JIS Z 8050:2016 安全側面―規格及びその他の仕様書における子どもの安全の指針 | ページ 2

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Z 8050 : 2016 (ISO/IEC Guide 50 : 2014)
注記1 製品の定義については,3.5に規定されている。
注記2 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO/IEC Guide 50:2014,Safety aspects−Guidelines for child safety in standards and other
specifications(IDT)
なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”
ことを示す。

2 引用規格

  引用規格はない。

3 用語及び定義

  この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。
3.1
ケアラー(carer)
個々の子どもの安全(3.7)について,一時的であれ,責任を果たす人,又は子どもの世話をする人。
注記 ケアラー(carer)は,“ケアギバー(caregiver)”と(海外では)いうこともある。
例 親,祖父母,子どもに対して限定的な責任を与えられた兄弟姉妹,その他の親戚,大人の知り合
い,ベビーシッター,教師,保育士,ユースリーダー(青少年施設の指導員),スポーツコーチ,
キャンプ生活の指導員,保育所就業者。
3.2
子ども(child)
14歳未満の人。
注記1 年齢は地域の法令によって異なる年齢制限を採用する規格もある。
注記2 詳細は,4.2を参照。
3.3
危害(harm)
人への傷害若しくは健康障害,又は財産及び環境への損害。
(JIS Z 8051,3.1を参照。)
3.4
ハザード(hazard)
危害(3.3)の潜在的な源。
(JIS Z 8051,3.2を参照。)
3.5
製品(product)
製造物,プロセス,構造物,据付け,サービス,構築された環境又はこれらのいずれかの組合せ。
注記 消費財の場合,包装は,製品の一部として保持されることが意図されているか,又はその可能
性があるかに関係なく,製品の不可分の一部とみなされる(7.1も参照)。
3.6
リスク(risk)
危害(3.3)の発生確率及びその危害の度合いの組合せ。

――――― [JIS Z 8050 pdf 6] ―――――

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Z 8050 : 2016 (ISO/IEC Guide 50 : 2014)
(JIS Z 8051,3.9を参照。)
3.7
安全(safety)
許容不可能なリスク(3.6)がないこと。
(JIS Z 8051,3.14を参照。)
3.8
許容可能なリスク(tolerable risk)
現在の社会の価値観に基づいて,与えられた状況下で受け入れられるリスク(3.6)のレベル。
(JIS Z 8051,3.15を参照。)

4 子どもの安全への一般的アプローチ

4.1 一般

  製品に対する規格を作成又は改正する場合,規格の作成者は,規格の対象となっている製品が子どもを
直接の使用者として想定しているかどうかに関わりなく,子どもが,なぜ,どのように関わりをもつかを
考慮することが望ましい。子どもの安全と一般的な安全とを区別して考える概念については,この箇条で
説明する。この概念は,JIS Z 8051の規定に追加されたものである。

4.2 年齢区分の呼び方

  子どもの発達を示す分類の呼び方は,慣用的に使用されているものである。これらは互いに相容れない
ものではなく,文脈によっては,次のように,幅のある意味合いでも厳密な意味を込めても使用されるこ
とがある。
− まだ歩行できないような子どもを,この規格では,“ベビー(babies)”又は“乳児(infants)”という
こととする。
− 歩行はできるが,その歩行能力は完全に発達しておらず,また,強い探索行動を示す子どもを,この
規格においては,“幼児(toddlers)”ということとする。
− よちよち歩きの段階を超えたが,基本的能力はいまだに発展途上にあるもので,3歳8歳の子どもを,
この規格では,“低年齢の子ども(young children)”ということとする。彼らは,十分に発達した運動
神経能力をもち,大人が基本的にすることを一部行い始め,徐々に見守りを受けなくなるが,その行
動はまだ衝動的で予測できない。重要なことであるが,この年齢幅の上限と下限とでは,子どもの能
力及び行動に大きな差異が生じる。
− 思春期に達していない子どもを,この規格では,“高年齢の子ども(older children)”ということとす
る。上限年齢は変動することがあるので,この用語は約9歳12歳を指すが,13歳又は14歳の子ど
もを指すことがある。この年齢グループの子どもは自立性を増しつつあり,大人のすることのほとん
どを実行することができる(ただし,その力量の度合いは様々である。)。ただし,行動には一貫性が
なく,予測できないことがあり,仲間からのプレッシャーに反応することもあり,自分の行為の結果
を完全に理解しているわけではない。これは,安全感覚と自立意識との両方を望むという感情的葛藤
が起こり得る時期だからである。この年齢グループの上限では,自主性への強い願望をもち,新しい
経験を求めることがある。

