JIS C 8904-8:2019 太陽電池デバイス―第8部:太陽電池デバイスの分光感度特性測定方法 | ページ 2

                                                                                              3
C 8904-8 : 2019

4.4 測定対象へのバイアス電圧の印加

  一般的に,太陽電池の分光感度は短絡状態(電圧ゼロバイアス状態)で測定し,セル特性の分析,及び
スペクトルミスマッチの計算に用いる。
特定の電圧における分光感度を測定するためには,バイアス電圧を印加しなければならず,その電圧は,
外部電源で制御しなければならない。バイアス電圧を用いた場合は,報告書に記載する。

5 分光感度測定概要

  太陽電池の分光感度は,その感度波長領域の範囲内で,狭い波長幅の単色光を次々に異なる波長で照射
し,そのときの太陽電池の短絡電流及び単色光の面積当たりの強度を測定するか[式(1)],又は短絡電流
及び単色光強度を測定する[式(2)]ことによって求めることができる。最初の測定方法では,分光感度の
値は照度に対する感度であって,A/W/m2の単位で求める。IEC TS 61836で定義する分光感度の値を求め
るためには,この値を太陽電池の有効面積で除する。一方,2番目の方法による測定で求められる分光感
度値は,A/Wの単位となる。
太陽電池の出力電流を決定するためには,単色光だけではなく,白色バイアスも太陽電池全面積に対し
て均等に照射することが望ましい。太陽電池の全面積に対し,有効に直接照射することは重要である。こ
れは,太陽電池有効面積に対して照射されなかった光が信号として測定されることになるからである。分
光感度の値をJIS C 8904-7に規定するスペクトルミスマッチとして用いる場合,分光感度の測定面積は,
I-V測定と同じであることが望ましい。ここで用いる面積は,通常,太陽電池の全面積である。太陽電池
の全面積でない場合は,開口によって適切に面積を限定する。
太陽電池面積が照射ビームサイズよりも大きい場合,ビームを太陽電池全面積にわたり適切に走査して
測定することが望ましい。白色光及び単色光を同時に走査する場合,常に白色バイアスが単色光ビームよ
り大きなサイズとなることが望ましい。
太陽電池の温度は一定に維持することが望ましい。
各々の波長での太陽電池の電流密度を照射強度で除することによって,式(1)を用いて分光感度を求める
ことができる。
s( )泰 ISC (
/) (/) (1)
ここに, s(λ) : 波長λでの太陽電池の分光感度
ISC(λ) : 波長λで測定された太陽電池の短絡電流値
E(λ) : 波長λでの照射光の単位面積当たりの強度
A : 太陽電池の有効面積
太陽電池の有効面積は,報告書に記載する。
短絡電流ISC(λ) 及び太陽電池への照射光強度P(λ) が測定された場合,分光感度は,式(2)によって算出
できる。
s( ) /) (
ISC ( ) (2)
ここに, ISC(λ) : 波長λで測定された太陽電池の短絡電流
P(λ) : 波長λでの照射光の強度
光強度P(λ) を測定するためには,太陽電池の有効面積の測定が必要となる。また,この面積は報告書に
記載しなければならない。
実際には(箇条7及び箇条9参照),変調された微弱な単色光によって誘起された信号が,白色バイアス
光によって誘起された大きな信号に重畳する。このような場合,得られた測定値は,微分値として扱われ

――――― [JIS C 8904-8 pdf 6] ―――――

4
C 8904-8 : 2019
る必要があり,波長に依存する微分分光感度 (DSR) s~(λ,E) は,特定の白色バイアス光照度強度Eの元で
測定された値である。STC条件での分光感度s(λ)|STCは,太陽電池が完全に直線性をもつ場合にだけ微分分
光感度と一致する。非直線性が無視できる場合には,ある白色バイアス光強度での微分分光感度を用いる
ことができる。例えば,STCにおける値の5 %110 %の短絡電流を生じる白色バイアス光強度レベルの範
囲内で,微分分光感度又はそれから算出されるミスマッチファクタが一定である場合,100 %の白色バイ
アス光強度での微分分光感度を用いることができる。100 %の白色バイアス光強度でない場合,十分な数
の異なる白色バイアス光強度レベルで微分分光感度を測定し分光感度値を算出するか,“s~(λ,E0) s(λ)|STC”
となる特定の白色バイアス光強度レベルE0を検索する。

