JIS Z 8131:2000 機械振動及び衝撃―人体暴露―用語 | ページ 2

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番号 用語 定義 対応英語(参考)
5.2 人体座標系 anatomical coordinate
人体又はダミーの内部に原点をもち,固定した解剖学的指標
解剖学的座標系 (骨格)で規定される方向をもつ右手座標系。 system
備考1. 生体力学座標系 (biodynamic coordinate system)
が使われたこともある。しかし,この用語は生体
力学の分野では,人体基準の座標系ばかりでな
く,広範囲の座標系広範囲の座標系を含むものと
して使われているので,この場合適当ではない。
したがって,英語では人体,ダミー又はその一部
に原点をもつ座標系を意味する解剖学的座標系
(Anatomical coordinate system) が適切な用語とし
て使用される。ただし,日本語としては人体座標
系が簡明である。
2. 人体座標系が定義される身体の範囲及び部分を
明らかにするために,要すればかっこ内に名称を
付して報告すること。例えば,人体座標系(手腕),
人体座標系(頭部)など。
3. 人体座標系は対応する身体部分の骨を基準点を
原点として設定され,その部分に固定される。支
持面座標系と異なり,身体の方向及び姿勢の変動
に連動する。この限りにおいて,身体各部は剛体
運動の法則に従って運動する解剖学的部材と見
なされ,合理的なモデル化が可能である。
4. 人体座標系を定義する場合,明確な人体測定学の
方法に従って,骨の部位で特定可能な指標を原点
に選ぶことが不可欠である。
5. 身体の中の自由に動く部分及び変形可能な部分,
例えば,心臓とかでん(臀)部を原点に選ぶと,
振動又は衝撃による身体の運動を計測する際,正
確性,再現性に欠ける結果となる。
6. 人体又はダミーへの振動(衝撃)の入力を人体座
標系か支持面座標系のうち,都合のよいほうで示
してよい。一般には,人体座標系が妥当である。
5.3 生体力学 biodynamics
人体又は人体モデル,その組織,器官,部分及びシステムの
物理的,生物的,機械的(慣性)特性と応答に関する科学。
自己誘起振動を含む外力に対する応答(外力に対する生体力
学),外力と身体自体の機械的な活動の相互作用によって生じ
る内力に対する応答(生体内部の力学)を含む。
備考 生体機械力学 (biomechanics) の用語が同じ意味で
使用されることがある(生体力学は語源的に生体機
械力学の一部であった)。しかし,一般的に生体機
械力学は,実際には,必ずしも動的応答を考慮せず,
主として,静的物理特性(身体内部の組織,器官,
構造の強度,弾性及び運動範囲)の力学を意味する。
5.4 接触面 contact surface
人体若しくはその部分(例えば,手)又はダミーに振動(衝
撃)が伝達されると考えられる表面又は区域。
備考 多くの場合,振動(衝撃)の主要駆動点は,接触面
を囲む区域の中心にあると見なされる。

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番号 用語 定義 対応英語(参考)
5.5 ダミー dummy
人体の測定学上の寸法及び人体各部の運動力学に関連する1
anthropometric dummy
個以上の特性をシミュレートする実験装置又は機械的に実現
可能な人間に類似なモデル。 manikin
備考 ダミーの目的及び性質を表現する様々な呼び方が
ある。例えば,人体ダミー (anthropomorphic dummy)
又は人体マネキンは人体の全体的外観又は外面的
な解剖学上の特徴(必ずしも,人体内部の特徴は含
まない)をシミュレートする。寸法ダミー
(anthropometric dummy) 又は寸法マネキンは,人体
寸法及び取り得る姿勢の範囲を再現する(特定の寸
法及び質量の比率の範囲であるが)ために作られ
る。
動的ダミー (anthropodynamic dummy) 又は動的
マネキンは,精粗様々であるが,人体又は人体の主
要部分の各軸に関する動的特性をシミュレートす
る。
運動ダミー (kinematic dummy) は剛体的運動特
性(例えば,激しい衝撃や空気の動圧で,四肢がか
らざお(殻竿)のように振れる慣性的な動き)をシ
ミュレートする。このとき,人体の形状,解剖学的
外見及び人体内部の動的応答を忠実に再現する必
要はない。
5.6 手腕系 振動又は衝撃の受容器と考えられる人間の上肢。 hand-arm system
5.7 全身振動(衝撃) whole-body vibration
通常,振動している(又は衝撃運動を伝える)支持面から身
略語 : WBV (shock)
体の接触部分[例えば,でん(臀)部,足の裏又は背中]を
通じて,身体全体に伝達される振動(衝撃)。 略語 : WBV
5.8 局所振動(衝撃) 人体の特定部分に負荷又は伝達される振動(衝撃)。 segmental vibration
(shock)
これらは,通常,手腕系振動及び頭部振動のように表し,全
身へ入力される振動とは区別する。 次の用語は使用しない。
regional vibration
local vibration
topical vibration
5.9 手腕系振動(衝撃) hand-transmitted vibration
一般に,手のひら又は工具,器具を握る指を通じて,手腕系
略語 : HAV (shock)
に直接負荷されるか又は伝達される機械的な振動(衝撃)。
略語 : HTV
備考 日本語略語として一般的に使用されるHAVを規定
した。 hand-arm vibration
略語 : HAV

