JIS H 7152:1996 アモルファス金属単板磁気特性試験方法 | ページ 2

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附属書 測定装置の仕様,組立及び校正法
1. 適用範囲 この附属書は,単板磁気特性試験を行うための測定装置の仕様,組立及び校正法について
規定する。
2. 測定装置仕様
2.1 試験用電源 試験用電源の仕様は,次による。
(1) 電圧及び周波数の安定性がよく,測定中における電圧及び周波数の変動の幅は,指定値の±0.2%以内
とする。
(2) コイルに誘起する電圧を正弦波に保つため,電源の出力インピーダンスは,励磁コイルのインピー
ダンスに比べて十分に小さくする。
(3) コイルに誘起する電圧の波形率は,1.101.12の範囲になるようにする。
(4) 試験用電源は,Bコイルの誘起電圧波形の負帰還制御が行える電子式電源を用いてもよい。
2.2 単板磁気試験器 試験器は,試料に加わる磁界及び磁束が測定範囲にわたって均一になるものとす
る。
(1) ヨーク ヨークは,次による。
なお,附属書図1(a)に横複ヨーク形,(b)に縦複ヨーク形の構造の参考例を示す。
(a) ヨークに生じる鉄損や,ヨーク部に必要な起磁力の小さい材料を用いる。
参考 ヨーク材料としては,方向性けい素鋼帯や鉄-ニッケル合金板などを用いる。
(b) ヨークの断面積は,試料の断面積より十分大きくして,ヨーク部の磁気抵抗を小さくするとともに,
漏れ磁束を少なくして,磁界分布と試料内の磁束分布の均一化が図れる面積とする。
(c) 試料とヨークの接触面は,磁束の通路として十分な面積をもち,試料の全幅がヨークに接する構造
とする。
(d) ヨークの形は,地磁気の影響を受けにくく,消磁の容易な複ヨーク形とする。
(e) 縦複ヨーク形では,上側ヨークによって試料に機械的なひずみが生じないようにするとともに,温
度変化による試料の伸縮に拘束が加わらない構造とする。
(2) 巻枠 励磁コイルとBコイルを巻くために用いる巻枠は,次による。
(a) 絶縁物で作られた中空の長方形断面をもつものとする。
(b) 巻枠の長さは,ヨークの窓寸法よりわずかに短くする。
(c) 巻枠の内側の中空部分には,試料とHコイルが入るため,巻枠の内幅は,試料の最大幅より少し大
きくし,高さは,Hコイルと試料の厚さの和より少し大きくする。
(3) コイル Bコイルは,試料の磁束を検出するために用いるもので,次による。
(a) コイルの長さは,試料中の磁束分布が均一とみなせる範囲とし,Hコイルの長さと同一にする。
(b) 引出線は,電磁誘導を避けるため,ねん架を行う。
(4) 励磁コイル 励磁コイルは,試料に磁界を印加するために用いるもので,次による。
(a) 磁界の分布を一様にするため,励磁コイルの巻線長をヨーク窓寸法にできるだけ近づけ,巻線ピッ
チを均一にする。
(b) 巻数は,適用磁界の強さと試験用電源の最大電流に対応して選定する。

