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附属書H
(参考)
標準物質
H.1 標準物質
一般に薄膜の熱物性値は,内部に存在する欠陥,非常に小さい結晶粒径などに大きく影響を受けるため
に,同じ組成のバルク材料とは異なることが多い。特に,組成,純度,結晶構造及び温度では一義的に熱
物性値が決まらないことに注意が必要である。したがって,測定装置,解析手法の健全性などを確認する
ためには,信頼性の高い標準物質が重要である。近年,NMIJ 1) から膜厚方向の熱拡散の特性時間が値付
けされた窒化チタン薄膜[RM 2)]及び膜厚方向の熱拡散率が値付けされたモリブデン薄膜[CRM 3)]が頒
布されており入手が可能である。NMIJ 1) から頒布されている標準薄膜の仕様の抜粋を,参考として次に
示す。
番号 : NMIJ RM 1301-a
材料 : 窒化チタン(薄膜),合成石英ガラス(基板)
熱拡散時間 : 139.7×10−9 s(k=2における拡張不確かさ4.9 %)
膜厚 : 680 nm(膜厚は参考値)
基板形状 : 10 mm×10 mm×0.525 mm
使用温度 : 室温
番号 : NMIJ CRM 5808-a
材料 : モリブデン(薄膜),合成石英ガラス(基板)
熱拡散率 : 3.28×10−5 m2s−1(k=2における拡張不確かさ6.2 %)
膜厚 : 400 nm(公称値)
基板形状 : 38.1 mmφ×0.525 mm
使用温度 : 室温
注1) MIJ(National Metrology Institute of Japan)とは,国立研究開発法人産業技術総合研究所計量標
準総合センターをいう。
2) Mは標準物質の略
3) RMは認証標準物質の略
――――― [JIS R 1689 pdf 21] ―――――
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R 1689 : 2018
附属書I
(規定)
温度履歴曲線の負の傾きの補正法
I.1 温度履歴曲線の補正法
パルス光加熱サーモリフレクタンス法で得られる温度履歴曲線は,試料を加熱用パルス光によって繰り
返し加熱することが原因となり,薄膜がほぼ断熱に近い理想的な条件であったとしても,図I.1におけるA
で示される曲線のように,温度履歴曲線全体に負の傾きが重畳した形状となる。これは,フラッシュ法の
ような単一のパルス加熱による温度履歴曲線Bとは本質的に異なることを示している。ここに,薄膜の熱
拡散の特性時間はτであり,加熱用パルス光はτの10倍の間隔で繰り返し発振する条件である。また,各々
の温度履歴曲線は,薄膜と基板との熱浸透率の比が9 : 1の場合を示した。繰返しパルス加熱による影響は,
加熱用パルス光の発光する時間間隔が,薄膜の熱拡散の特性時間τに対して長いほど小さくなる。しかし,
図I.1に示すように温度履歴曲線の負の傾きが目立つ場合には,次に示す手順によって温度履歴曲線の補
正を行うことが望ましい。
注記 図の横軸においてt0=0である。これは図I.2においても同様である。
図I.1−単一のパルス加熱で得られる温度履歴曲線と繰返しパルス加熱とで得られる温度履歴曲線の違い
ここでは,図I.2を基に温度履歴曲線の補正手順を説明する。
a) 図I.2に示した繰返しパルス加熱による温度履歴曲線Aについて,t0より負の時間側の温度履歴曲線
部分を用いて線形近似を行う。線形近似によって得られる直線は,図I.2の直線Cで表される。
b) 温度履歴曲線Aから直線Cを差し引くことによって,補正された温度履歴曲線Dを得る。
なお,曲線Bは,図I.1における単一のパルス加熱による温度履歴曲線Bを示したものである。補
――――― [JIS R 1689 pdf 22] ―――――
21
R 1689 : 2018
正された温度履歴曲線Dは,箇条8に用いることができる。
図I.2−温度履歴曲線の補正方法
――――― [JIS R 1689 pdf 23] ―――――
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附属書J
(規定)
金属反射膜を施した場合の面積熱拡散時間法による熱拡散率の算出方法
J.1 熱拡散率の算出方法
加熱用パルス光に対してファインセラミックス薄膜の透過率が高い場合,反射率の温度係数が小さいた
めに十分なサーモリフレクタンスの効果が得られないときには,ファインセラミックス薄膜を金属の反射
膜によって挟み込んだ3層膜を作製する。反射膜は厚さ100 nm以上であることが望ましく,材料にはア
ルミニウム(Al),モリブデン(Mo)などを用いることができる。このとき,ファインセラミックス薄膜