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6. 振動及び衝撃の人体応答に関する用語
番号 用語 定義 対応英語(参考)
6.1 快適性 (生体力学用語) 振動又は繰返し衝撃を含む環境において, comfort
不快さを感じないか,機械的な刺激による支障を感じない主
観的な状態。
備考 快適性は著しく煩わしい物理的障害の要素がない
ことを意味する。それは,このような環境で人体に
影響するすべての物理的要素の複合と同時に,それ
ら個々の要素に対する感受性,期待度などの心理的
要素に左右される。(これらの理由のために,例え
ば,リムジンの乗客の多数によって不快であると判
断される同等レベルの振動が,バスの乗客にとって
快適であって,許容できることがあり得る。)
6.2 等振動感覚曲線 振動数の関数として表された等しい感覚量のグラフ。 equal vibration sensation
contour
6.3 順応 habituation
(生体力学用語) 外乱の継続又は繰り返しによって生じる運
慣れ 動若しくは衝撃に対する人間の心理的並びに生理的な反応の
次の用語は使用しない。
軽減若しくは抑制(例えば,乗り物酔いの場合,順応によっ
て発生が減少することがある。) acclimatization
adaptation
備考 船酔いに対する順応は,俗に“getting ones sea legs
(船乗りの足を快復する)”ということがある。
6.4 乗り物酔い motion sickness
実際の又は視覚などで感知される受動的な低周波の運動によ
kinetosis
って,おうと(嘔吐),吐き気,不快(通常,自律神経系のア
ンバランスによる各種の病的兆候が先行する。)が引き起こさ
れた状態。 次の用語は使用しない。
motion sickness
備考1. これらの酔いの症状は,動揺病,加速度病などと
呼ばれている。酔いは不快ではあるが,病気ではsyndrome
ないので一般の病気との混同を避ける必要があ
る。
乗り物で酔うのが最も一般的であるので,“乗
り物酔い”と呼ぶのが適当である。
2. 英語では,環境の背景に従って,sea sickness, air
sickness, car sicknessなど,いろいろな名前で呼ば
れている。
最近では無重力状態の宇宙船内で飛行士が経
験するおうと(嘔吐),吐き気の症状がspace
(motion) icknessと呼ばれている。しかし,これ
が地球上の乗り物酔いと生理学的に同一である
かについては,議論の余地がある。
6.5 乗り物酔い発生率 motion sickness incidence
特定の期間又は特定の条件での振動刺激で,乗り物酔い[通
略語 : MSI 略語 : MSI
常,明らかなおうと(嘔吐)で定義される]を起こす人数の
割合(通常,百分率で示す)。
6.6 乗り心地 ride quality
乗り物で移動するとき,振動環境及びこれに関連するすべて
の要素に対する主観的経験が乗客若しくは運転者によって
適・不適が評価される程度。
6.7 ソパイト症候群 振動若しくは低い振動数の動揺的振動(例えば,船体の運動) sopite syndrome
又は旅行の一般的ストレスからくる異常な眠気,気だるさ又
は注意力が散漫になる症状。
6.8 振動(衝撃)許容限 vibration [shock (impact) ]
個人又は特定のグループが平均的に許容できる機械的な振動
界 (衝撃)の最大の激しさ。 tolerance

