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ればならない。
リスクマネジメント計画でレビューの責任者に適切な権限をもつ者を選ぶことが望ましい[3.4 b)参照]。
適合性は,リスクマネジメントファイルを調査して確認する。
9 製造及び製造後情報
製造業者は,製造及び製造後の段階において,該当医療機器又は類似機器についての情報を収集し,レ
ビューする体系的手順を確立し,文書化し,維持する。
製造業者が医療機器の情報を収集し,レビューする手順を構築する場合には,特に次のいずれかを考慮
することが望ましい。
a) 医療機器の操作者,使用者,又は据付,使用及び保守の責任者からの情報を収集し,処理する仕組み
b) 新規又は改正された規格
市販されている類似の医療機器についての利用可能な情報についても,収集し,レビューすることが望
ましい。
この情報について,安全との関連の有無を評価する。特に次について評価する。
− 以前に認識されていなかったハザード又は危険状態はないか,
− 危険状態によって発生すると推定されるリスクが,もはや受容できないかどうか。
上の条件のいずれかに該当する場合には,次を行う。
1) 既に実施したリスクマネジメント活動への影響を評価し,リスクマネジメントプロセスのインプッ
トとしてフィードバックする。
2) 該当する医療機器のリスクマネジメントファイルをレビューする。残留リスク又はその受容可能性
が変わった場合には,以前に実施したリスクコントロール手段への影響を評価する。
評価結果をリスクマネジメントファイルに記録する。
注記1 製造後監視の幾つかの事項は,国の規制対象となる場合があり,追加措置,例えば,製造後
の今後の評価について要求されることもある。
注記2 JIS Q 13485:2005 [8],8.2を参照。
適合性は,リスクマネジメントファイル及び適切な文書を調査して確認する。
――――― [JIS T 14971 pdf 16] ―――――
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T 14971 : 2012 (ISO 14971 : 2007)
附属書A
(参考)
指針及び根拠
A.1 一般
このJIS T 14971の基となったISO 14971:2007の作成では次のような経緯があった。ISO/TC 210-IEC/SC
62A JWG1(Joint Working Group 1),Application of risk management to medical devicesは,この規格の第1版
に盛り込んだ要求事項を解説するために,この附属書を作成した。第2版の作成に伴う変更事項を説明す
るためにこの解説を改正した。この規格の使用経験を基に今後改正するに当たって,製造業者,規制機関
及び医療従事者にとってより有用な規格とするためにこの附属書を使用することができる。
規制機関において医療機器にリスクマネジメントを適用することが望ましいとの認識が高まってきたの
で,リスクマネジメントの医療機器への適用のための規格は,製造業者にとって更に重要になってきた。
医療機器のためのリスクマネジメント規格は存在していなかったので,この需要とのギャップを埋めるた
めに,ISO/TC 210 WG4(Working Group 4)が編成され,ISO 14971の規格の作成に着手した。ほぼ同時期
のIEC 60601-1 [23]第3版の改正に当たり,リスクマネジメントを取り入れることを計画していた。リス
クマネジメントには,独立した活動が必要であると認識し,IEC/SC 62AにWG15を編成した。IEC及び
ISOは,これらの二つのWGの作業が重複していることを認識し,双方のWGのメンバーを統合し,リス
クマネジメントのJWG1を編成した。
この共同作業の結果,ISO及びIECの両方のロゴが併記されたISO 14971が発行された。単独ロゴ入り
の規格は,ISO又はIECが各自の対象とする国際規格であることを示す。この両方のロゴは,ISO及びIEC
の各国委員会によって共同で作成された規格であることを示す。
リスクマネジメントの国際規格の作成開始に当たって,医療機器のリスクと効用のバランスを取ること
はもちろん,リスク評価のプロセスなどをリスクマネジメントの不可欠な特徴と位置付けることにした。
製造業者,規制機関及び医療従事者は,医療機器の“絶対安全”の達成は不可能であるということを認識
してきた。さらに製品の安全規格において,医療機器及びそれらの臨床的適用の多様化に起因するリスク
