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C 0098 : 2002(IEC 60068-2-68 : 1994)
附属書A (参考) 一般的手引き
A.1 試験用粉じんの特性
備考 この規格中,用語“粉じん”を用いるときは随所において砂じんの意味を含む。
A.1.1 試験用粉じんの種類 試験Lにおける試験用粉じんの種類は,次のとおりである。
a) 結晶性鉱物類,例えば,石英,かんらん石又は長石
b) タルク(滑石)粉末
c) E(消火用)粉末
予期しない干渉効果を避けるため,試験用粉じんには各種不純物,特に塩類及び生物的物質が混入して
いないことが重要である。
結晶性鉱物は,自然界で発生する多くの粉じんの主構成物質であるので,試験用としてよく指定される。
そのため,砂漠及びこれに類似の場所における製品に見られる多くの損傷現象を再現する。これらの物質
の顕著な特長はその硬さであり,各種製品,特に可動部分に対する短時間での研削,固着又は破損を引き
起こす性質である。
この種の粉じんの他の重要な性質として,非吸水性であること及び化学的不活性であることがある。し
たがって,他の種類の粉じんが,大気中の水分又は汚染ガスと共存したときに見られるような金属腐食は
再現しない。
石英(SiO2)は,一般的な基準となる鉱物である。石英の代替品として指定でき類似の性質をもつ他の試
験用粉じんとしては,非分解性の(安定化した)長石及びかんらん石がある。
市販されている産業用鉱石の一つである長石 [(Mg,Fe)2SiO4] は,鋳造所及び砂吹きつけ研磨に使用
されている。
長石類は,シリカ,アルミナ及び塩基性酸化物の化学合成物質である。火山性ガス又は水の作用で安定
化されると,これらの鉱物はほぼ石英に近い硬度になる。
タルク(けい酸マグネシウム水和物)は,試験Laに規定されていて,電気製品に対する試験法のJIS C
0920の附属書において数年間使用されていた粉じんである。この粉じんのもつ顕著な性質は,非研削性及
び吸湿性である。この粉じんは,電気製品のエンクロージャにおける封止性能に対して適度の厳しさを与
える試験の一つとして適用されているが,その吸湿性のためにエンクロージャ容器内のすき間に目詰まり
が生じないよう,粉じんを乾燥状態に維持することが重要である。
本来の試験要求事項が石英のような硬質材である以上,この粉じん材のもつ非研削性は一般目的用試験
粉じんとしてはその使用から除外する。
FE粉末とは,一種の消火用粉末で,主に炭酸水素ナトリウム又はカリウムから成り,流動性を補助し,
目詰まり防止のため,少量のマグネシウムステアリン酸塩を粒子表面に結合させたものである。タルク粉
末と同等の粒径範囲のものが入手できるが,非吸湿性とモース硬度が滑石の1.0に比べて2.0前後と幾分
高い。異なるFE粉末間において硬度の違いがあること,及び一番硬いもの(粒子)は軟質材表面に対して
研磨的になる可能性があることに注意を要する。
A.1.2 粒子径 この試験に含まれる粒子径の範囲は,次のとおりである。
a) 石英,長石,かんらん石 : 細かい粉じん < 75 μm
粗い粉じん <150 μm
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砂 <850 μm
b) タルク粉末 < 75 μm
c) 消火用(FE)粉末 < 75 μm
a)の粒子径分布は,付図A.1に示した。
粉じんの粒子径を考慮する場合には,最初に,製品が保護用エンクロージャをもっているかどうかを考
える。エンクロージャがある条件では,電気的エンクロージャの密閉能力を効果的に調べる方法として確
立された特別な粉じん,すなわち,タルク粉末又はFE粉末,又は粒子状物質の侵入によって起こり得る
有害な影響を調査するために適切な粒子径の範囲にある石英粉じんから選択する。後者の場合,石英は,
細かい粉じん及び粗い粉じんの両方とも小さな粒子を含むが,これに反して,砂は主に大きな粒子を含む。
そのために,保護用のケース又はエンクロージャの適性を単に決める試験要求のときには,予想される実
在自然環境に相当するのに十分な小さい粒子を含んでいる粉じんを選択することが望ましい。