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番号 用語 定義 対応英語(参考)
6.9 白指 vibration white finger
手持ち振動工具,振動機器を扱う特定の職業人に起こる指の
略語 : VWF 略語 : VWF
皮膚の血行障害。通常,その刺激が存在する限り続くもので
vibration-induced white
あり,おそらく,その期間中に症状は進行する。また,特有
finger
の症状がしばらくの潜在期間をおいて,1本又は数本の指に発
Raynauds phenomenon of
生する傾向がある。発生の分布は,一般に最高の振動暴露の
occupational origin
傾向と一致し,暴露量が大きいほど,多くの指が被害を受け
る。典型的な症状として,境界がはっきりした局部的な白色 (医学分野)
化が起こり,手や全身が寒気にさらされると指の皮膚の部分
的麻ひ(痺)が生じる。 次の用語は使用しない。
traumatic vasospastic
備考 この障害は医学の分野では,職業的レイノー症とし
disease
て知られている。この障害に対して,更に具象的な
多くの呼び名が,手持ち工具を日常的に使用する作
業者の間で広く使われている(例えば,dead hand,
wax finger)
6.10 手腕振動障害 hand-arm vibration
手持ち振動工具を使用するある種の作業者に発生する症候群
で,次のものを含む。 syndrome
a) 指の皮膚の血行障害(白指,レイノー症) 略語 : HAVS
b) 手,前はく(膊)部の神経系統の障害[痛み,感覚異常,
知覚いき(閾)値の上昇]
c) 運動器官の障害[手及び前はく(膊)]
備考 手腕振動障害の診断の歴史は手持ち工具を使用す
る作業者の1本又は数本の指に生じた白色化(寒気
にさらされた場合に生じることが多い)に対して始
まった。

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7. その他の用語
番号 用語 定義 対応英語(参考)
7.1 疲労/能力減退 fatigue/decreased
(生体力学用語) 機械的振動又は衝撃に起因する疲労及び/
又は人間の活動能力若しくは作業能力(熟練度)の低下。proficiency
備考1. この用語は,作業性に関する心理学の専門家には
一般的に認められていないか,受け入れられてい
ない概念であるが,国際規格及び関連文献に使わ
れているので,暫定的に残した。この用語の中の
“能力 (proficiency)”とは,本来は,必ずしも手
作業の能率(振動又は衝撃を受けたとき低下する
であろう)ではなく,訓練によって習得された技
能及び専門的技術(これは,経験によるものであ
るから,一時的な不利な環境下での行動とは無関
係なものである。)を意味する。
2. この用語は多くの科学的文献及び生体力学に関
する幾つかの規格の英語版においても,“疲労−
能力減退”と表示され,ことさらに不正確な表現
をされている(この表示法は賛成できない)。ハ
イフンでつないだ表示の場合,すべての作業行為
が“疲労”(振動又は衝撃の持続がもたらす生理
的な不快な反応)で損なわれるという誤解を生ず
る。事実,人間の活動能力及び作業行為の多くは,
連続暴露による生理的な疲労の発生と関係なく,
振動又は衝撃に起因する機械的な作用で直ちに
能力低下が始まる。
7.2 把持力 grip force
振動を発生する手持ち工具若しくは加工品又はその他の機器
gripping force
の振動面(例えば,車両のハンドル)に対する作業者の握り
の強さ。 次の用語は使用しない。
gripping pressure
7.3 プッシングフォー pushing force
振動(衝撃)を発生する機器又は機材の方向を変えたり又は
ス 移動させるために,作業者の手によって加えられる力。
7.4 手腕系機械インピ hand-arm mechanical
手腕系の振動の負荷点(通常,駆動点)における入力の大き
ーダンス さと振動速度との複素比。 impedance
手腕系インピーダ hand-arm impedance
備考 この用語は,通常,調和振動において,振動数の関
ンス 数としての手腕系駆動点機械インピーダンスを意
味する。手腕系伝達インピーダンス (hand-arm
system transfer impedance) とは明確に区別する。

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JIS Z 8131:2000の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 5805:1997(MOD)

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