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(c) 励磁コイルは,磁束波形をひずませないため,直流抵抗に比べてリアクタンスが大きいことが望ま
しい。そのためにコイルは,整列・多層巻とする。
(5) コイル Hコイルは,試料表面の長さ方向に加えられる磁界の強さを検出するために用いるもので,
次による。
(a) 長さは,Bコイルと同一とし,幅は,試料幅より少し狭くなるように,長方形の板状巻枠に細い絶
縁皮膜付き銅線を均一に巻き付ける。
(b) 引出線は,電磁誘導を避けるため,ねん架を行う。
参考 Hコイル法は,磁界の強さが試料表面からの距離によって変化しないと仮定できる場合に用い
られる方法である。この条件は,試料に加わる反磁界がほとんど無視できる場合に成立するが,
試料の透磁率や寸法比(板の断面積/板の長さ),試料とヨーク間のエアギャップ寸法によって
変化する。
(6) 空げき補償 空げき補償の方法は,次による。
なお,空げき補償されたBコイルで測定される電圧の平均値は,磁束密度ではなく,磁化の強さの
ピーク値に比例したものである。
(a) 2個の巻線からなる空心の相互誘導器を空げき補償コイルとして用いる場合,空げき補償コイルの1
次側を励磁コイルに直列に,2次側をBコイルに逆直列に接続する。試験器に試料を挿入しない状
態で1次側に交流を流したときに,Bコイルと空げき補償コイルに誘起する電圧の和が最小になる
ように相互誘導器を調節する。
参考 この方法では,実際に試験器に試料が入ったとき,試料の磁化と共に誘起する反磁界の影響を
無視しているので,その分が過補償となる。
また,空げき補償コイルの1次側インピーダンスと単板磁気試験器の励磁コイルのインピー
ダンスとの相対関係によって,高磁束密度領域でBコイルの誘起電圧のひずみが増加する。
(b) 試料にかかる磁界の強さを直接検出しているHコイル出力を利用して,Bコイル出力を補償する場
合は,Hコイル出力にHコイルのエリアターンに対するBコイルのエリアターンの比を掛けた電圧
を,Bコイル出力から差し引くことによって行う。
なお,Bコイルのエリアターンは,試験器に試料を挿入しないで励磁コイルに電流を流して磁界
を作り,校正されたエリアターンのHコイルの出力とBコイルの出力との比較によって求めること
ができる。
参考 この方法では,試料面に対して垂直方向の磁界分布に傾斜があるときには,試料面からの距離
とともに磁界の強さが大きくなるので,その分だけ補償不足となる。
2.3 H増幅器及び積分増幅器 H増幅器は,Hコイルの出力電圧を増幅するとともに,低出力インピー
ダンスに変換して測定誤差を低減する。この増幅器は,Hコイルの出力電圧の測定に影響を及ぼさないた
め,高い入力インピーダンスとするとともに,波高率の大きい波形を増幅するため,ダイナミックレンジ
が広く直線性に優れているものを使用する。
積分増幅器は,高精度の演算増幅器によって構成されたミラー形の積分器を用いる。
H増幅器及び積分増幅器の性能は,附属書表1による。
なお,Hコイルの出力信号を増幅し,高速A−D変換で数値信号としてこれを演算処理するもので,附
属書表1と同等性能であれば,それを使用してもよい。この場合,電力計への入力としてデジタル信号の
まま,又はD−A変換で再度アナログ信号としても性能が附属書表1を満足できればよい。
また,B増幅器,平均値形電圧計及び電力計と一体化された計器でも,性能が附属書表1と同等であれ

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ば,使用してもよい。
附属書表1 H増幅器及び積分増幅器の性能
項目 性能
入力インピーダンス500k 坎 上
出力インピーダンス 15 坎 下
増幅率の変動 ±0.3%以下 (47Hz20kHz)
位相誤差 ±3分以下 (47Hz2kHz)
2.4 B増幅器 B増幅器は,Bコイルの出力電圧を増幅するとともに,低インピーダンスに変換して測定
誤差を低減する。Bコイルの出力電圧の測定に影響を及ぼさないために,高い入力インピーダンスをもつ
ものとする。
出力側に平均値形電圧計と電力計が接続され,波形補正を行うときは,出力電圧の一部が負帰還信号と
して用いられるため,低い出力インピーダンスをもつものとする。B増幅器の性能は,附属書表2による。
なお,Bコイルの出力信号を増幅し,高速A−D変換で数値信号としてこれを演算処理するものでも,
B増幅器としての性能が附属書表2と同等であれば,使用してもよい。
また,H増幅器,積分増幅器,平均値形電圧計及び電力計が一体化された計器でも,性能が附属書表2
と同等であれば,使用してもよい。
附属書表2 B増幅器の性能
項目 性能
入力インピーダンス500k 坎 上
出力インピーダンス 15 坎 下
増幅率の変動 ±0.3%以下 (47Hz2kHz)
位相誤差 ±3分以下 (47Hz400Hz)
2.5 平均値形電圧計 平均値形電圧計は,試料の磁束密度B(ピーク値)と磁界の強さH(ピーク値)
を測定するために使用する。入力インピーダンスが100k 坎 上で,誤差±0.2%以内のデジタル電圧計,又
は,これと同等の性能をもつ電圧計を用いる。
参考1. 中心対称波形の微分電圧の平均値が原波形のピーク値に比例することを利用しているが,1
周期中の符号変化が1回でない場合は誤差を生じる。
2. 測定波形が正弦波からひずんだ場合は,電圧計によって測定精度が異なるので注意が必要で
ある。
2.6 電力計 電力計は,H増幅器及び積分増幅器の出力とB増幅器の出力の乗算を行い,その電力を求
める。形式としては時分割乗算を行うもの,デジタル化された数値を演算するものなどがあるが,いずれ
の形式でも附属書表3の性能を満足するものとする。ただし,入力としてデジタル信号を用いる電力計で
は,その入力インピーダンスは附属書表3に制限されないものとする。
附属書表3 電力計の性能
項目 性能
入力インピーダンス 3k 坎 上
誤差 フルスケールの±0.5%以下
(47Hz400Hz,力率10において)

