JIS Z 8732:2021 音響―音圧法による騒音源の音響パワーレベル及び音響エネルギーレベルの測定―無響室及び半無響室における精密測定方法 | ページ 10

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附属書H
(規定)
半自由音場における半球測定面上のマイクロホンのらせんトラバース経路
図H.1に示すように,一つのマイクロホンを1本の子午線経路に沿って移動すると同時に,5本の円経
路に沿って移動することによって,らせんトラバース経路を設定する。
図H.1−マイクロホンのらせんトラバース経路

――――― [JIS Z 8732 pdf 46] ―――――

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附属書I
(参考)
測定不確かさに関する情報の開発のための手引
I.1 一般事項
測定の方法に関する不確かさの表現のフォーマットとしては,ISO/IEC Guide 98-3に示されているもの
が,一般に用いられている。このフォーマットには不確かさの要因のバジェットが含まれており,それを
用いて不確かさの要因の全てを特定して,合成標準不確かさを求めることが可能である。
機械及び装置類の騒音放射量を測定する場合には,全ての不確かさを,次の二つのグループの不確かさ
の成分に分けるとよい。
a) 測定の方法に起因する不確かさ
b) 機械類の音響放射の不安定性による不確かさ
現時点における知見に基づいて,この附属書では,ISO/IEC Guide 98-3をこの規格に実際に適用するた
めの付加的な説明及び情報を示す。
この附属書は,箇条10を補うものである。
I.2 全標準偏差σtotに関する考察
この規格で用いる測定不確かさは,全標準偏差σtotから直接求められる拡張測定不確かさU[式(29)]か
ら算出する。ここで,σtotは,ISO/IEC Guide 98-3で定義されているu(LW)の近似である。
この全標準偏差σtotは,性質が全く異なるσR0及びσomcの二つの成分から成る[式(28)参照]。
これらの量は,統計的に独立であると仮定し,別々に求める。
機械に特有の標準偏差σomcは,計算によって求めることは不可能で,I.3に示すように繰り返して測定し
た結果から算定する。標準偏差σR0については,I.4に示す。
注記 この規格で記載したように,拡張測定不確かさは,一群の機械の騒音表示を目的としたISO
4871[9]で用いている製品の標準偏差を含んではいない。
I.3 σomcに関する考察
10.2に規定した標準偏差σomc(dB)は,式(I.1)によって計算する。
N
1
omc Lpj
, Lpav (I.1)
N-1 j 1
ここに, Lp,j : 指定した位置でj番目の運転及び据付け条件で測定し,暗騒音
の補正をした音圧レベル(dB)
Lpav : 上記のようにして繰り返し求めた全ての音圧レベルの算術平
均値(dB)
これらの測定は,測定面上の音圧レベルが最大となるマイクロホン位置で行う。測定面全体の測定値を
平均した場合には,式(I.1)のLp,j及びLpavを,それぞれ L,pj 及び Lpav に置き換える。
一般に,騒音放射の測定の際の据付け及び作動条件は,個々の機械の騒音試験規程に規定されている。
そうでない場合には,これらの条件を正確に決め,試験報告書に記載しなければならない。
これらの条件の決め方について推奨する事項及びσomcの期待値の重要性については,次に示すとおりで

