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Z 8050 : 2016 (ISO/IEC Guide 50 : 2014)
りかねない。ある調査によれば,子どもは,子ども用に設計されていない,例えば,電子レンジのような
製品を頻繁に使用している子どもと製品との関わり合いについて考えるとき,それが遊びなのか,能動的
学習なのか,又は意図した使用なのかを区別することは難しい。安全上の理由から,これらの関わり合い
を区別しようとすることは建設的でない。
安全への配慮は,リスク及び刺激的な環境を探索し学習しようとする子どもの特性との間で適切なバラ
ンスをとることが望ましい。目標とすべきは,子どもの発達のレベルに従った設計によって,危害のリス
クを低減することである。
5.1.2 子どもの体の大きさ及び人体計測データ
子どもは,体の特性のため,特に危害を被りやすい。この危害の性質は,大人が経験するものと異なる
こともある。
子どもの体の大きさについては,周囲のものとの関係を考慮して,背の高さ,人体各部の長さ,幅及び
全周を含めて,人体計測データを調べる必要がある。正規分布及び安全のための許容範囲を定める場合は,
人体計測データによることが望ましい。大人と同様に,子どもは身体各部について一貫性のある寸法をも
つとは限らない。例えば,身長が95パーセンタイル値の子どもが,50パーセンタイル値の頭及び25パー
センタイル値の手の長さをもつことがある。ある一つの(同じ)年齢層でも,子どもの発達及び身体の大
きさには,大きな違いが生じる可能性がある。男性及び女性では,異なる年齢で急成長する。
注記 人体計測データの有用な文献については,参考文献[25], [41] が参照できる。
体の大きさ及び体重分布が大人と比較して危害の要因となる例を,次に示す。
a) 熱による傷害の場合,ある一定の(熱源との)接触面積について,その体表面積に対する割合は,大
人の場合に比べて子どもの場合には更に大きくなる。また,子どもは体重に対して体表面積の割合が
高いので,熱傷の箇所から失われる体液量の比率が大きくなることがある。
b) 低年齢の子どもは体の大きさに比べて頭が大きい。重心が高ければ,例えば,子どもが座ったり,登
ったり,又は立ったりすることのある家具又は構造物からの落下の可能性が大きくなる。
子どもは,しばしば,頭から直接落下する。
c) 重心が高いことで,プール,バケツ,便器,浴槽などへの落下の可能性が高まり,したがって,溺れ
るリスクが増大する。相対的に子どもは頭が大きいので,頭が通り抜けるには,体の他の部分よりも
っと広いスペースが必要である。
d) 頭が通り抜けるスペースは,体の他の部分と比較するとずっと大きいことが必要となる。頭が通り抜
けられない大きさの隙間を,足を先に出して体から通り抜けると,隙間に挟まってしまう。
e) 頭の質量が相対的に大きいと,むち打ち症の発生確率及び度合いが増大する。
f) 子どもは,指,手及び体の一部を小さな開口部又は隙間に差し込んで,その先にある回転及び可動部
品,電気部品,その他のハザードに近づいてしまうおそれがある。
g) 大人には危害とならない少量の物質が,子どもにとっては危害となることがある。子どもは,体重に
対して体の表面積の比が大きく,また,体が小さいことから,化学的及び放射のハザードにさらされ
ると,大人以上に強い影響を受けることがある。
5.1.3 運動能力の発達
運動能力の発達とは,大まかな動作及び細かな動作並びにその協調の成熟プロセスを指す。子どもの運
動スキルの発達を理解することは,危害を排除又は低減するための製品の設計にとって不可欠なことであ
る。
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この発達プロセスには,一次的な不随意の反射運動から,意図的な目標を定めた行動への変化が含まれ
る。このプロセスの達成の過程には,首が据わる,前かがみになる,お座りができる,寝返りを打つ,は
(這)う,立ち上がる,登る,身体を揺らす,歩く,走るための体力及び技能,並びに手及び指でものを
操作する能力の習得が含まれる。バランス,制御及び体力が十分に発達するまで,子どもは,特に転倒し
たり,そこから抜け出すことができないような不安定な姿勢に陥ったりする。
例1 ベビーは,横たわっていると端へ動いて転がり落ちることがあるが,体を起こして元に戻るこ
