この規格ページの目次
13
B 9938 : 2019
しい。
6.2.5.6 作動温度
HFDRで作動する油圧システムの油タンクの温度は,通常,70 ℃を超えないことが望ましい。作動温度
を低くするほど,作動油の寿命を長くすることができる。特定の用途では,150 ℃まで許容できるが,こ
のような温度では作動油はより早く劣化するため,頻繁に確認しなければならない。高温での使用では,
適切なシールを選択しなければならない。その際には,シールの製造業者に確認することが望ましい。
6.2.5.7 作動油のメンテナンス
りん酸エステルは加水分解しやすいので,作動油の含水率は可能な限り低く保つことが望ましい。多く
の場合,真空脱水のような水分除去技術を使用することが適切である。加水分解及び酸化によって作動油
が分解すると酸を形成するため,作動油の含水率(JIS K 0068又はJIS K 2275-3参照)及び酸価(JIS K 2501
参照)を定期的に確認する必要がある。用途によっては,作動油の使用時に酸吸着剤を用いて低い酸性度
を維持する。詳細は,作動油供給業者に問い合わせることが望ましい。
注記1 JIS K 2275-3は,電量滴定装置の使用者には適しているが,りん酸アリルにだけ使用するこ
とが望ましい。しかしながら,水で混濁しているりん酸エステルのサンプルにアニオン性界
面活性剤を添加する技術は実証されていないため,適切ではない可能性がある。
注記2 JIS K 2501の指示薬滴定法及びセミミクロ指示薬滴定法は,色が濃い作動油及び使用によっ
て着色したHFDRには適していない。電位差滴定法は,全てのタイプのHFDRに適している。
6.2.5.8 ろ過
鉱物油に適したほとんどのろ材は,HFDRに使用することができる。フィルタカートリッジに使用され
ている接着剤が,りん酸エステルと適合性があることを,作動油及びフィルタ製造業者に確認した方がよ
い。フィルタのろ過精度は,用途及びシステムの要件によって異なる。HFDRでは,通常の油圧用途でみ
られる最高のろ過精度のフィルタを使用することが望ましい。
6.2.5.9 廃棄
HFDRの寿命は,用途及びメンテナンス方法に依存する。専門業者及び一部の作動油供給業者は,劣化
した作動油及び汚染された作動油を使用できる状態に戻すための再生サービスを提供する。再利用できな
い作動油については,登録された廃棄物業者に委託して,安全に処理を行うことが望ましい。
6.2.6 HFDU−合成作動油(りん酸エステル以外)
6.2.6.1 一般
このカテゴリの作動油は,様々な組成によるものがあり,難燃性についても異なる。この作動油は,化
学反応によって生成された完全な合成物であるが,原料の一部は天然物であってもよい。このカテゴリの
作動油の最も一般的に利用される種類は,ポリアルキレングリコール(ポリオールエーテルとも呼ばれる。)
及び脂肪酸エステル(ポリオールエステルとも呼ばれる。)である。
6.2.6.2 粘度
HFDUは,JIS K 2001で定義されている範囲の粘度グレードに対応して供給することができる。ほとん
どのHFDUは,鉱物油よりも高い粘度指数をもつ。すなわち,温度に伴う粘度変化はより小さい。
6.2.6.3 潤滑性
ほとんどのHFDUの潤滑性は優れているため,鉱物油向けに設計された油圧機器は,一般的に適してお
り改造の必要はない。
6.2.6.4 耐腐食性
HFDUは,油圧システムに一般的に使用される鉄系及び非鉄系の金属の両方を十分に保護するために,
――――― [JIS B 9938 pdf 16] ―――――
14
B 9938 : 2019
適切な腐食防止添加剤を配合している。
6.2.6.5 適合性
a) シール,ガスケット,ホースなど ふっ素ゴム(FKM)は,一般的に両方の種類のHFDUに適してい
る。ニトリルゴム(NBR),ポリウレタン(AU及びEU),ブチルゴム(IIR)などのエラストマの適
合性は,作動油供給業者及びシールの供給業者に確認しなければならない。皮革,紙,コルクなどの
吸水性材料は避けることが望ましい。
注記 ゴムの命名法については,JIS K 6397を参照。
b) 塗装 塗料との適合性は,HFDUの組成によって異なる。ほとんどが二液形エポキシ塗料に適合して
いるが,疑いがある場合は,作動油供給業者の推奨を求めなければならない。
c) 金属 HFDUは,一般的に,油圧システムに使用されるほとんどの金属と適合する。疑いがある場合
は,作動油供給業者の推奨を求めなければならない。
6.2.6.6 作動温度
