JIS Z 8520:2022 人間工学―人とシステムとのインタラクション―インタラクションの原則 | ページ 2

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システム,製品又はサービスの利用前,利用中及び利用後に生じるユーザの知覚及び反応
注釈1 ユーザの知覚及び反応は,ユーザの感情,信念,し(嗜)好,知覚,身体的及び心理的反応,
行動並びに達成感を含む。
注釈2 ユーザエクスペリエンスは,ブランドイメージ,表現,機能,性能,支援機能及びインタラク
ションの影響を受ける。また,ユーザの事前の経験,態度,技能及び個性によって生じる内的
及び身体的な状態,利用状況などの要因の影響を受ける。
注釈3 “ユーザエクスペリエンス”という用語は,ユーザエクスペリエンス専門家,ユーザエクスペ
リエンスデザイン,ユーザエクスペリエンス手法,ユーザエクスペリエンス評価,ユーザエク
スペリエンス調査,ユーザエクスペリエンス部門といった,能力又はプロセスを表すこともあ
る。
注釈4 人間中心設計では,インタラクティブシステムの設計に関連するユーザエクスペリエンスだけ
を管理する。
(出典 : JIS Z 8521:2020の3.2.3)
3.10
ユーザインタフェース(user interface)
ユーザがインタラクティブシステムで特定のタスクを達成するための情報及び制御を提供する,インタ
ラクティブシステムの全ての部品(メニュー,タスクバー,アイコンなど)からなる集合
3.11
ユーザシステムインタラクション(user-system interaction)
ユーザインタフェースを介して意図したタスクを達成するためのユーザとインタラクティブシステムの
間での情報交換
注釈1 ユーザシステムインタラクションは,意図したユーザだけに焦点を当て,インタラクティブシ
ステムによって影響を受けるほかの人には焦点を当てないので,人及びシステムとのインタラ
クションの一部である。
注釈2 対応国際規格では二つの用語が定義されているが,JISでは一つにした。
(出典 : ISO/IEC TR 25060:2010の2.22を修正。注釈1及び注釈2を追加)

4 インタラクションの原則

4.1 概要

  インタラクティブシステムの設計及び評価において重要なインタラクションの7原則は,次のとおりで
ある。
− ユーザが行うタスクへの適合性 (タスクを実行するための技術よりも)タスクの特性に基づいて操
作及びユーザとシステムとのインタラクションを設計することによって,ユーザが行うタスクの完遂
を支援すること
− インタラクティブシステムの自己記述性 インタラクティブシステムの能力及び利用方法をユーザ
が理解しやすいように,ユーザの状況に応じて,インタラクティブシステムが適切な情報を提供する
こと
− ユーザが抱く期待への一致 インタラクティブシステムの動作を利用状況及びその状況において一
般に受け入れられている慣習に基づいたものにすることで,その動作を予測可能にすること
− ユーザによる学習性 ユーザがインタラクティブシステムの能力及び操作方法を見出すことを支援

――――― [JIS Z 8520 pdf 6] ―――――

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し,見出したことをユーザが詳しく調べられるようにし,ユーザによる学習の必要性を最小限に抑え
るとともに,学習が必要なときに支援すること
− ユーザによる制御可能性 ユーザインタフェース及びインタラクションの速さ及び操作手順をユー
ザが常に制御可能で,システムとのインタラクションをユーザが個別化が可能なようにすること
− ユースエラーへの耐性 ユーザによるエラーの回避,特定のエラーに対する許容,エラーからの復帰
を支援可能なようにすること
− ユーザエンゲージメント ユーザとシステムとの持続的なインタラクションの継続を促し,動機付け
るような機能及び情報を提供すること
注記 上記の記載順は,優先度を示すものではない。
それぞれの原則について,この規格は一般的な推奨事項を複数示しているため,推奨事項を一つしか適
用しない場合,原則を完全に満たしたことにはならない。
各原則を構成する推奨事項の主なカテゴリを表1に示す。これらの推奨事項は,特定の利用状況におい
て適切なユーザ要求事項の特定及び仕様化に役立つ(ISO 25065参照)。
表1−インタラクションの原則及び推奨事項の主なカテゴリ
インタラクションの原則 推奨事項のカテゴリ
ユーザが行うタスクへの適合性 a) インタラクティブシステムが与えられたタスクに適合して
いることを確認する。
b) タスクを完遂する労力を最適化する。
c) タスクの完遂を容易にする既定値を提供する。
インタラクティブシステムの自己記述性 a) 情報の存在及び明確さを高める。
b) 処理状況を明確に提示する。
ユーザが抱く期待への一致 a) システムの挙動及び反応を適切にする。
b) システムの内部及び外部における一貫性を保つ。
c) 利用状況の変化に対応する。
ユーザによる学習性 a) ユーザがインタラクティブシステムの能力及び操作方法を
見出しやすくする。
b) ユーザが見出したインタラクティブシステムの能力及び操
作方法を詳しく調べられるようにする。
c) ユーザがインタラクティブシステムに関する情報を引き出
しやすくする。
ユーザによる制御可能性 a) ユーザが中断可能なようにする。
b) 制御の柔軟性を提供する。
c) 個別化が可能なようにする。
ユースエラーへの耐性 a) ユースエラーを回避する。
b) ユースエラーを許容する。
c) ユースエラーからの復帰を促す。
ユーザエンゲージメント a) システムを使うようにユーザを動機付ける。
b) ユーザのシステムへの信頼を高める。
c) ユーザのシステムへの関与を強める。