次に,エンクロージャの保護なしで粉じん環境に直接さらされる製品を考察する。一般に粒子径範囲の
選択は,実際の環境の最も代表的なものにする。この試験で規定した粉じん及び砂は,個々に又は組み合
わせて考察すると,実際の環境状態の大多数に相当するように選択されている。
A.1.3 粒子硬度 個々の粒子の硬度は,接触したときに対象物を引っかく能力で決められる。結晶状の石
英又は他の鉱物がごく小さく壊れたかけらを主とする砂は,一般にほとんどの溶融シリカガラス組成物よ
りも硬い。そのために,大概のガラス光学装置の表面に引っかき傷をつけることができる。捕そくされた
砂粒子の上からかけた圧力は,破砕を起こす原因となる。表A.1に,普通の物質及びモース硬度(鉱物の硬
度基準)に従った硬度水準を示す。数値の高い物質は,それよりも数値の低い物質を傷つけることができる。
表A.1 硬度等級
モース硬度 基準物質 その他
1 タルク(滑石) 黒鉛,雪花石こう,けい藻土
2 せっこう カオリナイト,方鉛鉱,雲母
3 方解石 重晶石,大理石,蛇紋石,アラレ石,苦灰石
4 ほたる石(CaF2) ―
5 りん灰石 石綿,オパール(たんぱく石),ガラス繊維
6 正長石 磁鉄鉱,長石,メノウ,黄鉄鉱
7 石英 火打ち石,溶融シリカ,かんらん石,紅柱石,電気石
8 黄玉 エメリー(金剛砂)
9 鋼玉 サファイア,炭化けい素,炭化タングステン
10 ダイアモンド ―
A.2 他の粉じん “混合試験用粉じん”(例えば,短繊維の綿毛,土壌又はセメントを含む)のような他の
試験用粉じんを,特殊用途用として考慮してもよい。しかし,それは,次で説明するガイダンスを用いて
注意深く組み立てなければならない。
A.2.1 イオン電導性物質 例えば,融雪塩などのイオン電導性粉じん及び腐食性粉じんの影響調査は,実
際の侵略的な物質を混合した試験用粉じんを使用した粉じん試験と,それに続く温湿度試験で実施するこ
とができる。
しかし,再現性を維持するためには,中性粉じんを用いた粉じん試験と,それに続く標準化された腐食
試験とに調査を分けたほうがよい。
A.2.2 吸湿性物質 吸湿性の粉じん物質の引き起こす影響を調査するためには,短繊維の綿毛を試験用粉
じんに混合し,粉じん試験に続いて腐食試験を行うことがある。
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A.2.3 繊維状物質 通風孔に置かれた織物繊維が詰まる影響を調査するために,短繊維の綿毛が使えるこ
とがある。
A.3 試験用粉じんへの湿度の影響
A.3.1 試験用粉じんの目詰まりを防ぐためには,試験槽内の相対湿度を25 %よりも低く保つ必要がある
ことが分っている。試験装置には,相対湿度の監視又は制御は要求されていない。試験室の温度及び相対
湿度に応じて,試験槽内の空気を熱するだけで十分である。温度を40 ℃より高く上げることは薦められ
ないので,この方法は,暑くて湿気の多い気候では適用できない。そのような場合,試験室の空調又は試
験槽内の空気の除湿を行う必要がある。付図A.2は,温度を40 ℃まで上昇することで相対湿度を25 %
RHまでに減らすことができる,与えられた温度下における最大湿度を示している。
A.4 電気・電子製品への影響
A.4.1 序文 粉じん及び砂は,物理的作因として,又は化学反応成分として,又はその両方によって,装
置の機能及び材料の劣化を促進する。また,機械の可動部に異常な摩耗を引き起こす。さらに,静止部表
面でも,吹き付けられる粒子の研削作用によって損傷されることがある。その影響は,粉じん粒子が接触
している物質の性質及び粉じん粒子の物理的及び化学的性質のどれか一つには依存する可能性がある。例
えば,金属表面に存在する皮膜は腐食作用を加速するかもしれず,また一方で,絶縁物表面への付着物は,
電気特性を悪化させる。
A.4.2 研削効果 強い風の動的な作用によって,粉じん及び砂は,静止部表面を研削し損傷を与える。そ
して車両の運動の結果巻き上げられ瞬時に飛行する粒子は,保護膜をはがすか,腐食生成物の準保護的な
覆膜を妨害することによって金属表面の腐食を早める。
