この規格ページの目次
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Z 8542 : 2022
3.12
タスク(task)
特定の目標を達成するために行う一連の活動
注釈1 一連の活動には,身体的,知覚的及び/又は認知的なものがある。
注釈2 タスクは,目標を達成するための特定の手段を述べたものであり,目標を達成するために使っ
た手段と目標との間には直接的な関係がない。
(出典 : JIS Z 8521:2020の3.1.11)
3.13
ユーザ(user)
システム(3.5),製品又はサービス(3.6)とインタラクションする人
(出典 : ISO 26800:2011の2.10を修正,注記を削除)
3.14
顧客(customer)
商業的,又は個人的な使用のために財産,製品,又はサービス(3.6)を購入する組織(3.2)又は個人
注釈1 顧客は,必ずしも組織と財務関係をもつ必要はない。
(出典 : JIS Z 8541:2022の3.2を修正,“公的な目的(public purposes)”は,“個人的な使用(personal
use)”に変更し,注釈1を追加)
3.15
機能価値(fundamental value)
ステークホルダ(3.9)が契約時点で期待するコアの価値
3.16
知識価値(knowledge value)
ステークホルダ(3.9)間の相互作用を通じて発生する知識の価値
3.17
感情価値(emotional value)
ステークホルダ(3.9)間の相互作用を通じて発生する感情的な価値
注釈1 感情価値は,単一又は短期的なもの(喜び及び楽しさ)であったり,長期的なもの(信頼及び
誇り)であったりする場合がある。
3.18
ワークステーション(workstation)
作業によって決まる条件での作業環境における,作業機器の組合せ及び空間的配置
(出典 : JIS Z 8501:2007の2.12)
3.19
ジョブ(job)
個人のタスク(3.12)の時間的な及び空間的な構成及び順序,又はワークシステム(3.5)内で一人の作
業者によって行われる全ての人的パフォーマンスの組合せ
(出典 : ISO 6385:2016の2.16)
3.20
人間中心設計(human-centred design)
――――― [JIS Z 8542 pdf 6] ―――――
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Z 8542 : 2022
システムの使用に焦点を当て,人間工学(3.1),ヒューマンファクターズ(3.1),及びユーザビリティ
の知識と手法とを適用することによって,システムをより使えるものにすることを目的としたシステムの
設計及び開発へのアプローチ
(出典 : JIS Z 8530:2021の3.7を修正,注釈を削除)
4 人間中心組織及び人間工学
4.1 人間中心組織の7つの原則
人間中心組織を特色付ける7つの原則が,JIS Z 8541に次のようにまとめられている。
1) 個々の多様性を組織の強みに生かす 人間中心組織は,個々の多様性を強みとして認識し,ビジネス
のあらゆる分野においてこのことを考慮に入れる。個々の多様性の性質及び範囲を受け入れ,補完的
なスキルをもつ個人のチームを創造する。
2) ユーザビリティ及びアクセシビリティを戦略的な経営目標とする 人間中心組織は,規格及びベスト
プラクティスを使用し,製品,システム,及びサービスが,職員及びその他のステークホルダの両方
にとってアクセシブルで利用しやすい(効果的,効率的で満足して使用できる。)ことを確認する。
3) トータルシステムアプローチをとる 人間中心組織は,人は包括的なシステムの一部であることを認
識する。そこには,機器,ワークスペース,並びに人が働き生活する物理的,社会的,及び組織的環
境といった多くの要素が含まれる可能性がある。これらの要素は,相互に作用し依存し合っており,
組織は,そのことを理解しそれに応じて行動する。
4) 健康,安全及びウェルビーイングをビジネスにおいて確実に優先する 人間中心組織は,個人の健康,
安全及びウェルビーイングを脅かす危険から個人を(組織の内外共に)保護するために必要な措置を
講じ,法律で要求される最小限の要求事項を満たすことを目指す。
5) 関係する全ての個人を尊重し,より有意義な環境を作る 人間中心組織は,職員が行う貢献を評価し,
承認する。システムの全ての潜在的ユーザに,より有意義な環境を作るために力を尽くす。この原則