HFDUで作動する油圧システムの油タンク内の作動油全体の温度は,一般的に70 ℃を超えないことが
望ましい。作動温度を低くするほど,作動油の寿命を長くすることができる。70 ℃を超える作動温度では,
許容できないほど劣化速度が速くなり,その結果作動油の寿命を低下させる可能性がある。HFDUは高粘
度指数をもつため,一般的に,低い温度において同等のISO粘度グレードの鉱物油よりもより確実に動作
する。
6.2.6.7 作動油のメンテナンス
HFDUの化学構造によっては加水分解を受けやすいため,作動油の含水率は可能な限り低く保つことが
望ましい。そのような作動油には,真空脱水のような水分除去技術を使用することが適切な場合がある。
全ての作動油と同様に,定期的に作動油の状態を確認することで,作動油の長寿命化及びシステム停止時
間の低減ができる。
6.2.6.8 ろ過
鉱物油に適したほとんどのろ材は,HFDUに使用することができる。フィルタカートリッジに使用され
ている接着剤が作動油と適合性があることを作動油及びフィルタ製造業者に確認した方がよい。フィルタ
のろ過精度は,用途及びシステムの要件によって異なる。
6.2.6.9 廃棄
HFDUの寿命は,用途及びメンテナンス方法に依存する。再利用できない作動油については,登録され
た廃棄物業者に委託して,通常は焼却によって,安全に処理をすることが望ましい。
7 油圧回路の据付け
7.1 油タンク
適切なフィルタ又はエアブリーザを備えた,空気が放出されやすい,十分な大きさの油タンクを用意し
なければならない。含水系作動油(HFAE,HFAS,HFB及びHFC)の場合,油タンクの気密性を上げるこ
とによって,水分の蒸発及び汚染物質の浸入を最小限に維持することができる。泡立ちを避けるために,
作動油の戻り配管口は,最低液面より下に設置しなければならない。
作動油への空気混入を避けるために,作動油のポンプへの配管口は,戻り配管口からできるだけ遠い位
置に設置しなければならない。
7.2 配管及びホース
配管及びホースの設計に当たっては,ほとんどの難燃性作動油の密度が鉱物油よりも高いことを考慮し,
――――― [JIS B 9938 pdf 17] ―――――
15
B 9938 : 2019
更にHFDRの場合,低温での粘度上昇も考慮しなければならない。
難燃性作動油の選定に当たっては,設計段階で,長い配管で生じる圧力損失について考慮しなければな
らない。
7.3 ポンプサクション
吸込み側配管を通る流速は,1 m/sを超えてはならない。また,含水系作動油(HFAE,HFAS,HFB及
びHFC)については,ポンプ吸込み口圧力が大気圧以下にならないように,ブーストするとよい。
7.4 ストレーナ及びフィルタ
低温では作動油の密度及び粘度が高くなるので,フィルタ供給業者の推奨するサイズのフィルタ及びス
トレーナを使用しなければならない。HFAE及びHFASのフィルタサイズは,作動油の粘度だけで決定し
てはならない。これら作動油に対して,粘度及びフィルタ供給業者が推奨するフィルタの初期圧力損失に
基づいてフィルタサイズを決定すると,小さすぎるフィルタアセンブリが選定されてしまう。その結果,
捕捉容量不足によってフィルタ寿命は短くなり,また,速すぎる流速によるろ材の侵食によるフィルタ損
傷の危険が生じる。30 mm2/s(30 cSt)の作動油に基づくフィルタの選定を行えば,通常十分なサイズのフ
ィルタとなる。
ろ過精度の高いフィルタは,圧力ライン又は戻りラインだけに適用しなければならない。ポンプのサク
ションラインにストレーナ設置が必要な場合,ポンプ一次側ポートの圧力損失を最小に抑え,ポンプ内の
キャビテーションの危険性を減少させるため,適切なサイズ及びろ過精度のストレーナを選択しなければ
ならない。
活性白土及びイオン交換樹脂といった吸着式フィルタは,一般的には,難燃性作動油には適切ではない。
しかし,HFDR及びHFDUの一部については,作動油の劣化によって発生する酸の除去効果がこれらのろ
材に期待できる。また,それらのフィルタを設置する場合は,作動油及びフィルタ供給業者に確認しなけ
ればならない。
7.5 装置性能
難燃性作動油は,鉱物油と同等の潤滑性能をもっているものもあるが,多くの難燃性作動油は,鉱物油
に比べると潤滑性能は劣っている。その場合,適切な寿命が達成できるよう,作動油回路の構成機器の仕
様に制限を設ける,又は構成機器を適切に変更する必要がある。
潤滑性が低く及び/又は非常に粘度の低い難燃性作動油を使用する新しい油圧装置の設計においては,