表面の研削度合いは,表面に衝突する物質の速度に依存する。60 mの高さで,290 m/sから320 m/sの
速度で,北アフリカの砂漠を飛行したとき,航空機の風防ガラスに光学的品質の著しい低下が起こったこ
とが報告されている。
風に運ばれる粉じん及び砂は,絶縁物の表面をざらざらにして,表面の電気特性を劣化させてしまうこ
とがある。表面がざらざらになったフエノール樹脂の表面の導電率は,滑らかで理想的な材料の10倍(相
対湿度50 %で)になったことが測定された。
A.4.3 金属の腐食
A.4.3.1 一般 粉じん及び砂は湿気のような他の環境要素と結びついて,金属腐食の引き金及び加速の原
因になる場合がある。金属表面にたい積する微粒子物質の皮膜は,化学的に活性な粒子,不活性な粒子,
吸湿性のある粒子又は吸湿性のない粒子の混合物であって,腐食の様子は複雑である。
A.4.3.2 化学的に不活性な粒子 吸湿性のある不活性な粒子は,相対湿度が低いときにも,雰囲気中の湿
気及びすべての腐食性蒸気を吸収し始める。この場合,粒子は電解液の媒介物として働き,それによって
大気腐食の電気化学反応が進み,また高められる。
不活性で非吸収性の粒子は,湿度を保つのを助けたり,接触部で金属接触をさえぎったり,表面の酸素
濃度に差異を生じさせたりすることを除いては,腐食の過程にほとんど影響しない。その差異が局部的に
強い腐食を発生する原因になることがある。
A.4.3.3 化学的に活性な粒子 自然界又は工業原料から発生する粒子は,化学的に活性で,分解したとき
腐食性の電解物質をつくる。自然の屋外の粉じんの主要な発生源である多くの粘土は,アルミニウムの水
酸化けい酸塩であって,アルカリ反応を示す。一方では,土壌粒子に含まれている幾つかの溶解性塩類は,
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硫酸塩であって酸性反応を示す。
鉄さびは,硫酸アンモニウムの粒子があると進行する。これは都市郡で発生する粉じんの一種である。
貝殻の破片である炭酸カルシウムは,さんご島での粉じんの主要成分であって,腐食性があることが知
られている。また,火山灰は鉄さびを促進する。
A.4.4 電気絶縁物表面の汚染 絶縁物表面にたまる砂及び粉じんの多くは,湿気がないところでは不良導
体である。しかし,湿気があると可溶粒子を分解し,導電性電解物質を作り出す。不溶解性の粒子がある
と,表面の電解物質を保有して湿気皮膜の有効厚さを増す。このような皮膜の形成は,乾燥しほこりっぽ
い時期と湿気の多い時期が繰り返される環境で特に増進される。
そのような表面皮膜の導電性のために,汚染された電力線の絶縁物の漏れ電流は,きれいで乾いた絶縁
物の値の100万倍になる。
例えば,電力線の絶縁物のように絶縁物が強電界中にあると空中を飛んできた粒子が電界こう配の急な
ところに衝突することによっても皮膜の形成が増進される。
A.4.5 その他の影響
A.4.5.1 かび発生の助長 物質表面に付着する粉じんは,微小生物の食料となる有機物を含んでいること
がある。通常の粉じんがないときは,微小生物の攻撃に影響されないセラミックス及び光学ガラスのよう
な物質の表面に,かび又は藻がはびこることがある。
A.4.5.2 電気接点及びコネクタ 前に述べたように,砂及び多くの粉じんは乾燥時には不良導体であるの
で,スイッチ,リレー又は電気接点上にたい積した粒子は接触抵抗を増加して動作に影響を与えることが
ある。
コネクタに蓄積した粉じん及び砂は,かん合又は抜去を困難にする。
A.4.5.3 冷却装置 絶縁層の形成によって熱伝導率の低下が生じ,冷却システムの効率を低下させること
がある。
A.4.5.4 静電気効果 砂のあらしが立ちこめている中で,粒子の摩擦によって起こる静電気は,装置の動
作を妨げ,しばしば人に危険を及ぼすことがある。絶縁体,トランス及び避雷器の絶縁破壊並びに車の点
火装置の故障は,帯電によって発生することが知られている。
誘起する静電気の電圧は大きく,150 kV程度の電圧が砂あらしの間電信電話を使用不能にしたことがあ
る。
A.5 安全対策
A.5.1 有害な影響 供試品に対するいろいろな有害な影響によって,人間が危険にさらされる場合がある。
