JIS A 1967:2015 室内空気中の揮発性有機化合物(VOC)の吸着捕集・加熱脱離・キャピラリーガスクロマトグラフィーによるサンプリング及び分析―パッシブサンプリング | ページ 2

                                                                                              3
A 1967 : 2015

5 試薬・材料

  分析には,高純度の分析用試薬だけを用いる。検量線用混合溶液は,1週間ごとに調製することが望ま
しい。また,アルコールとカルボン酸間との縮合反応などの劣化が顕著に示される場合は,更に間隔を短
くして調製する。

5.1 揮発性有機化合物(VOC)

  VOCは,サンプラへの標準液体添加(5.75.8)又は標準空気添加(5.45.6)に使用する検量線用試薬
として必要である。

5.2 希釈溶媒

  標準液体添加(5.7)に使用する検量線用混合溶液の調製のために希釈溶媒が必要である。クロマトグラ
フ用品質のものとする。分析対象成分のピークと重なる成分を含まないものとする。
注記 通常,メタノールが使用される。化学反応又はクロマトグラフ的に重なる可能性が特になけれ
ば,代わりに他の溶媒が使用できる。

5.3 吸着剤

  吸着剤は,粒径0.180.25 mm(6080メッシュ)のもので,サンプラに充する前に不活性ガス流の
もとで,吸着剤の最高使用温度より少なくとも25 ℃程度低い温度で一晩加熱して,前処理する。これら
を清浄な空気のもとで室温まで冷却した後サンプラに充し,保管するのがよい。可能であれば,分析時
の脱離温度は前処理条件よりも低く保つことが望ましい。あらかじめ充された市販のサンプラの入手が
可能である場合は,前処理だけが必要である。
注記 吸着剤選択の種類を附属書Cに記載する。吸着剤は,附属書に記載する種類以外の同等の吸着
剤を使用してもよい。吸着剤の前処理及び分析時の脱離条件を,附属書Dに記載する。

5.4 検量線用標準

  検量線用標準は,実際のサンプリング状態に合わせるため,必要量の対象成分が含まれた標準空気を添
加することによって調製することが望ましい(5.5及び5.6参照)。
この調製方法が使えない場合,次のいずれかの方法によって精度を確認した液体添加法(5.75.8参照)
を用いて,検量線用標準を調製してもよい。
a) 質量及び/又は体積の一次標準に完全にトレーサブルな添加量を与える手順が確立されている方法
b) 標準物質によって確認されている方法
c) 標準空気を使用して作成された標準によって確認されている方法
d) 標準測定方法での結果によって確認されている方法

5.5 標準空気

  標準空気は,既知濃度の対象成分から独自の方法によって調製する。ISO 6141及びISO 6145規格群に
よる方法が適切である。この方法で,生成濃度が一次標準(質量及び/又は体積)へ十分なトレーサビリ
ティを確立できない場合,又は発生システムの化学的不活性が保証できない場合,独自の方法で濃度を確
認しなければならない。
注記 標準空気については,参考文献[59][64]を参照。

5.6 標準空気添加サンプラ

  正確に測定した体積の標準空気を,例えば,ポンプを用いてサンプラ内を通過させることによって,標
準添加サンプラを調製する。サンプリングする空気の体積は,吸着剤の破過容量を超えてはならない。添
加後,サンプラを外して密栓する。試料ロットごとに新しい標準を調製する。
例えば,対象成分が10 mg/m3及び100 μg/m3となるよう,標準空気を調製する。作業場の空気の測定で

――――― [JIS A 1967 pdf 6] ―――――

4
A 1967 : 2015
は,サンプラに10 mg/m3の空気を100 mL,200 mL,400 mL,1 L,2 L又は4 L添加する。大気又は室内
空気の測定では,サンプラに100 μg/m3の空気を100 mL,200 mL,400 mL,1 L,2 L,4 L又は10 L添加
する。