4.3 リスクアセスメント

  リスクアセスメントは,傷害防止戦略の重要なステップである。各ハザードに関して,危害の原因とな
り得る全ての事象又は事象連鎖を特定することが極めて重要である。

――――― [JIS Z 8050 pdf 7] ―――――

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Z 8050 : 2016 (ISO/IEC Guide 50 : 2014)
一般的なリスクアセスメントのアプローチについては,JIS Z 8051に記載されている。そこでは,特定
の危険状態に関連するリスクを,ハザードが原因となることがある危害の度合いと,その危害の発生確率
との関係から定義している。危害の度合い,及び特に発生確率は,客観的に求め,また,恣意的で直感的
な意思決定ではなく,因果関係を実証した関連事実に基づいていることが望ましい。子どもの安全に取り
組む際には,子どものリスクに関連する次の要因には,特に注意が必要である。
a) 子どもと人及び製品との関わり方
b) 子どもの発達及び行動
c) 子ども及びケアラーの認識,知識及び経験の度合い
d) 社会的,経済的及び環境的要因 : 子どもの身体的特徴及び行動に関連して傷害を受ける可能性
e) ケアラーによって,見守られる度合い

4.4 危害の防止及び低減

4.4.1  危害は,生命維持に不可欠なもの(例えば,溺れたり,窒息したときの酸素)の欠乏,エネルギー
の伝達(例えば,機械,熱,電気,放射線),体の抵抗力よりも大きな作用因子(例えば,化学的,生物学
的)への暴露などのハザードから発生することがある(箇条7参照)。これらは,発生に至るまでの事象又
は発生後の事象への取組みを行うことで,防止又は低減することができる。一般には,安全な製品を設計
することが一次予防となる。
4.4.2 危害の防止及び低減の戦略として,次に示す一つ又は複数の取組みを進めるとよい。
− ハザードの排除及び/又はハザードへの暴露の排除(一次予防,安全な設計,例えば,引火性液体を
非引火性液体に差し換えるなど)
− ハザードへの暴露の排除(一次予防)
− ハザードへの暴露の確率の低減(二次予防,例えば,チャイルドレジスタンス包装の使用)
− 危害の度合いの低減(二次予防,例えば,保護具の使用又は家庭用温水の温度を下げる。)
− 救助,治療,リハビリテーションなどのアプローチによって,危害の長期的な作用を低減させる(三
次予防)。
注記 リスク低減のアプローチは,JIS Z 8051の6.3にも記載されている。
4.4.3 さらに,こうした戦略には受動的なものも又は能動的なものもあり得る。受動的な戦略は,個々人
が保護されるための何らかの措置を講じなくても機能するが,能動的な戦略は,ハザードを最小に低減す
るために個々人が何らかの措置を講じることが必要になる。ハザードを排除するか又はハザードに対して
防護する受動的な防止への戦略は,能動的な戦略よりも成功の確率が高くなる。
重大な傷害に至り得るリスクを排除する,最小化するなどして,製品の安全性を向上させることは,設
計段階において開始することが望ましい。これは,まずは一次予防アプローチを組み入れることとし,そ
れが可能でないとする場合は,二次予防アプローチを取ることを念頭に置いたものである。二次予防は,
残留リスク,すなわち使用者が対処する必要があり得るものについて,使用者に情報を提供することが必
要である。可能な限り,製品の設計は受動的な防止への戦略を目標にすることが望ましい。
注記 リスク低減のためのアプローチは,JIS Z 8051の6.3にも記載されている。
様々な資料を使用して,製品に関連する危害の潜在性を特定することができる。これらの資料には次の
事項が含まれるが,これらだけに限らない。
− 傷害統計
− 傷害サーベイランスシステムから得られる詳細情報

――――― [JIS Z 8050 pdf 8] ―――――

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Z 8050 : 2016 (ISO/IEC Guide 50 : 2014)
− 調査結果
− 試験データ(試験に合格したことは,必ずしも製品にハザードがないことを意味するものではない。)
− 事例報告の調査
− 苦情データ
− 他のタイプの製品から得られた危険性に関するデータからの推測。監視データ,リコール及び他の地
域的な規制がある場合は,その他の類似した措置を考慮することが望ましい。
警告 危害の報告がないことは,必ずしもハザードがないことを意味するものではない。
子どもへの危害は,一般に様々な年齢での彼らの発達段階とハザードへの暴露とに密接に関連している
ため,子どもの傷害データを年齢別に分類し,そこに現れるパターンを特定することが重要である。
例1 オーブンの扉,熱湯などによるやけど,熱傷,医薬品又は家庭用化学品による中毒,溺水など
が最も多いのは,5歳未満である。
例2 遊具からの落下による傷害は,5歳9歳が最も多い。
例3 スポーツに関連する落下又は衝突に関連する傷害は,10歳14歳が最も多い。
対策は,特に傷害データ,子どもの行動,工学及び生体力学に基づいた調査及び評価によって明確にす
ることができる。例えば,消費者からのフィードバックは,製品を再設計する際に必要な貴重な情報をも
たらす。
予防策を選定する場合,大人への許容リスクが子どもには当てはまらないことがあることを認識するこ
とが重要である。大人を保護するような対策を子どもに採用する場合は,リスクが増大又は追加される可
能性を考慮することが不可欠である(例えば,車の助手席側のエアバッグ)。
傷害サーベイランスシステムの詳細は,附属書Bに記載する。

