JIS T 14971:2012 医療機器―リスクマネジメントの医療機器への適用 | ページ 5

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とで,製造業者は,リスクマネジメント活動を具現化していく上での基礎ができるようになる。
− 責任及び権限の割当ては,責任の所在が不明確になるのを防ぐために必要である。
− リスクマネジメントの活動のレビューは,マネジメントの責任に含まれる。
− リスクの受容可能性についての判断基準は,リスクマネジメントの基本となるので,リスク分析を開
始する前に決定することが望ましい。箇条5(リスク評価)を客観的に行うのに役立つ。
− 検証は重要な活動であり,6.3(リスクコントロール手段の実施)によって規定している。この活動を
計画することによって,必要に応じて基本的な経営資源を確実に利用することが可能となる。検証が
計画されない場合は,検証の重要部分が欠落する可能性がある。
− 対象とする医療機器に特有の製造及び製造後情報を得るための方法を確立することで,製造及び製造
後情報をリスクマネジメントプロセスにフィードバックするための正式な,及び適切な方法が確保で
きる。
変更の記録を維持するための要求事項は,医療機器についてのリスクマネジメントプロセスの調査及び
レビューを容易にする。
A.2.3.5 リスクマネジメントファイル
この規格では,リスクマネジメントに適用する全ての記録及び他の文書を製造業者がファイルする,又
はこれらが何処にあるかの場所を特定するために,リスクマネジメントファイルという用語を用いる。こ
れは,リスクマネジメントプロセスの実践を容易にし,また,この規格に対してより効率的な監査を可能
にする。トレーサビリティは,特定した各ハザードにリスクマネジメントプロセスが適用されたことを明
らかにするために必要である。
確実に完了することは,リスクマネジメントにおいて非常に重要である。不十分な活動は,特定したハ
ザードがコントロールされず,誰かに危害が及ぶ結果になりかねないことを意味する場合がある。このよ
うな問題は,リスクマネジメントのあらゆる段階における不十分な活動の結果として生じる可能性がある。
不十分な活動として,次がある。ハザードが特定しきれていない,正しく評価していないリスクがある,
リスクコントロール手段を特定しきれていない,リスクコントロール手段が未実施又はリスクコントロー
ル手段を十分に効果確認していない。トレーサビリティは,リスクマネジメントプロセスを確実に完了す
るために必要とされる。
A.2.4 リスク分析
A.2.4.1 リスク分析プロセス
要求事項の第二段落は,類似の医療機器についてのリスク分析が利用可能な場合に,どのように扱うか
を示した。注記は,この規格の利用者に対し,既に十分な情報が存在する場合は,時間,労力及びその他
の経営資源を節約するために,その情報を適用することが可能であり,かつ,望ましいことを示している。
しかし,この規格の利用者は,過去のリスク分析の結果が現在のリスク分析に適用できるかを体系的に評
価するよう留意する必要がある。
4.1のa) c)で要求する事項は,トレーサビリティを保証するための基本的な最小限のデータであり,マ
ネジメントレビュー及び後の監査に重要である。4.1のa)の要求事項は,分析の適用範囲の内容を明確に
し,確実に完了したことを検証するためにも役立つ。
A.2.4.2 意図した使用及び医療機器の安全に関する特性特質の明確化
この段階において,製造業者は医療機器の安全に影響する可能性のある全ての特性を考慮する必要があ
る。製造業者は,医療機器の意図した使用者を考慮に入れることが望ましい。例えば,専門家でない人が
医療機器を使うのか,訓練を受けた医療従事者が使用することになるかなどである。この分析は,医療機

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器の製造業者が意図した状況以外での使用,及び初期構想時に予見した状況以外での使用も考慮すること
が望ましい。医療機器の製造業者が意図した状況以外,及び初期構想時に予見していなかった状況でも,
しばしば使用されることもある。その医療機器の潜在的な使用に起因するハザードが将来起こりえること
