42
C 6965 : 2007 (IEC 61965 : 2003)
0.9 m及び1.5 mにあるバリアを越えるガラス片の速度は,B.2.3及び図B.4から,それぞれ約2.3 m/s及
び3.8 m/sであることが分かる。
CRTから放出される破片の運動エネルギーは,前述の数式で算出でき,質量,速度及び高さによって決
まる。0.025 gのガラス片の場合,0.9 mにあるバリアを越えるために必要な初期運動エネルギーは0.66×
10−4 Jであり,バリアが1.5 mにある場合は1.80×10−4Jである。これら二つの異なる破片のもつ総運動エ
ネルギーの比は,1 mの高さでは0.66×10−4 J対1.80×10−4 Jで2.7,床の高さでは [(0.66×10−4)+(2.45×
10−4) ] J対[(1.80×10−4)+(2.45×10−4) ] Jで1.3となる。(2.45×10−4) という数字は,破片が1 mの高さか
ら垂直に落下したときに運動エネルギーに変換される位置エネルギーである。
現在のIEC 60065の試験では, 10 gまでの質量の破片が1.5 mにあるバリアを越えることを許容してい
る。この場合,これら破片の最大エネルギーは,約0.17 Jになるかもしれない。
注記 対応国際規格では 0.7 J だが,誤記のため 0.17 Jに訂正した。
B.3 抵抗を入れた分析
B.3.1
序文
この箇条では,抵抗の影響を組み込んで前箇条の分析を繰り返す。抵抗の影響は,軌道中で排除される
空気によって引き起こされる。抵抗の影響は,運動方程式に非線形項を追加することになる。それゆえ,
方程式は,もはや解析的に解くことはできない。
B.3.2 運動方程式
図B.6は,CRTから初速v角度αで飛散するガラス片の定義を示したものである。破片に作用する力は,
重力及び抵抗である。抵抗の方向は,常に破片の軌道とは逆である。そこで,x方向及びy方向の力の均
衡を求めるために,ニュートンの法則を用いることができる。
ma=−
x Fw cos
may=−mg−Fw sin
ここに, m : ガラス片の質量 (kg)
ax : 破片のx方向の加速度 (m/s2)
ay : 破片のy方向の加速度 (m/s2)
Fw : 抵抗力
α : 破片が飛散する初期角度
g : 重力加速度 (9.81 m/s2)
図B.6−破片に作用する力の定義
――――― [JIS C 6965 pdf 46] ―――――
43
C 6965 : 2007 (IEC 61965 : 2003)
抵抗力は,次のように定義付けする。
1
Fw= Cw A A v2
2
ここに, Cw : 抵抗係数
A : 破片の軌道に垂直な断面積
ρA : 媒体の密度
v : 速度の絶対値(図B.6)
抵抗力は,破片の現在(瞬間)速度次第で,一定ではないことに注意しなければならない。媒体は,海
面の高さで約1.2 kg/m3の密度をもった空気であるとみなす。
Cw値は,レイノルズ数で決まる。円形球体のレイノルズ数は,次のように定義付けする。
A
v D
RE=
ここに, D : 破片の直径
μ : 媒体の粘度
今,レイノルズ数を算出することができるようになった。この目的のため,粘度が約1.8×10−5 kg・m/s
の空気中を移動する,直径が1×10−3 mで速度が5 m/sの破片を選ぶ。その結果,約330というレイノル
ズ数が得られる。その次に,典型的なCw値対レイノルズ数曲線から,0.44というCwが求められる。Cw
値は10020 000近くのレイノルズ数に対して一定であることに,注意しなければならない。したがって,
レイノルズ数を求めるために使用する速度及び直径の値は,概算値でも正当化される。
バリアの外側に落ちる破片の最大質量は25×10−6 kg (25 mg) でなければならないというのが,現行
UL/CSA規格の要求事項である。典型的な破片の測定値を,図B.7に示す。これらの寸法をもった破片は,
パネルガラスの密度が2 730 kg/m3であるとき,約25×10−6 kgの質量をもっている。それゆえ,典型的な
ガラス片の断面積は,約3×10−6 m2になる。
単位 mm
図B.7−典型的なガラス片の寸法
したがって,抵抗力方程式
1
Fw= Cw A A v2
2
は,次のように書くことができる。
1
Fw= .044 3 10−62.1 v2=7.910−7 v2
2
――――― [JIS C 6965 pdf 47] ―――――
44
C 6965 : 2007 (IEC 61965 : 2003)
したがって,約4 m/sの速度の典型的な抵抗力値は,1.25×10−5 Nになる。これは,2.45×10−4 Nの重力
と比較することができる。それで,抵抗は重力よりずっと小さいことが分かる。抵抗の影響は,速度が増
すと二次関数的に大きくなる。
B.3.3 規定の距離に届くための最小速度
x変位,y変位と初速及び初期角度との間の関係を求めるためには,力平衡方程式を計算で解かなければ