5.7 液体添加用溶液の調製

5.7.1  各液体成分約10 mg/mLを含む溶液
100 mLの全量フラスコに分析対象成分約1 gを正確にはかりとる。最も揮発性の少ない物質から計量を
始める。希釈溶媒(5.2)で100 mLにし,栓をして振り混ぜる。
5.7.2 各液体成分約1 mg/mLを含む溶液
100 mLの全量フラスコに希釈溶媒50 mLを入れる。5.7.1の溶液10 mLを加える。希釈溶媒で100 mL
にし,栓をして振り混ぜる。
5.7.3 各液体成分約100 μg/mLを含む溶液
100 mLの全量フラスコに分析対象成分約10 mgを正確にはかりとる。最も揮発性の少ない物質から計量
を始める。希釈溶媒(5.2)で100 mLにし,栓をして振り混ぜる。
5.7.4 各液体成分約10 μg/mLを含む溶液
100 mLの全量フラスコに希釈溶媒50 mLを入れる。5.7.3の溶液10 mLを加える。希釈溶媒(5.2)で100
mLにし,栓をして振り混ぜる。
5.7.5 気体成分約1 mg/mLを含む溶液
例えば,酸化エチレンのようなガスについては,高濃度の検量線用溶液を,次の方法で調製してもよい。
純ガスの高圧ガス容器から小形の樹脂製ガス袋にガスを充し,大気圧下のガスを得る。1 mLのガスタイ
トシリンジに純ガス1 mLを満たし,シリンジの弁を閉じる。2 mLのセプタムバイアルに2 mLの希釈溶
媒を加え,セプタムキャップで栓をする。セプタムキャップを通してシリンジの針の先端を希釈溶媒に挿
入する。弁を開きプランジャーを少し引き,希釈溶媒をシリンジに導入する。ガスが希釈溶媒に溶けるこ
とで,中が負圧となり,シリンジは溶媒で満たされる。溶液をバイアルに戻す。シリンジを溶液で2回洗
浄し,洗液をバイアルに戻す。気体の法則,すなわち,気体の標準状態(温度 : 273.15 ℃,圧力 : 1 013.25
hPa)における1 molの気体は22.4 Lであることを利用して,加えたガスの質量を計算する。
5.7.6 気体成分約10 μg/mLを含む溶液
例えば,酸化エチレンのようなガスについては,低濃度の検量線用溶液を,次の方法で調製してもよい。
高圧ガス容器から小形の樹脂製ガス袋に充し,大気圧下のガスを得る。10 μLのガスタイトシリンジに
純ガス10 μLを満たし,シリンジの弁を閉じる。2 mLのセプタムバイアルに2 mLの希釈溶媒を加え,セ
プタムキャップで栓をする。セプタムキャップを通してシリンジの針の先端を希釈溶媒に挿入する。弁を
開きプランジャーを少し引き,希釈溶媒をシリンジに導入する。ガスが希釈溶媒に溶けることで,中が負
圧となり,シリンジは溶媒で満たされる。溶液をバイアルに戻す。シリンジを溶液で2回洗浄し,洗液を
バイアルに戻す。気体の法則,すなわち,気体の標準状態において1 molの気体は22.4 Lであることを利
用し,加えたガスの質量を計算する。

5.8 標準液体添加サンプラ

  標準液体添加サンプラは,清浄なサンプラに標準溶液を分取,注入して調製する。サンプラを注入装置
(6.7)に取り付け,そこに不活性パージガスを流し,適切な標準溶液14 μLを分取し,セプタムを通し
て注入する。適切な時間が経過後,サンプラを取り外し密栓する。試料の各ロットごとに新しい標準サン
プラを調製する。作業環境については,5.7.3,5.7.4又は5.7.6の溶液の15 μLをサンプラに添加する。
注記 希釈溶媒がメタノールの場合,サンプラから溶媒を除去するパージガスを100 mL/minで5分間

――――― [JIS A 1967 pdf 7] ―――――

                                                                                              5
A 1967 : 2015
流す方法が適切であった。他の希釈溶媒を用いる場合,パージ条件は実験で決定するほうがよ
い。

6 装置

6.1 サンプラ

  サンプラは,使用する加熱脱離装置(6.6)と互換性がなければならない。例えば,ステンレス鋼製サン
プラで,外径6.3 mm,内径5 mm,及び長さ90 mmのものが一般的であるが,これに限るものではない。
これ以外の寸法のサンプラを使用してもよいが,表1及び表2に示す拡散取込み速度は,この寸法のサン
プラに基づいている。ただし,硫黄化合物などの不安定物質については,ガラスコーティング及びガラス
製のサンプラ(通常は,内径4 mm)を用いて行う。
なお,この場合,取込み速度はステンレス製の場合と異なるので注意する。ステンレス製のときは,取
込み速度を別途求める。
このサンプラの一方の端には,例えば,サンプリング端末から約10 mmにリング状の刻みなどのマーク
がある。サンプラには前処理した吸着剤が充されており,極低流量時の拡散侵入による誤差を最小とす
るために,吸着剤充部は加熱ゾーン内にあり,かつ,約14 mmの空隙が各端に設けられている。
表1の拡散取込み速度は,少なくとも14 mmの空隙(吸着剤層とサンプリング端末キャップとの間)の
サンプラによるものである。実際は充済みのサンプラ寸法は異なる(参考文献[2])。
サンプラは,吸着剤の密度にもよるが,2001 000 mgの吸着剤が充される。通常,多孔性ポリマー,
カーボンモレキュラーシーブ又はグラファイトカーボンなどの吸着剤が充される。吸着剤は,サンプラ
の一種でステンレス鋼製金網,非シラン化グラスウールプラグなどを用いて固定されている。