を,製造業者が予見することが重要である。
附属書Cは,医療機器の特質及び医療機器が使用される環境を記述するときに役立つよう意図している。
このリストは,網羅的なものではないということに留意する。製造業者は,対象とする医療機器の安全に
関する適切な特質を想像的に決めることが望ましい。附属書Cのリストは,ISO 14971-1を基にしたもの
であり,これにこの規格原案に対する意見を盛り込んで,若干の追加を行った。このリストは,“安全に関
してどんなことが起こりえるか”という考えを喚起するに違いない。体外診断用医療機器に関する附属書
Hは,この規格における使用の目的でISO/TC 212,Clinical laboratory testing and in vitro diagnostic test systems,
(臨床検査及びインビトロ診断検査システム)によって策定された。毒性学的なハザードに関する附属書
Iは,ISO 14971-1の附属書Bから抜粋し,僅かな変更だけを加えた。
A.2.4.3 ハザードの特定
この段階において,製造業者は正常状態及び故障状態において予見されるハザードを体系的に特定する
必要がある。この特定は,4.2で明確化した安全に関する特性に基づいて行うことが望ましい。
A.2.4.4 各危険状態についてのリスクの推定
リスクの評価及びマネジメントは,危険状態を特定してはじめて可能となる。ハザードを危険状態に変
えうる事象について,合理的に予見できる一連の事象を文書化することによって,リスクの推定を体系的
に実施できる。
附属書Eは,典型的なハザードを列挙し,ハザード,予見できる一連の事象,危険状態,及びそれに伴
う可能性がある危害の間の関連性を説明する例を示すことによって,製造業者がハザード及び危険状態を
特定する手助けとなる。特に,危険状態に導き,最終的に危害に至る可能性がある一連の事象が存在する
場合に重要である。リスクを適切に取り扱うためには,製造業者がこれらの一連の事象を認識し,特定す
ることが望ましい(図E.1参照)。
附属書Eに示すリストは,網羅的なものではない。このリストは,チェックリストとしてではなく,想
像的な思考を促すように意図した。
これは,リスク分析の最終段階である。個々の医療機器についてと同様に,個々の危険状態に対するリ
スクの推定は異なるという難しさのため,この細分箇条は,一般的に記載している。医療機器が正常に機
能している場合にも,また,不具合を生じている場合にも,ハザードは発生しうるため,どちらの状況も
厳密に調査することが望ましい。実際には,リスクの構成要素である確率及び重大さの両方について個別
に分析することが望ましい。製造業者が重大さレベル又は危害の発生確率レベルを体系的な方法で分類す
る場合は,その分類表を定義し,リスクマネジメントファイルに記録することが望ましい。これは製造業
者が,同じレベルをもつリスクを整合的に扱うことを可能とし,製造業者がそのように実施したという証
拠になる。
体系的な故障又は一連の事象が原因となって発生する危険状態もある。体系的な故障の確率を計算する
ための広く認められた方法はない。危害の発生確率が計算できない場合でも,ハザードには対処する必要
があり,製造業者は,危険状態のリストを個別に作成することによって,これら危険状態によるリスクの
低減が図れるであろう。
十分な定量的データが利用できない場合も多い。したがって,リスク推定は必ず定量的に行うことが望
ましいという表現は避けた。

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附属書Dは,リスク分析についての有用な指針である。その情報は,IEC 60300-3-9 [21]を含む複数の情
報源からなる。IEC 60300-3-9 [21]の有用性の認識から,この規格では,全ての医療機器及び全てのリスク
マネジメントプロセス段階に適用できるように拡大した。附属書Dでは,リスクチャート及びリスクマト
リクスを,例として多用している。しかし,この規格は,リスクチャート及びリスクマトリクスの使用を
要求していない。
A.2.5 リスク評価
リスクの受容可能性について決定することが必要である。製造業者は,リスクマネジメント計画で定義
