JIS C 2535:2017 単ヨーク形単板試験器による鉄基アモルファス帯の交流磁気特性の測定方法 | ページ 2

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: 励磁電源(通常,コンピュータ制御の任意波形発生器と電力増幅器とからなる。)

Hz : 周波数計
N1 : 一次コイル
N2 : 二次コイル
H : Hコイル
Rn : 無誘導精密抵抗器
D : 測定計測器(通常,プリアンプ,デジタイザ及びデジタル信号演算器からなる。)
U2(t) : 二次コイルの誘起電圧
UH(t) : Hコイルの誘起電圧
U1(t) : 無誘導精密抵抗器Rnの両端電圧
図2−Hコイル法による測定回路
測定計測器を用いて,次の信号を時間関数の波形データとして測定する。
− 二次コイルの誘起電圧 U2(t)
− Hコイルの誘起電圧 UH(t)
− 一次コイルに直列に接続した,無誘導精密抵抗器の両端子間の電圧 U1(t)
一つの励磁周期で測定したU2(t),UH(t)及びU1(t)のデータ組合せには,測定の全ての情報が含まれてい
る。
U2(t)及びUH(t)から,磁界の強さH(t),磁束密度B(t),鉄損Ps及び皮相電力Ssを,計算によって求める
(箇条6参照)。
注記4 U1(t)及びこれから計算で求めた励磁電流I(t)は,演算処理による空隙補償(附属書A参照)
及びデジタル法による波形制御(附属書C参照)に用いる。

4.2 試験片

  試験片は,JIS C 2534に基づき,アモルファス帯から採取する。
注記 アモルファス帯の呼称幅は,142.2 mm,170.2 mm及び213.4 mmと規定されている(JIS C 2534
参照)。
試験片の長さは,ヨークの磁極面間の外側寸法の280 mm以上とする。磁極面の外側に出た試験片の部
分は,測定に大きな影響を及ぼさないが,試験片の出し入れを容易にするのに必要な最小限の長さとする。
試験片は,アモルファス帯から,過剰な切断かえり及び機械的な変形が生じないように切断する。試験
片は,平たん(坦)な長方形とする。
試験片は,測定前に,製造業者の推奨する条件で,鋳造方向に平行な直流磁界中で磁場中焼きなましを
施す。磁場中焼きなましの間,試験片は平たんに保つ。
通常,試験片は,磁場中焼きなましによってもろ(脆)くなるため,磁場中焼きなまし後の試験片の取

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扱いにおいては,試験片の破損又は試験片内部にひず(歪)みを加えないように注意する。

4.3 単板試験器

4.3.1  一般事項
単板試験器は,コイル及びヨークで構成する(図1参照)。
温度変化による試験片の熱膨張収縮によって試験片内部にひずみを加えないように注意する。
4.3.2 ヨーク
ヨークはコの字形状とし,ソフトフェライトで構成する(図1参照)。ヨークは,残留磁束密度,磁気抵
抗及び鉄損ができるだけ低いものとする。
注記1 ヨークの品質が悪い場合,試験片の磁気特性が悪く測定される(附属書B参照)。
ヨークの磁極面の幅は,20 mm±1 mmとする。
ヨークの二つの磁極面は,0.1 mm以内で同一平面となるようにする。ヨークは,試験片内部にひずみが
加わらないように,高い剛性をもつものとする。
ヨークの高さは,80 mm120 mmとする。ヨークの幅は220 mm±1 mmとし,内側寸法は240 mm±1 mm
とする(図3参照)。
単位 mm
図3−ヨークの寸法
注記2 試験結果の比較性能を証明できる場合には,他のヨーク寸法を採用できる。
注記3 ヨークの損失は,上側ヨークと下側ヨークとを組み合わせた状態で,ヨークに巻いた一次コ
イル及び二次コイルを用いて測定できる。これらのコイルの巻数は25ターンで十分である。
ヨークの脚の間に,試験片を載せる絶縁非磁性体の支持台を配置する。支持台は,試験片がヨークの磁
極面と隙間なく接触するように,磁極面と同じ平面の中心に配置する。
注記4 支持台と磁極面との間に段差がある場合,試験片の磁気特性は実際よりも悪く測定される。
4.3.3 コイル
一次コイルは,230 mm以上の長さとする。二次コイルは,一次コイルの内側の中央部に設置し,100 mm
120 mmの長さとする。一次コイル及び二次コイルは,絶縁非磁性体の四角形の巻枠に巻く。巻枠の寸
法は,次による。
− 長さ 235 mm±5 mm
− 内側高さ 3 mm±1 mm
− 外側高さ 12 mm以下