4.2 インタラクションの原則及び一般的な設計推奨事項の対象範囲

  この規格に記載されている原則及び一般的な設計推奨事項は一般的なものであり,いかなる特定のシス
テム又は利用状況にも結び付けられていない。一般的な設計推奨事項は,最も関連すると思われる原則の
下でまとめられている。しかし,原則には重複する部分があるため,設計推奨事項は複数の原則に関連す

――――― [JIS Z 8520 pdf 7] ―――――

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ることがある。設計推奨事項を分類することよりも,それらの意味を理解して利用することの方が重要で
あるため,それぞれの推奨事項は一つの原則の下でだけ提示されている。
この規格に示す推奨事項は,現行の知識から得られた重要な指針を要約しているが,技術及び人間工学
が発展するにつれて,追加の指針が重要になる可能性がある。
この規格は,ほとんどの利用状況におけるほぼ全てのインタラクティブシステムに適用可能である。シ
ステム及び利用状況に対するこの規格の適用の可否を決定するのは,この規格を適用する個人である。こ
の規格内の全ての推奨事項が全ての利用状況に適用可能なわけではない。

4.3 人間中心設計におけるインタラクションの原則の使用

  この規格は,ユーザとインタラクティブシステムとの間のインタラクションのための製品に関連する原
則を規程し,JIS Z 8530は,インタラクティブシステムのための人間中心設計の活動に関する原則及び推
奨事項を規程している。

4.4 インタラクションの原則のユーザビリティ向上への貢献

  ユーザビリティとは,特定のユーザが特定の利用状況において,システム,製品又はサービスを利用す
る際に,効果,効率及び満足を伴って特定の目標を達成する度合いである(JIS Z 8521を参照)。これは,
ユーザビリティが複雑な要因の集合から生じるものであり,ユーザ,目標及びタスク並びに利用状況の違
いによって異なる可能性があることを意味する。
ユーザビリティは,次に示す効果,効率及び満足の三つの構成要素から成り立っており,各構成要素は
それぞれより具体的な下位の構成要素から成り立っている。
− 効果 : ユーザが特定の目標を達成する際の正確性及び完全性
− 効率 : 達成された結果に関連して費やした資源
− 満足 : システム,製品又はサービスの利用に起因するユーザのニーズ及び期待が満たされている程度
に関するユーザの身体的,認知的及び感情的な受け止め方
インタラクションの原則及び一般的な設計推奨事項に基づいて設計されたユーザシステムインタラクシ
ョンは,三つの構成要素に影響を及ぼすことがある。幾つかの原則及び幾つかの一般的な設計推奨事項は,
ほかのものよりも一つの構成要素に焦点を合わせているように見えるが,幾つかの原則及び推奨事項は,
三つの構成要素全てに影響を及ぼす。
注記 ユーザが行うタスクへの適合性は,“タスクを完了させる”という効果,及び“不要なステップ及
び不要な情報”を避ける効率の両方に焦点を当てているが,ユーザエンゲージメントは主に“満
足”に焦点を当てている。

4.5 インタラクションの原則間の関係

  インタラクションの原則は,厳密には独立しておらず,意味的に重なっている。ユーザビリティの問題
又は一般的な設計推奨事項は,一つ以上のインタラクションの原則に関連している。
注記1 ユーザが予期しない位置に情報が配置されているためにユーザが一部の情報を見つけられない
場合,インタラクティブシステムはユーザが抱く期待に一致しないために,ユーザビリティの
問題が発生する。ユーザの視点からの情報が存在しないために必要な情報が得られない場合は,
インタラクティブシステムの自己記述性の問題として顕在化する。
例1 プレゼンテーションを作成している間,ユーザはアンドゥ(元に戻す)機能を繰り返し使用して,

――――― [JIS Z 8520 pdf 8] ―――――

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様々なスタイルの外観を探る。この場合,アンドゥ機能は,ユーザによる制御可能性を達成する
ための道具として使用されている。しかし,ユーザがエラーを訂正するためにアンドゥ機能を使
用するならば,ユースエラーへの耐性を維持するためにアンドゥ機能が使用されたことになる。
一連の原則及び一般的な設計推奨事項は,システムのユーザビリティを最適化することを目的としてい
るが,制約によって,ユーザビリティを最適化するために原則間で“トレードオフ”を考慮する必要が生
じる場合がある。それぞれの原則の適用可能性及び優先度は,選択される特定の適用分野,ユーザグルー
プ及びインタラクション技法によって変化する。
注記2 適用分野の例は,エンターテイメントシステム用の作業装置から安全を最重視すべきシステム
まで,様々である。
例2 スマートウォッチの限られた表示スペースにインタラクションの原則を適用する場合は,トレー
ドオフが生じる。ディスプレイ空間は,インタラクティブシステムの自己記述性に必要な情報を
提供するための表示スペースが十分ではないため,重要な情報だけを提供して,ユーザが抱く期
待への一致に応えることを優先している。
分析,設計及び評価においては,それぞれの原則を考慮する必要がある。しかし,利用状況及び設計上
の制約に応じて,原則の相対的な重要性は変わる。実際には,インタラクティブシステムの設計において,
調整が行われている。