とはできない。その結果,製品間のくさび状の隙間に挟まれ,窒息に陥る可能性がある。
例2 ようやく立てるようになったベビー及びよちよち歩きの幼児は,手の届く範囲にあるコード,
リボン又は窓の飾り付けを体に絡み付けてしまうことがある。このようなときに座ったり又は
倒れたりすると,コードが首の回りにきつく絡まり,窒息死するおそれがある。
例3 何にでも登りたがる子どもは,衣服,アクセサリ及び着用しているもの(例えば,リュックサ
ック,髪飾り)が家具類又は突起部に引っ掛かることがある。そこから脱することができない
と,つ(吊)り下げられることになる。
例4 子どもはバランスを失ったり,又は手を放したりしてしまうことがあり,高い所から落下する
ことがある。
例5 おおよそ生後3か月頃から,乳児は寝返りを打てるようになり,マットレス及び寝具が柔らか
すぎると,窒息することがある。
5.1.4 生理学的発達
子どもは体の大きさ及び運動機能に加えて,発達する数多くの生理学的機能がある。このようなものの
中には,感覚機能,生体力学特性,反応時間,代謝及び器官の発達が含まれる。
子どもの感覚機能の発達は,時間をかけて起こる。視覚の発達は,他の感覚よりも遅い。大部分の子ど
もが,大人と同じ視野をもつ段階になっても視野が狭く,又は奥行き感覚に困難なことがある。
生理学的発達が未熟なため,傷害の要因となっている例を,次に示す。
a) 子どもは(大人に比べて)体が小さく呼吸速度も速いために,毒性を示す可能性のある医薬品,化学
物質,植物などの影響を特に受けやすい。
b) 子どもは代謝機能の未熟さ及び器官の未発達によって,大人には有害でない医薬品,化学物質又は植
物の毒性に対して高い感受性を招く結果となる。
c) 子どもの皮膚が特に薄いという特性も含め,熱による傷害に対して更に冒されやすい。
d) 子どもの骨格は完全には発達していないため,機械的な力に対して異なった反応を示す。
e) 子どもは,強い光源による危害に対して影響を受けやすい。
f) 子どもは,音圧に対して敏感である。
5.1.5 認識力の発達
子どもの認識力の発達段階は,その行動の結果を理解できるか,又はできないかについての能力を決定
する。低年齢の子どものハザードを認識して回避する能力は,限られている。危険な条件の有害な結果に
ついて,一貫性のある,信頼できる予測又は応答をしない。したがって,大人にとっては明白なハザード
も,子どもにとってはそれほど明白とはいえない。
少年期のある段階において,経験並びに両親及びその他のケアラーによる教育が子どもの行動に影響し
始めるが,製品を開発するときにそれを期待しないことが望ましい。
5.1.6 探索行動
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子どもは乳児期の初期の頃から,生まれつきの探索心によって突き動かされる。子どもの探索行動は,
発達段階に応じて分類することができる。子どもは,幾らか予測できる一連の肉体的成熟及び精神的成熟
の過程を踏むので,探索行動もまた予測できる。この探索行動によって,子どもは製造業者が意図しなか
った方法で,製品を使用することがある。
探索行動の中で最も頻繁に観察されることの一つは,ものを操作する行為である。乳児期,これはしば
しば,大半がものをいじり,口に含む行為に関連する。口に含むという探索的行為は,単に食べるという
ことではない。子どもの口は比較的敏感であり,口に含む行為は快楽の感覚を子どもに与えると同時に,
歯が生えることに伴う痛みを低減してくれる。口に含む探索的行為には,基本的な運動調整(例えば,自
分の手を口まで運ぶこと)が必要である。子どもは,自分の肉体的特性について学習できる方法でものの
探索を開始する。さらに複雑な両手の連携,及びものを回転する,落とす,強打する,投げるなどの他の
探索行動が出現すると,口に含む探索的行為は,それに反比例して減退する。ただし,何らかの口に含む
行為は,探索の早期の段階から相当先の段階まで継続する。
子どもの感覚,運動及び認識能力は向上するため,環境の探索は次第に精巧なものになる。子どもは,
自分の体を含めて,いろいろな“もの”を探索し続ける。大きな“もの”の中に自分から入ること,又は
体のくぼみの中に小さな“もの”を入れることは通常のことである。やがて,多くの子どもにとって,社
会的遊びが主要な一次的探索行動となる。仲間のすることが,更に重要な探索行動の動機付けの要因とな
る。