したがって,その粉じん試験が安全性評価の一部なら,粉じんのたい積又は侵入の観察は,最大限の注
意をして行う必要がある。その解説がA.4に述べられているので,各種安全性試験での経験を生かしてこ
れを利用するべきである。その場合,最悪の状態を考えて利用する。
参考 試験中は,試験槽内の圧力を負圧にする。
A.5.2 健康への潜在危険 対策は,粉じんの吸引による健康に対するあらゆる危険性を回避することであ
る。対策には,次の事項も含まれる。
― 試験槽の十分なシール。
― 試験槽の扉を開ける前に粉じんを十分に降下させる。
― 適切な防護マスク及び衣服の着用。
― 効果的なフィルタをもった装置,例えば,真空掃除機で適切に掃除,サービス及び保守を行う。
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A.5.2.1 タルク粉末 タルク粉末を過度に吸引すると,急性肺炎を引き起こす可能性がある。せき,たん
及び息切れを伴う呼吸状態は,長時間吸った後に出てくる。
なお,タルクが関連する他の広範囲の物質の研究ため,その医学文献では純粋にタルクだけに関係する
条件を明確に区別されていない。
暴露制限
タルク濃度は,空気中の全タルク粉末が10 mg/m3を超えないようにし,呼吸できる粉じん量は1
mg/m3(8時間での質量による平均濃度)であるように制御するのが望ましい。
A.5.2.2 他の粉じん(塵)及び砂 石英粉は,けい(珪)肺症や,重い肺の病気を引き起こし,肺がんと間違
われることがある。
備考 かんらん石は,1 %以下程度の結合していない酸化けい素を含んでいるが,危険の少ない鉱物
と考えられている。
綿糸くずはアレルギ源であり,アレルギ症の人には呼吸器系の障害を起こすことがある。
このような事情なので,これまでに引用した健康への危険予防措置を遵守することが重要である。
重要であると思われる二つの要因を次に示す。
a) ガラスのようなアモルファス材料は結晶鉱物よりも危険性が小さい。
b) 粉じんの粒子径が0.5 μmから5 μmのものが最も危険である。
かんらん石及び長石は,結晶鉱物である。
今日の時点での結論は,無害な試験用粉じん物質を発見することが不可能だということである。そのた
め,防じんマスク,ゴーグルなどの保護用具を着用することが望ましい。
A.5.3 爆発の危険性 タルク粉末を試験用粉じんとして使用するならば,爆発の危険はないが,他の粉じ
んを使う場合は,次の事実を念頭に入れておく必要がある。
― 細かい粉じん状の可燃性の材料は,大気中で20 g/m3以上の濃度になると爆発する。
A.6 試験L及びJIS C 0920の附属書の比較 JIS C 0920の附属書(エンクロージャの保護構造の種類)
は,保護状態を文字及び数字で表している。保護構造の表示は,大文字IPに2数字を付けている。最初の
数字は,固形物及び粉じんに対するエンクロージャが保証する保護性を表す。2番目の数字は,水の有害
な侵入による障害を防ぐエンクロージャの保護性を表す。第1数字の示す保護等級を,適用試験方法につ
いての参照番号を添えて表A.2に示す。
この試験に関しては,IEC 60068の視点から試験方法La.2は,一種の製品規格と考えられる。
表A.2 試験方法の比較
試験L JIS C 0920の附属書 内容 JIS C 0920の附属書の
試験方法 第一数字 試験方法の項目
試験なし 0 保護なし 試験なし
試験なし 1 >50 mmの固形物からの保護 13.2
試験なし 2 >12.5 mmの固形物からの保護 13.2
試験なし 3 >2.5 mmの固形物からの保護 13.2
試験なし 4 >1 mmの固形物からの保護 13.2
La1又はLa2 5 粉じんに対する保護 13. 4及び13.5
La1又はLa2 6 粉じんに対する密閉性 13. 4及び13.6
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JIS C 60068-2-68:2002の引用国際規格 ISO 一覧
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