したリスクの受容可能性についての判断基準によって,推定したリスクを評価する。製造業者は,どのリ
スクを低減する必要があるかを判断できる。箇条5は,この規格の読者が不必要なプロセスを行わなくて
よいよう規定した。
A.2.6 リスクコントロール
A.2.6.1 リスクの低減
ステップ6.26.7は,一連の段階を論理的に構成しており,この体系的な手法を用いれば,関連のある
情報が必要に応じて確実に利用できるようになるため,この手法は重要である。
A.2.6.2 リスクコントロール手段の選択
リスクを低減する方法には,多くの場合複数ある。三つの手段を列挙する。
a) 設計による本質的な安全
b) 医療機器自体又は製造工程における防護手段
c) 安全に関する情報
これらは,いずれも標準的なリスク低減手段であり,ISO/IEC Guide 51 [2]から抜粋した。列挙した優先
順位は重要である。この原則は,IEC/TR 60513 [22],各国又は各地域の規制[例えば,欧州医療機器指令
(European Medical Device Directive)[34]]などでも採用されている。実施可能である場合,医療機器は,
本質的に安全であるように設計されることが望ましい。実施可能でない場合には,防壁(バリア)又はア
ラームのような防護手段が適切である。最も低い優先順位の防護的な手段は,文書による警告又は禁忌で
ある。
リスクコントロール手段の選択の結果の一つとして,事前に決めた判断基準に従った受容可能なレベル
までリスクを低減するための実施可能な方法がない場合がある。例えば,全ての残留リスクが受容可能で
あるような生命維持医療機器の設計は,現実的ではない。この場合は,患者に対する医療機器の効用が残
留リスクを上回るかどうかを判断するため,リスク/効用 分析を実施してもよい。このリスク/効用 分
析を,6.5の段階にもってきたのは,事前に決めた受容可能なレベルまでリスク低減するため最初にあらゆ
る手段を施すことを確実にするためである。
A.2.6.3 リスクコントロール手段の実施
二つの異なる検証がある。第一の検証は,最終設計においてリスクコントロール手段が実施されたこと
を確認するためである。第二の検証は,実施した手段が実際にリスクを低減していることを確実にするた
めである。妥当性の確認を,リスクコントロール手段の効果を検証するために用いてもよい。
A.2.6.4 残留リスクの評価
残留リスクの評価は,実施したリスクコントロール手段によって受容できるリスクになったかどうかを
判断するためである。リスクマネジメント計画で確立した判断基準に照らして,リスクが受容できないと
判断した場合には,製造業者は,他のリスクコントロール手段を考慮する。リスクマネジメント計画で確
立した受容可能なレベル内にリスクが低減されるまで,繰り返し行うことが望ましい。

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残留リスクに関連のある情報を提供し,使用者が情報に基づいて適切な判断ができるようにすることが
望ましい。ただし,どの残留リスクに関連する情報を,どれくらい提供するかについては,製造業者が決
定する。残留リスクに関連のある情報提供の要求は,既に多くの国及び地域において取り入れられている。
A.2.6.5 リスク/効用 分析
製造業者が受容できると決定したリスクの判断基準を上回るリスクが残る場合もある。この細分箇条は,
製造業者が慎重な評価を実施し,かつ,医療機器の効用が残留リスクを上回ることが示せた場合には,判
断基準を上回る高い残留リスクがあっても医療機器を提供できるようにするものである。使用者にとって
重要なのは,情報に基づいて適切な判断をすることができるように,高い残留リスク及び医療機器の使用
によって得られる効用を開示することである。附属書Jを参照。
A.2.6.6 リスクコントロール手段によって発生したリスク
リスクコントロール手段を単独で用いるか,又は組み合わせることによって,新たな全く異なるハザー
ド又は危険状態が発生する可能性があること,更に,あるリスクを低減するために導入した手段が別のリ
スクを増加させる可能性があるため,この細分箇条を設けた。