4.6 この規格を適用するための枠組み

  この規格は,アプリケーション領域及び特定の技術にわたって適用する,ユーザとシステムとの間のイ
ンタラクションのためのインタラクションの原則及び一般的な設計推奨事項を提供している。
この規格において一般的な設計推奨事項を適用する際の助けとなるチェックリストを,附属書Aに示
す。
ISO 9241-112は,ICTで一般的に使用される三つの主要なモダリティ(視覚,聴覚及び触覚)にわたっ
て適用される情報の提示のための原則及び一般推奨事項を規程している。これらの原則及び推奨事項は,
また,様々なアプリケーション分野及び技術にも適用される。インタラクティブシステムの自己記述性及
びユーザが抱く期待への一致の原則は,情報の提示に関連する。自己記述的ではない情報は,ユーザに誤
解を与える可能性がある。
ほかのJIS及びISO規格では,特定のテーマに焦点を当てた推奨事項及び要求事項が規定されている。
− 視覚的情報の提示特有の要求事項及び推奨事項は,ISO 9241-125で規定されている。
− インタラクション技法特有の要求事項及び推奨事項は,ISO 9241-143などの規格で規定されている。
− 適用領域特有の要求事項及び推奨事項は,ISO 9241-154などの規格で規定されている。
− アクセシビリティ特有の要求事項及び推奨事項は,JIS X 8341-6などの規格で規定されている。
人とシステムとのインタラクションのためのJIS及びISO規格に含まれる様々なレベルの指針を図1に
示す。人とシステムとのインタラクションに関連するJIS及びISO規格には,次のレベルの指針が含まれ
ている。
− 原則
− 一般的な設計推奨事項
− テーマに特化した要求事項及び推奨事項

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これらは,慣習による“標準的な設計解”を規定していない(例えば,“フォーカスされたウィンドウの
タイトルバーは青色”,“OKボタンは必ずCANCELボタンの左側に配置されている”)。こうした“標準的
な慣習”は,業界のスタイルガイドとして公開され,資料化されている。一方,人とシステムとのインタ
ラクションに関するISO規格で示されている指針は,インタラクティブシステムのユーザインタフェース
について,標準的な慣習を規定又は評価するときに適用されることが意図されている。
(図1の代替テキストとして,次を掲載する。)
注記 代替テキストとは,画像をテキストによって説明したもの。
図1は,ユーザシステムインタラクションに関する指針の主な情報源の関係を示す。図は国際規格の指
針に焦点を当てているが,ISO規格以外の標準化された規約も含んでいる。JIS Z 8521は,ユーザビリテ
ィの概念,その構成要素(効果,効率,及び満足),及び利用状況の概念を紹介している。ISO/IEC 29138-
1は,ユーザのアクセシビリティに関するニーズの範囲を特定している。二つの規格[インタラクション
の原則に関するこの規格(JIS Z 8520),及び情報提示の原則に関する規格(ISO 9241-112)]は,ユーザビ
リティを達成するための高いレベルの指針を規程している。この規格のインタラクションの原則には,ユ
ーザが行うタスクへの適合性,インタラクティブシステムの自己記述性,ユーザが抱く期待への一致,ユ
ーザによる学習性,ユーザによる制御可能性,ユースエラーへの耐性,及びユーザエンゲージメントが含
まれる。情報の提示のためのISO 9241-112の原則には,“気づきやすくする”,“注意を逸らさないように
する”,“区別しやすくする”,“解釈しやすくする”,“簡潔にする”,及び“内部一貫性及び外部一貫性を保
つ”が含まれる。多くのほかの国際規格(ISO 9241規格群内及びほかの両方)は,人とシステムとのイン
タラクション,情報の提示,及びアクセシビリティのための特定の指針を規程している。特定の指針には,
ソフトウェア規格JIS Z 8523及びJIS Z 8524並びにISO 9241-100規格群の規格,ISO 9241-300及びISO
9241-400規格群のハードウェア規格,ISO 9241-500規格群の環境規格,ISO 9241-900規格群の触覚関連規
格,並びにISO 9241シリーズ以外の規格(IEC 62366-1の医療機器のユーザビリティ工学など)がある。
標準化された規約(ISO規格の範囲外)の例には,マイクロソフト ウィンドウズユーザエクスペリエンス
指針及びiOSヒューマンインタフェース指針が含まれる。
(代替テキストの終了)

――――― [JIS Z 8520 pdf 10] ―――――

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JIS Z 8520:2022の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 9241-110:2020(MOD)

JIS Z 8520:2022の国際規格 ICS 分類一覧