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一次コイルは,全長にわたって連続かつ均一に巻いたコイルとする。例えば,直径1 mmの銅線を1層
又は多層に巻いて,220ターンとする。
二次コイルは,100 mm120 mmの長さにわたって連続かつ均一に巻いた1層のコイルとする。二次コ
イルの巻数は,測定計測器の特性に合わせて設定する。
Hコイルは,二次コイルと同じ長さとし,一次コイルの内側の中央部に設置する。Hコイルは,絶縁非
磁性体の巻板に巻く。巻板の幅は100 mm120 mmとし,厚さは約3 mmとする。
Hコイルは試料支持台に埋め込み,支持台の表面とHコイルの表面との距離は1 mm以下とする。
4.3.4 空隙補償
磁界の強さの波高値を設定して磁束密度の波高値を測定する場合は,二次コイル電圧に及ぼす空隙磁束
の効果を補償する。ただし,アモルファス帯の鉄損測定においては,磁界の強さが弱いため,空隙補償は
必要ない。
空隙補償は,演算処理によって行う(A.4参照)。
4.3.5 無誘導精密抵抗器
無誘導精密抵抗器の抵抗値は,±0.1 %以内の精度とする。磁束密度の波形のひずみを最小限に抑えるた
め,抵抗値は,1 Ω以下とする。
十分な電力容量をもつ四端子の抵抗器を用いる。二つの電流端子は一次コイルに直列に接続し,二つの
電圧端子を測定計測器の信号チャンネルに接続する(図2参照)。
4.3.6 磁気シールド
地磁気及び外部磁場によって試験片が不用意に磁化することを防ぐことができる程度の,簡易な磁気シ
ールドを単板測定器に施すことを推奨する(附属書B参照)。

4.4 励磁電源

  励磁電源は,通常,コンピュータ制御の任意波形発生器及び電力増幅器で構成する。これらの機能を統
合してもつ機器を用いてもよい(図2参照)。
任意波形発生器は,外部プログラムで生成された励磁の波形,振幅及び周期のデータから信号を合成す
る。測定計測器でのエリアシングを防ぐため,任意波形発生器と電力増幅器との間に,ローパスフィルタ
を挿入する。
注記 外部プログラムによる励磁の波形の生成法については,附属書Cを参照。
周波数の精度は,±0.1 %以上とする。
二次コイルに誘起する電圧の波形は,可能な限り正弦波とする。二次電圧の波形率を,1.111の±1 %以
内とするとともに,二次電圧に含まれる高調波成分をできるだけ抑制することが望ましい。例えば,附属
書Cに示すデジタル法を用いるなど,幾つかの方法によって達成できる。
電力増幅器は,内部インピーダンスが低く,かつ,電圧及び周波数の安定性が高い,低ノイズのものを
用いる。測定中,電圧及び周波数は,±0.2 %以上の精度で維持する,周波数及び電圧の帯域が広いバイポ
ーラタイプとする。

4.5 測定計測器

  測定計測器は,通常,校正されたプリアンプ,デジタイザ及びデジタル信号演算器からなる。測定計測
器は,任意波形発生器の読出しクロックと同期したサンプリングクロックに基づき同時動作する,U2(t),
UH(t)及びU1(t)に対応する三つの独立した信号チャンネルをもつものでなければならない(図2参照)。
信号チャンネルは,二次コイルに負荷を加えないように,十分に高い入力インピーダンス(通常は,1 MΩ
及びこれに並列に約100 pF)とする。信号チャンネル間の位相の相違は,最も低い力率における測定にお

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いても十分小さくする。
プリアンプは,入力信号を高い信号対ノイズ比でデジタル化するのに適した電圧に,増幅する。
デジタイザの分解能は,デジタル化による誤差を小さくするため,十分高くする。12ビット又はそれ以
上の分解能を推奨する。サンプリングクロックは,励磁周期当たり512サンプル以上とする。
デジタル信号演算器は,デジタイザで生成された数値データの組合せの信号波形から,箇条6記載の式
によって,磁気特性を算出する。
電力の測定精度は,実際の力率及び波高率において,±0.5 %以上とする。電圧の測定精度は,±0.5 %
以上とする。
注記 デジタル信号演算器は,パーソナルコンピュータ(PC),又は十分な数の高速デジタル乗算器
及び加算器からなるデジタル信号プロセッサ(DSP)を用いてもよい。
デジタル信号演算器には,二次電圧波形を正弦波に制御するためのデジタル帰還信号を作成し,任意波
形発生器に送る機能をもたせてもよい。