を全て明らかにすることはできない。これら事実の認識,及び医療機器のライフサイクルにおけるリスク
を管理する必要からISO 14971を作成することに至った。
当初の計画は,規格を幾つかの部分に分けて作成し,各部分がリスクマネジメントの特定の要素を取り
扱うというものであった。リスク分析を対象とするISO 14971-1は,全体的なリスクマネジメント規格の
第一部として意図された。その後,リスクマネジメントの全てを含んだ一つの規格を作成する方が望まし
いと判断された。この主な理由は,世界中の多くの規制制度によってリスクマネジメントの全てが義務付
けられるのは明らかであったからである。そのために,リスク分析(ISO 14971-1)の規格を維持すること
は,もはや必要でも有益でもなかった。幾つかの規格に分割するよりも,一つのリスクマネジメント規格
を作成することで,リスクマネジメントの各要素に一貫性をもたせることができる。
リスクマネジメント適用のための指針を追加する必要性も考慮して,ISO 14971の第2版が作成された。
本文での変更は,製造後の監視をリスクマネジメント計画に含める要求事項の追加,トレーサビリティ
要求をリスクマネジメント報告書から削除するなど,軽微なものである。ハザードと危険状態との関係に
ついて,新しい解説が附属書E(以前の附属書D)として作られた。この解説での考え方を基に,この規
格でのハザード及び危険状態の用語の使い方を見直した。次の文書は,ISO 14971の箇条及び細分箇条に
――――― [JIS T 14971 pdf 17] ―――――
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関する追加の情報である。
A.2 個別の箇条及び細分箇条の要求事項の解説
A.2.1 適用範囲
このJISの基であるISO 14971の序文に記載しているように,全ての医療機器の設計及び製造に適用で
きるリスクマネジメント規格が必要とされている。体外診断用医療機器については異なる規制があるため,
この規格から除外されるという誤解を生じないように適用範囲において言及している。
製品のライフサイクルのあらゆる場面でリスクは発生する可能性がある。ライフサイクルのある時点で
明らかになるリスクは,それとは異なるライフサイクルの時点での活動によってリスクの対策が可能であ
る。この理由から,この規格は全てのライフサイクルをカバーする必要がある。この規格は,医療機器の
初期構想から最終的な使用停止及び廃棄に至るまで,リスクマネジメントの原則をどのように適用するか
を製造業者に示している。
この規格の適用範囲には,医療機器の使用に関する判断は含まない。個別の臨床手技の状況における医
療機器の使用の決定は,期待される医学的効用が残留リスクを上回るか,又は他の手技に伴うリスクと期
待される効用との収支(つりあい)を上回る必要がある。このような決定には,臨床手技又は使用状況に
伴うリスク及び医学的効用と同様に,意図する使用,性能及び医療機器に伴うリスクを考慮することが望
ましい。このような判断は,個々の患者の健康状態及び患者自らの意見を知ることのできる資格をもった
医療専門家によってだけ行うことができるであろう。
リスクの受容可能なレベルをどう決めるかについて重要な議論がなされたが,この規格は受容レベルを
規定していない。受容可能なリスクの普遍的なレベルを規定することは適切でない。この判断は,次に基
づいている。
− この規格の対象となる医療機器及び状況(使用される状態,ライフサイクルなど)は広範囲にわたっ
ており,一つのレベルでは対応できない。
− 地域の法律,慣習,価値観及びリスクの認識は,世界各国の独自の文化又は地域性に適したリスクの
受容性を決定するのに適切である。
医療機器の製造業者に対する品質マネジメントシステムは,全ての国において要求されているわけでは
ないので,この規格は品質マネジメントシステムを要求していない。しかし,品質マネジメントシステム
はリスクマネジメントを適格に行うのに極めて有益である。そのため,ほとんどの医療機器の製造業者が
品質マネジメントシステムを導入しているので,製造業者が採用している品質マネジメントシステムに容
易に組込むことができるようこの規格は構成している。
A.2.2 用語及び定義
多数の新しいなじみのない用語を作ることを避けるために,既存の規格及び文献におけるリスクマネジ
メント情報を基にして,この規格を作成した。可能な限り既存の定義を用いた。定義の主な情報源は,次
に基づいている。
− ISO/IEC Guide 51:1999,Safety aspects−Guidelines for their inclusion in standards
