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附属書G
(参考)
システム オブ システムズへのシステムライフサイクルプロセス適用
G.1 はじめに
システム オブ システムズ(SoS,System of Systems)は,その要素それぞれがシステムである一つの対
象システムである。SoSは個々のシステムでは達成できないあるタスクのために一連のシステムをまとめ
ている。SoSを構成する,個々の構成システム(constituent system)は,SoS内で協調し,かつ,SoSの目
標に合致するために適応しながら,自身の管理,ゴール及び資源を保つ。5.2.3で説明しているように用語
を用いる状況(図3)では,元の対象システム,イネーブリングシステム及び相互作用するシステムを含
む,システム群の混成集合体(composite set of systems)が,共にSoSを構成する。システム群の混成集合
体に影響する関心事がある場合,SoSは対象システムとして検討される。そのようにするのは,独立した
構成システムでは充足できないビジネス若しくはミッションの目標をSoSで充足するため,又は個々の構
成システムを組み合わせたことで,個々の能力を超えた全体としての能力を発揮する,SoSの創発的な振
る舞い(emergent behavior)を理解するためである。
この附属書は,こうしたSoSに対するシステムライフサイクルプロセスの適用を扱っている。一般的な
特性,汎用的に用いることができるSoSの種類,及びライフサイクル全体にわたる関係を記述している。
G.2 SoSの特性及び種類
SoSは,多くの場合,開発された構成システムの管理及び運用の独立性によって特徴付けられ,最初に
特定されていた元からの利用者を,SoSの利用者と同時に支援し続ける。他の状況では,それぞれの構成
システムは,それ自体がSOI(対象システム,System of Interest)であり,SoSよりも前から存在している
ことも多く,その特性はそれらの初期の利用者のニーズに合致するように元から作られていた。SoSがも
つ,より大きなニーズを網羅するため,SoSの構成要素として,構成システムで検討する範囲が拡張され
る。このことは,特に,システムがSoSとは独立して発展し続ける場合には,複雑さが増すことを意味す
る。構成システムは,通常,元からの利害関係者及び統治機構も保持する。このことがSoSのニーズに取
り組むために,代替の構成システムを用いるという選択肢を制限することになる。
SoSは構成システムとSoSとの間の統治関係に基づいて,4種類の型に特徴付けて分類される(図G.1)。
“指揮管理された”SoSは,最も強い統治関係をもつ。これは,SoS組織が,SoSを支援するために構成
システムが元々設計されていない場合があっても,構成システム全体に権限をもつ。“認められた”SoSは,
与えられる統制が幾らか少なく,そこでは,構成システムとSoSとの間に割り当てられた権限が,幾つか
のシステムエンジニアリングプロセスの適用に影響を及ぼす。“協調的な”SoSは,SoS権限が欠けている。
これは,システムエンジニアリングの適用が構成システム間の協調に依存する。“仮想的な”SoSは,おお
むね自己組織的で,SoSのシステムエンジニアリングの機会が極めて限定的である。
創発性(emergence)はSoSの重要な特性であり,SoSでの予期しない影響は,構成システム群の複雑な
相互作用の動的変化に起因する。SoSでは,システム単体では得られない結果を得て分析するために,構
成システムを意図的に組み合わせて検討する。構成システムの複雑さ,及びSoSの中での構成システムの
役割を考慮せずに設計されている場合があるという事実が,新たな予期しない振る舞いを招き得る。予期
しない創発的な結果を識別し,対処することはSoSのエンジニアリングの中で特に課題となる。
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SoSの種類 説明
(System of System Types)
仮想的な(Virtual) − 管理権限の中心がない。
− 集約して合意された目的がない。
− 他の種類のSoSに比べて見えにくい,SoSを維持するためのメカニ
ズムによって,創発的に振る舞う。
協調的な(Collaborative) − 合意された目的を満たすためにコンポーネントシステムが自発的に
相互作用する。
− 標準を相互運用し,実施し,そして維持する方法を共同で決定する。
認められた(Acknowledged)− SoSに対する目標,指定された管理者,及び資源が認識されている。
− 構成システムは独立した所有,管理及び資源を保持する。
指揮管理された(Directed)−特定の目的を満たすために構築され管理される統合されたSoS。
−中央から管理し発展させる。
−コンポーネントシステムは独立して運用する能力を維持する。
−通常の運用モードが中央の目的に従属している。
注記 この種類のSoSでは,SoSを指揮する何らかの中央がある。
図G.1−SoSの種類
G.3 SoSへ適用されるシステムエンジニアリングプロセス
G.3.1 概要
前述したSoSの特性は,システムライフサイクルプロセスの次に示す4種類のSoSの適用に関係する。
G.3.2 合意プロセス
合意プロセスは,SoS及び独立していることが多い構成システムに対して責任をもつ組織間で,開発及
び運用統制のモードを確立するため,SoSには重要である。異なる組織によって取得され管理される構成
システムは,SoSの目標とは合わない元来の目標を保持していることがよくある。“指揮管理された”SoS
の場合を除いて,SoSの組織は,それらの協力なしに構成システム組織に仕事を課すことはできない。“認
