JIS H 7306:2018 超電導―残留抵抗比試験方法―ニオブ・チタン及びニオブ3すず複合超電導線の残留抵抗比 | ページ 5

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H 7306 : 2018 (IEC 61788-4 : 2016)
ここでは,ε=(4/3π)(d/2Rd)及びSCu=π(d/2)2rCuを用いて,小さな修正しか与えない式(9)の第2項を無視し
た。また,rCuは,銅占積率(線材断面積に占める銅断面積の割合)であり,銅比cを用いてrCu=c/(1+c)
で与えられる。したがって,式(C.10)の第2項をδR2とすると,L,d,rCu及びRdの標準不確かさによって
生じるuR2の合成標準不確かさは,式(C.11)となる。
12
2 2 2 2
uL ud urCu uRd
uR* 2= R2 + + + ( ) (C.11)
L d rCu Rd
ここに, uL (m) : 電圧タップ間距離のBタイプの標準不確かさ
ud (m) : 試料直径のBタイプの標準不確かさ
urCu : 銅占積率のBタイプの標準不確かさ
uRd (m) : マンドレル径のBタイプの標準不確かさ
L
Lは uL /= .005 /3 以内の標準不確かさで測定することが求められており(8.4参照),dの相対標準不
d
確かさは,ud /=.002 /3 と仮定されている。また,rCu及びRdの相対標準不確かさは, .005 /
3 未満が求
められている。最大の補正は,この試験法で取り扱う範囲内では,残留抵抗比が350の試料で曲げひずみ
が2 %のときで,δR2/R2は約0.10となる。したがって,曲げひずみの補正による低温での抵抗の相対合成
標準不確かさの最大値は,式(C.12)と見積もることができる。
*
uR2
=.0513 10−2 (C.12)
R2
これらの解析の結果,残留抵抗比の相対合成標準不確かさは,式(C.13)となる。
12 12
2 2 2 2
u uR1 uR2 uR* 2 b
ur= = + + = .16910−4+2 (C.13)
R1 / R2 R1 R2 R2 R2
C.2に示すニオブ・チタン複合超電導線のラウンドロビン試験の結果,urは2.44×10−2となった。これ
を採用した場合,b/R2は,式(C.14)と見積もることができる。
b 2
=.146 10− (C.14)
R2
各測定における不確かさのタイプ及び目標値を,表C.1に示す。

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表C.1−各測定における不確かさ
相対標準不確かさ タイプ 値 参考
uU1/U1(室温の電圧) B .0005/3 |ΔU1|/ U1<0.005
uI1/I1(室温の電流) B .0005/3 |ΔI1|/ I1<0.005
uTm2(部屋の温度)a) B /1 3 ℃ |ΔTm|<1 ℃
uU2/U2(低温の電圧) B .0005/3 |ΔU2|/ U2<0.005
uI2/I2(低温の電流) B .0005/3 |ΔI2|/ I2<0.005
uL/L(電圧端子間距離) B .005 /3 |ΔL|/ L<0.05
ud/d(線材の直径) B .002 /3 |Δd|/ d<0.02
urCu/rCu(銅占積率) B .005 /3 |ΔrCu|/ rCu<0.05
uRd/Rd(マンドレルの半径) B .005 /3 |ΔRd|/ Rd<0.05
注a) Tm2だけ標準不確かさを示す。
C.2 ニオブ・チタン複合超電導線の残留抵抗比のラウンドロビン試験の要約
次に示す供試用超電導線を用いて,ニオブ・チタン複合超電導線の残留抵抗比のラウンドロビン試験を
実施した。
a) 直径 : 0.8 mm(裸線径)及び0.86 mm(含絶縁被覆)
b) 銅/ニオブ・チタン比 : 6.5
c) 平均フィラメント径 : 約70 μm
d) フィラメント数 : 16
e) ツイストピッチ : 30 mm
f) 臨界電流 : 185 A 超(3 T,4.2 K)
g) RRR : 150 超
試料は,直線に近い状態で参加した機関に提供された。ただし,受け取ったままの状態で測定された試
料もあれば,マンドレルに巻かれてひずみが加えられた状態で測定された試料もある。ラウンドロビン試
験には,5か国13機関が参加し,得られたデータ数は77個であった。R2は,7.2,7.3及びA.3に規定す
る方法で測定した。測定の詳細は,参考文献[5]に記載されている。ひずみの影響は,式(8)及び式(9)を用い
て補正した。測定されたrRRRの分布を,図C.1に示す。3データを除き,ほとんどのデータは,かなり明
瞭に収れん(斂)した。平均値は178.5,標準偏差は4.4,及び変動係数(COV値)は2.44 %であった。大
きく外れた3データを除いた場合,平均値は178.2,標準偏差は3.1,及びCOV値は1.73 %であった。本
ラウンドロビン試験によるCOV値は2.5 %未満であり,この結果は本試験法の目標とするk=2とした拡
張不確かさを5 %とすることの妥当性を示している。
注記 変動係数(COV値)は,実験標準偏差を平均値で除した値の100倍である。