− JIS Q 9000:2006 品質マネジメントシステム−基本及び用語
− JIS Q 13485:2005 医療機器−品質マネジメントシステム−規制目的のための要求事項
これらの定義の中には,この規格とは意味が若干異なるものがある。例えば,JWG1は,“危害(harm)”
(2.2)の定義に過度の心理的ストレス又は予想外の妊娠を“人の受ける健康障害”の一部として含めると
の意見もあったが,次の理由から定義の変更はしなかった。世界中の多くの国々及び地域において,明示
――――― [JIS T 14971 pdf 18] ―――――
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的か暗示的かにかかわらず,リスクマネジメントを規制に使うと予想されていた。そのために,規制の観
点から広く受け入れられる定義を用いるようにした。例えば,“製造業者(manufacturer)”(2.8)という用
語は,EUの医療機器指令に基づくものであるが,米国で使用されている定義と整合が取れている。“医療
機器(medical device)”(2.9)という用語は,Global Harmonization Task Force (GHTF)で規定した定義を採用
している。参考文献の[38]を参照する。
米国で使用されている“意図する使用(intended use)”(2.5)は,欧州連合の用語“意図する目的(intended
purpose)”と整合が取れるような定義にした。これらの用語の定義は,本質的に同一である。この定義は,
製造業者が医療機器の意図する使用を検討する上で,意図する使用者を考慮に入れることを示唆している。
次の七つの用語は,他の規格の定義に基づくものではない。これらは“ライフサイクル(life-cycle)”(2.7),
“製造後(post-production)”(2.11),“リスクコントロール(risk control)”(2.19),“リスク評価(risk
evaluation)”(2.21),“リスク推定(risk estimation)”(2.20),“リスクマネジメント(risk management)”(2.22),
及び“リスクマネジメントファイル(risk management file)”(2.23)である。この規格において使用する“ラ
イフサイクル(life-cycle)”の用語は,医療機器のあらゆる側面を含んでいることを明らかにするように定
義した。“製造後(post-production)”の定義は,医療機器のライフサイクル全体にわたってリスクマネジメ
ントが重要であることを強調するために追加された。“リスクコントロール(risk control)”の定義は,
ISO/IEC Guide 51 [2]に記載されている“リスク分析(risk analysis)”の定義と矛盾しないように規定した。
第1版では,リスク評価の定義に“社会の現在の価値観(current values of society)”という表現を使用した。
しかしこの版では,二つの理由からこの表現を削除した。その一つは用語の定義に要求事項を含めないよ
うにするためで,二つ目は,“社会の現在の価値観(current values of society)”が曖昧な表現だからである。
この表現を定義から削除しても支障はない。この概念が既にISO 14971の序文に記載されていること,リ
スクの受容可能性に関する判断基準を決定するための方針に対して要求事項を追加したこと(3.2),及び
リスクの受容可能性に関する指針(D.4)があるからである。“リスクマネジメント”の定義は,体系的手
法の適用及びその運営の監視の必要性を強調するためである。“リスクマネジメントファイル”の概念は,
もともとIEC 60601-1-4 [24]が定義したものであるが,それは品質記録を示すものであってISO 14971への
適合として必要とはいえないのでその定義を変更した。
“トップマネジメント(top management)”(2.26)の定義は,JIS Q 9000:2006 [4]から引用した。この定
義は,ある組織において最高レベルに位置する個人又はグループに対して適用する。
A.2.3 リスクマネジメントの一般要求事項
A.2.3.1 リスクマネジメントプロセス
3.1は,製造業者に医療機器の設計の一部としてリスクマネジメントプロセスを確立することを要求して
いる。これは,製造業者がプロセスに必要な要素を体系的に取り入れることを確実にするために要求して
