二酸
化炭素分析計,検出器に水素炎イオン化検出器(FID)を備えたメタン化反応装置付ガスクロマトグラフ,
又は検出器に高感度熱伝導度検出器(TCD)を備えたマイクロガスクロマトグラフとする。装置の校正は,
JIS K 0055による。
ガスクロマトグラフを用いる場合のガスのサンプリング方法では,再現性よく採取できるガスタイトシ
リンジなどを用いる。

6 試験体

  試験体は,光触媒の粉体とする。光触媒粉体をフラットシャーレ(ガラス製で内径60 mm)に0.30 g±
0.01 gはかりとり,シャーレ全体に均一に広げる。この場合は,JIS K 0557に規定するA3又はA4に適合
する水を適量加えて均一に広げてもよいが,その場合は,光触媒粉体を均一に広げるため,超音波浴を用
いることが望ましい。
なお,水を加えた場合は,120 ℃を上限として,物理的及び化学的な変化を生じさせない範囲で試験体
を加熱乾燥してもよいが,乾燥によって試験体の質量を変化させてはならない。

7 試験方法

7.1 一般

  試験体である光触媒を光照射容器内に設置し,容器を密閉する。前処理として,試験体からの二酸化炭
素の生成が止まるまで光照射を行う。二酸化炭素の生成が止まったことを確認した後,光照射容器内部の
空気をゼロガスで置換する。その後,暗条件の状態において光照射容器内部に濃度が100 ppmになるまで
アセトアルデヒドガスを注入する。光照射容器を1時間暗所に保持した後,可視光を照射する。一定時間

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ごとに光照射容器内部の空気を採取し,アセトアルデヒド及び二酸化炭素濃度を測定する。二酸化炭素濃
度が注入したアセトアルデヒド供給濃度の2倍量に達し,同時に二酸化炭素の増加が停止したとき,完全
分解が行われたとみなす。

7.2 光照射容器及び光源の準備

  光照射容器は,試験の実施前に,密閉した空の光照射容器の内部をゼロガスで置換して,暗所に24時間
保持する。24時間後の二酸化炭素濃度は,理想的にはゼロであるが,十分気密性があるとみなせる5 ppm
以下とする。
光源から,紫外線シャープカットフィルタ及び光照射容器の光透過板を通して,試験体に均一に照射す
る。

7.3 試験体の前処理

  試験体の前処理は,次による。
a) フラットシャーレに入れた試験体を光照射容器などの密閉容器に入れ,水蒸気濃度体積分率(1.56±
0.16)%,温度25.0 ℃±2.5 ℃のゼロガスで空気置換する。空気置換後,容器を密閉する。
b) 5.3に規定する光源を用いて試験体表面での照度を測定し,あらかじめ10 000 lx±500 lxに調整してお
く。照度調整は,7.4に規定するアセトアルデヒド分解試験に用いる光透過窓板及び紫外線シャープカ
ットフィルタを設置した状態で行う。
c) 試験体が入っている光照射容器の上面に,7.4に規定するアセトアルデヒド分解試験で用いる紫外線シ
ャープカットフィルタを設置し,その光照射容器を5.3に規定する光源の下に設置する。
d) 光源を点灯し(安定な点灯に時間を要する光源については,あらかじめ光照射容器のシャッタを閉じ
て点灯しておき,安定した後シャッタを開く。),光照射を開始する。
e) 光照射によって発生する二酸化炭素濃度を5.6に規定する二酸化炭素濃度測定装置によって測定し,
その発生速度が1時間当たり2.0 ppm以下になるまで光照射を継続する。
注記 光照射を終了する時点は,理想的には二酸化炭素の発生速度がゼロのときであるが,実際に
はゼロにすることは困難である。試験体内部に吸着した二酸化炭素が徐々に放出される場合,
試験体内部に含まれる有機物が分解して二酸化炭素が発生する場合などがあるためである。
これらの二酸化炭素の放出·発生をアセトアルデヒドの分解とは区別できることが実験によ
って明確となっているため,二酸化炭素の発生速度が1時間当たり2.0 ppm以下という条件
としている。
f) 二酸化炭素発生速度が1時間当たり2.0 ppm以下になった時点で,光照射を停止し,前処理を終了す
る。