大人は,探索が,リスクを含む未知のものを発見するプロセスであると理解している。全ての年齢の子
どもは,更に追加的なリスクに直面する。それは,リスク認識及び意思決定能力,自分の能力の限界に対
する理解不足,並びに体力及び認識力の未成熟によるものである。これらは,全て危険を回避する能力に
影響を与える。子どもは幾らかのリスクは認識できるものの,7歳8歳頃になって因果関係(原因及び結
果)を理解することができるようになるまで,潜在的な危険状態に含まれるリスクを評価することができ
ない。
表1に,子どもの典型的な探索行動を要約する。
表1−典型的な探索行動の例
探索行動 例 対象年齢 説明に役立つ実例
口に含む か(噛)む,吸う,かじる,そしゃく(咀誕生3歳まで おしゃぶり(soother,pacifier),
嚼)する,なめる。 木の積み木,小形タオル,衣服,
非食用物質製の食品,歯固め,
玩具,ボタン電池(コイン形リ
チウム電池を含む。),家具,窓
台(窓下の外側又は内側にある
横材で,よく植木鉢などが置か
れる。)
回転させる 子どもは回転させることで,ものを目視で月齢6か月2歳 がらがら,中に水又はビーズが
調べる。 入っている玩具,積み木,ひっ
くり返すと音を出す玩具
反対の手に持 運動調整力が高まると,子どもは両手を使月齢9か月2歳 ボール,太鼓のばち,積み木,
ち替える 用して,ものを回転することができるよう 積上げ玩具,プラスチック組立
になる。この行為によって,子どもはもの 積み木
を片方の手からもう一方の手に移して,も
のを完全に1回転させることができる。
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表1−典型的な探索行動の例(続き)
探索行動 例 対象年齢 説明に役立つ実例
挿入(体をも 子どもが1本の指を他の指から離すことが月齢6か月10歳 ファスナのつまみ,差込み口,
のの中に) できるようになったときに始まる。すなわ プラスチック管,容器の口,段
ち,子どもが他の全ての指を伸ばすことな ボール箱,犬用ゲージ,手す(摺)
く,1本の指を伸ばすことができるときであ り,仕切り柵の羽根板
る。そのとき,子どもは,指をものの中に
入れることによって,又は指をものの外側
に沿って走らせることによってものを探索
し始める。成長するにつれて,子どもは探
索するとき体の他の部分(手,足,脚,頭
など)及び体全体をものの中に挿入し始め
る。
挿入(ものを 子どもはものを自分の身体のくぼみに入れ 2歳6歳 ビーズ,ステッカー,豆,綿棒,
体の中に) ることによって,環境内のもの及び自分の ボタン,粘土,玩具の小さい部
体を探索する。 品
強打 子どもは様々なものがどのような音を出す月齢9か月5歳 木のスプーン及び積み木,クレ
かを聞くためにものをたた(叩)く。子ど ヨン,積上げ玩具でポット及び
もはこれによって,ものの重さに関する感 鍋をたた(叩)く。玩具は,一
覚をつかむ。 緒に又は硬い表面上でたた(叩)
くことで音を出す。
落とす ものを落とす行為は,子どもの生涯の非常月齢6か月3歳 食器,おしゃぶり,ボール,小
に早い時期に始まる。この種の探索によっ さい玩具,落とすと跳ねる又は
て,子どもはものは視野の外にあっても存 音を出す玩具
在し続けること,及び親又はケアラーの行
為に何らかのレベルの制御性があり得るこ
とを学習し始める。
投げる 子どもは握れるものを投げ始める。この行 1歳4歳 ボール,フリスビー(回転させ
為は,重さに関する情報を子どもに与える 投げて遊ぶ円盤状の玩具),縫い
だけでなく,運動技スキルの訓練及び力の ぐるみ,子どもの手にぴったり
表現でもある。 合う玩具,その他怒っていると
き何でも
ごっこ遊び 子どもはものを意図されたとおりに使用す 3歳10歳 着せ替え服,人形,恐竜の玩具,
ることに満足しなくなると,ものに対する 自動車,汽車,ミニチュアの世
様々な可能性の全てに手を出し,発見しよ 界(城,ドールハウス,キッチ
うとし始める。これは,子どもがそれまで ンなど),看護師ごっこ又はお医
の全てのやり方を使って,ものに対して(や 者さんごっこ
ってもよい)限界を試し,最適なシミュレ
ーションを得ようとする実験にもなる。
限界を試す 子どもはしばしば,ものに興味をもつこと 3歳10歳 遊具,ワゴン及び乗物玩具,ス
で,その限界を試そうとするが,そうする ポーツ用具。壁の上に乗ってバ
ことでリスクも増大する。これらの疑問に ランスをとり,木に登り,自転
