34
C 6821 : 1999
附属書A(規定) 破断応力試験に関する統計計算
A.1 試料の大きさ及び試料数
A.1.1 試料の大きさ 破断応力試験の特長は統計的なものである。それぞれの光ファイバが所定の母集団
を代表するものとして,破断応力を評価する。その結果は集団全体に関して確率分布として報告される。
母集団が代表する度合と測定確率の範囲を決定するのは製品試料数とゲージ長である。
なお,ゲージ長は結果にも影響を与える。それは,一般に,ゲージ長が増加すると,測定破断応力が減
少するためである。
A.1.2 試料数 実際には,各ひずみ速度において試験用に同一のきずを事前に選択することはできない。
代わりに,平均的なきずの特性を推定するためにサンプリングが必要となる。試験の信頼区間幅は,異な
るひずみ速度において評価するきずの類似性が欠けていることによって管理されている。すなわち,信頼
区間は疲労試験の精度の尺度であり,光ファイバ属性の直接的な尺度ではない。
表A.1は,動的疲労係数 (nd),ワイブル傾き (md),各ひずみ速度当たりの試料数の各種組合せに関する
代表的な信頼区間である。これらの結果は本体の式(5)(10.5.3)によって定義されている疲労特性とともに,
理想的なワイブル分布のモンテカルロシミュレーションから導かれたものである。このシミュレーション
では大きさ順に分けられている四つのひずみ速度当たりの試料数が使用されている。
表A.1 (nd)の95%信頼区間
nd md ひずみ速度当たりの試料数
15 30 45 60
10 15 8.7-11.0 9.3- 10.6 9.5- 10.5 9.5-10.5
10 30 9.5-10.5 9.6- 10.4 9.7- 10.3 9.8-10.3
10 60 9.7-10.3 9.8- 10.2 9.9- 10.2 9.9-10.1
10 90 9.8-10.2 9.9- 10.1 9.9- 10.1 9.9-10.1
20 15 16.7-24.0 17.6-23.2 18.3- 22.6 18.4-22.0
20 30 18.2-22.0 18.9-21.6 19.5- 22.6 19.2-21.0
20 60 19.1-21.1 19.5-20.9 19.8- 20.5 19.6-20.5
20 90 19.5-20.8 19.6-20.7 19.8- 20.5 19.8-20.4
30 15 22.8-39.2 24.9-37.1 26.2- 35.5 26.6-34.4
30 30 26.0-34.1 27.3-33.3 28.0- 32.7 28.3-32.3
30 60 28.0-32.0 29.2-31.2 29.4- 31.0 29.2-31.2
30 90 28.7-31.4 29.2-31.2 29.4- 31.0 29.3-30.8
50 15 33.2-80.6 37.5-72.3 40.5- 67.3 41.5-63.7
50 30 40.0-62.2 43.0-59.8 45.0- 57.7 45.6-56.4
50 60 44.6-55.8 46.5-54.7 48.1- 53.8 47.9-53.3
50 90 46.4-53.9 47.8-53.3 49.1- 52.7 49.0-52.3
100 15 380.0
49.8- 60.8- 258.768.5- 198.0 71.2- 170.7
100 30 162.3
67.1- 76.1- 147.781.5- 135.1 83.9- 129.7
100 60 125.8
81.5- 87.2- 120.790.4- 116.2 92.2- 114.4
100 90 123.2
87.4- 91.7- 113.893.9- 110.8 95.2- 110.0
――――― [JIS C 6821 pdf 36] ―――――
35
C 6821 : 1999
A.2 動的疲労係数 (nd) の算出アルゴリズム このアルゴリズムは最小二乗法によって,ndの推定値とそ
の95%の信頼区間の推定値を算出する。このアルゴリズムの適切な使用は,各ひずみ速度に対して同一試
料数で行う試験に限定されている。
椀 i番目のひずみ速度に関するj番目の破損の破断応力
σa i番目のひずみ速度に対する応力負荷速度
i番目のひずみ速度 (i=1L) におけるj番目の試料番号 (j=1Ni) に関して,
yij=log ( 椀
xij=log
a
L Ni
yij (Ni xi )
N Ni , Y ,X
N
i 1 j 1
N
L L Ni
2 2
XX Ni xi NX 2 , YY yij NY 2
i 1 i 1 j 1
L Ni
XY X1Yij NXY
i 0 j 0
YY (YY S XY)
S slope SEE
XX XX (N
ここで, SEEはSの推定値標準誤差である。
Su=S−1.96×SEE,SL=S−1.96×SEEとすると,
1 1 1
nd 1 , ndu 1 , ndL 1
U L
ここで, ndUとndLは,推定値ndに関する95%の信頼区間を形成する。
次の式の計算を行う。
intercept=Y− (S・X)
ここで, 傾きは次の式から求められる。
1
slope S
nd 1