は,職員が単純に“なんとかやっていく”(受動的展望)というワークプレイスを作り出すのではなく,
組織の目的及び業務の有意義な一部として活躍し成功するための環境を作り出すことを目的とする。
6) オープンで信頼できる組織とする 組織は,オープンで信頼できることで,顧客との関係(社内外),
ユーザの信頼,忠誠心,及び評判が向上するというメリットが得られる。
7) 社会的に責任のある行動をとる 組織には,社会的責任がある。倫理的に行動し,職員,顧客,及び
地域コミュニティに自信及び誇りを植え付ける。組織は,JIS Z 26000の推奨事項に従い,これを実行
する。
4.2 人間工学又はヒューマンファクターズ
人間工学(又はヒューマンファクターズ)は,定義によれば,人間中心である。人間工学では,人間と
システムのその他のコンポーネント(機械,製品,サービス,環境及びツール)との間の相互作用を扱う。
これらは,全て,人間中心組織を達成するために絶対に欠かせない重要なものである。“人間工学”と“ヒ
ューマンファクターズ”とは同義語だが,この規格では,便宜上“人間工学”を用いる。
人間工学的アプローチは,人間中心組織において,システムの定期的なメンテナンス及び運用を行う際,
並びにシステムの設計,再設計及び改良を行う際に,組織をサポートし,維持するのに役立つ。
人間工学的アプローチ及びそれに関連する方法論は,組織の内部システム(組織のイントラネットなど),
及びステークホルダを含む外部システム(組織が販売を予定する製品の設計など)の,どのシステムにも
――――― [JIS Z 8542 pdf 7] ―――――
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応用可能である。また,人間工学的アプローチは,組織全体に応用することも可能である(つまり,組織
自体を一つの“システム”とみなすことが可能である。)。人間工学に加えて,組織が人間中心の一部とし
て取り組む他の種類の考慮事項もある(例として,附属書Bに記載したその他の規格を参照)。
図1に,この規格とJIS Z 8541との関係を示す。ここには,両規格が対象とする利用者(つまり,執行
役員,ポリシー決定者,又はその他のレベルの管理者のいずれか)に基づき,二つの規格それぞれにおけ
る責任がどのように異なるかを示している。また,この規格が基づいている重要な参考文献も幾つか記載
している。JIS Z 8541は,人間工学に関する組織の戦略的計画(図1の左側に記載),及び組織のその他の
活動(図1の右に記載)に貢献する。
注記 JIS Z 8541に基づいて反復する人間中心の活動を含む7つの原則を理解し約束するのは,一般的に,オー
ナー,経営者及び上級管理者の責任である。通常,これらのマネジメント層が,組織内で人間中心アプロー
チ及びその他の考慮事項を含む戦略的計画を開始する。この概念が,この規格の実施へとつながり,そこに
おいて人間工学アプローチは,戦略的計画,業務設計及び組織編成に使用される。ここで,人間中心アプロ
ーチの戦略的考え方を理解し,反復する人間中心の活動の利用を計画し,人間中心の活動を管理するのは,
一般的に上級管理者中級管理者の責任である。この規格には,反復する人間中心の活動の実行が含まれ,
これは,一般的にラインマネージャーの責任となる。
図1−JIS Z 8541とこの規格との関係
5 ステークホルダ及び管理レベル
5.1 ステークホルダ及び価値共創
ステークホルダは,組織の活動に影響を与え,組織の活動の影響を受ける可能性がある。人間中心組織
及びそのステークホルダは,互いの関係及び相互作用を通じて価値を共創する。ステークホルダ·グルー
プには,管理者,従業員及び/又はその代表者,顧客並びに社会が含まれる。マネジメント層,並びに従
――――― [JIS Z 8542 pdf 8] ―――――
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業員及び/又はその代表者は,組織内部のステークホルダの例であり,顧客は,外部のステークホルダの
例である。文化的規範及び期待の観点から,社会のステークホルダ(例えば,規制機関,運営コミュニテ
ィ,環境団体及び投資家)がある。
価値は,ステークホルダ間で“共創(co-created)”され,利益は,全ての当事者によって実現される
[25][27][29][30]。共創によって生み出された価値は,次のとおり分類される。
− 機能価値
− 知識価値
− 感情価値[28]