答えることは,子どもが,もの及びものに 車又はスケートボードを用いた
生じる変形を理解することに役立つ。子ど エアロビクス運動をする。
もは,これによってものの重さに関する感
覚をつかむ。因果関係及び自分に起こり得
るリスクについて,子どもの感覚は,十分
には発達していない。実際,この段階の子
どもはしばしば,自分を無敵であると感じ
ている。
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5.2 子どもの発達に関する知識,危害防止への適用
製品に関する規格を作成するときは,合理的に予見可能な,子どもによる使用を考慮しなければならな
い。5.1に記載する特性は,子どもが製品とどのような関わり合いをもつかを予測するときの助けとなる。
例1 保管容器を設計する : 子どもは,例えば,保存袋,冷蔵庫などの容器に関連付けて自分の体の
大きさを探索しようとする。保管容器の開口部が,その中に頭部ではなく下半身を入れること
ができる場合,子どもは危害を受けることもある。全身を入れることができる場合は,通気が
必要である。そうでなければ,子どもは窒息の危険にさらされる。容器に水が入っている場合,
子どもは溺水の危険にさらされる。
例2 電気装置を設計する : 子どもは,せん(閃)光灯,音,ボタンにひ(惹)かれることがある。
そのため,例えば,鋭利なエッジ,取り込み部,小形部品,可動部品,バッテリへの接触路な
どの危険な構成要素を取り除くことが重要である。
例3 子どもはしばしば,大人,高年齢の子ども及びメディアのキャラクターのまねをする : このこ
とは,通常は大人によって使用され,子ども向けではない製品を子どもが使用するようになる。
子どもがその動作の意味を理解していないと危険である。例えば,子どもは医薬品を弟及び妹
に与えたり,ロック装置を動かしたり,また,器具の電源を入れたりすることがある。
例4 包装,特に包装が色鮮やかなもので,子どもをひ(惹)き付ける(例えば,玩具のような形状)
場合,子どもはその製品を使用しがちである。
子どもには,実物とイミテーション若しくは模型との違い又はいずれかが有害になり得るかを認識する
ことを期待することができない。漫画のキャラクターのように,子どもたちが魅力的なイメージをもつ製
品,又はそれ自体が漫画のキャラクターのようにデザインされている製品,例えば,ヘアドライヤ,ラン
タン及びたばこのライターなどの製品は,子どもが玩具のように扱うようになる。これは,不適切で不安
全な使用につながる。
5.3 発達年齢と対比した実年齢
子どもが直面するリスクを考える場合,実年齢が発達年齢と常に一致するわけではないことを理解する
ことが望ましい。すなわち,実年齢が同じ子どもでも,発達が大きく異なることがある。
例えば,ある狭い年齢幅においては,月齢約12か月で歩行できるベビーがいる一方,まだはいはいのま
まのベビーもいる。4歳児の多くは,チャイルドレジスタントがあると認証された容器を開けることがで
きないが,4歳児の一部は開けることができる。また,8歳児の一部は,道路を横断するときに決められた
行動パターンに従っているが,他の8歳児は予測できない行動をとることがある。
5.4 14歳以上
この規格では,子どもは14歳未満の人と定義されている。ただし,この指針の適用範囲を超えることに
なるが,発達が14歳で停止するわけではないことを念頭におくことが重要である。自立しようとする意欲
がリスクを招く行動に結び付く可能性がある。成長及び脳の成熟は,通常,20歳を超えても継続する。
6 子どもの安全環境
6.1 一般
子どもの発達に加えて,物理的環境及び社会的環境も,子どもと製品との関わり合い方に影響する。自
然及び人工的環境,気候,言語,習慣,性格及び信仰,知識,並びに使用者の経験の全てが,製品の安全
に影響する。
危害の発生確率及びその度合いは,二人以上の子どもの存在及び関与によって増大する可能性がある。
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- ISO/IEC Guide 50:2014(IDT)
JIS Z 8050:2016の国際規格 ICS 分類一覧
- 97 : 家庭用及び商業用設備.娯楽.スポーツ > 97.190 : 小児用設備
- 01 : 総論.用語.標準化.ドキュメンテーション > 01.120 : 標準化.一般規則