7.4 アセトアルデヒド分解試験

  アセトアルデヒド分解試験は,次による。
a) 有機物除去の前処理が終了した試験体が入っている光照射容器を,水蒸気濃度の体積分率が(1.56±
0.16)%,温度25.0 ℃±2.5 ℃のゼロガスにおいて空気置換した後,密閉する。このときの水蒸気濃度
は,25 ℃における相対湿度(50±5)%に相当する。湿度の測定は,JIS Z 8806による。空気置換後,
二酸化炭素濃度を測定し,空気置換が十分行われていることを確認する。
注記1 湿度は,光触媒によるアセトアルデヒドの完全分解には影響しないが,試験の再現性を確
実にするため規定した。
b) 光照射容器に暗幕などの遮蔽物を設置し,暗条件状態にしてアセトアルデヒド濃度が100 ppm±5 ppm
になるようにアセトアルデヒドガスを注入する。アセトアルデヒド濃度を100 ppm±5 ppmとするた

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めに,密閉した空の光照射容器内で,濃度既知のアセトアルデヒドガスを用いて,濃度が100 ppm±5
ppmになるようにあらかじめ注入量を調べ,このときの濃度をアセトアルデヒド供給濃度とする。
注入直後の容器内のガスを採取して,アセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度を測定する。
なお,アセトアルデヒド測定装置及び二酸化炭素測定装置は,あらかじめ暖機運転を行い,また,
標準ガスを用いてアセトアルデヒド及び二酸化炭素の検量線を測定しておく。
c) 暗条件での保持時間は,1時間以内とする。暗条件での保持が終了した時点で,容器内のガスを採取
し,アセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度を測定する。
注記2 暗条件によるアセトアルデヒドの吸着は,完全分解性能には影響しないが,暗条件での保
持は,容器内のアセトアルデヒドガスの均一分散のために行う。
d) あらかじめ5.3に規定する光源を用いて光源を点灯し,照度を安定させておく。照度計のセンサー上
面に光透過窓板及び試験で用いる紫外線シャープカットフィルタを設置して,試験体面での照度を
10 000 lx±500 lxに調整し,その照度を記録する。
e) 光照射容器上面に紫外線シャープカットフィルタを設置し,光源の下に設置する。
f) 光源を点灯し,光照射を開始する。安定な点灯に時間を要する光源については,あらかじめシャッタ
を閉じて点灯しておき,安定した後シャッタを開く。
g) 一定時間ごとに光照射下での容器内のガスを採取し,アセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度を測
定する。光照射後,8.3に規定する条件に基づいて測定を終了する。ガスの採取頻度が高すぎる場合は,
光照射容器の内圧が低下し,漏れが発生するおそれがあるため,ガス採集量の合計は,50 mL以下と
することが望ましい。1回当たりの採取量は,1 mL以下とすることが望ましい。
二酸化炭素濃度測定装置としてガスクロマトグラフを用いる場合は,1 mLの採取量でアセトアルデ
ヒド濃度及び二酸化炭素濃度を正確に測定することができる。これによって,50回まで採取が可能と
なる。あらかじめ,光照射容器を密閉した状態で容器内のガスを採取する予備試験を行い,漏れなど
が発生しない適切なガスの採取回数及び採取頻度を推定しておくことが望ましい。
アセトアルデヒド濃度及び二酸化炭素濃度の測定例を,図2に示す。
1 光照射 2 アセトアルデヒド濃度変化3 二酸化炭素濃度変化
図2−濃度測定の例

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8 試験結果の計算

8.1 一般

  試験結果は,8.28.5によって計算する。計算値は,JIS Z 8401の規則Bによって,小数点以下1桁に
丸める。

8.2 二酸化炭素濃度

  アセトアルデヒドの分解によって発生する二酸化炭素濃度は,光照射後に測定した二酸化炭素濃度から,
7.4 c)の暗条件下で光照射前に測定した二酸化炭素濃度を差し引いた値とする。