装置製造業者及び作動油供給業者と詳細な事前協議を行うことが望ましい。
8 油圧システムでの作動油交換
8.1 一般
油圧システムでの作動油交換の基本手順は,現在使用している作動油の種類及びこれから交換する作動
油のカテゴリによらず,ほぼ同様である。
最初に,作動油を可能な限り油圧回路から排出する。必要に応じ,シール,ガスケットなどは,交換後
の作動油に適合性のある材質のものに交換する。フィルタが交換後の作動油に適合性がない場合は,フィ
ルタを交換しなければならない。配管内に残留する作動油を取り除くために,システム部品の分解が必要
な場合もある。
特にポンプのサクションラインでは減圧とならないようにするために,ホース及びパイプの径の変更も
必要となる場合がある。潤滑性がよく一般的な粘度をもつ作動油を,潤滑性が劣り非常に低い粘度の作動
油に交換する場合は,ポンプ,バルブなどの多くの機器を交換後の作動油用に設計されたものに取り換え
――――― [JIS B 9938 pdf 18] ―――――
16
B 9938 : 2019
なければならない場合もある。
システムをフラッシングし,残留する元の作動油を取り除くためには,安全な運転が可能な最少量の交
換する作動油,又はフラッシング液(8.3.1も参照のこと)をシステムに充し,最低運転圧力でシステム
を稼働することが望ましい。可能であれば,配管の内面の沈着物を取り除くために,乱流となるようにす
ることが望ましい。フラッシングに用いた流体はすぐに可能な限り排出し,交換する作動油の新液をシス
テムに充する。作動油の交換後は,元の作動油による汚染レベルが許容できる程度であることを確かめ
るために,作動油を定期的に分析することが望ましい。その汚染が交換する作動油の特性,又は性能に有
害な影響を与えるレベルにある場合,作動油の排出及び新液の再充を検討する必要がある。
8.2 回路からの作動油排出及び洗浄
8.2.1 8.2.28.2.9の手順は必須ではないが,回路からの作動油排出の工程では多くのステップが必要と
なる場合がある。しかしながら,この手順を実行する前に,装置製造業者から手順書が提供されている場
合は,その内容を確認することが望ましい。
8.2.2 容易に利用できる最も低い位置からタンク内の作動油を排出する。このタンクからの作動油排出は,
水抜き用のバルブ,ポート又は通常の作動油交換用継手から行うことができる。
8.2.3 配管の最も低い位置からシステム内の作動油を完全に排出する。再びタンクからの作動油排出を行
い,残留している作動油を可能な限り排出する。排出する作動油に適合性のある液体対応の吸引ポンプを
使用することが望ましい。タンク表面に沈着物が残留している場合,吸収性のあるリントフリーの布で拭
きとる。密閉されたタンクを人手で洗浄することは危険を伴う作業であり,資格のある作業者が実施しな
ければならない。
8.2.4 可能であればパイプ及びホースを取り外し,その内部に残留する作動油を低圧の圧縮空気で吹き飛
ばす。油圧配管内に水滴が付着することを防ぐために,圧縮空気の露点は環境温度未満でなければならな
い。
8.2.5 アキュムレータ,油圧シリンダ,ポンプ,モータなどのシステム構成機器から作動油を排出する。
必要に応じて,それらを分解して洗浄する。交換する作動油での使用に適さない機器は交換する。
8.2.6 全てのストレーナ及びフィルタのハウジングを開け,ストレーナ及びハウジングを洗浄し,フィル
タエレメントを交換する。フィルタエレメントは交換する作動油と適合性があり,交換する作動油に適し
た仕様をもつものを用いる。
8.2.7 サーボ弁のような,汚染物質の影響を受けやすい機器を取り外し,清浄な環境下でオーバーホール
する。洗浄目的で,ハロゲン系の溶剤を使用してはならない。
8.2.8 これらの作業を手際よく行い,適合性のない構成材料及び不適切なシール材を全て取り替える。元
の作動油が鉱物油の場合,高ニトリルのニトリルブタジエンゴム(NBR)が一般的に用いられており,ほ
とんどの難燃性作動油にも適している。ただし,NBRはHFDRには適していない。また,ふっ素ゴム(FKM)
は一般的にHFCに適していない。もし,使用しているシール又はパッキンの材質が特定できない場合は,
取り換えることが望ましい。
8.2.9 全ての機器を適切に設置し,全てを正しくつないでシステムを再組立する。可能であれば,サーボ
弁のような汚染物質の影響を受けやすい機器の代わりに,フラッシング用のダミーブロックを使用する。
8.3 回路のフラッシング及び作動油排出