6 装置

6.1 概要

  分光感度測定装置は,(チョッピング又はチョッピングされていない)連続光,又はパルス単色光源,ビ
ームスプリッタ及びモニタ検知器の組合せ,太陽電池を搭載する試料台,基準検知器,白色バイアス光源
及び電気系から構成される。図1及び図2に太陽電池の微分分光感度測定装置の配置を示す。
注記 図1及び図2に示す光チョッパを用いる場合,チョッパの羽根で反射される白色バイアス光が
試料に入射しないように注意する必要がある。

6.2 単色光源

  単色光は,通常,光源及び分光器(例えば,回折格子によるもの)又はバンドパスを搭載したホイール
を組み合わせて発生させる。300 nm1 200 nmの分光感度測定において,単色光のバンド幅(FWHM)は,
20 nmを超えないことが望ましい。3 000 nmまでの波長範囲では,バンド幅は50 nmを超えないことが望
ましい。
単色光のバンド幅は,測定対象とする太陽電池の分光感度の変化の微細構造に基づいて選択することが
望ましい。通常,結晶シリコン又は薄膜太陽電池には,10 nm15 nmのバンド幅(FWHM)を用いる。
単色光用光源及びその電源による時間的揺らぎは,2 %以下が望ましい。試料表面上での単色光の空間
均一度は,JIS C 8904-9で規定する±2 %が望ましい。測定対象セルと基準セルとの面積及び形状が異なる
場合,空間均一度は特に重要である。この均一度は,不確かさの計算の際に配慮する。安定な光源である
場合,基準及び試料を交互に,同じ場所において測定比較することができ,均一度は,試料と標準の寸法
とが違うときにだけ問題となる。十分大きく均一な照射の場合,基準及び試料を並べて配置して同時に測
定することが可能で,時間的な光源の変動を避けることができる。ビームスプリッタにおいて,同じ均一
度の二つのビームによって測定することも可能である。
注記 これは,JIS C 8904-9のソーラシミュレータの等級Aの定義と同じである。

――――― [JIS C 8904-8 pdf 7] ―――――

                                                                                              5
C 8904-8 : 2019
モニタ検知器
モニタ
チョッパ 増幅器
光源
回折格子
分光器
白色バイアス光源
照射
光学系
単色光 白色バイアス光
ロックイン
増幅器
基準 アンプ
太陽電池セル
ロックイン
アンプ
a) チョッパより前の回折格子分光器
モニタ検知器
モニタ ロックイン
チョッパ 増幅器 アンプ
光源
回折格子
分光器
白色バイアス光源
照射
光学系
単色光 白色バイアス光
ロックイン
増幅器
基準 アンプ
太陽電池セル
ロックイン
アンプ
b) 回折格子分光器より前のチョッパ
図1−連続光源及びバンドパスフィルタを用いた微分分光感度測定装置のブロックダイアグラム

――――― [JIS C 8904-8 pdf 8] ―――――

6
C 8904-8 : 2019
白色バイアス光源
チョッパ
白色バイアス光
太陽電池セル
光源
ロックイン
増幅器
アンプ
単色光
モニタ検知器
モニタ ロックイン ロックイン
増幅器 アンプ アンプ
基準
a) チョッパより前のフィルタ
フィルタホイール
白色バイアス光源
チョッパ
白色バイアス光
太陽電池セル
光源
ロックイン
増幅器
アンプ
単色光
モニタ検知器
モニタ ロックイン ロックイン
増幅器 アンプ アンプ
基準
b) フィルタより前のチョッパ
図2−連続光源及びバンドパスフィルタを用いた微分分光感度測定装置のブロックダイアグラム

6.3 太陽電池ホルダ及び温度制御

  太陽電池ホルダは,太陽電池との良好な伝導度の電気接続を実現し,試料及び基準の温度を一定に制御
することが望ましい。基準及び試料の温度は,測定するか,±1 ℃の正確さで,±0.5 ℃の範囲に制御しな
ければならない。基準及び試料の表面の温度の均一度は,±2 ℃であることが望ましい。基準が,校正さ
れたときの温度から2 ℃以上変化した場合は,校正値を測定温度の値に補正する。
注記 基準セルの校正時と試料測定時との温度の違いは,そのバンドエッジの近くで大きな影響を与
える。

