JIS C 60695-1-10:2011 耐火性試験―電気・電子―第1-10部:電気・電子製品の火災危険性評価のための指針―一般指針 | ページ 2

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C 60695-1-10 : 2011 (IEC 60695-1-10 : 2009)
3.9
定量的火災試験(quantitative fire test)
製品の使用環境に基づいて又は関連して試験片の使用状況を設定し,定義した用語で表現している変数
(パラメータ)を理論的な科学単位によって測定し,火災リスクの数量的な評価に使用できる火災試験。
3.10
火に対する反応(reaction to fire)
火災試験において,規定の試験条件で火にさら(曝)した場合の,試験片の挙動。
注記 耐火(fire resistance)は,火災に対する反応の特別な挙動であり,通常は,火に対する反応と
は考えない。
3.11
実規模火災試験(real-scale fire test)
寸法及び周囲の環境を最終使用状態に模した試験。
注記 規定した状況又は通常推測する状況に従って製品を用いることを想定した試験。
3.12
小規模火災試験(small-scale fire test)
小さな寸法の試験片に対して実施する火災試験。
注記 最大寸法が1 m未満の試験片に対して実施する火災試験を,通常,小規模火災試験という。

4 電気・電子製品が関与する火災危険性

  電気エネルギの伝達,分配,貯蔵及び使用は,火災危険性に寄与する可能性がある。
電気・電子製品における最も頻繁な発火源は,過熱及びアークである。発火の可能性は,製品及びシス
テムの設計,安全装置及びシステムの使用,並びに使用材料に依存する。
電気・電子製品を使用しているときには,通常は発熱が伴い,時にはアーク及びスパークが発生する。
危険な状況を生じないように,火災リスクの可能性について,まず電気・電子製品の設計の段階で,更に
設置,使用及び保守においても考慮することが望ましい。
電気・電子製品の火災は,多くの場合,回路の短絡が原因で発生すると考えてよいが,このほかにも多
くの発火原因がある。このような発火原因には,正しくない設置及び使用,並びに不適切な保守を挙げる
ことができる。その例としては,一時的又は長時間の過負荷状態での運転,製造業者又は契約者が規定し
ていない条件での使用,不適切な放熱,及び間違った換気がある。表1は,電気・電子製品の一般的な発
火現象を記載している。
表1では,特に説明がない場合,発火源が電気・電子製品の内部にあると想定している。この想定は,
実際の状況の多くに当てはまると推定できる。表1に示している火災の結果は,火災発生の頻度とは,直
接は結びつかない。
電気・電子製品が関与する火災は,外部の電気的ではない火災源によって発生することもある。電気・
電子製品の使用に起因しなくとも,危険な状態が発生し,その電気・電子製品が火災に巻き込まれること
もある。このような状況は,総合的な火災危険性評価,個々の製品の安全規格,又は例えばIEC/TS 62441
の規定によって,対処する。
製品を設計する場合には,通常及び異常な稼動状態での発火の防止は,起こり得る火災の拡大を抑える
ことよりも,優先度が高い。
理由及び原因を問わず,電気・電子製品が発火した場合を想定し,火災の影響を評価しなければならな

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い。その場合に考慮すべき点は,次による。
a) 火災の拡大及び燃焼の広がり
b) 燃焼発熱
c) 煙の発生(視界)
d) 毒性生成物の発生
e) 腐食性生成物の発生
f) 爆発の可能性
上のa) f) に関する指針は,箇条9及び附属書Aに示す規格に記載している。

5 耐火性試験の基本

5.1 目的

  電気・電子製品に関する耐火性試験の目的は,製品の火災特性が火災の影響に寄与する及び/又はその
製品若しくは部品が,発火,火災の拡大及び火災への影響にどの程度寄与するかを決定し,更にその知識
を電気・電子製品の火災リスクの減少に利用することである。

5.2 火災危険性及び火災リスク

5.2.1  火災危険性
火災危険性は,火災によって好ましくない結果を生じる可能性がある実際の物又は状況である。火災危
険性は,火災において燃料になる可能性がある物及び発火源を含む。電気・電子製品の発火は,電気的に
エネルギを与えた部分又は部品から発生する可能性がある。発火を引き起こす条件には,異常な温度上昇,
回路の短絡,事故的なアーク及びスパーク並びに一時的な大電流がある。表1は,起こり得るそのような
現象及び可能性がある帰結を列挙している。
電気・電子製品が関与する火災は,外部の火災源によって発生することもあり,全体的な火災危険性評
価は,この可能性も考慮することが望ましい。
表1−電気・電子製品の一般的な発火現象
現象a) 原因 結果
異常な温度上昇 導線内の過電流 防護装置b) の不作動(特別な防護の
製品によっては,通常の稼動におい不完全な接触 場合は除く。)。防護装置は,相当の
ても,熱を放出する。 漏れ電流(絶縁不良及び発熱) 時間が経過してから作動することも
ある。
部分,部品又は関連するシステム(例
えば換気システム)の故障 温度上昇はゆっくり進行する。した
がって,製品内の熱及び熱による生
電気的な接触又は絶縁システムの状
態を変え得る物理的な変形 成物の蓄積は,発火した場合に容易
に火災を引き起こす。
モータ軸のかみ(噛み)(回転子の拘
束) 特に密閉した製品では,可燃性ガス
不完全な熱的なエージング の蓄積は,発火又は爆発を引き起こ
す。
モータ軸の固着(回転子の拘束)は,
モータ巻線の過熱によるくすぶり及
び発火を引き起こす。