4.5 視覚に入らない子ども

4.5.1  子どもは,次の例のように幾つかの理由から,その存在を検知するのが難しく,視覚に入らないこ
とがある。
− 身体が小さいことで,大人には視覚に入りにくくなる。
− 危険を理解する判断力の欠如及び予測不能な行動によって,大人には予測できないような危険状態に
入ることがある。
4.5.2 人間の視力には,周辺視野における限界のような制限がある。したがって,次の例のように大人の
視野の外にいる子どもは,深刻な事故に巻き込まれるリスクがある。
− 車両の近くにいる子どもは,運転者の死角に入り,見落とされ,車両にはねられることがある。
− 子どもは走ってくる車両の前に飛び出して,はねられることがある。
− 人が(家,設備などの)ドアを開閉するとき,子どもが視野に入らないことがある。
4.5.3 子どもが死角に入ってしまうことによるリスクを防止又は低減するために,次の例のような可能な
戦略を検討することが望ましい。
− 子どもがスクールバスの運転者に視認されることのないまま,その前を横断することがないよう,自
動車が通るような危険の多い場所に入ることを防止するための障壁又はスイングアームバリア(開閉
式ゲート)を設置する。
− 車両上に鏡又は認識システムを取り付けることで,死角をなくす。
− ドアの透明部分を,更に低いレベルまで拡張する。

4.6 障がいのある子どもへのニーズ

  多くはないがある一定の割合で,障がいのある子どもがいる。子どもの障がいには,先天的な健康障が

――――― [JIS Z 8050 pdf 9] ―――――

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Z 8050 : 2016 (ISO/IEC Guide 50 : 2014)
い若しくは身体障がい,又は病気,傷害若しくは栄養不足による後天的な障がいがある。多くの子どもが
単一の障がいのある一方で,複数の障がいを抱える子どももいる。例えば,脳性小児麻ひ(痺)の子ども
は,移動が困難な場合があり,更に意思疎通及び知的能力に障がいがある場合もある。健康状態又は身体
障がいと,環境及び個人的因子との複雑な相互作用は,それぞれの子どもが抱え込む障がいが異なること
を意味する。
重要 この理由から,専門家の助言を求めることが望ましい。
障がいのある子どもの場合,その程度及び要求される内容によって,この指針で示されていることが適
切な場合だけではなく,一般的な対応が不可能であるために個別の対応が必要となる場合がある。
“障がい”という用語には,その性質,度合い及び影響において様々に変化する広範囲の条件が含まれ
る。障がいには,次の事項が含まれるが,これらだけに限らない。
− 行動及び学習障がい
− 身体及び成長障がい
− 感覚障がい
− 運動スキルの障がい
この指針では,障がいのある子どもの不慮の傷害の発生確率及びその傷害の度合いを最小限にする方法
について詳細な助言は提供しない。
注記 障がいのある人のニーズについては,JIS Z 8071に概要が記載されている。しかしながら,障
がいのある子どもに関する手引きを特別に取り扱ってはいない。

5 安全上の考慮事項 : 子どもの発達,行動及び不慮の危害

5.1 子どもの発達及び行動

5.1.1  一般
子どもは,体の小さな大人ではない。ハザードへの暴露に加えて,発達段階を含めた子ども固有の特性
が,大人とは異なった形で子どもをリスクにさらす。発達段階には,広い意味で,子どもの体の大きさ,
体型,生理,体力及び認識力,情緒の発達,並びに行動が含まれる。こうした特性は,子どもの発達に応
じて急速に変化する。そのため,親及びその他のケアラーは,様々な発達段階における子どもの能力を過
大評価又は過小評価し,子どもをハザードにさらすことが多い。こうした状況は,子どもを取り巻く環境
の多くが大人用として設計されているという事実によって増幅される。
製品に関連する潜在的ハザードを決定する場合は,この箇条に記載する子どもの特性の全てを検討する
必要がある。こうした特性は,次の例のように複合的に作用し,子どもの危害のリスクを増大させること
があることを肝に銘じておくことが望ましい。
− 子どもは探索行動の結果として,はしごに登るかもしれない。
− 認識力が未熟なため,子どもははしごが高すぎるとか,又は不安定だと認識できないかもしれない。
− 運動制御力が未熟なため,子どもはつかみ損ねて,落下するかもしれない。
こうした子どもの製品の使用又は製品との関わり合いは,正常な子どもの行動として考慮すべきである。
“誤使用”という用語は誤解を招きやすく,また,子どものハザードに関して不適切な意思決定につなが

――――― [JIS Z 8050 pdf 10] ―――――

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  • ISO/IEC Guide 50:2014(IDT)

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