5 測定の手順

5.1 測定の原理

  図2に示すように,測定計測器とコイルとを接続する。
二次コイルの誘起電圧U2(t)及びHコイルの誘起電圧UH(t)を,測定計測器を用いて,時間関数の波形デ
ータとして測定する。
U2(t)及びUH(t)から,磁界の強さH(t),磁束密度B(t),鉄損Ps及び皮相電力Ssを計算によって求める。

5.2 測定の準備

  試験片の長さを±0.1 %以上の精度で測定し,試験片の質量を±0.1 %以上の精度で測定する。試験片を
コイル内に挿入してコイルの縦横軸の中央に置く。
試験片の断面積は,式(3)による。
m
A= (3)
l m
ここに, A : 試験片の断面積(m2)
m : 試験片の質量(kg)
l : 試験片の長さ(m)
ρm : 試験片の既定密度(kg/dm3)
試験片は,測定前に,測定時よりも十分高い初期磁場から緩やかに減衰する交流磁界で消磁する。

5.3 励磁電源の調整

  一つの励磁周波数における一組又は複数組の磁束密度の波高値B又は磁界の強さの波高値Hを指定す
る。
鉄損Ps,皮相電力Ss,磁界の強さの実効値H~及び磁界の強さの波高値Hの測定では,励磁電源を調整
して磁束密度の波高値Bを設定する。
磁束密度の波高値Bの測定では,磁界の強さの波高値Hを設定する。
H及びBの値は,それぞれ一つ又は複数の励磁周期について測定したUH(t)又はU2(t)から計算する。
励磁電源は,H又はBが所要値に到達するまで,出力を徐々に増加させる。測定中は,励磁電源の出力
電圧を下げない。
二次コイルの誘起電圧U2(t)の波形を調べ,正弦波であることを確認する。さらに,H(t)とB(t)とで形成

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するヒステリシスループ形状の対称性を確認する。

6 磁気特性の計算法

6.1 磁束密度

  磁束密度B(t)は,式(4)による。
B(t)=−
1 t
U2 (td) t+B0 (4)
N2 A 0
ここに, B(t) : 磁束密度(T)
N2 : 二次コイルの巻数
A : 試験片の断面積(m2)
U2(t) : 二次コイルの誘起電圧(V)
0B : 磁束密度B(t)の励磁周期での平均値がゼロとなるように
設定した定数(T)

6.2 磁界の強さ

  磁界の強さH(t)は,式(5)による。
H(t)=−
1 t (5)
UH (td) t+H 0
0(NH AH ) 0
ここに, H(t) : 磁界の強さ(A/m)
μ0 : 磁気定数[4π×10−7(H/m)]
(NHAH) : Hコイルのエリアターン[巻数NH×実効断面積AH(m2)]
UH(t) : Hコイルの誘起電圧(V)
H :
0 磁界の強さH(t)の励磁周期での平均値がゼロとなるよう
に設定した定数(A/m)
注記 Hコイルのエリアターンの測定については,附属書B参照。

6.3 鉄損

  試験片の鉄損は,磁界の強さH(t)と磁束密度B(t)とで形成するヒステリシスループの面積に相当し,式
(6)による。
T T
f dB(t) f
Ps= H(t) dt= (6)
H(t) U2 (td) t
m t
0
dt m N2 At 0
ここに, Ps : 鉄損(W/kg)
ρm : 試験片の規定密度(kg・m−3)
f : 励磁周波数(Hz)
T : 励磁周期[1/f(s)]
N2 : 二次コイルの巻数
A : 試験片の断面積(m2)
H(t) : 磁界の強さ(A/m)
B(t) : 磁束密度(T)
U2(t) : 二次コイルの誘起電圧(V)

6.4 皮相電力

  皮相電力Ssは,式(7)による。
~
2 πf ~
Ss= H B (7)
m

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JIS C 2535:2017の国際規格 ICS 分類一覧

JIS C 2535:2017の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISC2534:2017
鉄基アモルファス帯