8.3 測定の終点

  光照射後,次の条件を満たすとき,測定を終了する。
a) 時間的に連続する3回の測定で,二酸化炭素の発生速度(α1及びα2)は,式(1)及び式(2)によって計算
し,式(3)の条件を満たすとき,測定を終了する(図3のパターンA,パターンC又はパターンE)。
CO2 t2
CO 2 t1
1 (1)
t2 t1
CO 2t3
CO2 t2
2 (2)
t3 t2
α1≦2.0 ppm/h かつ α2≦2.0 ppm/h (3)
ここに, t1 : 時間的に連続する3回の測定における,最も短い光照射
時間(h)
t2 : 時間的に連続する3回の測定における,中間の光照射時
間(h)
t3 : 時間的に連続する3回の測定における,最も長い光照射
時間(h)
α1 : 光照射t1t2時間後の二酸化炭素発生速度(ppm/h)
α2 : 光照射t2t3時間後の二酸化炭素発生速度(ppm/h)
[CO2]t1 : 光照射t1時間後の二酸化炭素濃度(ppm)
[CO2]t2 : 光照射t2時間後の二酸化炭素濃度(ppm)
[CO2]t3 : 光照射t3時間後の二酸化炭素濃度(ppm)
b) 光照射後,二酸化炭素濃度の測定値がアセトアルデヒドの完全分解時の下限値(190 ppm)と上限値
(容器への漏れ込みなど含む。)との間にあって,45時間を超えても二酸化炭素の発生速度が1時間
当たり2.0 ppmを超えて発生する場合は,45時間をもって測定を終了する(図3のパターンB)。
c) 光照射後,発生する二酸化炭素濃度が1時間当たり2.0 ppm以上の発生速度で,アセトアルデヒドの
完全分解時の二酸化炭素濃度の上限値(容器への漏れ込みなど含む。)を超えた場合,その時点で測定
を終了する(図3のパターンF)。
d) 光照射後,45時間を超えても,二酸化炭素の発生濃度がアセトアルデヒド供給濃度の完全分解時の下
限値(190 ppm)未満の場合は,45時間をもって測定を終了する(図3のパターンD)[7.3 e)の注記
参照]。

8.4 完全分解の判定

  完全分解の判定は,次による。
a) 完全分解の成立パターン 光照射後,t時間後の二酸化炭素濃度([CO2]t)が式(3)及び式(4)の条件を満
足するか,又は光照射時間が45時間を超えても式(3)を満足しないが式(4)を満足する場合に,完全分
解と判定する。

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190 ppm≦[CO2]t≦(210+2 t) pm (4)
図3のパターンA及びパターンBが相当し,次による。
− パターンA 式(3)及び式(4)を満足する場合。
− パターンB 光照射時間が45時間を超えても式(3)を満足しないが,式(4)を満足する場合。
b) 完全分解に至らないパターン 光照射後,測定される二酸化炭素濃度が式(4)の下限値(X)を下回る
場合,酸化分解能力が不足していると判定する。
図3のパターンC及びパターンDが相当し,次による。
− パターンC 式(3)を満足するが,式(4)の下限値(X)を下回る場合。
− パターンD 測定時間が45時間を超えても式(4)の下限値(X)を下回る場合。
c) 試験の不成立パターン 光照射後,測定した二酸化炭素濃度が式(4)の上限値(Y)を超える場合,試
験は不成立とみなす。
図3のパターンE及びパターンFが相当し,次による。
− パターンE 式(3)を満足するが,式(4)の上限値(Y)を超える場合。
− パターンF 式(3)を満足せず,式(4)の上限値(Y)を超える場合。
X 完全分解下限値 Y 完全分解上限値 AF 測定パターン
図3−測定パターンの例
注記 アセトアルデヒドの完全分解による二酸化炭素発生量は,化学量論的にアセトアルデヒドの2
倍のモル量が発生する[式(5)参照]。
CH3CHO+5/2 O2→2CO2+2H2O (5)
7.4に規定するアセトアルデヒド分解試験では,アセトアルデヒド供給濃度は100 ppm±5 ppmであるた
め,完全分解による二酸化炭素濃度は190 ppm210 ppmとなる。また,光照射容器からの漏れ込み及び
試験体に付着している有機物残さ(渣)の分解による二酸化炭素の発生濃度は,前処理によって1時間当

――――― [JIS R 1757 pdf 10] ―――――

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