JIS C 6842:2012 光ファイバ偏波モード分散試験方法 | ページ 2

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5 試験状態

  試験状態は,JIS C 60068-1の5.3[測定及び試験のための標準大気条件(標準状態)]に規定する大気条
件の標準範囲(温度1535 ℃,相対湿度2575 %,気圧86106 kPa)とする。ただし,標準大気状態
で試験することが困難な場合は,判定に疑義が生じない場合,標準大気状態以外で試験を行ってもよい。
その場合は,試験状態を記録する。

6 概要

6.1 偏波モード分散

  偏波モード分散(PMD)は,時間領域でパルス幅を広げる。この分散は伝送システムの性能を劣化させ
る。この影響は群速度差及び位相差に関係し,信号の異なる偏光成分の到達時間差δτに相当する。十分に
スペクトル線幅の狭い光源に対しては,その影響は群遅延差(DGD)に相当し,光源の波長での直交する
主偏光状態(PSP)の間での差Δτとなる。広帯域伝送に対しては,遅延は二つに分かれ,時間領域で広が
った出力パルスとなる。この場合,パルス広がりはDGDの平均値に相当する。
長距離伝送では,DGDは,光ファイバ長全体に沿った複屈折の状態に依存するため,距離及び波長に対
してランダムである。光ファイバの時間に依存した温度変化及び機械的な変動にも影響される。このよう
な理由から,長距離の光ファイバのPMD特性を定めるには,期待値<Δτ>,すなわち波長に対する平均DGD
で表すことが有効である。一般に期待値<Δτ>は,δτ又はΔτのパラメータと違い,日々の変化又は光源の
違いによる変化に対して大きな変動は起こらない。加えて<Δτ>は光伝送システム性能の有効な指標となる。
“PMD”という用語は,異なる群速度をもつ二つの偏波モード間のDGDという一般的な意味又は期待値
<Δτ>という規定した意味で用いる。DGD値Δτ又はパルス広がりδτは波長,時間又は温度に対して平均化
することで,それぞれ<Δτ>λ,<Δτ>t及び<Δτ>Tを求めることができる。多くの場合,<Δτ>を求めるこれら
の様々な条件を区別する必要はない。
結合長lcは,二つの偏光状態の間ではっきりとしたモード結合が起こる光ファイバ又はケーブルの長さ
である。光ファイバ長Lが,L<<lcの条件を満たす場合は,モード結合は無視することができ,<Δτ>は光
ファイバ長に比例する。この場合の“短距離”の偏波モード分散係数PMDSは,次のようになる。
PMDS
L
実際のシステムでは,光ファイバはほとんどL>>lcの条件であり,モード結合はランダムである。モー
ド結合がランダムである場合,<Δτ>は光ファイバ長の平方根に比例する。この場合の“長距離”の偏波モ
ード分散係数PMDLは,次のようになる。
PMDL
L

6.2 偏波モード分散試験方法

  この規格は,三つのPMD試験方法を規定する(詳細は,附属書A,附属書B及び附属書C参照)。次
に試験方法を示す。方法によって,複数の測定結果解析方法がある。
− 方法A : 固定アナライザ法(FA)
・極値カウント法(EC)
・フーリエ変換法(FT)
・コサインフーリエ変換法(CFT)

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− 方法B : ストークスパラメータ解析法(SPE)
・ジョーンズ行列解析法(JME)
・ポアンカレ球解析法(PSA)
・偏光状態法(SOP)
− 方法C : 干渉法(INTY)
・慣例的解析法(TINTY)
・一般的解析法(GINTY)
PMDの値は,DGD値Δτと定義し,通常,波長によってランダムに変化するため,次の二つの統計的な
量のうちのいずれかで表す。式(1)は線形な平均値を表し,光ファイバケーブルの特性に用いる。式(2)は二
乗平均平方根(RMS)の値を表し,幾つかの方法によって求めることができる。DGDがランダムなマク
スウェル分布に従っていると推定できるとき,式(3)を用いて,一つの値をもう一方の値に変換することが
できる。
PMDAVG (1)
2/1
2
PMDRMS (2)
/1 2
8 2
/1 2

