JIS Z 8803:2011 液体の粘度測定方法 | ページ 5

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Z 8803 : 2011
c) ずり速度,ずり応力は,式(19)によって求められる。
2Ω (19)
r2 1 1
2 2
Ri Ro
σ= M
2πr2 (ll)
ここに, ずり速度(s−1)
σ : ずり応力(10−1 Pa)
r : 円筒の回転軸を中心とするその垂直方向の距離で,Ri≦r
≦Ro(cm)
式(19)において,ニュートン液体と仮定したときに,内筒面におけるずり速度又はずり応力はrに
Riを代入することによってそれぞれ求める。また,同様に外筒面におけるずり速度又はずり応力はr
にRoを代入することによって,それぞれ求める。
注記 内・外筒の隙間 刀 =Ro−Ri) が小さくなると,Ri≒Roが成り立ち,内筒及び外筒面における
それぞれのずり速度,又はずり応力の値は近似的に一定値とみなすことができるようになる。

8.2 共軸二重円筒形回転粘度計の種類

8.2.1  外筒定速方式の共軸二重円筒形回転粘度計
この粘度計は,外筒を自由に一定の角速度で回転させる方式のもので,図5 a) にその原理を示す形状を,
表7に寸法例を示す。
8.2.2 内筒定速方式の共軸二重円筒形回転粘度計
この粘度計は,内筒を自由に一定の角速度で回転させる方式のもので,図5 b) にその原理を示す形状を,
表7に寸法例を示す。
8.2.3 定トルク方式の共軸二重円筒形回転粘度計
この粘度計は,内筒を自由に一定のトルクで回転させる方式のもので,図5 c) にその原理を示す形状を,
表7に寸法例を示す。

――――― [JIS Z 8803 pdf 21] ―――――

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a) 外筒定速方式 b) 内筒定速方式 c) 定トルク方式
図5−共軸二重円筒形回転粘度計
表7−共軸二重円筒形回転粘度計の寸法例
内筒と外筒との比 内筒の長さ
Ro/Ri l
≦1.1 ≧3Ri
注記 Roは外筒の内径の1/2,Riは内筒
の外径の1/2を表す。

8.3 測定に用いる補助器具

  測定に用いる補助器具は,次による。
a) 温度計 あらかじめ必要精度に応じて校正された0.1 ℃以下の目盛をもつ温度計を使用する。
b) 恒温槽 粘度計内の試料面が,恒温槽内の液面より低くなるような深さをもつものを使用する。
室温付近で試料の粘度を精度1 %で測定しようとする場合は,温度変化は通常,0.1 ℃以内である。
また,適切なかき混ぜ機によって恒温槽内の温度分布を均一に保つことを必要とする。
循環流によって測定試料部を一定恒温に保つ場合には,液体ジャケット及びそれに還流させる循環
ポンプを備えた恒温槽を用意する。

8.4 操作

8.4.1  準備
試料の粘度に応じて粘度計を選び,内筒及び外筒を適切な蒸発性の溶剤でよく洗浄し,溶剤が完全にな
くなるまで乾燥する。このような操作を行っても,水性の試料の場合には僅かな付着成分が原因で試料が
円筒面をぬらさないことがあり,必要に応じて,水性の洗剤で洗浄し水ですすぎ洗いをした後,水分がな
くなるまで十分に乾燥させる。
8.4.2 試料の入れ方
試料の入れ方は,次による。