に施す反射膜は,両側とも,同じ材料,膜厚,成膜条件となるように注意する。このように,反射膜を両
側に施したファインセラミックス薄膜(図J.1参照)について,面積熱拡散時間法を用いた熱拡散率の算
出方法を示す。反射膜を含む3層膜が基板との界面で断熱である境界条件において,面積熱拡散時間Aは,
式(J.1)によって求める。
2
4 Cmdm 1
Cmdm Cf df m Cmdm Cf df f
3 Cf df 6
A (J.1)
2Cmdm Cf df
ここに, Cf : ファインセラミックス薄膜の単位体積当たりの熱容量
(Jm−3K−1)
df : ファインセラミックス薄膜の膜厚(m)
τf : ファインセラミックス薄膜の熱拡散の特性時間(s)
Cm : 反射膜の単位体積当たりの熱容量(Jm−3K−1)
dm : 反射膜の膜厚(m)
τm : 反射膜の熱拡散の特性時間(s)
式(J.1)によって算出されたファインセラミックス薄膜の熱拡散の特性時間τfを用いて,熱拡散率αを式
(J.2)によって求める。
2
愀f
(J.2)
f
注記 単位体積当たりの熱容量は,同じ組成のバルクの文献値,測定などによって決める。
図J.1−金属の反射膜を両側に施したファインセラミックス薄膜の例
――――― [JIS R 1689 pdf 24] ―――――
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附属書K
(参考)
界面熱抵抗の影響
K.1 界面熱抵抗の影響
附属書Jに示した薄膜の両側を金属の反射膜で挟み込んだ3層膜を作製した場合において,反射膜と薄
膜との界面に熱抵抗Rが存在するとき,面積熱拡散時間は,式(K.1)で与えられる。
2
4 Cmdm 1
Cmdm Cf df m Cmdm Cf df f
3 Cf df 6 Cmdm Cf df
A 2RCmdm
2Cmdm Cf df 2Cmdm Cf df
(K.1)
したがって,界面熱抵抗が無視できない場合には,面積熱拡散時間Aは,熱抵抗Rによって式(K.1)の第
2項の分だけ増加する。薄膜として二酸化シリコン(SiO2)薄膜を考え,これに反射膜として厚さ100 nm
のモリブデン(Mo)薄膜を施して3層膜とした場合に,式(K.1)第2項が面積熱拡散時間Aに占める割合
を,図K.1に示す。図K.1の横軸は,SiO2薄膜の膜厚である。図中には,SiO2とMoとの界面熱抵抗Rが,
それぞれ10−10,10−9及び10−8 m2KW−1であるときのグラフを示した。セラミックスと金属との間の界面
熱抵抗は,おおよそ10−9 m2KW−1のオーダであることが報告1) されており,SiO2薄膜の膜厚が100 nm以
上では界面熱抵抗の影響は,ほぼ無視できると考えられる。ただし,反射膜を施す場合には,界面に汚染
がないように注意する。
図K.1−SiO2薄膜における式(K.1)の第2項の割合
注1) 式(K.1)については,T. Baba "Analysis of One-dimensional Heat Diffusion after Light Pulse Heating by
the Response Function Method", Japanese Journal of Applied Physics 48 (2009) 05EB04を参照すると
よい。
2) 界面熱抵抗について詳細な議論はE. T. Swartz and R. O. Pohl, "Thermal boundary resistance",
Reviews of Modern Physics, vol. 61, No. 3, (1989), pp 605-668を参照するとよい。
JIS R 1689:2018の国際規格 ICS 分類一覧
- 81 : ガラス及びセラミック工業 > 81.060 : セラミックス > 81.060.30 : ニューセラミックス
JIS R 1689:2018の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISB0601:2013
- 製品の幾何特性仕様(GPS)―表面性状:輪郭曲線方式―用語,定義及び表面性状パラメータ
- JISB0651:2001
- 製品の幾何特性仕様(GPS)―表面性状:輪郭曲線方式―触針式表面粗さ測定機の特性
- JISC1602:2015
- 熱電対
- JISR1600:2011
- ファインセラミックス関連用語
- JISR1611:2010
- ファインセラミックスのフラッシュ法による熱拡散率・比熱容量・熱伝導率の測定方法
- JISR1636:1998
- ファインセラミックス薄膜の膜厚試験方法―触針式表面粗さ計による測定方法