A.2.6.7 リスクコントロールの完了
この段階では,特定した全ての危険状態についてのリスク評価が終了していることが望ましい。複雑な
リスク分析において,全ての危険状態に関係したリスクを検討したかを確認するようにするためである。
A.2.7 残留リスクの全体的な受容可能性の評価
箇条4箇条6で規定したプロセスに従い,製造業者は,ハザードを特定し,リスクを評価し,設計に
おいて個々のリスクコントロール手段を実施する。製造業者は,この時点で振り返り,個々の残留リスク
の組合せによる影響を検討し,医療機器の開発を続けるか否かの決定を行う。個々の残留リスクは受容可
能であっても,全体的な残留リスクが製造業者の受容できるリスクの判断基準を上回る可能性がある。こ
れは,特に複雑なシステム及び多数のリスクを伴う医療機器の場合に当てはまる。全体的な残留リスクが
リスクマネジメント計画の判断基準を上回る場合でも,製造業者は,全体的なリスク/効用の評価を実施
し,リスクは高いが極めて有益な医療機器を商品化してもよいかどうかを判断してもよい。使用者にとっ
て重要なのは,重大な全体的残留リスクが知らされることである。したがって,製造業者は,関連情報を
附属文書に含める必要がある。
A.2.8 リスクマネジメント報告書
リスクマネジメント報告書は,リスクマネジメントファイルの重要な部分である。この報告書は,リス
クマネジメントプロセスの結果を最終的に見直して要約することを意図している。この報告書は,リスク
マネジメント計画が適切に実行され,製造業者が,要求された目的を達成したことを確認した証拠となる
重要な文書である。第1版では,リスクマネジメント報告書に,特定した各ハザードについてのリスクマ
ネジメントプロセス結果のトレーサビリティをもつことを要求した。複雑な機器及び複雑なリスク分析の
場合にトレーサビリティを含めると,JWG1の当初の想像をはるかに超えて,膨大なリスクマネジメント
報告書になること,及びリスクマネジメント報告書を最終的なレビューの要約との位置づけに変更したこ
とから,この要求事項は削除した。ただし,特定した各ハザードについてのトレーサビリティをもつこと
は依然として必要であり,3.5を修正し,リスクマネジメントファイルにトレーサビリティの要求を追加し
た。
A.2.9 製造及び製造後情報
医療機器が製造段階に入ってもリスクマネジメント活動は継続することが必要である。リスクマネジメ
ントは,医療機器の試作品がない構想の段階で開始することがしばしばある。設計プロセスを実施してい

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るなかでリスクの推定が具体的になり,実際に機能する試作品ができると,更に正確になっていく。リス
クマネジメントにおける使用についての情報は,製造記録又は品質記録を含む全ての情報源から得ること
ができる。しかし,実際の使用者がどう医療機器を使うかは推定しきれない。したがって,製造業者は製
造及び製造後情報を監視することが望ましい。それらのデータ及び情報は,その後のリスク推定及びその
結果となるリスクマネジメントに関連する決定に影響する。製造業者は,最新の状況(リスクの受容判断
基準,リスクコントール手段の選択などリスクマネジメントに関連する決定において考慮しなければなら
ない事項),及びその適用が現実的であるかを同時に考慮することが望ましい。リスクマネジメントプロセ
スを改善するためにも,これらの情報を用いることが望ましい。製造後の情報をフィードバックすること
で,リスクマネジメントを反復的なプロセスとすることができる。
この規格の第2版では,重要なリスクマネジメント情報が医療機器の製造開始と共に収集できることを
認識して,この箇条の表題を“製造後の情報(Post-production information)”から“製造及び製造後情報
(Production and post production information)”へと変更した。製造業者が果たすべき一連のプロセスを強調
するために,この箇条の要求事項も変更した。

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