――――― [JIS Z 8803 pdf 22] ―――――

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a) 測定に必要な量を外筒内に正しく入れる。
b) 試料が不均質な場合には,かき混ぜなどによって均質にしたものを入れる。
注記 試料がチクソトロピーといわれる性質1)をもつ非ニュートン液体の場合には,かき混ぜによ
って測定値に影響を与えるので,ゆっくりとかき混ぜる。
注1) チクソトロピー性とは,一定のずり速度(又はずり応力)のもとで,時間の経過に伴
って見掛け粘度が徐々に減少し,ずり速度(又はずり応力)を除くと徐々に見掛け
粘度が復元する性質。
c) 試料を入れるときは,泡が入らないように注意する。
8.4.3 粘度計の設置
粘度計の設置は,次による。
a) 粘度計の回転軸が水平面に対して垂直になるように設置する。
b) 外筒は,試料の液面が恒温槽の液面,又は液体ジャケットの上端より低くなる位置に保持する。
c) 内筒は,外筒と同一の中心軸になるように外筒の中央に置き,内筒及び外筒の底面間の距離は通常,
10 mm以上を保つようにする。また,内筒上面は,試料液面から5 mm以上の深さにする。
なお,内筒の先端部に浸液位置が指定されている粘度計では,試料液面が正しくその位置にくるよ
うに内筒の位置又は試料の量を調整する。
8.4.4 測定
測定は,次による。
a) 測定に先立ち,試料の温度を直接測定して所要の測定温度に達したかどうかを確認するか,恒温槽の
液温をとおして試料の温度とする場合,又は液体ジャケットによって測定試料部を一定にする場合に
は,試料部の温度制御後,少なくとも20分以上時間が経過したかどうかを確認する。
b) 粘度計の内筒が外筒に対して所定の位置にあるかどうかを確認し,必要に応じて円筒の相互の位置を
再調整する。
c) 粘度計を作動させ,粘度(外筒定速方式・内筒定速方式の場合にはトルク,又は定トルク方式の場合
には角速度)の指示が安定してから測定値を読み取る。
角速度又はトルクが変えられる粘度計では通常,角速度又はトルクを変え少なくとも2点以上で測
定を行い,それぞれの測定値を読み取る。
なお,測定のときに,指示値が時間の経過とともに徐々に変化することがある。試料の流動発熱に
よる不平衡な温度が原因となる場合などがあるが[8.5.3 b) 参照],非ニュートン液体にみられるチク
ソトロピー性によることが多い。後者の場合の取扱いは,次のd) に従う。
d) 試料がニュートン液体であるかどうか疑わしい場合,定速方式の粘度計のときには,角速度を変化さ
せた一連の測定から角速度にかかわりなく一定の粘度の測定値(測定値がトルクの場合には,粘度に
換算する。)が得られたかどうかを,また,定トルク方式の粘度計のときには,トルクを変化させた一
連の測定からトルクにかかわりなく一定の測定値(測定値が角速度の場合には,粘度に換算する。)が
得られるかどうかを確認する。異なる粘度の測定値が得られるときは,測定値に測定条件(ずり速度
又はずり応力)を記すとともに見掛け粘度として処理する。
注記 チクソトロピー性をもつ試料の場合には,一定の時間間隔で角速度(又はトルク)を増加さ
せ,ある最大の角速度(又はトルク)に達した後,角速度(又はトルク)を減少させて元に
戻す測定を行って流動曲線を求めるといった方法がよく用いられる。一般に,角速度(又は
トルク)を増加させたときの曲線と減少させたときの曲線とは一致しない。

――――― [JIS Z 8803 pdf 23] ―――――

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8.4.5 計算
計算は,次による。
a) 8.4.4 c) で得られたトルク又は角速度の測定値をもとに,式(18)によって粘度の値を求める。また,そ
れぞれの測定値を得た場合には,式(18)によって粘度の値を算出し,これらの平均値を求める。
b) ) で得た粘度の値に対し,必要に応じて8.5に規定する補正を行う。
c) 非ニュートン液体の見掛け粘度の測定値に対しては,必要に応じて式(19)に従ったずり速度(又はず
り応力)を計算する。

8.5 補正

8.5.1  端面の影響
端面の影響について,次に示す。
a) 式(17)における円筒の長さで表した円筒端面の影響についての補正量 内筒及び外筒の寸法及び
形状が決まり,試料中の内・外筒底面間の距離及び内筒上面と試料面との距離をそれぞれ一定に保ち,
かつ,層流状態でニュートン液体の測定を行う場合には,一定値として扱える。しかし,特に試料が
低粘度である場合には,一般に層流状態で測定を行うことが困難になるので,8.5.5によって測定限界
を調べ正しい測定が行われたかどうかを確認する。
b) 内・外筒底面間の距離による影響は,この距離が小さくなるにつれて著しく増加するので,その影響
が一定値とみなせる10 mm以上離した状態で測定する。
粘度計に制約があり,その距離が10 mm以上確保できない場合には,常に一定の距離を保って測定
を行い,内筒底面から受けるトルクの増加による測定値への影響を避ける。
8.5.2 円筒の偏心による影響
測定中,内筒及び外筒が同一の中心軸にあることが必要で,偏心したり,一方の中心軸に対して他の軸
が傾いたりすると測定値に影響を与える原因となる。
内筒及び外筒の中心軸が平行で,互いに距離eだけ離れている場合の偏心による影響ε4(%)は,次の
式(20)によって求められる。
2 2
100 Re 100 e (20)
4
2 o Ri 2 R
ここに, 攀 偏心による影響(%)
e : 内筒及び外筒の中心軸間の距離(cm)
勿 Ro−Ri
Ro : 外筒の内径の1/2(cm)
Ri : 内筒の外径の1/2(cm)
この値は,同一の偏心量eに対して円筒の隙間の距離 到 估 暄地地余 估
ば,e=0.2 mmで 勿 2 mmのときには0.5 %であるが, 勿 1 mmのときは2 %の値になる。
8.5.3 測定温度の変動による影響
測定温度の変動による影響について,次に示す。
a) 測定温度の不確さは,粘度測定の不確かさ要因となる。比較的に高粘度であるJIS Z 8809に規定する
粘度計校正用標準液JS1000からJS160000までの5種類の標準液(20 ℃で粘度が890 mPa・s140 000
mPa・s)を例にとると,これらの標準液は,0.1 ℃の温度変化に対して約0.8から1 %程度粘度が変化
する。このため,必要とする粘度の測定精度に応じて,温度計の校正,温度制御などを十分留意して
確認しておく。さらに,測定温度と試料の温度との間に差があることが明らかなときには,必要に応
じて試料の温度に対する粘度の変化量を求めて,測定された粘度の値に対する補正量を算出する。