機能価値は,ステークホルダが期待する価値のことである。知識価値は,ビジネス関係,その嗜好及び
ビジョン,並びに製品及びサービスの知識(内容,使用法など)で,ステークホルダの知識からもたらさ
れる。そのような知識は,共創を促進するための累積的なリソースとなる。感情価値は,相互作用を通じ
た快楽,喜びなどの短期的な感情,及び信頼,くつろぎなどの長期的な感情からもたらされる。これも,
共創を促進するリソースとなる。共創の価値は,業務及び組織に関する決定を行う際にマネジメント層に
よって考慮され育まれる。その結果,ステークホルダとの良好な関係がサポートされ,それによって,人
間中心組織がサポートされる。
組織の持続可能な成長を促進するために,各ステークホルダ·グループをバランスよく考慮し,経営指
針に反映することが望ましい。マネジメント層及びポリシー決定者は,組織を導き,目標を達成するため
に必要なリソースの提供を保証する責任を担っている。人間中心組織に関しては,この責任は,JIS Z 8541
に詳しく説明されている。
5.2 視点を変える : 内部顧客及び外部従業員
従業員を内部顧客とみなし,顧客を外部従業員とみなすことは,人間中心組織にとって有益な概念であ
る([21][24])。人間中心組織では,全ての従業員及びマネジメント層が,お互いを大切な顧客であるか
のように取り扱うことが望ましい。これは,優れた内部顧客サービスによって,組織に積極的な相互作用
がもたらされ,部門間のコミュニケーション及び協力が向上し,プロセス及び手順が調和され,さらに,
従業員の士気及び満足感が高まるからである。その結果,組織内の安全衛生が促進され,長期的にウェル
ビーイングが保たれる。これによって,コストが削減され,生産性が向上し,生産高も上がる。
同様に,顧客は,単なる製品及びサービスの購入者又はユーザではなく,むしろ組織にリソースを提供
する。これらの顧客は,製品及びサービスの開発及び提供に参加する外部従業員とみなすことが可能であ
る。その場合,外部従業員として価値創造プロセスにリソースを追加し,組織の価値を増加させる。図2
に,ステークホルダの枠組みを示す。
――――― [JIS Z 8542 pdf 9] ―――――
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社 会
組 織
マネジメント
顧 客 従業員
(外部従業員) (内部顧客)
注記 この図は,ステークホルダの枠組み及びそれぞれの関係を示している。ここでは,社会を,全てを含むグル
ープとして表し,組織は,その中に位置する,一つのステークホルダとして表している。組織内では,マネ
ジメント及び従業員を異なるステークホルダのグループとして表し,これら二つのグループの間には相互
関係がある。これらは,それぞれ社会に属し,組織外に,別のステークホルダとして表されている顧客とも
相互関係がある。
図2−ステークホルダの枠組み
5.3 管理責任
人間中心組織の達成に関して,上級管理者,中級管理者及びラインマネージャーに一般的に割り当てら
れる責任には,幾つかの違いがある。
a) 上級管理者中級管理者の責任は,次によって価値を共創することである。
− 人間中心アプローチの戦略的展望を理解する。
− 反復する人間中心の活動の利用を計画する。
− 人間中心の活動を管理する。
b) ラインマネージャーの責任は,次によって価値を共創することである。
− 活動を実行する人物,及びそれらの活動が実行される状況を理解する。
− ステークホルダのニーズ及び要求事項を特定する。
− ソリューションを作成,実行,メンテナンス又は撤退する。
− 査定及び評価する。
組織の規模に応じて,組織が様々な管理レベルで雇用する人数は異なる。そのため,様々なレベルの管
理職(例えば,上級管理者,中級管理者,又はラインマネージャー)として雇用される人は,僅か一人だ
ったり,数人,又は多数であったりする場合がある。したがって,この規格の要求事項では,管理者レベ
ルを区別しておらず,様々な種類の組織構造に適応することが可能である。
――――― [JIS Z 8542 pdf 10] ―――――
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JIS Z 8542:2022の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 27501:2019(MOD)
JIS Z 8542:2022の国際規格 ICS 分類一覧
- 13 : 環境.健康予防.安全 > 13.180 : 人間工学