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附属書JA
(規定)
自由音場特性の試験及びそれに用いる音源の指向特性の測定
JA.1 一般事項
この附属書は,ISO 26101:2017,Acoustics−Test methods for the qualification of free-field environmentsに基
づき,この規格の附属書Aに規定する無響室及び半無響室の自由音場(本体の3.6参照)としての特性の
試験方法に関して,マイクロホントラバース経路上の音圧レベル分布の逆2乗則からの偏差の測定方法及
びそれに用いる試験用音源の指向特性の試験方法について規定する。
注記 逆2乗則とは,自由音場で音波が球面上に伝搬することによって,直線上の音の強さ(音圧の
2乗に比例)が音源からの距離の2乗の逆数に比例することをいう。
JA.2 測定装置
マイクロホン及びケーブルを含む音圧レベルの測定システムは,JIS C 1509-1のクラス1の要求事項に
適合するものを用いる。
マイクロホン(保護グリッド,取付け部などの附属部も含む。)は,無指向性と公称されているものを用
いる。
1/3オクターブバンドの周波数分析には,JIS C 1513-1のクラス1の要求事項に適合する周波数分析器を
用いる。
注記 この附属書に規定する方法では,5 000 Hz以上の周波数の測定には,IEC 61094-4に規定する
WS2Fマイクロホンの直径と同等又はそれ以下の直径をもつマイクロホンを用いる。
JA.3 試験用音源
JA.3.1 一般事項
自由音場特性の試験では,対象周波数範囲(3.11参照)全体にわたって点音源とみなせる音源を用いる。
その音源が備えるべき条件は,次のとおりである。
a) 小型で,音響中心がJA.4.4に示すマイクロホントラバース経路の起点に十分近い点に位置することが
分かっているものを用いる。それによって,音源の音響中心の補正をしないで,距離に対する音圧レ
ベルの当てはめが可能である。
b) A.3.2に示す方法によって測定した指向特性が表JA.1に示す基準を満たし,全ての方向に音を一様に
放射するものを用いる。
c) 対象周波数範囲全体にわたって十分な音響パワーを放射し,連続トラバースによってマイクロホンを
移動したときにも,トラバース経路上の全ての点で暗騒音よりも10 dB以上高い音圧レベルが得られ
るものを用いる。
d) 高い安定性をもち,測定環境の中の固定位置に置いたモニターマイクロホンで観測した対象周波数範
囲の放射音の音圧レベルが,各マイクロホントラバースの測定が完了するまでの時間にわたって安定
した音源(信号発生·増幅器の変動も含む)を用いる。音源の変動が±0.2 dB以上である場合には,
モニターマイクロホンを使って式(JA.1)による補正を行う必要がある。
Lpi=L′pi−Lp,ref,i+Lp,ref,0 (JA.1)
――――― [JIS Z 8732 pdf 56] ―――――
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ここに, Lpi : i番目の測定点における補正をした音圧レベル(dB)
L′pi : i番目の測定点における音圧レベルの測定値(dB)
Lp,ref,i : i番目の測定点における測定の際に,基準位置に置いたモニ
ターマイクロホンによる音圧レベルの測定値(dB)
Lp,ref,0 : 最初の測定点0における測定の際の基準位置に置いたモニタ
ーマイクロホンによる音圧レベルの測定値(dB)
対象周波数範囲全体の試験を行うためには,二つ又はそれ以上の音源が必要となることがあり,それら
個々の音源が対象とする周波数範囲でa) d) の条件を満たしている必要がある。
次の点に注意しなければならない。
− 音圧レベルは,暗騒音に比べて10 dB以上高いことを確かめる。
− モニターマイクロホンは,マイクロホントラバース機構との間で音響的干渉が起きない場所に設置す
る。
− マイクロホントラバースの間の大気条件の変化による測定値の変動と,音源の音響パワーの変動とを
区別する。
JA.3.2 試験用音源の指向特性の評価方法
JA.3.2.1 一般事項
試験用音源の指向特性は,それを取り囲む半径1.5 mの球又は半球の測定面上の音圧レベルを測定する
ことによって評価する。
JA.3.2.2 試験用音源の設置
試験用音源を,JA.4に規定する自由音場特性の試験で音源を設置する試験室の中心(半無響室では,反