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ある。
試験条件としては,測定対象騒音源の通常の使用を前提とし,製造業者及び使用者に推奨される実際の
条件とする。ただし,通常の使用でも,作動の仕方,材料の流れの違いなどによって条件が異なることも
ある。このような不確かさには,長期(例えば,連日にわたる)の運転における作動条件の変化,並びに
据付け及び作動条件を再調整した直後の騒音放射の測定で生じる変動による不確かさも含まれている。
機械類を,柔らかいスプリングの上又は重いコンクリート床の上に置いた場合,普通は据付けの影響は
現れない。ただし,重いコンクリート床の上に置いたときと実際の据付け条件とでは,測定結果に大きな
違いが生じる可能性がある。補助装置に連結する機械類では,据付け条件による不確かさが最も大きくな
る可能性がある。手持ち形の機械類でも問題がある。このような場合の機械の作動の仕方及び据付け方の
違いによって騒音が変化するときには,それらの条件について検討する。据付け条件がある一定の幅に入
っている場合には,それぞれの据付け条件のときの音圧レベルの標準偏差からσomcを見積もることが可能
である。据付け条件による影響が分かっている場合には,推奨する据付け条件を,騒音試験規程又は製造
業者が推奨する使用方法に記載するのがよい。
不確かさを表す主要な量であるσtotを考えた場合,σomcに対する検討は,σR0で表される他の不確かさの
要素に比べてより重要である[式(28)参照]。その理由は,実際にσomcはσR0に比べてはるかに大きい値と
なるからである。σR0は,この規格の表1及び表2に示すように,グレード1の精度の測定では0.5 dBで
ある。
σomc>σR0である場合には,高い精度,すなわち,σR0が小さい測定方法をとっても,全体としての不確か
さを小さくすることにはならず,経済的にも無駄である。
表I.1に示す例を見ると,据付け方及び作動方法による不確かさが大きい場合には,精度のグレード1
を実現するために測定精度を上げる努力をしても無駄であることが分かる。
さらに,この規格の精度のグレードの違いは,σR0の値だけで表現されているので,σomc>σR0である場合
には,全標準偏差σtotに関して誤解を生むことにもなりかねない。
表I.1−三つの異なるケースについて計算した全標準偏差σtotの例
方法の再現性 運転及び据付け条件
の標準偏差 安定 不安定 極めて不安定
σR0 標準偏差σomc,dB
dB 0.3 2 4
全標準偏差σtot,dB
0.6 2.1 4.0
0.5
I.4 σR0に関する考察
I.4.1 一般事項
σR0の上限値は,表1及び表2に示すとおりである。さらに,10.3では,個別の機械又は同種の機械群に
関してより実際的なσR0の値を求めるために検討を行うことを推奨している。これらの検討は,JIS Z 8402
(規格群)に定義されている再現性の条件で測定を行うか,又は更に詳細な情報が必要な式(31)に基づく
いわゆるモデル化による方法を用いて,計算によって行う。
ある不確かさの要素が,特定の応用に関係がない,又は検討することが難しい場合には,ラウンドロビ
ン試験及びモデル化による方法のために,騒音試験規程で限定したσR0を定義するのがよい。

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モデル化による方法では,測定パラメータ及び環境条件を検討することによって,又は少なくとも適切
な経験によって不確かさの要素を評価することができる計算式の存在が必要である。この規格の発行時に
は,関連する確立されたデータは十分ではなかった。それでも,I.4.2I.7に示す情報は,確定的ではない
が,関係する量の概要を示すために有効である。
I.4.2 不確かさに対する寄与,σR0
I.4.2.1 一般事項
この規格によって求められる騒音源の音響パワーレベルLWは,式(I.2)に示すように,多くのパラメータ
の関数である。
' S
LW Lp(ST)10log10 K1 C1 C2 C3 env slm mic angle methodomc (I.2)
S0
ここに, L'p(ST) : 測定対象騒音源が作動している間の測定面上の時間平均音
圧レベルの平均値(dB)
S : 測定面の面積(m2)
S0 : 基準面積(1 m2)
K1 : 暗騒音補正値(dB)
C1 : 基準音響パワーP0(1 pW)及び基準音圧p0(20 μPa)におけ
る空気の特性音響インピーダンスρ0c0(400 Ns/m3)と測定時
の空気の特性音響インピーダンスρcとの違いを考慮した補
正値(dB)(9.4.4.1参照)
C2 : ある気象条件で測定した音響パワーを,基準気象条件におけ
る値に換算するための音響放射インピーダンスに関する補
正値(dB)で,適切な騒音試験規程から求める。それがない
場合には,モノポール音源の場合の9.4.4.1に示すC2の計算
式を用いるのが妥当で,その他のタイプの音源にも平均的な
値を与える(参考文献[24]及び[26]参照)。
C3 : 空気の音響吸収に関する補正値(dB)(参考文献[27]参照)
攀 環境における反射による不確かさに関する入力量(dB)
測定装置の不確かさに関する入力量(dB)
椀 マイクロホン位置の数が限られていることによる不確かさ
に関する入力量(dB)
愀最 騒音源が放射する音の方向と測定面の垂直断面方向の角度
の差に関する入力量(dB)
攀 適用する測定方法に起因する不確かさに関する入力量(dB)
運転及び据付け条件に起因する不確かさに関する入力量
(dB)で,σR0の計算には含まれていない[10.1及び式(28)
参照]。
注記1 式(I.2)と類似の式が,音響エネルギーレベルについても成り立つ。
注記2 式(I.2)に含まれている入力量は,この規格の発行時における知見に基づいているが,更に検
討すると,その他にもある可能性がある。
入力量によって,確率分布(正規,一様,スチューデント-tなど)は異なる。その期待値(平均値)は
入力量の最適推定値で,その標準偏差がばらつきの程度を表す不確かさである。
据付け方及び作動条件に関する不確かさの要素はσomcに含まれており,その他の不確かさの要素はσR0
に含まれている。
2
R0 ii )
(cu (dB)の計算に必要な要素ci及びuiに関する期待値について,この規格の発行の時点
i
における知見を,表I.2に示す。

