JIS Z 4575:2019 ラジオクロミックフィルム線量計測システムの使用方法 | ページ 2

4
Z 4575 : 2019 (ISO/ASTM 51275 : 2013)

5 一般

5.1   ラジオクロミックフィルム線量計は,多種類の方法によって製造され,光を透過し,柔軟性はある
が通常の取扱いではその形状を保っているフィルム,表面をコートしたフィルムなどである。これらは,
一般的に小さい四角状,短冊状,又は線量計測の目的によって使いやすい大きさの線量計素子に切断でき
る長いロール若しくはシートである。線量計の応答については,水分含有量,照射中の温度,照射後測定
までの経過時間,及び考慮が必要なその他の影響量によって影響を受ける。市販の線量計の多くは,光及
び水分を通さないように包装してあり,光及び環境の湿度変化から効果的に保護されている。線量計は,
使用時と同様の照射条件下で校正することが望ましい。
5.2 電離放射線は,材料中で化学的反応を誘起し,可視又は紫外域の吸収帯を生成する又は強める。こ
れらの放射線によって誘起される吸収帯内の適切な波長で測定した吸光度は,吸収線量との間に定量的な
関係がある。ICRU Report 80には,現在使用されているラジオクロミックフィルム線量計測システムの技
術情報及び歴史的進展が記載されている。
5.3 電離放射線で誘起されるラジオクロミックフィルムの吸光度変化は,測定に用いる光の波長に依存
する。

6 影響量

6.1   線量計応答に影響する吸収線量以外の要因を,影響量という。このような影響量の例には,温度及
び線量率がある。(ASTM E2701参照)。影響因子の種類及び程度の例については,参考文献[2][14]
を参照。
6.2 照射前の条件
6.2.1 線量計の前処理及び包装
線量計は,製造業者によってフィルム内の含水量が適切となるように調整され,その条件下で水分及び
光を通さないような袋に密封される。
6.2.2 製造後の経過時間
ラジオクロミックフィルムは,製品によっては9年間以上その性能を保つ。しかし,同一バッチの線量
計の有効期間中でも,照射前の吸光度及び照射後の応答安定性に係る性能確認を実施することを推奨する。
6.2.3 温度
製造業者から出荷後及び利用施設における保存中において極端に高い温度にさらすことは,線量計応答
に影響を与える可能性がある。製造業者は,線量計の出荷及び保存に関して,特別の注意喚起を行うこと
が望ましい。
6.2.4 相対温度
線量計は,湿度の環境変化の影響を受けないように包装されている。保護包装されていない線量計は影
響を受ける可能性がある。製造業者は,線量計の出荷及び保存に関して,特別の注意喚起を行うことが望
ましい。
6.2.5 露光
線量計は,露光の影響を受けないように包装されている。保護包装されていない線量計は影響を受ける
可能性がある。製造業者は,線量計の出荷及び保存に関して,特別の注意喚起を行うことが望ましい。
6.3 照射中の条件
6.3.1 照射時の温度
照射中の温度は,線量計応答に影響を与える可能性がある。線量計応答への温度の影響を軽減するため