射面の中央)に設置する。
JA.3.2.3 試験音の発生
試験用音源を,次に示す音源信号のいずれかで駆動する。その出力レベルは,自由音場特性の試験にお
けるレベルと一致させる。
a) 純音信号 : 離散周波数による適性試験のために,試験用音源を対象周波数範囲の1/3オクターブバン
ドの中心周波数に近い周波数の純音で駆動する。
b) 広帯域信号 : 広帯域評価又はFFT分析による離散周波数による評価の場合には,試験用音源をランダ
ムノイズ又はランダムノイズから抽出した広帯域試験信号で駆動する。
JA.3.2.4 音圧レベルの測定
球座標系を設定してその中心r=0 mの点に試験用音源を置き,仰角がφ=90°となる平面が半無響空間
では反射面に,無響空間では床と天井に平行な面となるようにする。方位角がΘ=0°(又は90°,180°,
270°)となる平面が,直方体の試験室ではそれぞれの壁に平行になるようにする。r=1.5 m,Θ=0°の円
弧上でφ=80°,60°,40°及び20°となる各点における音圧レベルを1/3オクターブバンドごとに測定す
る。無響空間としての性能を評価する場合の音源については,φ=100°,120°,140°及び160°となる点
も追加し,それぞれのφの角度ごとにΘ=0°,45°,90°,135°,180°,225°,270°及び315°となる点
で測定を行う。したがって,測定点の総数は半無響空間で32,無響空間で64となる。球測定面上におけ
るこれらのマイクロホン位置を,図JA.1に示す。
――――― [JIS Z 8732 pdf 57] ―――――
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図JA.1−試験用音源の指向特性測定のための球測定面上のマイクロホン設置点
800 Hz以下の周波数では,ISO 10140-5の要求事項を満たした音源が適している。それ以外に,波長の
1/10以下の寸法の密閉箱に入れた電磁型スピーカでもよい。
20 000 Hzまでの周波数については,音響的にシールドされたドライバーユニットに円筒チューブを取り
付けた音源が適している。チューブの長さは1.5 m,開口部の直径は6 mmが適切である。それより低い周
波数で用いる場合には,もう少し短く,直径が大きなチューブを用いるとよい。
JA.3.2.5 試験用音源の指向特性
各1/3オクターブバンドについて,全ての測定点における音圧レベルの算術平均値(dB)並びにそれに
対する正の最大偏差(dB)及び負の最大偏差(dB)を求める。これらの偏差の値が表JA.1に示す許容範
囲内であれば,その試験用音源は無響室又は半無響室の自由音場特性の試験に適していると判断される。
――――― [JIS Z 8732 pdf 58] ―――――
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表JA.1−試験用音源の指向特性に関する偏差の許容範囲
試験環境の種類 1/3オクターブバンド 指向特性に関する
中心周波数 偏差の許容範囲
(Hz) (dB)
無響 ≦630 ±1.5
8005 000 ±2.0
6 30010 000 ±2.5
>10 000 ±5.0
半無響 ≦630 ±2.0
8005 000 ±2.5
6 30010 000 ±3.0
>10 000 ±5.0
JA.4 自由音場特性の試験
JA.4.1 試験用音源の設置
無響室又は半無響室の内部に,A.3.2.1によって試験用音源を設置する。
JA.4.2 半無響室における試験用音源の設置位置
半無響室では,A.3.2.2によって試験用音源を反射性の床上に設置する。
JA.4.3 半無響室の反射面の特性
半無響室の反射面は,A.2.5に規定する特性をもっていなければならない。
JA.4.4 マイクロホントラバース経路
音圧レベル分布を測定するためのマイクロホントラバース経路を,A.3.3に規定する方法によって設定す
る。
JA.4.5 測定点の空間配置
JA.4.4によって設定したマイクロホントラバース経路上に,A.4.3に規定する方法に従って音圧レベルの
測定点を設定する。
JA.4.6 試験の手順
JA.4.6.1 試験を行う周波数範囲
自由音場特性の試験を行う周波数範囲は,A.2.3による。
JA.4.6.2 分析バンド幅
自由音場特性の試験における分析バンド幅は,A.4.1による。
JA.4.6.3 試験音の発生