6.2 サンプラエンドキャップ

  サンプラは,例えば,ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シール付金属スクリューキャップなどを用
いて密閉する。

6.3 サンプラサンプリングキャップ

  サンプリングキャップは6.2と同様であるが,ガスの通過が可能な金網をもち,開口部のサイズはサン
プラの断面と同じである。
水分の多いときは,金網の内側にシリコーン膜が組み込まれているサンプリングキャップを用いる。そ
の場合は,拡散取込み速度を別途求める。

6.4 シリンジ

  0.1 μLまで読取りが可能な10 μLの精密液体シリンジ,0.1 μLまで読取りが可能な10 μLの精密ガスタ
イトシリンジ,及び0.01 mLまで読取りが可能な1 mLの精密ガスタイトシリンジを用いる。

6.5 ガスクロマトグラフ

  水素炎イオン化検出器,光イオン化検出器,質量分析計又は他の適切な検出器付きのガスクロマトグラ
フで,最低5 : 1のS/N比でトルエン1 ngの注入を検出できるものが適している。
キャピラリーカラムは,分析対象成分が他の成分から分離できるものを使う。

6.6 加熱脱離装置

  サンプラを2段階で加熱脱離し,脱離した気体を不活性ガスによってガスクロマトグラフに送り込む装
置である。典型的なものは,加熱脱離されるサンプラを保持すると同時に,不活性キャリヤーガスでパー
ジする機能をもつ。脱離温度及び時間は,キャリヤーガス流量と同様,調整可能である。また,自動サン
プルチューブ装,漏れ試験,脱離成分を濃縮する移送管(トランスファーライン)の冷却トラップなど

――――― [JIS A 1967 pdf 8] ―――――

6
A 1967 : 2015
の機能を付加できるものがよい。パージガスに含まれた脱離成分は,加熱したトランスファーラインを通
ってガスクロマトグラフのキャピラリーカラムに送られる。

6.7 標準サンプラ調製のための注入装置

  ガスクロマトグラフの注入口を,標準サンプラの調製に使用してもよい。この場合,そのまま使用する
ことも,また,分離・据え付けての使用も可能である。注入口へのキャリヤーガスラインは維持されてい
ることが望ましい。サンプラを取り付けるため必要であれば,注入装置の後部を改造するのがよい。この
場合,Oリングシールで圧着する方法が便利である。

7 サンプラの前処理

  前処理が必要なサンプラは使用に先立って,分析脱離温度又はこれより僅かに高い温度(附属書D参照)
で処理する。例えば,キャリヤーガスを流速100 mL/minで10分間流す。キャリヤーガスは,サンプリン
グ時と反対方向に流す。
その後,通常の分析パラメータを用いてサンプラを分析して,加熱脱離ブランク値が十分小さいことを
確認し,このブランク値が容認できない場合,この手順を繰り返してサンプラを再処理することが望まし
い。
一旦,試料の分析が済めば,サンプラは他の試料の捕集に直ちに再使用してもよい。ただし,サンプラ
が再使用前に長期間放置されていた場合又は異なる分析対象成分をサンプリングする場合には,加熱脱離
ブランク値の確認をする必要がある。サンプリングを行わない場合又は前処理済みの場合,サンプラは,
適切なPTFEフェラル付きの金属スクリューキャップで密閉し,気密容器に保管するのが望ましい。
注記 妨害ピークが,対象成分を分析した際の面積の10 %以内であれば,サンプラのブランク値は許
容される。

8 サンプリング

  分析対象成分,又は混合物に適したサンプラを選択する。適切な吸着剤についての指針を,表1及び表
2に規定する。また,吸着剤の種類は,附属書Bに記載する。
サンプリング直前に,サンプラの仕様に基づき密閉キャップを外し,サンプラキャップと取り替える。
サンプラキャップが正しく取り付けられ,サンプラ密閉キャップが所定の位置にあることを確認する。
個人暴露量測定サンプリングに使用する場合は,サンプラは呼吸域に取り付けることが望ましい。固定
位置でサンプリングに使用する場合は,適切なサンプリング位置を選択する(室内空気については,JIS A
1960[59]参照)。推奨する空気のサンプリング場所の選定及び悪環境条件からの試料の保護については,附
属書Aに記載する。また,参考文献としてprEN 13528-3[1]がある。
次の三つの主要な要件に注意しなければならない。風速,降雨からの保護及び安全のための保護手段で
ある。主要要件については,次項以降で詳細に説明する。パッシブサンプリングの作用原理は,附属書A
に記載し,参考文献として[1]がある。
サンプラは,面速に関する要件を満たしている条件の下で暴露する。サンプリングキャップ(6.3)付き
のサンプラについては,風速の影響はない。他の装置には,最低風速も含め異なる条件をもつものもある。
注記 この項目の内容は,JIS A 1960[59]と同等である。
風速が非常に大きい場合(12 m/s以上),性能特性が十分把握されていないため,使用者はこれらの影響
の可能性についても注意する必要がある。
サンプリング開始時,終了時に時間,必要に応じ気温及び気圧を記録する。