められた”SoS又は“協調的な”SoSでは,これらのタスクは,それ自体のSOIとしての構成システムの
タスクに対してバランスがとれている。“仮想的な”SoSの場合,合意プロセスは非公式なものか,又は分
析の目的でだけ検討されることがある。
G.3.3 組織のプロジェクトイネーブリングプロセス
典型的な対象システムでは,組織のプロジェクトイネーブリングプロセスは,プロジェクトが実施され
る環境を確立する。組織は,プロジェクトによって用いられるプロセス及びライフサイクルモデルを確立
し,プロジェクトを設立し,方向性を変更,又は中止し,人的及び財政的資源を含めた要求される資源を
提供し,並びに組織内及び組織外の顧客向けにプロジェクトによって開発されたシステム及びその他の成
果物の品質基準を設定し,監視する(6.2)。
SoSでは,構成システムの所有者は通常,構成システムのエンジニアリングに関する責任を保持し,そ
れぞれ独自の組織プロジェクトを有効にするプロセスをもつ。SoSの種類に依存して,SoSは,SoSの特
定の検討のためにこれらの組織のプロジェクトイネーブリングプロセスを適用し,既存のシステム及び新
しいシステムを混合した能力を計画し,分析し,編成し,そしてSoS能力へ統合する。
その結果,SoSでは,これらの組織のプロジェクトイネーブリングプロセスは,二つのレベルで実装さ
れる。構成システムに責任をもつ組織は,SoSの独立したSOIに対してこれらのプロセスを実装する。SoS
の組織(又はSoSの合意による“協調的な”SoS)は,SoS全体に適用するそれらの検討に対してSoSの
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ためのこれらのプロセスを実装する。例えば,人的資源管理プロセスは,構成システムをエンジニアリン
グ活動によって作成するために,各構成システムの組織によって取り組まれる。SoSの組織は,構成シス
テム全体をSoSへ適用するシステムエンジニアリング活動だけのための人的資源管理プロセスに取り組む
こともあり得る。
SoSエンジニアリングに特有の課題は,構成システムの組織のプロジェクトイネーブリングプロセス,
及びSoSのそれらのプロセスとの連携の欠如にある。構成システムのプロセスは,独自の成果を達成する
ために設計されていて,SoSのプロセスと合わない場合がある。例えば,ポートフォリオ管理プロセスは,
次の場合,構成システムの責任となる。それは,構成システムの組織が,構成システム及び他のシステム,
並びにポートフォリオ内のプロジェクトを全て統制することができ,かつ,SoSの組織がこのことを認識
するポートフォリオ管理への取組方法を必要とする場合である。
G.3.4 テクニカルマネジメントプロセス
典型的な対象システムにおいて,テクニカルマネジメントプロセスは,次に関係する。
− 組織の管理によって割り当てられた資源及び資産を管理すること
− 一つ以上の組織の間の合意を履行するために,資源及び資産を充当すること
テクニカルマネジメントプロセスは,プロジェクトの管理について,特に,次に関係する。
− コスト,期間の長さ及び達成に関して計画すること
− 計画及び達成度を示す実績基準を遵守するために活動をチェックすること
− 進捗及び達成における未達成の部分を取り戻す是正処置の識別及び選択すること
テクニカルマネジメントプロセスは,プロジェクトの技術計画の立案及び実施,技術チーム全体の情報
管理,システム製品又はサービスの計画に対する技術面の進捗のアセスメント,完了までの技術的タスク
の制御,並びに意思決定プロセスの支援に使用される(6.3)。
テクニカルマネジメントプロセスを,SoSのレベル及びその構成システムのレベルでも実施する。
既存及び新規システム群を混成させたものがもつ能力を計画し,分析し,編成し,SoS能力へ統合する
ことを行うSoSエンジニアリングについて,その特定の考慮事項に対し,テクニカルマネジメントプロセ
スを適用する。それと並行して,構成システムの組織は,それらの構成システムのエンジニアリング,及
び自身のテクニカルマネジメントプロセスの責任をもち続ける。
SoS組織は,SoS全体にわたって適用するテクニカルマネジメントプロセスに取り組む。それと並行し
て,そのプロセスは構成システムの組織でも独立して実施される。例えば,構成管理では,構成システム
は自身の構成を管理すると同時に,SoSはSoS内のシステムの組合せに適用される構成管理に取り組む。
SoSでのリスク管理がSoSへのリスクを見ている間に,構成システムの成果に適用されるリスクのアセス
メントに基づいて,リスクは構成システムによって管理される。
プロジェクト計画プロセス,並びにプロジェクトアセスメント及び制御プロセスは,全てのマネジメン
トプラクティスにとって重要である(6.3)。システム オブ システムズ エンジニアリングにおける重要な
課題は,構成システムのためのプロセスについてSoS組織による制御が欠如していることである。独自の
組織要求事項によって,構成システムのそれぞれは,他の構成システムのスケジュールとは異なるスケジ
ュール又はアップグレードスケジュールで開発される場合がある。
SoS組織は,SoSをSOIとして扱うライフサイクルにおいて,SoSによって開始された変更に加えて,
構成システムの独立した変更を認識する統合ライフサイクルを計画をすることが求められる。
構成システム間で追加される,能力の段階的な増加分によって,SoSは発展するが,そうしたSoSの発
展を段階に区切る,安定した中間形態を定義しておくことを,統合ライフサイクルに含めることが多い。
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G.3.5 テクニカルプロセス