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表1−電気・電子製品の一般的な発火現象(続き)
現象a) 原因 結果
回路の短絡 潜在的な要因による電流回路の接触防護装置b)は稼動する。
(ターミナルの緩み,電路の外れ,部分的には,短期間でも温度上昇は
他の導電性物質の混入など) 大きい。
絶縁インピーダンスの変化を引き起発光,発煙及び可燃性ガス発生の可
こす部品の劣化 能性がある。
内部部品又は部分の突然の故障 材料又は内容物の赤熱。
事故的なアーク及びスパーク 製品外部からの要因(システム・ネ防護装置b) は,常に働くとは限らな
製品によっては,通常の稼動におい
ットワークの過電圧,導電部品へのい。
事故的機械的な作用など)
ても,アーク又はスパークを発生す 発光,可燃性ガス及び火炎が発生す
る。 内部的原因(オン・オフ切り替え部る。爆発する危険性がある雰囲気中
分における部品の劣化又は水分の浸での発火の可能性がある。
入) 周囲の部品又はガスが発火する可能
内部部品又は部分の突然の故障 性がある。
一時的な大電流 電気回路の欠陥 防護装置b) は,常に働くとは限らな
い。
注a) この四つの現象のいずれか一つに起因する物理的な変形及び構造的な変化が,その他の原因となる場合があ
る。
b) 防護装置には,温度的,物理的,電気的又は電子的な防護装置を含む。
5.2.2 火災リスク
火災リスクを算出するためには,評価する火災の結果を定量化する必要がある。火災の結果とは,熱,
低酸素状態若しくは行動不能を引き起こす火災ガス濃度といった危険による負傷若しくは死亡,又は火災
被害の拡大などによる財産の喪失に相当するものである。火災全般のリスク評価の手法を確立するために
は,広範に渡り潜在する火災シナリオを分析する必要がある。
cを火災の結果(例えば,定量化した評価結果),pを任意の時間における火災が発生する確率とする場
合,その時間における火災リスクRは,通常pとcとの積で算出する。
R=p×c
任意のシナリオ(シナリオ1)において任意の時間に任意の製品が火災にさら(曝)される可能性をp1,
異なるシナリオ(シナリオ2)において同一製品が火災にさら(曝)される可能性をp2というように,全
ての関連するシナリオを考慮したその製品のある時間における合計の火災リスクRtは,次の式で算出する。
im
Rt= pici
1
ここに, pi : シナリオiが起こる確率
ci : シナリオiの結果
m : 考慮したシナリオの数
注記 火災リスクの更なる議論及び火災危険性試験を基にしたシナリオ選定に関しては,ISO/TS
16732に記載している。

5.3 火災シナリオ

  異なる火災段階(フェーズ)における火災シナリオは,酸素濃度,CO2/COの比率,温度及び熱放射が
異なる[ISO 19706 表1(火災の各段階の特性)参照]。
実際の又は仮定の火災にさら(曝)される製品の使用状況を分析することは,火災の結果に重要な役割

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を果たす条件及び事象の連鎖に関する説明のための手助けとなる。
任意の製品がさら(曝)される全ての火災に対してシナリオが存在する。原則的には,個々の事象すな
わちシナリオは,それぞれ個別のものであるが,近接する可燃物の存在又は二次的な熱源への暴露といっ
た,その事象がなぜ及びどのように発生したかを決定する極めて重要な共通要素がある。これらの共通要
素によって,シナリオはグループ化することができ,グループ化したシナリオは,火災危険性を考慮した
重要性の順番に順位付けする。発生頻度,事象の過酷さ又はその他の適切な尺度によって,このような順
位付けを行う。
シナリオを使用した製品火災の事象分析は,事象の結果に対する製品の火災反応に対応したものである。
電気・電子製品の耐火性試験の組合せを選定する場合は,選定根拠の一部に,耐火性試験の組合せによる
火災シナリオの解説を含むことが望ましい。この内容は,なぜほかのものでなくその試験の組合せを選択
したのかを,使用者に効果的に伝えることになる。

5.4 火災安全工学

  原則的に,建築工学における火災シナリオの主な火災安全特性には,3.4の火災安全工学の定義が当ては
まるが,火災安全工学の側面の幾つかは,電気・電子製品に当てはめることができる。火災安全工学がよ
く当てはまる場合,定量的な火災試験を行うことができる。
注記 火災安全工学のより詳細な指針は,ISO/TS 16732,ISO/TR 13387規格群,及びISO/TS 16733
に示している(箇条9及び参考文献参照)。