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図C.1−ニオブ・チタン複合超電導線のrRRRの測定値の分布
C.3 ニオブ3すず複合超電導線のラウンドロビン試験のCOV値
ニオブ3すず複合超電導線のラウンドロビン試験では,COV値は,6.07 %であった(参考文献[6])。こ
の値は,ひずみの影響による付加的な不確かさがないにもかかわらず,2.44 %であったニオブ・チタン複
合超電導線の結果に比べて非常に大きい。この理由を確かめるために,更に二つの研究機関の間で三つの
ニオブ3すず複合超電導線試料について残留抵抗比の比較試験を行った。そのうち二つは熱処理時の同じ
バッチから取り,もう一つは別のバッチのものである。三つの試料について,この規格の試験法を用いて
得られたそれぞれのrRRRは,表C.2に示すように両研究機関の間で1 %以内であったが,その一方で,rRRR
は,同じバッチから取った試料であっても異なっていた。このことは,以前のラウンドロビン試験のCOV
値が大きかった理由が試料の不均一さによるものである一方,試験法そのものは問題がなかったことを示
唆するものである。この不均一さは,熱処理条件に対して非常に敏感である場合又は拡散バリアの欠陥に
よる銅の汚染が原因になる場合がある。一般的に,rRRRは最低保証値よりも高いことが要求されるので,
不均一さの存在は,1本の支給線材から数本の測定サンプルを抽出してrRRRを測定し,それらを報告する
ことが望ましい。
表C.2−三つのニオブ3すず複合超電導線試料について得られたR1,R2及びrRRR
試料 研究機関1 研究機関2
R1(293 K) [Ω] R2(Tc*) [Ω] rRRR R1(293 K) [Ω] R2(Tc*) [Ω] rRRR
B 1.593×10-3 1.49×10-5 107 1.61×10-3 1.49×10-5 108
C 1.719×10-3 1.66×10-5 104 1.74×10-3 1.66×10-5 105
D 1.619×10-3 1.61×10-5 100 1.65×10-3 1.62×10-5 101
こうした理由から,この規格の試験法を用いて得られるニオブ3すず複合超電導線のrRRRの不確かさは,
ニオブ・チタン複合超電導線の場合と同様であると考えられる。したがって,ニオブ・チタン複合超電導
線の残留抵抗比のラウンドロビン試験の結果から評価された,b/R2=1.46×10-2の値を式(C.8)に代入して,

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ニオブ3すず複合超電導線のrRRRの不確かさも評価することができる。また,表C.2の結果から,二つの
研究機関での試験結果の違いは,主としてR1の値からきていることが明白である。すなわち,室温の不確
かさが大きな理由である。
参考文献
[1] MURASE S., SAITOH T., MATSUSHITA T. and OSAMURA K. Standardization of the method for the
determination of the residual resistance ratio (RRR) f Cu/Nb-Ti composite superconductors. Proc. of
ICEC16/ICMC, Kitakyushu, May 1996, p.1795
[2] SIMON N.J., DREXLER E.S., REED R.P. Properties of Copper and Copper Alloys at Cryogenic Temperatures.
NIST Monograph, 177 (1992)
[3] ISO/IEC Guide 98-3:2008,Uncertainty of measurement−Part 3: Guide to the expression of uncertainty in
measurement (GUM:1995)
[4] International Organization for Standardization (Geneva, Switzerland), “Guide to the Expression of Uncertainty
in Measurement” (初版1993,修正版1995),飯塚 幸三 監修 : ISO国際文章“計測における不確かさ
の表現のガイド”財団法人日本規格協会(1996)
[5] MATSUSHITA T., OTABE E.S., MURASE S., OSAMURA K. and HUA CY. Adv. In Supercond. XI, Tokyo,
Springer, 1507 (1999)
[6] MURASE S., SAITOH T., MORIAI H., MATSUSHITA T and OSAMURA K., Advances in Superconductivity.
XI, Tokyo, Springer, 1511 (1999)

JIS H 7306:2018の引用国際規格 ISO 一覧

  • IEC 61788-4:2016(IDT)

JIS H 7306:2018の国際規格 ICS 分類一覧

JIS H 7306:2018の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISH7005:2005
超電導関連用語