JIS C 5630-30:2020 マイクロマシン及びMEMS―第30部:MEMS圧電薄膜の電気機械的変換特性の測定方法 | ページ 2

4
C 5630-30 : 2020 (IEC 62047-30 : 2017)
号を上部電極と下部電極との間に供給することによってなされる。

5 試験薄膜の測定

5.1 一般

  MEMS圧電薄膜上部表面は,上部電極で覆われており,正圧電定数の測定時は出力電圧の測定に,又は
逆圧電定数の測定時は入力電圧の印加電極として利用される。
ユニモルフはりの基板材料の厚さは,試験中の薄膜の厚さと比べて十分に厚くする必要があり,代表値
としては少なくても試験薄膜の100倍の厚さとし,ユニモルフはりの半分の厚さの位置の応力中立面を,
基板厚さの中間面に近づけるようにしなければならない。応力中立平面の理論的考察をA.5に示す[この
近似にはストーニー(Stoney)の式が使われている。]。
一般的に電極の厚さは,試験薄膜の厚さよりも十分薄くすることが望ましい。
強誘電体薄膜の場合は,強誘電体ドメイン配向方向をそろえて,圧電特性を最大化するためにポーリン
グ(分極)処理が不可避である。

5.2 測定原理

  一般的に圧電薄膜の正圧電定数を,次のように定義する(参考文献[1][3]を参照)。
d31
e31f, E E

(pdf 一覧ページ番号 )

                              s11 s12
正圧電効果による圧電定数ed31,fは,式(2)で算出する。
d 4lC Vout
e 31f, (2)
3whs 1 vs Din
逆圧電効果の圧電定数ec31,fは,式(3)で算出する。
Eshs2 Dout
ec 31f, 2 (3)
3l 1 vs Vin
逆圧電効果は,材料固有の圧電特性に従って入力電圧に強く依存する。したがって,三つの逆圧電定数
のec31,f(Vin,min),ec31,f(Vin,max) 及びec31,f(Vin,0) は,逆圧電効果の測定結果によって定義しなければならない。
ec31,f(Vin,min) は,入力電圧最小時におけるec31,fの値であり,一方ec31,f(Vin,max) は,入力電圧最大時における
ec31,fの値である。ec31,f(Vin,min) を計測するための入力電圧Vinは,ec31,f(Vin,max) を計測するための入力電圧Vin
の5倍未満とすることが望ましい。
ec31,f(Vin,0) は,入力電圧Vin=0におけるec31,fの値である。その値は,ec31,f及びVin間の外挿曲線から得る
ことができる。その外挿曲線の式は,測定者によって決めることができるが,試験報告書に記載すること
が望ましい。
注記1 共振周波数及びQ値は,上部電極と下部電極との間に正弦波電圧を印加した場合の,ユニモ
ルフカンチレバーの変位の周波数応答を計測することによって決定される。
注記2 比誘電率及び誘電損失は,一般的に周波数1 kHzの条件でLCRメータ又はインピーダンスア
ナライザーを利用して測定される。

5.3 正圧電定数の測定手順

  正圧電定数の測定手順は,次による。
a) 周囲温度及び相対湿度を測定する。
b) カンチレバーを構成する試験薄膜ユニモルフはりの片端を固定する。
c) リニアアクチュエータをカンチレバーの先端に取り付けて,そのカンチレバーの先端を三角波で振動

――――― [JIS C 5630-30 pdf 6] ―――――

                                                                                              5
C 5630-30 : 2020 (IEC 62047-30 : 2017)
させる。
d) カンチレバーの先端の変位を測定する。
e) 試験薄膜の出力電圧を測定する。

5.4 逆圧電定数の測定手順

  逆圧電定数の測定手順は,次による。
a) 周囲温度及び相対湿度を測定する。
b) カンチレバーを構成する試験薄膜ユニモルフはりの片端を固定する。
c) カンチレバーを振動させるためにユニポーラの正弦波電圧を試験薄膜に印加する。ポーリング処理を
必要とする場合は,印加する電圧はポーリング処理と同方向にそろえる。
d) 試験薄膜の入力電圧を測定する。
e) カンチレバーの先端の変位を測定する。
f) 入力電圧は3回を超えて掃引する。最終掃引時のデータを用いてec31,fを決定する。

6 試験報告

  試験報告には,少なくとも次の項目を記載しなければならない。
a) 必須記載事項
1) ユニモルフはりの全ての寸法
− 長さ
−幅
− 厚さ
2) カンチレバーの長さ
3) 試験薄膜の仕様
− 構成
− 厚さ
4) 厚さ薄膜の成膜工程
5) 基板材料及びその特性
− 材料
− 厚さ
− 単結晶の場合は結晶方位
− ヤング率
− ポワソン比
6) 試験薄膜の電気的特性
− 容量
− 誘電損失
7) 試験環境
− 温度
− 相対湿度
8) 正圧電定数の試験条件
− 入力先端変位
− リニアアクチュエータに印加される波形