A.4.2に従って,試験用音源から試験音を放射する。
JA.4.6.4 音圧レベルの測定
音圧レベルの測定は,1/Nオクターブバンドフィルタ又はFFT分析器を用いて行う。
試験信号ごとに,A.3.3に規定されているトラバース経路に沿ってマイクロホンを移動させる。音圧レベ
ルの測定は,トラバースの起点から適性試験を行う最低の周波数の音の1/4波長離れた点から無響又は半
無響空間として評価する仮想的な境界まで,少なくとも適性試験を行う最低の周波数の音の1/4波長の長
さについて行う。
周波数ごとに,それぞれのマイクロホントラバース経路に沿って,等間隔の測定点で音圧レベルを測定
する。
――――― [JIS Z 8732 pdf 59] ―――――
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純音信号を用いる離散周波数による測定では,マイクロホンをトラバース経路に沿ってゆっくりと連続
的に移動させながら音圧レベルを記録する方法をとってもよい。その結果から,離散周波数による測定の
ための空間的サンプリングの指針に従って,距離に対する音圧レベルのデータを読み取る。
広帯域試験信号を用いる場合には,安定した音圧レベルを得るために,十分な時間をかけて測定を行う
必要がある。
JA.4.6.5 測定結果の評価
JA.4.6.4による音圧レベルの測定の結果から,逆2乗則に基づく音圧レベルを,それぞれの測定トラバ
ースごとに,式(JA.2)によって計算する。
ri
Lrp()
i b 20log10 (JA.2)
r0
ここに, Lp(ri) : riの距離の点について,逆2乗則によって計算した音圧レベ
ル(dB)
ri : トラバースの数学的起点からi番目の測定点までの距離(m)
r0 : 基準長さ(1 m)
b : 試験用音源からの適正距離を最大にするために,音圧レベル
の測定値の許容範囲内への当てはまりが最適となるように
調整した音源の強さに関するパラメータ(dB)
bの値を決めるには反復プロセスを用いることが可能であるが,最初の値は式(JA.3)によって計算する。
N N
ri
20log10 Lpi
i 1 r0 i 1
b (JA.3)
N
ここに, Lpi : i番目の測定点における音圧レベル(音源の安定性の補正済み)
(dB)
N : 測定トラバース経路に沿った測定点の数
注記 長い距離にわたるトラバースでは,特に高音域で空気の音響吸収の影響が無視できなくなり,
JIS Z 8738:1999に基づいてそれを補正する必要がある。例えば,10 000 Hzでは,空気の音響
吸収による減衰は0.3 dB/mになることもある。
JA.4.6.6 逆2乗則からの偏差
逆2乗則に基づく音圧レベルの計算値を用いて,各測定点で測定した音圧レベルの逆2乗則からの偏差
(dB)を,式(JA.4)によって計算する。
ΔLpi=Lpi−Lp(ri) (JA.4)
ここに, ΔLpi : 逆2乗則からの偏差(dB)
Lpi : i番目の測定点における音圧レベル(音源の安定性の補
正済み)(dB)
1/3オクターブバンドごとに計算された逆2乗則からの偏差が,表A.1の許容値の範囲に収まっているか
どうかを確認する。
――――― [JIS Z 8732 pdf 60] ―――――
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JIS Z 8732:2021の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 3745:2012(MOD)
- ISO 3745:2012/AMENDMENT 1:2017(MOD)
JIS Z 8732:2021の国際規格 ICS 分類一覧
- 17 : 度量衡及び測定.物理的現象 > 17.140 : 音響及び音響測定 > 17.140.01 : 音響測定及び雑音除去一般
JIS Z 8732:2021の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISC1508:2000
- 騒音計のランダム入射及び拡散音場校正方法
- JISC1509-1:2017
- 電気音響―サウンドレベルメータ(騒音計)―第1部:仕様
- JISC1513-1:2020
- 電気音響―オクターブバンド及び1/Nオクターブバンドフィルタ(分析器)―第1部:仕様
- JISC1515:2020
- 電気音響―音響校正器