――――― [JIS A 1967 pdf 9] ―――――

                                                                                              7
A 1967 : 2015
サンプラサンプリングキャップをサンプラ密閉キャップと取り替え,しっかりと確実に密閉する。サン
プラは識別のためラベルを付ける。溶剤を含む塗料及びマーカ又は粘着ラベルを,サンプラのラベルに用
いてはならない。
試料を8時間以内に分析しない場合は,清潔でコーティングされていない密閉した金属又はガラス製の
容器内に保管する。規定条件に換算した濃度を表示したいときは,サンプリング中定期的に気温及び気圧
を記録する(10.1)。
現場ブランク(トラベルブランクと同じである。)は,サンプリングに使用したものと同じサンプラを用
いて,また,実際にサンプリングした期間以外のサンプラと同様の取扱い手順で処理する。これらのサン
プラには,ブランクであることのラベルを付け識別する。

9 手順

9.1 安全上の注意

  この規格は,使用に関する全ての安全性に関して規定しているわけではない。この規格の使用者は,事
前に,適切な健康及び安全性のための手順を確立し,規制条件を決めなければならない。

9.2 脱離及び分析

9.2.1  脱離
サンプラを適合する加熱脱離装置内に設置する。空気をサンプラから不活性ガスによってパージし,吸
着剤及びガスクロマトグラフの固定相の加熱酸化から生じる生成物による妨害を防ぐ。次にサンプラを加
熱し,気化したガスを,キャリヤーガス流によってガスクロマトグラフに導入する。この段階でガスの流
れの方向は,サンプリング時とは逆とする。サンプラのサンプリング側の端,すなわち,マークを付けた
ほうをガスクロマトグラフカラム入口に接続する。最適脱離効率を示すサンプラ内のガス流量は,3050
mL/minである。
初回のエアパージでは,サンプラ内の空気量(23 mL)を完全に置き換えるため,不活性ガスはサン
プラ容積の10倍(2030 mL)が通常必要とされる。しかし,親水性の強い吸着剤を使用する場合は,冷
却トラップに氷が形成されないよう,吸着した空気と水とを除くより多くのパージが必要となる。パージ
中は,サンプラの加熱が最小となるよう注意する。
脱離試料は数mLのガス量となるので,キャピラリーガスクロマトグラフ分析前に濃縮が必要である。
濃縮は小形の二次吸着剤冷却トラップを用いれば可能で,このトラップは低流量(5 mL/min未満)で十分
急速に脱離され,成分幅を最小にし,かつ,キャピラリーに適したピークをつくる。若しくは,空の二次
トラップ又はガラスベッドなどの不活性材料を含むものを,試料の予備濃縮に用いてもよいが,これらの
トラップは−100 ℃以下での冷却を必要とする。また,脱離試料を直接ガスクロマトグラフ(一段階脱離)
へ直接通過させ,そこで再フォーカスしてもよい。一般的には,高相比のカラム(例えば,膜厚5 μm,内
径0.20.32 mm)と,初期温度を室温に設定することが要求される。
二次吸着剤冷却トラップが使用できない場合であって氷点下のキャピラリークライオフォーカスを分析
対象成分の予備濃縮に用いる場合,キャピラリーチューブを詰まらせたり,加熱脱離プロセスを停止させ
る氷の生成を防ぐため,脱離前に,試料サンプラの水を完全に除去するのが望ましい。
注記1 二次冷却トラップが使用できず,試料サンプラの最適脱離流量を3050 mL/minとする場合,
高分解能キャピラリーカラムでの分析のためには,最低30 : 1から50 : 1のスプリット比が
必要となる。このため,一段加熱脱離では検出感度が制約される。
脱離条件は,試料サンプラからの脱離が完全で,かつ,二次冷却トラップ中で試料成分の損失がないよ

――――― [JIS A 1967 pdf 10] ―――――

次のページ PDF 11

JIS A 1967:2015の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 16017-2:2003(MOD)

JIS A 1967:2015の国際規格 ICS 分類一覧

JIS A 1967:2015の関連規格と引用規格一覧