――――― [JIS C 5630-30 pdf 7] ―――――

6
C 5630-30 : 2020 (IEC 62047-30 : 2017)
− リニアアクチュエータに印加される周波数
9) 逆圧電定数の試験条件
− 入力電圧
− 試験薄膜に印加される波形
− 試験薄膜に印加される周波数
10) ポーリング処理条件
− 電圧
− ポーリング方向
− 波形
− 周波数
− ポーリング時間
− ポーリング処理から測定までの時間
11) 試験項目
− 正圧電定数ed31,f
− 入力電圧最小時の逆圧電定数ec31,f(Vin,min)
− 入力電圧最大時の逆圧電定数ec31,f(Vin,max)
b) 選択記載事項
1) ポーリング処理条件(必須項目とは逆方向のポーリング処理)
− 電圧
− ポーリング方向
− 波形
− 周波数
− ポーリング時間
− ポーリング処理から測定までの時間
2) 逆圧電定数の試験条件
− 入力電圧
− 試験圧電薄膜に印加される波形
− 試験圧電薄膜に印加される周波数
3) 試験時間(必須項目とは逆方向のポーリング処理)
− 正圧電定数ed31,f
− 入力電圧最小時の逆圧電定数ec31,f(Vin,min)
− 入力電圧最大時の逆圧電定数ec31,f(Vin,max)
4) 0 Vにおける外挿逆圧電定数
− ec31,f (0)
− 外挿曲線の式
5) カンチレバーの共振仕様
− 共振周波数
− Q値
MEMS圧電薄膜の測定方法の一例を,附属書Aに記載する。

――――― [JIS C 5630-30 pdf 8] ―――――

                                                                                              7
C 5630-30 : 2020 (IEC 62047-30 : 2017)
附属書A
(参考)
MEMS圧電薄膜の測定方法の例
A.1 一般
A.2A.5にMEMS圧電薄膜の測定方法の例を示す。サンプルの準備手順,ポーリング処理条件,圧電
定数算出用の材料特性,測定手順及び測定結果の要約である。
A.2 サンプルの準備手順
次の記載は,サンプルの準備手順を段階的に示している(図1参照)。
a) 高周波マグネトロンスパッタリング装置で結晶方位(100),厚さ625 μmのSi単結晶上にユニモルフは
り(梁)を成膜したPZT圧電薄膜をサンプルとする。
b) i基板上に,最初にチタン接着層付き白金薄膜を成膜する。
c) ZT圧電薄膜の上に上部白金電極を成膜する。
d) ZT圧電薄膜の厚さ,チタン層付き下部白金電極及び上部白金電極の厚さは,それぞれ3 μm,0.2 μm
及び0.05 μmとする。
e) サンプルは,結晶方位 <110> に添ってダイシングソーによって幅約2 mm及び長さ約20 mmのはり
(梁)形状に加工する。
f) クランプによってユニモルフはりの片端を固定する。
g) 金ワイヤーを銀ペーストによって電極に接続する。
A.3 測定手順
A.3.1 正圧電定数の測定方法
次の記載は,正圧電定数の測定手順の例を段階的に示している。
a) 図1に示すように,試験サンプルをクランプで固定して,カンチレバーの先端をリニアアクチュエー
タに固定した状態にする。
b) 電極にボンディングされている金ワイヤーを電圧計,オシロスコープ,FFT又はロックインアンプに
接続する。
c) ポーリング処理が必要であれば,測定の前に実施する。ポーリング処理条件を示した表A.1を用意す
る。
d) カンチレバーの寸法及び圧電定数の算出に必要な値を示した表A.2を用意する。
e) カンチレバーのヤング率及びポアソン比は,結晶方位 <110> のシリコンの参照値を使って算出する。
f) 入力先端変位は,ドップラーレーザ振動計によって測定する。
g) 入力変位は,周波数5 Hzで1 μm23.5 μmの間で変化させる。
h) 表A.3は,先端変位,出力電圧及び算出された正圧電定数ed31,fの対応を示している。
i) 図A.1は,先端変位に対する正圧電定数ed31,fの算出値の関係を示している。
j) この試験の測定例によって導かれる正圧電定数ed31,fの算出値は,表A.3及び図A.1のとおり,−6.4 C/m2
となる。

――――― [JIS C 5630-30 pdf 9] ―――――

8
C 5630-30 : 2020 (IEC 62047-30 : 2017)
表A.1−ポーリング処理条件
入力信号 条件
ピークツーピーク電圧 20 V
波形 負のユニポーラ正弦波電圧
周波数 1 kHz
表A.2−正圧電定数算出用の材料特性
特性の種類 材料特性
圧電薄膜材料 PZT(Zr/Ti=52/48)
基板カンチレバー材料 面方位 (100) のシリコン
長さ方向に沿った結晶方位 <110>
基板カンチレバーのポアソン比 0.064
カンチレバーの長さ 17.45 mm
カンチレバーの幅 2.00 mm
カンチレバーの厚さ 625 μm
薄膜の厚さ 3.00 μm
薄膜の容量 0.056 27 μF
誘電損失 0.020 7
表A.3−出力電圧に対する正圧電定数の算出値
先端変位 出力電圧 正圧電定数ed31,f
(μm) (V) (C/m2)
1.16 6.5 6.46
4.71 26.3 6.41
7.9 44.1 6.40
11.94 66.7 6.41
15.88 88.6 6.40
19.54 109.2 6.41
23.55 131.0 6.37

――――― [JIS C 5630-30 pdf 10] ―――――

次のページ PDF 11

JIS C 5630-30:2020の引用国際規格 ISO 一覧

  • IEC 62047-30:2017(IDT)

JIS C 5630-30:2020の国際規格 ICS 分類一覧