A.3 破断応力を算出する詳細な方法 この方法の場合,被覆材の弾性係数を直接考慮する。
EcとAcをそれぞれ被覆材の弾性係数と断面積。EgとAgをそれぞれ光ファイバの弾性係数(ヤング率)
と断面積。Tを試料が破断するときの測定引張力とする。石英系光ファイバの場合,ヤング率は次の式に
よって与えられる。
Eg=72GPa
また,次の式が成立する。
T
Ag
f
Ec Ac
1
Eg Ag
タイプA1とBファイバ(公称光ファイバ径と被覆径はそれぞれ125 ヰ の場合,本
――――― [JIS C 6821 pdf 37] ―――――
36
C 6821 : 1999
体の式(2)(10.5.1)の公称光ファイバ断面積を使用すると±2 ァイバ径公差に対する計算上の最大
誤差は±3%である。
A.4 静的疲労係数 (ns) の算出アルゴリズム
A.4.1 最小二乗法 この方法はすべてのデータを使用するが,各セットのワイブルプロットは同じであり,
線形であるという前提条件が必要である。この方法はすべてのデータを使用するため,推定値の標準誤差
が小さくなる場合もある。
tij : i番目の公称応力レベルにおけるj番目の試料が破断に至る時間
椀懿 当該試料の公称応力レベル
Ni : i番目の試験セットにおけるサンプル数
各i,jごとにワイブル・パラメータWijを算出する。
j 5.0
Wij ln ln1
Ni
二乗誤差の和を最小にすることによって、データを次の一次回帰モデルに合わせる。
愀
a・ln (tij) +b・ln ( const=Wij
b
ns は推定値として報告する。
a
推定値の標準誤差は,aとbの分散 (Var) と共分散 (Cov) 及びそれぞれの値によって概算する。分散と
共分散の項は統計的なパッケージによって報告する。
2
Var (a) b b
Var (n) 2 2
Var (a)2 Cov (a, b)
a a a
推定値の標準誤差は 愀
である。また,ln (tij) とln ( ‰ ジアンを報告する。
Var(n)
A.4.2 最ゆう(尤)推定法 (MLE) この方法も,各公称応力レベルごとのワイブルブロットが一つの基
本的な破断応力分布から誘導され,線形であるという前提条件を必要とする。この方法は最良であるが,
最も複雑である。この方法は,すべてのサンプルが破損する前に試験を打ち切ることによって,データが
切り捨てられる事例を正確に処理できる。計算を完了するためには,統計的なパッケージが利用できる。
これは,次の確率モデルに基づく。
ms
tf
F 1 exp
t0
ここに, F : 破断時間tfに対する累積破断確率
t0 : ワイブル目盛パラメータ
ms : 静的ワイブル形状パラメータ
――――― [JIS C 6821 pdf 38] ―――――
37
C 6821 : 1999
附属書B(参考) 疲労係数のガイダンス
B.1 まえがき この附属書における試験方法IEC 60793-1-B7AからB7Eは,光ファイバの疲労係数を決定
するために使用できる多数の試験方法について述べている。
この指針は,この機械的なパラメータに関する幾つかの背景を述べるとともに,異なる試験方法の結果
間の相互関係を示すものである。
B.2 傷の成長 マルチモード光ファイバとシングルモード光ファイバが,S1O4の四面体のリング構造から
成るシリカガラス製であるとする。これらの四面体の機械結合によって,20GPaの破断応力となる(すな
わち,傷の成長がない不活性状態での強度)。傷の先端における応力集中によって,光ファイバはより低い
応力レベルで破断する[1]*(*角括弧内の数字はB.6の参考文献リストを指す。)。この応力集中は応力じん
a によって特長付けられる。ここで,Y : 形状係数,a : 傷の深さ,
(靱)性係数 K1=Yσ 印加応力であ
る。
K1が約0.8MPa・mの破壊じん(靱)性臨界値K1cに達すると,破断が生じる[2],[3]。半だ円又は半円形
の傷の場合,Yは1.24である[2]。したがって,傷の深さと破断応力の固有な関係が存在する。
実際には,傷の深さと破断応力の関係に従うよりも低い破断応力が観測される。さらに,光ファイバの
破断応力は時間によって決まる。これは,応力化学反応によって結合が切られ,傷が成長することで説明
できる。実験条件,特に水が,この傷の成長の重要な要因である (da/dt)。通常,シリカガラスの応力破断
は,べき乗則によって記述される。ここで,傷の成長速度Vは,AK1nに等しく,Aは傷の成長速度のスケ
ール係数であり,nは疲労係数である[1]。光ファイバ信頼性モデルにおいては,このべき乗則が使用され
ることが多く[5],n値を決定することの重要性を示している。この値は,光ファイバ及び/又はその被覆
の具体的な特性によって決まる[6],[7],[8],[9]。
この附属書に述べる試験方法は,相対的に短長の光ファイバだけを評価するものであり,本質的な強度
分布の応力疲労データを示すことになる。
実際には,光ファイバの弱い傷(ガラス本来の強度以下の外部的な強度分布など。)によって,光ファイ
バは破断する。したがって,寿命計算にはこれらの弱い傷の疲労係数を使用することが適切といえる。こ
のパラメータを決定することは極めて難しく,現在のところ,ガラス本来の強度分布の疲労係数が使用さ