――――― [JIS Z 8732 pdf 49] ―――――

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注記3 ある特定の種類の騒音源,例えば,ある特定のタイプの機械については,この附属書で示す
値について検討しなければならないが,更に小さな値になる可能性もある。音響パワーレベ
ルを,ある限度値と比較することが目的の場合,騒音試験規程で騒音源に関して測定面の形
状及び測定距離が一つに限定されている場合には, 愀最 化は小さくなる可能性がある。
実際,これによって表記する全標準偏差σtotの値が小さくなることもあり得る。
このσR0の計算では,個々の不確かさ寄与の間に相関はないと仮定している。
この規格の発行時には,幾つかの要素の寄与による標準不確かさについては不明で,今後の検討が必要
である。
表I.2に示す不確かさのパラメータの説明及び数値例については,I.4.2.2I.4.2.10に示す。不確かさを
計算する式を,測定不確かさの期待幅を示す例とともに示す。
I.4.2.2 音圧レベル測定の繰返し性
測定の繰返し性の不確かさ uL'(ST) は,同一条件で測定を繰り返して行ったときの測定結果の一致の程度
p
を表し,一つのマイクロホン位置における6回の音圧レベル測定の繰返し性の標準偏差 Ls'(ST) rep から求め
p
る。
この測定は,繰返しの条件,すなわち測定手順,測定者,測定器及び測定位置は全て同一とし,短時間
のうちに繰り返して行う。ISO/IEC Guide 98-3には規定されていないが,一連の測定の間に測定装置類を
一端切り離し,再び組み立てて行うのが一般的である。
'
感度係数 cL'(ST) は,暗騒音レベルの影響を受ける。それは,LWに関する式(I.2)の Lp(ST) に関する偏導関数
p
から求められる。式(11)のK1を置き換えることによって,感度係数は次の式となる。
Lc 1
'(ST)110ΔLp /10
p
1
これは,更に cL'(ST) =1+cと簡略化することが可能である。測定の繰返し性は,平均時間の強い影響を
K1
p
受ける可能性がある。cと同じような極端な筋書きで考えると,
K1 cL'(ST) =1.1となる。代表的な例として,
p
短時間の繰返し性が小さく,0.1 dB以下であれば,不確かさ寄与は0.1 dBである。平均化時間が機械の運
転周期の回数を十分に含んでいない場合には,全不確かさは精密級の精度のグレードの規格としては受け
入れられないほど大きくなる可能性がある。機械の運転周期の整数倍の長さにわたって平均化時間を設定
することによって,この不確かさの要素は無視できる程度に小さくすることができる場合が多い。極端に
静かな機械の場合には,暗騒音を除去することによって感度係数が小さくなり,それに伴って全不確かさ
も小さくなる。

――――― [JIS Z 8732 pdf 50] ―――――

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JIS Z 8732:2021の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 3745:2012(MOD)
  • ISO 3745:2012/AMENDMENT 1:2017(MOD)

JIS Z 8732:2021の国際規格 ICS 分類一覧

JIS Z 8732:2021の関連規格と引用規格一覧