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注記 式(3)は,DGDの分布がマクスウェル分布である場合にだけ適用する。例えば,光ファイバの
モード結合がランダムである場合である。式(3)の一般的な使用方法は統計的解析法によって検
証できる。光ファイバ中にその他の部分に比べて複屈折が大きくなる箇所がある場合は,マク
スウェル分布とならないことがある。例えば,強い曲げ又は張力がかかった状態で連続的に曲
げ半径が小さくなる配置状態のようなモード結合を減少させる箇所が存在する場合である。こ
れらの場合は,DGD分布は三つの自由度をもった非心カイ二乗分布の平方根に近くなっていく。
このような場合,PMDRMSの値は,式(3)で表すPMDAVGの値に比べて大きくなる。PMDRMSを基
にした方法C及び方法Aのコサインフーリエ解析といった時間領域の解析方法では,PMDAVG
に変換するために式(3)を用いることができる。モード結合が少ない場合には,これらの方法で
得たPMDの値は,方法Bのような周波数領域での測定方法で求めたPMDAVGよりも大きくな
る場合がある。
偏波モード分散係数は,PMD値を光ファイバの距離で規格化した値である。ランダムなモード結合が起
こりDGDがマクスウェル分布に従う通常の伝送用光ファイバに対しては,PMDの値を光ファイバ長の平
方根で除して,偏波モード分散係数は ps km の単位で表す。偏波面保存光ファイバのように,モード結
合が無視できる光ファイバの場合には,PMDの値を光ファイバ長で除して,偏波モード分散係数はps/km
の単位で表す。
全ての方法は,製造時の光ファイバ又は光ファイバケーブルの測定に適している。全ての方法において,
測定品の配置を変えることによって,測定結果が変化する。動いたり振動が加わる敷設した光ファイバケ
ーブルに対しては,方法C又は方法B(ミリ秒単位の測定時間で完了する。)を用いるのが適切である。
全ての方法に対して,一つ以上の偏光状態に制御した光源が必要である。全ての方法に対して,測定波

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長帯域(例えば,1 300 nm又は1 550 nm)でのPMD特性値を得るために,広い波長領域(例えば,50 nm
から200 nmまでの幅)にわたるスペクトル領域をもつ入射光が必要である。各試験方法は,次の点で異
なる。
a) 光源の波長特性
b) 実際に測定する物理的特性
c) 解析方法
方法Aにおいて,PMDは,スペクトル幅の狭い光を利用して,測定波長領域での変化を測定すること
によって求めることができる。光源から発生する光は,一つ以上の直線偏光状態をもつ。それぞれの偏光
状態に対して,固定の検光子を通過する光パワーの波長に対する変化を,検光子がない場合の光パワーと
比較して測定する。測定した結果は,次の三つの方法のうちのいずれかを用いて解析する。
− 曲線のピーク及び谷の数を数え(極値カウント),DGDを算出する[1]。DGDがマクスウェル分布であ
る場合には,DGDの平均値に一致する。この解析法は,周波数領域測定である。
− 測定した結果にフーリエ変換を行う。このフーリエ変換は,方法Cの広帯域伝送によって得られるパ
ルス広がりと等価である。DGDがマクスウェル分布である場合には,フーリエ変換関数の広がり特性
はDGDの平均値に一致する。
− 互いに垂直な二つの検光子の設定によって得た規格化スペクトルの差をコサインフーリエ変換し,二
乗包絡線のRMSを計算することで,PMDRMSの値を得ることができる。この方法は,干渉法で得た相
互相関関数のフリンジパターンの計算と等価である。
方法Bにおいて,PMDは,スペクトル幅の狭い光を利用して,測定波長領域での変化を測定すること
によって求めることができる。光源から発生する光は,一つ以上の直線偏光状態をもつ。各波長に対する
出力光のストークスベクトルを測定する。波長に対するDGDは,これらのストークスベクトルの光角周
波数ω及び入力偏光状態に対する変化から,次に示す式(4)及び式(5)の関係を用いて求める。
ds
s (4)
d