――――― [JIS C 8904-8 pdf 9] ―――――

                                                                                              7
C 8904-8 : 2019

6.4 太陽電池とのコンタクト

  分光感度測定の間にセル電圧を測定可能とするために,4線接続(ケルビン接続。すなわち,電流と電
圧とを分離した接続)を用いる。この4線接続が温度制御に影響を与えてはならない。特に全ての接続が
裏面からとなる場合には,注意が必要である。
注記 測定対象が低いシャント抵抗の場合は,セル電圧の正確な測定が重要となる。

6.5 白色光

  大部分の太陽電池の測定において,安定な強度の白色バイアス光を発生するには,タングステンランプ
又はランプアレイで十分である。白色バイアス光は,試料の全面積を照射することが望ましい。その白色
バイアス光の試料面上での空間的均一度(JIS C 8904-9によって定義されている。)は,10 %以内(等級C)
が望ましい。走査測定に関しては,箇条5に規定する。

6.6 直流測定

  直流測定は,次による。
a) 電圧及び電流の測定精度は,各々開放電圧又は短絡電流の±0.2 %でなければならない。電圧及び電流
は,できるだけ短い別々の独立したリード線で,4線接続によって測定する。測定試料がベアセルの
場合,4線接続は,バスバーに対して接続することが望ましい。
セルへの接続方法は,抵抗損失があると短絡電流条件が変わるため,注意深く確認することが望ま
しい。この効果のために,分光感度の値が影響を受けることがある。
b) 白色バイアス光によって発生する短絡電流は,ゼロ電圧での測定が望ましい。電圧電流変換回路(ト
ランスインピーダンス増幅回路)が一般的によく用いられる。また,外部のシャント抵抗でその電圧
降下を補う可変バイアス電源と一緒に用いることも可能である。その電圧降下が,VOCの3 %以内であ
る場合は,可変バイアス電源は省略してもよい。
注記 結晶シリコン太陽電池の場合,このバイアス電圧は,一般的に20 mV以下となる。

6.7 白色バイアス光下での交流測定

  分光感度を白色バイアス光及びチョッピングされた単色光によって測定する場合,この単色光によって
誘起される交流電流は,ロックインアンプ又はそれと同等の方法において,白色バイアス光によって誘起
される直流信号と分離して測定する。その場合,IV変換回路又は外部シャント抵抗は,開放電圧の3 %と
なるようにすることが望ましい。白色バイアス光によって発生する直流信号が,測定系を飽和することの
ないように注意する。チョッピング周波数は,報告書に記載する。
注記 チョッピング周波数は,測定対象太陽電池の応答よりも遅い時間を選択することが望ましい。
さらに,このチョッピング周波数は,電源周波数及びその高調波の周波数を避けることが望ま
しい。
太陽電池に特定の電圧(又は短絡電流条件である0 V)を設定する。

6.8 基準検知器

  単色光の単位面積当たりの照度又は強度は,熱式検知器,校正されたフォトダイオード,校正された太
陽電池などの基準検知器によって測定する。波長範囲が300 nm1 100 nmでは,シリコンフォトダイオー
ドを用いることができる。長波長側では,Geフォトダイオード,InGaAsフォトダイオード,他の低バン
ドギャップ素子又は熱式検知器を用いることができる。広い波長範囲で感度をもつ試料の測定の場合には,
複数の基準検知器を用いる必要がある。
注記1 熱式検知器は応答が遅いため,チョッピングされた単色光の測定には適さない。
注記2 複数の標準検知器を用する場合は,切替波長の前後で段違いが発生することがあるため,十

――――― [JIS C 8904-8 pdf 10] ―――――

次のページ PDF 11

JIS C 8904-8:2019の引用国際規格 ISO 一覧

  • IEC 60904-8:2014(MOD)

JIS C 8904-8:2019の国際規格 ICS 分類一覧

JIS C 8904-8:2019の関連規格と引用規格一覧