――――― [JIS Z 4575 pdf 6] ―――――

                                                                                              5
Z 4575 : 2019 (ISO/ASTM 51275 : 2013)
に,線量計の使用条件下で校正すること(施設内校正)が望ましい。
6.3.2 吸収線量率
吸収線量率は,線量計応答に影響を与える可能性がある。線量計応答への線量率の影響を軽減するため
に,線量計の使用条件下で校正すること(施設内校正)が望ましい。
6.3.3 分割線量
累加的な照射は,線量計応答に影響を与える可能性がある。線量計応答への分割線量の影響を軽減する
ために,線量計の使用条件下で校正すること(施設内校正)が望ましい。
6.3.4 相対湿度
線量計によっては,含水量が線量計応答に影響を与えることが知られている。製造業者が密封した包装
から取り出して使用する場合は,線量計内の含水量及びその結果としての線量計応答の変動の影響を軽減
するために,線量計の使用条件下で校正すること(施設内校正)が望ましい。
6.3.5 露光
線量計は,露光の影響を受けないように包装されている。保護包装されていない線量計は,露光の影響
を受ける可能性がある。
6.3.6 放射線エネルギー
線量計応答はエネルギーに依存しないことが証明されている。しかし,線量計の厚さ方向に線量勾配が
できるような低いエネルギーの電子線では,測定した応答を線量に換算することは難しい[15]。
注記 低いエネルギーでは,包装材の厚さも測定の誤差を大きくする可能性がある。
6.4 照射後の条件
6.4.1 経過時間
線量計は,照射後その吸光度が安定するまでに十分な時間を要することがある[10][12],[16]及び
[17]。照射後の加熱処理によって,その時間を短縮できる可能性がある。線量計の製造業者は,照射後の
加熱処理に関する特別の注意喚起を行うことが望ましい。
注記 FWT-60及びB3線量計の応答は,照射後の加熱処理によって安定化できる。
6.4.2 温度
照射後の保存温度は,線量計応答に影響を与える可能性がある。線量計の製造業者は,照射後の保存温
度に関する特別の注意喚起を行うことが望ましい。
6.4.3 相対湿度
照射後の線量計の含水量は,線量計応答に影響を与える可能性がある。線量計の製造業者は,照射後の
保存に関する特別の注意喚起を行うことが望ましい。
6.4.4 露光
線量計は,露光の影響を受けないように包装する。保護包装がない線量計は,露光の影響を受ける可能
性がある。
6.5 応答測定
照射後の条件(6.4)における要求事項は,測定の条件にも適用する。
注記 線量計応答の測定に用いる光には,線量計応答に影響を与える紫外光の成分を含む可能性があ
る。

――――― [JIS Z 4575 pdf 7] ―――――

6
Z 4575 : 2019 (ISO/ASTM 51275 : 2013)

7 線量計測システム及びその検証

7.1   ラジオクロミックフィルム線量計測システムの構成
ラジオクロミックフィルム線量計測システムは,フィルム線量計,その吸光度を測定する機器,その機
器に線量計素子を固定するジグ,及び線量計素子の厚さの測定器(任意)から構成される(附属書A参照)。
7.1.1 ラジオクロミックフィルム線量計
線量計としてのフィルムは,包装しない,又は一つずつ若しくは一つ以上を一つの袋に包装した形態で
提供される。袋は,湿度及び光から保護するためのものである。
7.1.2 測定機器
線量応答となる吸光度を測定する各機器について,必要な線量範囲をカバーする再現性の高い結果が得
られる特定の測定条件を決定・確立する。例えば,測定の再現性が最適となるように,その線量計におけ
る吸収スペクトルのピークの波長を用いる。ある線量計では,利用する線量範囲を拡大するために,ピー
ク位置でない波長を用いることが必要になる場合がある。特定の線量計測システムでの適切な分析波長の
例は,製造業者及び参考文献の[3][10]及び[16][21]によって提供されている。特定の線量計測シス
テムでは,吸光度,吸光度変化量,単位厚さ当たりの吸光度,及び単位厚さ当たりの吸光度変化量を応答
とすることがある。
7.1.2.1 国家標準にトレーサブルな標準で適切に校正されている分光光度計(又は同等の機器)
注記 必要な精度及び線量測定範囲を満たすことが可能な分光光度計を選ぶ。例えば,薄いフィルム
線量計では,測定の再現性を低下させ,線量測定範囲の下限を厳しく制限する干渉じま(縞)
の混入を回避するために,吸収スペクトルのバンド幅を線量計の厚さに適した設定にする必要
がある。
7.1.2.2 国家標準にトレーサブルな標準で適切に校正されている光学的濃度計
7.1.2.3 国家標準にトレーサブルな標準で適切に校正されているフィルムイメージスキャナ
7.1.3 吸光度を測定する過程で,線量計を再現性よく機器に取り付けるための線量計ホルダ
7.1.4 国家標準にトレーサブルな標準で適切に校正されている厚さ計(任意)
注記 柔らかい表面をもつフィルム線量計の厚さ測定を再現性よく実施することは技術的には困難で
あることも多く十分注意を要する。利用用途での品質保証に要求される不確かさを満たすこと
が可能な場合,現場における厚さ測定は行わず,厚さを一定であるとみなす,又は製造業者が
示す平均厚さを利用する。
7.2 計測マネジメントシステム
ISO/ASTM 51261に従って校正した線量計測システムの校正曲線及び使用のための手順を含む。
7.3 測定機器の性能検証
7.3.1 あらかじめ定めた期間で,又は使用中に機能低下が認められたときは,校正用標準を用いてその測
定を検証する。
7.3.2 一連の測定の前後において,測定機器の性能を確認する日常のチェック手順の実行も推奨される。