いる。リスク分析,リスク評価及びリスクコントロールは,リスクマネジメントの重要な要素であること
は広く認識されている。これらの要素に加えてこの規格は,リスクマネジメントプロセスが医療機器の設
計及び製造(該当する滅菌,包装及びラベリングを含む)で終わりではなく,製造後の段階まで継続する
ことを強調している。したがって,製造後の情報の収集は,リスクマネジメントプロセスの一部として要
求される。さらに製造業者が品質マネジメントシステムを採用する場合は,リスクマネジメントプロセス
は,品質マネジメントシステムに完全に統合されることが望ましい。
リスクマネジメント活動は,適用する医療機器ごとに大きく異なるが,リスクマネジメントプロセスに
は基本的な要素があり,この細分箇条では,これらの要素について言及している。また,医療機器へのリ
スクマネジメントの規制適用において,幾つかの差異があることが分かっている。
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3.2及び3.3は,品質マネジメントシステム規格の要求事項に密接に関連している。医療機器を上市する
場合に品質マネジメントシステムが要求される国もある(医療機器が特に除外されていない場合)。製造業
者が,品質マネジメントシステムを適用するか否かを選択することができる国もある。しかし,3.2及び
3.3の要求事項は,製造業者が品質マネジメントシステムの他の要素を適用するか否かにかかわらず,効果
的なリスクマネジメントプロセスにおいて常に必要とされる。
A.2.3.2 経営者の責任
トップマネジメントによる遂行責任が効果的なリスクマネジメントプロセスには重要である。各トップ
マネジメントは,リスクマネジメントプロセスの全体的指針に対して責任を負うことが望ましく,この細
分箇条では,彼らの役割,特に次について強調している。
a) 十分な経営資源を確保しなければ,この規格の他の要求事項に適合してもリスクマネジメント活動の
効果は低い。
b) リスクマネジメントは,専門的な分野であるので,リスクマネジメント手法の訓練を受けた個人の参
加が必要である(A.2.3.3参照)。
c) この規格は,受容可能なリスクレベルを規定していないため,トップマネジメントは,受容できるリ
スクをどのように決定するかの方針を確立することが必要である。
d) リスクマネジメントは絶えず進化していくプロセスであるため,それが適切に実施されているかどう
かを確認し,あらゆる課題点を修正し,改善を行い,そして,変化に適応するためには,リスクマネ
ジメント活動についての定期的なレビューを行う必要がある。
A.2.3.3 要員の資格
リスクマネジメント活動の実施に必要な専門的知識をもつ人を確保することは最も重要である。リスク
マネジメントプロセスには,次のような領域の専門知識をもつ人が要求されている。
− 医療機器は,どう構成されているか。
− 医療機器は,どのように作動するか。
− 医療機器は,どのように製造されるか。
− 医療機器は,実際どのように使用されるか。
− どのようにリスクマネジメントプロセスを適用するか。
一般には,様々な職務,又は専門分野の多くの代表者が,それぞれの専門知識を活かしてこれにあたる
ことになる。リスクマネジメント活動を実施する相互間のバランス及び関係を考慮することが望ましい。
客観的証拠を示すためには,適切な資格認定の記録が要求される。重複を避けるため,また,機密性及
びデータ保護を理由として,この規格は,適切な資格認定の記録をリスクマネジメントファイルで管理す
ることを要求していない。
A.2.3.4 リスクマネジメント計画
リスクマネジメント計画は,次の理由から要求されている。
a) 適切なリスクマネジメントには,組織的な取組みが不可欠である。
b) リスクマネジメントのためのロードマップ(工程表)を計画に含める。
c) 計画を立てることで,客観性が増し,基本的要素の見落としを防ぐのに役立つ。
要素3.4のa) f)は,次の理由から必要である。
計画の適用範囲には,二つの異なる要素がある。第一に対象とする医療機器を特定することであり,第
二に計画の各要素(計画に含める活動・項目など)をライフサイクルのどの段階(初期構想,設計,製造,
出荷,輸送,保管,据付,製品使用など)に適用するかを特定することである。適用範囲を明確にするこ
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JIS T 14971:2012の引用国際規格 ISO 一覧
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