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                      ここに,          s :  規格化出力ストークスベクトル
Ω : PSPの方向をもつ偏波分散ベクトル(PDV)
Δτ : DGD
JME法及びPSA法はいずれも,通常,0°,45°及び90°(ポアンカレ球上において直交する)の三つ
の直線偏光状態の光を各波長で入射させる。
JME法は,各波長において,出力ストークスベクトルをジョーンズ行列に変換[2]し,隣接する波長の適
切な行列の組を求め,計算した固有値に偏角公式を適用することによって,DGDの計算を行う。
PSA法は,隣接する二つの波長のポアンカレ球上の出力ストークスベクトルの回転を推定するために,
規格化出力ストークスベクトルを行列計算し,アークサイン公式の応用を用いてDGDを求める。JME法
及びPSA法は,共通の仮定において数学的に等価である(IEC/TR 61282-9参照)。
SOP法は,規格化した測定ストークスベクトルを用いた式(4)の区分的な評価を基にしている。SOP法は,
出力ストークスベクトルの変化が規則的(モード結合を無視することができる。)な場合,正確な結果を得

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ることができるが,出力ベクトルが急激に又は不規則に変化したときは不正確な結果になる(IEC/TR
61282-9参照)。JME法及びPSA法で用いる三つの入力偏光状態で測定することによって,より正確に測
定できる。
方法Cは,直線偏光状態の広帯域光源を用いる。出力する電磁場の相互相関を,出力光の干渉パターン,
すなわち干渉スペクトルによって決定する。光源の波長スペクトル領域に対するPMD遅延を,干渉スペ
クトルのフリンジパターンの包絡線から決定する。PMD遅延を求めるために,次の二つの解析方法を用い
ることができ(IEC/TR 61282-9参照),その両方でPMDRMSの値を算出できる。
− TINTYは,適切な測定結果を得るための特定の測定条件において,基本設定を用いる。
− GINTYは,測定条件に制限はなく,TINTYと同様な基本設定以外に,異なる設定も用いることがで
きる。
GINTYは,TINTYよりも複雑である。PMDの再現性は,PMD値及び測定波長範囲に依存している[3]。
広い測定波長範囲及び高いPMD値に対して,相対的により良い再現性が達成できる。低PMD値の測定と
比較した場合,高PMD,例えば,0.5 psの測定においては,解析方法の違いは重要ではない。
三つの試験方法に共通する事項を,箇条6から箇条12に示す。また,各試験方法に関する事項は,それ
ぞれ附属書A,附属書B及び附属書Cに規定する。全ての方法に対する数式は,IEC/TR 61282-9による。

6.3 基準試験方法

  基準試験方法は,方法B ストークスパラメータ解析法(JME法及びPSA法だけ)である。

6.4 注意事項

  光ファイバのPMDは,統計的に扱う値であり,PMDQ又はリンク設計値と呼ばれる値は,光ファイバケ
ーブルのサンプル測定及びそれらを連結した線路に対する計算に基づく(PMDの統計的な規定は,JIS C
6870-3による)。光ファイバケーブルのPMDは,ケーブルの構造及び製造工程の影響のため,ケーブル化
していない光ファイバの値から変化する場合があるが,ケーブル化した光ファイバのPMDQの限界値を得
るためには,ケーブル化していない光ファイバのPMDQの限界値が必要である。一般的な慎重論では,ケ
ーブル化していない光ファイバのPMDQは,ケーブル化した光ファイバのPMDQの半分以下とみなしてい
る。特別な構造及び安定なケーブル化工程によって,別の限界値も定めてもよい。
光ファイバ又はケーブル配置は,外部要因によるモード結合が最小になるように設定する。そのような
外部要因として,次の項目を挙げることができる。
a) 過大な張力
b) 次の要因による過大な曲げ
・出荷用ボビン上の光ファイバの重なり
・小さすぎるスプールにケーブルを巻いたときの縮み
・小さすぎる曲げ半径
c) 過大なねじり
光ファイバを変動することによって,全てのモード結合の組合せを起こして,測定の再現性を評価する。
これは,例えば,温度を僅かに変化させたり,配置状態を少し変えたりすることで実現できる。測定にお
ける再現性の基本的な限界に関して,PMDが大きくなるにつれ,又は光源のスペクトル線幅が広がるにつ
れ,繰り返し測定のばらつきが改善する[3]。PMD測定が光ファイバケーブルの統計的特性の評価を兼ねて