8 入荷した保有線量計の評価

8.1   線量計の購入,受領,承認及び保管に関する手順書を確立しなければならない。
8.2 使用者は,線量計の入荷ごとに,受入検査と承認試験とを実施しなければならない。このために試
料として用いる線量計は,入荷した保有線量計の一群からできる限り無作為に抽出することが望ましい。
8.2.1 受領の際には,線量計バッチ,数量,受領日,その他(平均厚さなど)の線量計の詳細と,出荷に

――――― [JIS Z 4575 pdf 8] ―――――

                                                                                              7
Z 4575 : 2019 (ISO/ASTM 51275 : 2013)
おける(出荷中に温度制限範囲を超えたかどうかの温度測定器の指示値などの)管理状況とを確認・記録
する。
8.2.2 手順書に基づき試料を無作為に抽出する。線量計及び包装袋の健全性を確認し,それが適切であれ
ば,平均厚さ及び照射前の平均吸光度を決定するために,手順書に基づき試料とする線量計の任意抽出を
実施する。
8.2.3 使用者には,入荷した線量計バッチから抽出した線量計試料の応答が,期待値の範囲内にあること
を決定するため,又は以前の入荷品から抽出した試料から得られる結果と比較して新しく納入された線量
計バッチの応答を検証するため,使用者に高,中,低線量の目標値又はその近傍の線量値に対して線量計
応答試験をすることを推奨する。
8.3 追加的な試験,検証における使用又は再校正のために,十分な数の線量計を保持する。
8.4 線量計は,製造業者が推奨する手順書又は使用者が独自に決めた実施手順に従って保管する。

9 校正

9.1   各線量計のバッチを最初に使用する前に,線量計測システムは,ISO/ASTM 51261並びに校正プロ
セスの詳細及び品質保証の要求事項を規定した使用者の手順書に従って校正しなければならない。
9.2 使用者の線量計測システムの校正では,使用者の施設で実施される加工処理に適用される照射前,
照射中及び照射後の条件に関連する影響量を考慮しなければならない(箇条6参照)。
注記 ラジオクロミックフィルム線量計測システムの継続的校正では,使用中の条件にほぼ近い条件
を用いる必要がある。季節的な温度変化が予想される場合は,校正有効期間で想定される温度
範囲の中間値に相当する時期に行うことが望ましい。季節的な変動の影響の評価及びバッチ固
有の校正結果を続けて使用できることの検証のため,定期的又は季節的な校正の確認を行うこ
とも推奨する。
9.3 校正の不確かさを低減するためには,全線量範囲にわたって一つの校正曲線を使うのではなく,複
数の校正曲線を利用するとよい。

10 ルーチン使用

10.1 照射前
10.1.1 線量計は,使用者の手順書に従って保管された承認されたバッチから取り出すことを確実に行う。
使用者の手順書は,製造業者の推奨事項に従う,又は使用者によって性能評価された結果に基づいている
ことを推奨する。
10.1.2 線量計は,使用有効期間内及び校正有効期間内にだけ使用する。
10.1.3 各線量計の包装について,外観的な不具合がないか,例えば,線量計の袋からの欠落を確認するた
めシールの健全性を目視検査する。損傷の可能性のある個々又は一連の線量計は廃棄する。
10.1.4 包装された線量計に識別するための適切な印を付ける。又は製造業者が推奨し,提供している場合,
線量計に固有の追跡印,又はバーコードを用いる。
10.1.5 照射の対象となる製品のあらかじめ規定した場所に,線量測定の目的に適した大きさにした線量計
素子を設置する。
10.2 照射後の分析手順
10.2.1 各線量計素子の配置位置を確認しながら,全ての線量計素子を回収し,説明を付ける。
10.2.2 線量計の吸光度を測定するまでは,あらかじめ規定した条件下にある承認された場所で密封された