ならない。これは,非線形項及び角度と速度との相関関係によるものである。その方程式は,解析プログ
ラムを使って解くことができる。
現在(瞬間)速度に対する抵抗の影響は非常に小さいことが,数値シミュレーションから判明した。図
B.8は,抵抗がないとき(破線)及び抵抗があるとき(実線)の,ガラス片の初速2 m/s初期角度45°で
の軌道を示したものである。破片は,抵抗が加わると,x方向及びy方向で減速するが,それは非常に小
さいものであることが分かる。
注記 対応国際規格では“抵抗がないとき(実線)及び抵抗があるとき(破線)”となっているが,誤
記のため“実線”と“破線”を入れ替えた。
図B.8−抵抗がないとき(破線)と抵抗があるとき(実線)の,
ガラス片の初速2 m/s初期角度45°での軌道
B.3.4 断面積の影響
断面積の影響も調査した。抵抗は断面積に比例する。断面積が増えれば,抵抗が大きくなり,破片の減
速も大きくなる。図B.9は,初速2 m/s初期角度45°のガラス片の様々な断面積値に対する様々な軌道を
示したものである。断面積は,3×10−6 m2から9×10−6 m2まで大きくした。断面積の増加は,総変位にさ
ほど大きな影響を及ぼさないことが分かる。
――――― [JIS C 6965 pdf 48] ―――――
45
C 6965 : 2007 (IEC 61965 : 2003)
図B.9−初速2 m/s初期角度45°のガラス片の,様々な断面積値に対する軌道
(実線=3×10−6 m2,破線=6×10−6 m2,一点鎖線=9×10−6 m2)
B.4 潜在的脅威
この箇条では,放出ガラス片の潜在的な脅威について検討する。この附属書では,脅威とはガラス片が
人の皮膚を切り裂く危険である,と定義している。
B.4.1 ガラスの皮膚衝突の検討
人間の皮膚は,粘弾性特性を表す。このことは,皮膚は弾性反応し(皮膚に作用する力は皮膚の変位を
引き起こし,その関係は線形である。),かつ,速度に依存する。粘弾性材料は,遅い速度より速い速度で
圧迫したときの方がより硬直する。さらに,人が異なれば,皮膚の質特性にも違いが表れることが,予想
される。
ガラス片は,ある一定の速度及びエネルギーで皮膚に衝突する。その運動エネルギーと破片の形状との
組合せは,脅威を判定する最も重要な要因である。先端が丸くなった形状の大エネルギー物体は,皮膚を
容易に貫通することはない。皮膚は,弾性的に変形するが,裂けることはない。物体が鋭利な縁をもって
いる場合は,皮膚が引き裂かれるおそれがある。しかしながら,破片のエネルギーが小さすぎる場合は,
皮膚は弾性的に変形するだけで,破片は“跳ね返る”はずである。したがって,皮膚が引き裂かれること
はない。
B.5 結論
次のような結論を引き出すことができる。
− ガラス片の経路又は軌道は,初速及び方向で決まる。破片は,重力によって放物線経路をたどる。
− 抵抗は,ガラス片の速度及び軌道にわずかな影響しか与えない。これは,鋭利な縁をもった形状及び
低初速のためである。
− 破片が0.9 m又は1.5 mのところにあるバリアを越えることができるのは,1.5 mのところにあるバリ
――――― [JIS C 6965 pdf 49] ―――――
46
C 6965 : 2007 (IEC 61965 : 2003)
アに対して−26.7+90°の初期角度,また,0.9 mのところにあるバリアに対して−39.8+90°の
初期角度とこれに対応した初速と組み合わされた場合だけである。
− この規格及びUL/CSA規格で規定したように,要求事項を満たしたCRTから放出する破片の最大運動
エネルギーは,約1.0×10−4 Jの桁である。0.9 m及び1.5 mのところに設置したバリアを越えるため
に必要な破片エネルギーの違いは,見ている高さ(1.0 m又は床の高さ)次第で,2.7から1.3倍であ
る。
− 放出破片の皮膚の引裂きという形の潜在的な脅威は,運動エネルギー(質量及び速度を含む。)及び破
片の形状によって決まる。
− 人間の皮膚は粘弾性特性をもっているので,上述のエネルギーは,肉体的損傷を引き起こす力に関し
て,無視できるほどのものである。破片の最大速度は,約4 m/sであり,サイクリスト,競走者など
は,これよりも早い速度で走るとき,0.025 gを超える飛来物,ちり,粗破片に頻繁に遭遇する。
− IEC 60065の試験では,質量が10 gまでの破片が1.5 mのところにあるバリアを越えることを認めて
いる。この場合,これらの破片の最大エネルギーは,約0.17 Jにもなることがある。
注記 対応国際規格では0.7 Jだが,誤記のため0.17 Jに訂正した。
JIS C 6965:2007の引用国際規格 ISO 一覧
- IEC 61965:2003(IDT)
JIS C 6965:2007の国際規格 ICS 分類一覧
JIS C 6965:2007の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称