れている。これは,研磨光ファイバに関する実験によって証明されており,この選択が最悪の状況さえ反
映していることを示している。研磨光ファイバのn値は内部的な強度分布のn値よりも高くなっている[5],
[10],[11],[12],[13]。
B.3 疲労係数測定方法の種類 標準光ファイバに関して得られる疲労係数は,一般には,1740であり,
高い値は割れの成長が遅いことを示している。これらの差は,主として測定法の相違によって説明できる。
実際には,静的試験と動的試験の二つの疲労試験群が使用されている。この規格では,次の試験を述べる。
動的疲労試験 方法IEC 60793-1-B7A 引張りによる動的疲労係数測定法
方法IEC 60793-1-B7B 曲げによる動的疲労係数測定法
静的疲労試験 方法IEC 60793-1-B7C 引張りによる静的疲労係数測定法
方法IEC 60793-1-B7D 曲げによる静的疲労係数測定法
――――― [JIS C 6821 pdf 39] ―――――
38
C 6821 : 1999
方法IEC60793-1-B7E 均一な巻付けによる静的疲労係数測定法
現行試験方法に示すように,上記試験は標準室内環境において実施する。これらの試験結果は標準環境
とは異なる信頼性の推定には使用すべきではない。
両群の疲労試験を比較するため,動的疲労試験によって荷重履歴を破断に至る“実効”静的時間 (teff) に
翻訳することができる[14]。
引張試験の場合,teffは次の式から求められる。
d 1 td
teff
(n )1 (n )1
t) =σ σ 潟 力負荷速度である。動的疲労強さは σ tdは破断に
間である。また,nは疲労係数である。
この方程式はすべての割れ成長パラメータが一定であると想定している。応力が直接測定されない他の
試験方法の場合(ひずみや曲げにさらされている光ファイバなど。),データを応力に変換する。[14]参照。
このように,動的疲労強さは静的疲労試験と同じように破断に至る有効時間に対してlog/logプロットでき
る。
B.4 異なる方法によって得られたn値の比較 ヨーロッパにおけるCOST 218によって実施されるラウン
ドロビン試験 (round robin test) 14]では,ほぼすべての応力疲労試験方法が使用されている。結果を図B.1
に示すが,測定破断応力の変動が実証されている。試験方法に応じて,結果は実効試験光ファイバ表面の
差(長さと形状)によって相互に垂直に移動している。
図B.2は結果であるが,ガラス面積の差に関して修正されており[8],[14],“有効”破断応力におけるば
らつきが減少されている。べき乗則によって規定される応力疲労は,破断に至る時間と印加応力をlog/log
プロットに基づきプロットすると,直線(定数n)となる。図B.2は破断応力が破断に至る時間の増加と
ともに次第に減少し,同時に傾きが減少する(nが増加する。)ことを示している。この効果はガラス表面
の時間効果によるものと思われる。これは,割れの鈍化が原因となることもあり[13],[15],応力疲労と競
合する[16]。一部の研究者は疲労限界と見ている[12],[17]。
動的疲労試験と静的疲労試験の二つの基本的な試験方法群は,図B.2で識別できる。一般に,動的疲労
試験法は,高い疲労強さとともに小さな時間枠で作動する。より小さな有効時間枠まで減少されることが
ある。この試験はより小さな応力疲労係数 (nd) を示すのが一般的である。静的試験方法は若干長い測定時
間とより低い印加応力レベルで作動し,より大きなns値が得られる。
B.5 結論 異なる疲労試験の結果を比較するときは,破断に至る動的時間と破断に至る実効静的時間の解
釈を行うことができる。さらに,破断応力レベルは試験中の実効ガラス面積について修正を要する。これ
らの修正を行えば,疲労係数は一定とはならず,破断に至る有効時間によって変動する(図B.2参照)。一
般に,このことは動的疲労試験方法と静的疲労試験方法の規定が異なることを説明している。
B.6 参考文献
[ 1 ] A.G.Evans, S.M.Wiederhorn, “Proof testing of ceramic materials-an analytical basis for failure predic-tion”
Int.J.Frac.10 (1974) 379-392.
[ 2 ] D.Kalish, B.K.Tarical, “Static and dynamic fatigue of a polymer-coated fused silica optical fiber”, J.Am.
Ceram.Soc. (USA) 61 (1981) 518-523.
――――― [JIS C 6821 pdf 40] ―――――
次のページ PDF 41
JIS C 6821:1999の引用国際規格 ISO 一覧
- IEC 60793-1-3:1995(MOD)
JIS C 6821:1999の国際規格 ICS 分類一覧
- 33 : 電気通信工学.オーディオ及びビデオ工学 > 33.180 : 光ファイバ通信 > 33.180.01 : 光ファイバシステム一般