5.5 火災の危険性評価

  該当する電気・電子製品に関連する重要な火災シナリオを決定する目的で,次のa) 及びb) の事項を明
らかにするために,火災の危険性評価の手法を適用する。
a) その重要なシナリオに関連する製品の火災の性質の範囲
b) 適切な試験方法及び性能要件
電気・電子製品の完全な火災の危険性評価は,一つ以上の火災シナリオを含む。その場合,評価手順に
は幾つかの試験及び複数の火災シナリオに基づいた性能基準を含んでいる。
ある火災シナリオについて火災の危険性評価を行う手順は,IEC 60695-1-11に規定する。

6 火災試験の種類

6.1 一般事項

  電気・電子製品の火災危険性の評価は,試験片の最大寸法に依存し,小規模火災試験(3.12参照),中間
規模火災試験(3.6参照),大規模火災試験(3.7参照)又は実規模火災試験(3.11参照)に基づいて実施す
る。
電気・電子製品に適用する全ての種類の耐火性試験は,二つの基本的なグループ,すなわち,定性的火
災試験(3.8参照)及び定量的火災試験(3.9参照)に分類する。

6.2 火災試験の定量的及び定性的なグループ

6.2.1  定量的火災試験
定量的火災試験の評価基準は,次による。
a) 定量的火災試験は,電気・電子製品の使用環境,すなわち,想定している実際の通常使用状態及び想
定できる異常使用状態を考慮に入れる。その理由は,一つの環境の下で火災危険性をもたらす火災条
件は,異なった環境下では必ずしも同じ火災危険性を生じないからである。
b) 定量的火災試験は,その試験結果及び火災放出物の有害な影響を定量的に関連付ける可能性をもつ。

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すなわち,定量的火災試験は,実際の通常使用状態における人及び/又は財産に対して,火災で発生
する熱及び気体の有害な影響を示すことが可能である。この相関関係は,火災安全性とは明確な関係
がない,人工的に作り出された及び時にはゆが(歪)められた性能指標が用いられることを排除する。
c) 定量的火災試験の結果は,的確に定義した用語表現及び合理的な科学的単位を用いて表現する。これ
によって,電気・電子製品の火災への総合的な効果が定量的に評価でき,他の製品との比較が可能と
なる。
注記 電気・電子製品のための火災試験を開発又は改正する場合には,定量的火災試験であることが
望ましい。可能であるときはいつでも,定量的火災試験の使用を採用することを奨励する。ま
た,最終使用状態の危険性を反映した具体的な測定を行うことに留意することが望ましい。
6.2.2 定性的火災試験
定性的火災試験は,試験結果を不連続な基準値で表現し,合否判定試験,及び製品の特性をある順位で
付番することによって分類する。火災リスクを定量化することに適したデータは,定性的火災試験からは
得られない。定性的火災試験の試験条件は,関係する火災シナリオと関連付けできないため,その試験結
果は,その製品の実際規模の火災特性と関係付けることはできない。しかし,定性的火災試験は,火災リ
スクのための製品の分類,又は規格化した火災試験方法の手順に従って得た明確な合否判定が得られるた
め,材料の予備選定,又は特定の最終製品試験に有用である。ある特定条件の下では,定性的火災試験の
結果は,電気・電子製品の火災危険性評価に間接的に用いることができる。

6.3 火災試験の種類

6.3.1  火災模擬試験
火災模擬試験(実規模火災試験ともいう。3.11参照)は,電気・電子製品の火に対する反応を試験し,
実際に電気・電子製品の使用を可能な限り代表して行う。電気・電子製品の実際の使用条件(想定内の異
常使用,機能不全又は故障を含む。)は,可能な限りそのままの状態で模擬する。試験方法は,実際の火災
リスクに関連して設計し,その試験は,製品を使用することによって生じる火災性危険性を適切に評価す
る。試験から得た所見は,電気・電子製品の設計に変更がある場合,又は製品の使用条件が模擬試験とは
異なる場合,有効でない可能性がある。
6.3.2 耐火試験(Fire resistance test)
耐火試験は,製品又は部分の性能を,規定する時間,特定の炎にさら(曝)した状態でその機能を保持
しているかを評価する。この試験では,熱,火,若しくは試験炎暴露下における製品又は組立品の動作及
び特性のデータを提供する。
耐火試験から得た所見を実際の火災における特性と関連付けるためには,試験条件と実際の火災の状態
とを比較すること,及び管理不能な可変因子,例えば,電気・電子製品を設置する環境について,十分な
配慮が必要である。
注記1 ISOは,建築物構造の試験のために,多くの耐火試験を開発しており,ISO 834規格群に規
定している。
注記2 IECの耐火試験の例として,回路の保全性試験として知られている電気ケーブル試験,IEC
60331規格群がある。
6.3.3 火災反応性試験
火災反応性試験は,標準試験片を規定の条件下で試験し,多くの場合は燃焼挙動に関係した特性のデー
タ,及び比較を目的としたデータを得る。火災反応性試験は,着火性,燃焼継続性,延焼特性,発熱特性,
発煙特性,有害ガス特性及び腐食ガス特性を測定する。

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