テクニカルプロセスは,ライフサイクルを通じた技術的な作業に関係する。それらは,はじめに利害関
係者のニーズを製品に変換し,そして,顧客満足度を達成するために必要なタイミング及び場所で,その
製品を適用することで,持続的なサービスを提供する。テクニカルプロセスは,システムがモデルの形態
であるか完成品であるかにかかわらず,システムを作成し使用するために適用され,システム構造の階層
内の任意のレベルで適用される(6.4)。
SoSに適用される他のプロセスと同様に,テクニカルプロセスはSoS及び構成システムの両方で実施す
る。SoSの実装は,SoS全体ではなく,構成システムのプロセス実行によって行われる場合もある。
SoSのためのビジネス又はミッションの分析は,SoSビジネス及びミッションを取り巻く環境の全体を
調査する。その空間内で運用するように構成システムを開発したその程度まで,SoS及び構成システムに
対するビジネス又はミッション分析は広く共有される。目的は,要望される能力を提供するための最良の
手段を決定することである。
利害関係者ニーズ及び利害関係者要求事項定義は,トップレベルのSoSに焦点を当てるだけでなく,個々
のシステムの利害関係者の様々なニーズがSoSにどのように制約をもたらすかを検討するようになる。SoS
のためのシステム要求事項定義は,利害関係者のニーズ及びミッション目標を満たすために必要なレベル
で定義するようになる。そして,SoSが,構成システムのための新しい要求に対する“利害関係者”とし
ての役割をもつことで,定義したSoSのシステム要求事項が,SoSの構成システムの要求事項に変換され
るようにする。
SoSのアーキテクチャは,既存のシステム及び新しいシステムを組み合わせた能力を編成してSoS能力
に統合するための枠組みであり,構成システムのアーキテクチーはそれぞれの組織に委ねられている。SoS
の構成システムは,通常SoSに先立つため,SoSアーキテクチャ定義はしばしばSoSの現存アーキテクチ
ャから始まる。利害関係者の関心事を捉え,最上位のSoS要求事項を満たし,構成システムに対する新し
い要求事項の影響を認識し,かつ,構成システムのアーキテクチャの制約を受け入れるために,アーキテ
クチャの代替案を検討することがよくある。
設計定義プロセスは,SoSの実装を可能にするのに十分な詳細なデータ及び情報を提供する。これには,
システムに適用されるSoS要求事項に取り組む方法を識別するために,独自の設計トレードオフを行う構
成システムと協調して設計することを伴う。これらの設計定義は,構成システム組織の責任であり,監視
する役割を果たすSoS組織とともに,構成システムによって実施される。
インテグレーション,検証,移行及び検証の全てが,SoSの要求事項を支援するために構成システムが
実装する変更に対して実施される。これらのプロセスは,アップグレードされた構成システムがSoSに統
合され,かつ,そのSoSの遂行能力・性能・運用時の実績が検証及び妥当性確認されるときに,SoSに対
しても適用される。従来のSOIで実装されているのと同様に,これらのプロセスを効果的に実施するには,
SoSにおける構成システムの独立性及び非同期的な性質は障壁となる。SoSレベルの評価は,運用環境で
しか実行できない場合がある。この場合,SoSの振る舞いが悪化することを避けるために予防処置を考慮
する必要がある。
運用,保守及び廃棄プロセスは,管理及び運用操作の独立性が認められている構成システムによって実
施される傾向がある。これらのプロセスを促進するため,SoSレベルの相互作用があることがある。
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参考文献
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注記 対応国際規格 : ISO 9000:2015,Quality management systems−Fundamentals and vocabulary
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キュメンテーション)
注記1 対応国際規格 : ISO/IEC/IEEE 15289:2011,Systems and software engineering−Content of life
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注記2 この規格に対応させたISO/IEC/IEEE 15289:2017が改正版として発行されている。
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注記1 対応国際規格 : ISO/IEC 15504,ISO/IEC 33000, (multiple parts),Information technology−
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注記2 これらISO/IEC 15504規格群はISO/IEC 33000規格類へ改正され,対応するJIS X 0145規
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注記1 対応国際規格 : ISO/IEC 15939:2007,Systems and software engineering−Measurement process
注記2 この規格に対応させたISO/IEC/IEEE 15939:2017が改正版として発行されている。
――――― [JIS X 0170 pdf 125] ―――――
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