――――― [JIS Z 4575 pdf 9] ―――――

8
Z 4575 : 2019 (ISO/ASTM 51275 : 2013)
包装のまま線量計を保管する(6.4及び6.5参照)。
10.2.3 線量計の応答は,製造業者の監督下で規定した照射後の経過時間内に(6.4.1参照),照射後の潜在
的な変化を考慮した条件で(6.5参照)測定することが望ましい。必要に応じて,照射後の加熱処理を確立
された手順に基づいて実施する。
10.2.4 規定した手順に従って,線量計の性能を検証する(7.2参照)。
10.2.5 各線量計の包装について不具合がないか,例えば,シール及び包装材の健全性を目視検査する。い
かなる不具合も記録する。
10.2.6 個々の線量計についても次項を実施する。
10.2.6.1 線量計が包装されている場合は,封を切り線量計を取り出す。必要に応じて,測定に適した大き
さに切断してそれを線量計素子とする。線量計素子の取扱いにはピンセットを使い,端又は角を持って扱
う。
10.2.6.2 線量計素子におけるか(掻)ききずなどのかし(瑕疵)を検査し,どんなかし(瑕疵)も記録す
る。
注記 か(掻)ききずがある場合は,吸光度測定時における線量計素子の位置を変えることで信頼性
ある測定ができる可能性がある。例えば,きずの位置が分光光度計の光路に入らないように,
表裏又は上下を変える。
10.2.6.3 必要に応じて,線量計素子は測定前に汚れを取り除いて清浄にする。
10.2.6.4 分光光度計のホルダに線量計素子を取り付ける。線量計素子を適切に取り付けるとともに,分析
光ビームに直角となるように置くようにする。
10.2.6.5 選択した分析波長で吸光度を測定し,記録する。製造業者の推奨による表A.1を参照。
10.2.6.6 分析光ビームが通過した領域の線量計素子の厚さを測定する,又は製造業者が規定した厚さの平
均値若しくは使用者が無作為に抽出した線量計素子から求めた厚さの平均値を用いる。
注記 線量計素子の種類によっては,線量計素子の有効な放射線感受層の厚さを測定することができ
ないことがある(例えば,ガフクロミックフィルム)。
10.2.6.7 線量応答の計算
10.2.6.8 線量計測システムの適切な校正曲線を用いて線量応答から吸収線量を計算する(9.3参照)。

11 文書化の要求事項

  使用者の計測マネジメントシステムに従って測定の詳細を記録する。

12 測定の不確かさ

12.1 全ての線量測定は,不確かさを評価する必要がある。その適切な推奨手順が,ISO/ASTM 51707及
びJCGM 100に記載されている。
12.2 評価には,校正に由来する要因,線量計応答の再現性,機器の再現性及び影響量の効果から生じる
全ての不確かさの要因が含まれていることが望ましい。不確かさの要因の完全な量的な分析は,不確かさ
バジェットシートとして表される。その場合は,表の形で表すことが多い。一般的には,不確かさバジェ
ットシートは,評価の方法,統計的分布及び大きさを含む不確かさの全ての重要な要因を識別できる。
12.3 ラジオクロミックフィルム線量計のようなルーチン線量計測システムを使用して達成できる拡張不
確かさは,一般的に6 %(包含係数k=2)であり,これは,正規分布においては約95 %の信頼の水準に相
当する。

――――― [JIS Z 4575 pdf 10] ―――――

次のページ PDF 11

JIS Z 4575:2019の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO/ASTM 51275:2013(IDT)

JIS Z 4575:2019の国際規格 ICS 分類一覧