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3. 校正 最大入力の範囲内における増幅器の増幅率及びHコイルのエリアターンは,0.5%の精度で測定
する。Hコイルのエリアターンの校正は,0.2%の精度のエリアターンの標準コイルと一様な交流磁界中の
出力との比較によるか,又は,長いソレノイドの一様磁界領域の磁界の強さは,計算で得られるので,こ
のソレノイドの交流磁界によるHコイルの出力から求める。ソレノイドに流す電流値は,標準抵抗による
電圧降下を高精度デジタル電圧計で測定して求める。
積分増幅器の校正は,周波数f (Hz) の正弦波電圧をH増幅器の入力端子に入力し,入力電圧einと積分
増幅器の出力電圧eoutをデジタル電圧計で読んで行う。einとeoutは式(1)で示される関係がある。
H eindt Hein
eout= = (1)

ここに, 愀 H増幅器の増幅率
積分器の時定数 (S)
2 s-1)
式(1)からH増幅器の増幅率を含む 愀
この回路の位相の誤差は, 愀 数特性を測定することによって調べられる。すなわち,eout/einが所
要の周波数範囲で周波数に対して反比例の関係にあれば,位相の誤差は無視できる。
4. 単板試験器の構造・組立例 試料寸法を横複ヨーク形単板試験器用100×500mm,縦複ヨーク形単板
試験器用100×330mmとした場合の試験器について以下に示す。
4.1 ヨーク
(1) 横複ヨーク形単板磁気試験器 ヨークは方向性けい素鋼帯又は鉄−ニッケル合金板を積層して四角形
に組む[附属書図1(a)及び附属書図2参照]。附属書表4にヨーク寸法例を示す。ヨークは絶縁物で作
られた台上に水平に保持し,特に試料の接する面は,凹凸をなくして試料と密着するようにする。
附属書表4 横複ヨーク形単板磁気試験器のヨーク寸法
単位mm
項目 寸法
幅 100
積層厚さ 7
ヨーク極間最長距離 500
(2) 縦複ヨーク形単板磁気試験器 ヨークは,方向性けい素鋼帯又は鉄−ニッケル合金板を積層してC形
に組む[附層書図1(b)参照]。附属書表5にヨーク寸法例を示す。ヨークは,絶縁物で作られた台上に
水平に保持し,特に試料の接する面は,凹凸をなくして試料と密着するようにする。
附属書表5 縦複ヨーク形単板磁気試験器のヨーク寸法
単位mm
項目 寸法
幅 15
積層厚さ 120
ヨーク極間最長距離 330
4.2 巻枠 巻枠は,中空の長方形断面をもつものとし,絶縁物で作る(附属書図3参照)。巻枠は,試料
位置がヨーク窓の中央にくるよう配置する。
4.3 Bコイル Bコイルは,導体径0.5mmの絶縁皮膜付き銅線を,巻枠の長さ方向の中心に対して対称
に長さ200mmの間に1層に均一に巻く。巻数は約340ターンとする。

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4.4 励磁コイル 励磁コイルは,Bコイルの外側に導体径1.0mmの絶縁皮膜付き銅線を,巻枠の全長
294mmの間に均一に3層に巻いて直列接続とする。巻数は各層約270ターンとする。
4.5 Hコイル Hコイルは,厚さ1.6mm,幅85mm,長さ270mmの絶縁物で作られた板状巻枠に密着し
て,導体径0.2mmの絶縁皮膜付き銅線を長さ200mmの間に1層に均一に巻く。巻数が約900ターンのと
き,エリアターンは約0.130m2となる。Hコイルは,試料にできるだけ近い位置に配置し,Hコイルの面
と試料面とが平行になるように固定する。Hコイルの長さ方向の位置はBコイルのそれに一致させる。
附属書図1 複ヨーク形単板磁気試験器の構成例

――――― [JIS H 7152 pdf 10] ―――――

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JIS H 7152:1996の国際規格 ICS 分類一覧

JIS H 7152:1996の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISH7004:1990
アモルファス金属用語