――――― [JIS Z 8803 pdf 24] ―――――

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b) 試料の回転流動に伴い試料に単位体積当たり(粘度)×(ずり速度)2の摩擦熱の発生があり,このた
めに試料に無視できない温度上昇を引き起こすことがある。例えば外筒の内径の1/2が17.5 mm,円
筒の隙間が1 mmの円筒の組合せで粘度計校正用標準液JS52000を30 ℃で測定したとき[粘度は約
19 Pa・s (1.9×104 mPa・s)],ずり速度100 s−1で回転(この場合の回転速度は約1 s−1)させると,最終
的には温度上昇は約1 ℃に達する。
a)と同様に,必要に応じて温度上昇に対する補正量を算出する。
なお,試料の温度上昇は,内筒と外筒との隙間の各部で異なるので,試料の平均温度上昇量を用い
なければならない。
注記 温度上昇を少なくするためには,試料の全発熱量を少なくすることが効果的であり,このた
めには円筒の隙間をできるだけ狭くすることである。
8.5.4 熱膨張による影響
内筒と外筒との隙間が非常に小さく,それぞれが異なる線膨張係数をもつ材料で作られている場合,又
は広い温度範囲で測定を行う場合には,使用基準温度,すなわち粘度計を校正したときの温度からのずれ
が大きくなるために,隙間の距離が変化するので測定値に影響を与える。
そこで,内筒及び外筒の線膨張係数の値が分かれば,両円筒の熱膨張(又は収縮)後の寸法が求められ
るので,必要に応じて式(17)を基礎に補正量を算出する。
8.5.5 層流条件からのずれによる影響
層流条件からのずれによる影響について,次に示す。
a) 内筒定速方式及び定トルク方式の回転粘度計では,ある角速度以上になると液体に働く遠心力によっ
て二次流れが起こり,流れが不安定になる。このために内筒と外筒との隙間にある液体に軸方向に交
互に反対向きの等間隔に並んだ渦(テイラー渦という。)が発生する。
このような,不安定な流れの領域での測定を避けるために,内筒と外筒との比 Ro/Ri(Riは内筒
の外径の1/2,Roは外筒の内径の1/2)の値が1< 1.04の場合には,式(21)によって計算されるテイ
ラー渦が発生し始める限界の角速度 圀 椰 下の角速度で測定を行う。
2/3 2
100 41(2.
Ωcri )1 Ri (21)
ここに, 圀 槿 テイラー渦が発生し始める限界の角速度(rad/s)
試料の粘度(mPa・s)
試料の密度(g/cm3)
Ro/Ri
Ro : 外筒の内径の1/2(cm)
Ri : 内筒の外径の1/2(cm)
また,表8は,代表的な内筒と外筒との比 び内筒の外径のRi/2に対する 圀 丿 の値を示したも
ので,これらの組合せの内筒及び外筒に対しては表8の値をもとに 圀 椰 この値以下の角
速度で測定を行えばよい。

――――― [JIS Z 8803 pdf 25] ―――――

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JIS Z 8803:2011の国際規格 ICS 分類一覧

JIS Z 8803:2011の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISB1501:2009
転がり軸受―鋼球
JISZ8809:2011
粘度計校正用標準液