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いる場合(JIS C 6870-3参照),この変化特性によって,リンク設計値の測定値が実際の値よりも大きくな
る場合がある。
分散補償器,光増幅器などの他の光部品を含んだシステムに対するPMD計算の指針は,IEC/TR 61282-3
による。光増幅器に対する試験方法は,JIS C 6122-11-1及びIEC 61290-11-2により,また他の設計指針は
IEC/TR 61292-5による。増幅された箇所を含むテストリンクに対する試験方法は,IEC 61280-4-4による。
光部品に対する試験方法は,IEC 61300-3-32による。PMDに対する一般的な情報,試験方法の適用に関連
する数式,及び異なる光源又は検出器の使用に関するサンプリング理論に対する検討は,IEC/TR 61282-9
による。

7 装置

7.1 一般事項

  次に示す装置は,三つの全ての測定方法に共通である。附属書A,附属書B及び附属書Cに,構成図及
び三つの各測定に必要な装置を示す。

7.2 光源及び偏光子

  光源のスペクトル特性に関する詳細な条件は,附属書A,附属書B及び附属書Cによる。光源は,目的
とする波長で十分な強度が必要であり,測定中安定なものとする。入射光源の偏光状態(SOP),偏光度
(DOP),及び偏光子又は偏光コントローラを用いることに関する指針は,IEC/TR 61282-9による。

7.3 入射光学系

  試料を励振するために,光学レンズ系又は光ファイバピグテールを設置する。試料に入射する光パワー
は,試料の入射端面の位置に相対的に影響を受けないことが望ましい。この状態は,入射光が入射端面を
空間的,角度的に十分覆うことで達成される。
突合せ接続を用いる場合は,干渉効果を避けるため,光ファイバピグテールと試料との間に屈折率整合
剤を使用する。入射結合状態は,測定中安定に維持する。

7.4 入射位置決め装置

  試料の入射端を光源に合わせる装置を準備する。例えば,x-y-z微調位置合わせ装置,又はコネクタ,真
空結合,3-ロッド結合などの機械的結合装置である。光ファイバの位置は,測定中安定に維持する。

7.5 クラッドモード除去器

  クラッドモードを除去する装置を用いる。ある条件下では,光ファイバ被覆がこの機能を果たす。

7.6 高次モードフィルタ

  試料のカットオフ波長(JIS C 6825参照)以上の波長領域の高次伝搬モードを取り除くための手段を用
いる。例えば,一般的には,曲げ半径30 mmの1周回のループを光ファイバに与えることで十分である。

7.7 出射位置決め装置

  光ファイバの出射端面を出射光学系に合わせるための適切な手段を用いる。そのための結合方法として,
レンズを用いるか,又は検出器ピグテールに対して機械的コネクタを用いる。
光ファイバを出射光学系から一定の距離に設置するために,側面観察顕微鏡,十字線を備えたカメラな
どの手段を用意する。真空チャックなどの装置によって光ファイバの側面を固定している場合には,軸方
向調整だけで十分である。

7.8 出射光学系

  附属書A,附属書B及び附属書Cによる。

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JIS C 6842:2012の引用国際規格 ISO 一覧

  • IEC 60793-1-1:2008(MOD)
  • IEC 60793-1-48:2007(MOD)

JIS C 6842:2012の国際規格 ICS 分類一覧

JIS C 6842:2012の関連規格と引用規格一覧