8.3.1 システムを安全に作動させるために必要な最少量の交換する作動油を回路に充し,漏れがないこ
とを確認する。装置製造業者が推奨する特定のフラッシング液がある場合は,それに従うことが望ましい。
システムに充する作動油は,構成機器及び回路の要求に適した除去率をもつ,少なくともシステム内フ
――――― [JIS B 9938 pdf 19] ―――――
17
B 9938 : 2019
ィルタと同等のろ過精度のフィルタを用いてろ過することが望ましい。
8.3.2 システムを最小負荷で稼働する。圧力は,可能であればリリーフ弁を調整することによって最初に
減圧することが望ましい。回路中の全ての流路がフラッシングされるように,システムの全ての機器を作
動することが望ましい。可能であれば,リリーフ弁の戻りラインをフラッシングできるように,リリーフ
弁の設定圧力を下げる。パイプ及び継手の内面の沈着物の除去を促進する乱流状態になるように,可能で
あれば,配管内の作動油の流速を増加させることが望ましい。
元の作動油の残留物のほとんどがフラッシング液に分散したら,システムを設計圧力まで上げ,通常稼
働することが望ましい。構成機器(例えば,アキュムレータ)をフラッシングするために,システムの停
止及び再稼働を何回か繰り返すことが必要となる場合がある。システムはしばらくの間,連続的に稼働す
ることが望ましく,非常に単純な回路であれば,一般的に4時間で十分である。より複雑な回路では24
時間に及ぶ場合もある。フラッシング用ダミーブロックを使用した場合,適切なフラッシングの後に正規
の機器に置き換える。必要に応じてシステム製造業者に確認する。
フィルタバイパスによる粒子状汚染物質の再循環で起こる機器の損傷を避けるために,システムフィル
タを監視し,フィルタが目詰まりした場合は,早急に交換する。
8.3.3 システムを停止して,8.2の方法で,速やかに作動油を可能な限り排出する。シールを再び変更す
る必要はないが,もう一度全てのシステムフィルタを交換する方がよい場合がある。
バルブと油圧シリンダ間との配管は長く,それに対して油タンクに戻る流量は少ないので,配管もシリ
ンダも十分にフラッシングされないことに注意する。このような状況では,効果的なフラッシング及び洗
浄のために,配管を分解してシリンダを取り外すことが必要である。
8.4 回路への充及び試運転
8.4.1 交換する作動油を,システムフィルタと同等,又はより高い除去率のフィルタでろ過し,通常作動
時の量を回路に満たす。
8.4.2 理想的には,システムを低負荷のデューティサイクルで短時間稼働することが望ましい。システム
に漏れがないことを確認した後,元の動作圧又は交換する作動油に適した圧力になるように,全てのリリ
ーフ弁を調整しなおす。
8.4.3 元の作動油の汚染の影響を確認するために,初期には少なくとも毎日,作動油の主要な状態を定期
的に分析する。これらは外観,清浄度,消泡性及び気泡分離性を含む。また,元の作動油の存在を検知す
るために,特定の分析手法を用いる。元の作動油が鉱物油であった場合,HFA及びHFCの液面に残留物
が浮かぶ傾向があるので,システムを止めて油タンクから上澄みをすくい取ることが望ましい。低濃度の
鉱物油は,HFB及び大部分のHFDに溶け込む傾向がある。しかし,過度に溶け込んでいる場合は,作動
油の安定性又は難燃性が損なわれるおそれがある。
含水系から,鉱物油を含む非含水系に置換する場合,含水量を入念に監視することが望ましい。含水量
を許容レベルに引き下げるために,吸水性フィルタ,吸着装置,真空脱水装置などが用いられる。
8.4.4 システムのフィルタの早期の詰まりを監視する。難燃性作動油の中には,油圧回路の内面から汚染
物質の分散を促進するものもあり,一時的にフィルタ寿命を短くする場合がある。
8.4.5 作動油の汚染が著しい場合,もう一度作動油を排出し,充することが望ましい。
8.5 適切なフラッシング液
表2は,適切なフラッシング液,作動油の流体特性の主な違い,及びある作動油から異なる種類の作動
油に変更したときの適合性の留意事項をまとめたものである。より詳細な流体特性は箇条6に記載があり,
フラッシング手順の詳細な情報は箇条8にある。
――――― [JIS B 9938 pdf 20] ―――――
次のページ PDF 21
JIS B 9938:2019の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 7745:2010(MOD)